マイクロソフト ライズ オブ ネイション 〜民族の興亡〜

マイクロソフト
ライズ オブ ネイション 〜民族の興亡〜

ゲームデザイナー

ブライアン・レイノルズ氏 インタビュー

 

 2月10日に行われた「マイクロソフト ライズ オブ ネイション 〜民族の興亡〜」(以下,RoN)発表会の後(発表会の模様は「こちら」),マイクロソフト本社においてRoNのゲームデザイナーを務めるブライアン・レイノルズ(Brian Reynolds)氏に,インタビューを行うことができた。
 Civilizationの産みの親であるシド・マイヤー氏の懐刀として数々の名作タイトルを手掛けた氏の考えるRoNの面白さ,そしてそのゲームデザインの思想はどのようなものなのだろうか。forGamerでは,早速その辺りについてうかがってみた。


数々のターン制ストラテジーゲームを手掛けてきたからこそ見える,新しいRTSの形とは

forGamer(以下,4G):
 まずお聞きしたいのですが,RoNはシングルプレイとマルチプレイのどちらをより重視して設計されたのでしょうか? レイノルズ氏といえば,やはり「Alpha Centauri」などシングルプレイ用のゲームの印象が強いのですが。

Brian Reynolds氏(以下,Reynolds):
 その質問に対しては「両方」と答えさせてもらいたいな(笑
 というのも,我々は過去に「Civilization II」や「Alpha Centauri」といったシングルプレイ重視のゲームを制作してきた。しかし,それらのゲームは長大で多くのプレイ時間を必要とし,手軽に遊べないなどの問題点が目立っていたんだ
 RoNでは,そのような問題点を解消することで,新しいファンを獲得したいと考えている。だけど,だからといっていわゆるターン制ストラテジーゲームの良さを省いている分けでなくて,RoNは両方の良さを合わせ持った作品に仕上げたつもりなんだ。
 だからその質問の答えは「両方」ってことになるのさ。

4G:
 なるほど。
 そういえばRoNは,リアルタイム制ながらも政治的/宗教的な要素を積極的に盛り込んでいるようですけど,たとえば全く戦闘をしなくても勝利を収めることはできるのでしょうか?

Reynolds:
 Yes,Yes! そこが重要なんだ
 このゲームでは,ゲームに勝つために幾つかの方法を用意してあるんだ。戦って相手を打ち負かすだけじゃなくてね。たとえば,マップ上の何割かを領地にした時点で勝利ということもあれば,経済的な要因……資源が一定以上溜まったりだとか,ある技術を開発したりすることでもゲームに勝つことができるんだよ。だからRoNの大きな特徴である"国境線"にしても,軍事的な行動以外で拡張する手段を用意しているわけさ
 ほかには,Wonder(偉大な建築物)を建てることが勝利の条件になる場合もあるかな。

4G:
 Wonder(偉大な建築物)にはどのような種類のものがあるのでしょうか?

Reynolds:
 ピラミッドやスペースシャトル計画,自由の女神像などさまざまだね。それぞれに特殊な効果が設定されていて,完成すればゲームをより有利に進められるんだ。ただ建設には膨大なコストが必要となるから,そう簡単には建設できないだろうけどね(笑

 

無駄な複雑さを省き,遊びやすさを追求したゲームシステム

4G:
 内政のシステムについてもう少しご説明頂けますか?

Reynolds:
 もちろんだとも。
 RoNでは,街を最小単位にして国家が形成されている。基本的には,街を建設/占拠していくたびに,自国の領地……つまりは国境線を押し広げていけるわけなんだ。最初にある街がその国家の首都ということになり,次から建設する街は地方の都市という形になる。日本で例えるなら,最初の街が東京で,次からが名古屋,大阪といった感じかな。首都は国の全てを司る街であり,ここが落とされるとその時点で敗北してしまい,領地を全て奪われてしまうので注意が必要だね

4G:
 ふむふむ。ところで首都を遷都させることはできるのですか? 押されながらも首都を後ろに下げながら耐えるみたいな状況はあるのでしょうか。あなたの過去の作品では遷都できましたよね。

Reynolds:
 確かに過去に我々が作ったゲームでは遷都が可能だったね。けれども,RoNでは遷都させることはできないようになっているんだ。それにはいろいろな理由があるのだけど,実は,テスト段階では首都を遷都させられる時期もあったりしたんだよ。だけど……まぁ簡単にいうと,それがあまり面白いルールとしては機能しなかったんだよね(苦笑 だから,RoNでは遷都できない仕様に決めたんだ。

4G:
 そうでしたか(苦笑

Reynolds:
 話を戻すけど,街が増えていけばより多くの資源の生産ができるようになり,また各々の街で交易をさせることで,金(財産)を集められるようにもなるんだ。
 交易は,キャラバンというユニットを生産してそれを街の中心に向かわせるだけで,半自動的に行ってくれる

4G:
 金(財産)は交易で得るというわけですか?

Reynolds:
 RoNには,金(財産),食料,木,金属,石油,知識などといった資源があるが,それらはなにもマップ上から採取するだけではない。たとえば知識などは,大学を建設したりして集めることになる

4G:
 特別重要な資源というのはあるのでしょうか?

Reynolds:
 当然全ての資源が重要になってくるけど,全時代を通して金(財産)と知識はもっとも大切な資源といえるだろうね。金(財産)に関しては言うまでもないと思うし,知識はあらゆるテクノロジーを進歩させるための欠かせない資源だからね。

4G:
 時代を進化させるシステムも非常に洗練されていますね。

Reynolds:
 繰り返しになってしまうけど,「Civilization II」や「Alpha Centauri」を遊んでくれたファンはもちろん,これまで我々のゲームに触れたことのないユーザーにも,RoNを遊んでほしいと考えているからね。省くべきところは省いて,できるだけ遊びやすい作品にしたかったんだ。「テクノロジーの進歩=時代の進歩」という図式はとても分かりやすいだろう?(笑)
 また最終的には,4系統あるテクノロジーのうち一つだけ,近未来のテクノロジーを開発することができる。近未来のテクノロジーには,核ミサイルを無効化させてしまうものなど,非常に強力な効果を持つものが用意されているんだよ。ただWonderと同様に,開発には膨大なコストが必要になるんだけどね。

4G:
 核兵器が登場するのも面白いですよね。ただ,威力が高すぎてゲームバランスを崩してしまうのではないかと心配になってしまいますが。

Reynolds:
 その心配はもっともだけど,核兵器にはさまざまな制約を設けているから安心してほしいな。たとえば,核兵器を使うと一定時間各国との交易がストップしてしまったり,また核兵器を使用するたびに「ハルマゲドンゲージ」が溜まっていき,一定以上核が使用されると全員がゲームオーバーになってしまうというルールが用意してあるんだ。核をむやみに使うことは,戦略的にもそれほど有効な手段とは言えないかもしれないな。
 まぁマルチプレイで,おふざけで核を連発するという状況はあり得るだろうけれどね(苦笑

4G:
 ところでマルチプレイに関する仕様はどうなっているのでしょうか? 「Warcraft3」や「Age of Mythology」などでは,自動的に対戦相手を検索してくれる「Anonymous Matchmaking」システムを搭載していますが,RoNでもそのような機能があるのでしょうか?

Reynolds:
 残念ながらAnonymous Matchmakingシステムは用意していないんだ。マルチプレイに関しては,ロビーを介して対戦相手を探すという形になるんじゃないかな。ただゲームバランスや細かいルールに関しては,マルチプレイを念頭において調整してあるから,マルチプレイは非常にエキサイティングなものになると自負しているよ

4G:
 マルチプレイに関してですが,最初の時代から最後の時代まで通して遊んだとして,プレイ時間はどの程度になるのでしょうか?

Reynolds:
 最初から最後までと言うことになると,大体1時間くらいだろうね。ただ,それより短い時間でゲームに決着が付くことの方が多いかもしれないな。
 元々スピィーディなゲーム展開というのは,RoNを作る上での大きな目標でもあったんだ。人類の歴史を短時間でまるごと楽しめてしまうような作品にしたかったんだよ。

4G:
 去年のIGFでおっしゃっていた,
「人間の壮大な歴史をランチタイムでプレイできてしまうような試み」
 ということですね。

Reynolds:
 その通り。
 またRoNではさまざまな民族が登場するけど,それぞれの個性を前面押し出すようにも心がけているね。民族ごとの特有のパワー(文明ボーナス)もそうだけど,民族特有のユニットも他の作品に比べて多めに用意してあるんだ。日本なら「侍」,ドイツなら「タイガー戦車」などが良い例だろうね。一つの国ごとに5〜6程度の固有ユニットがあって,それらを上手く使っていくことが,ゲームにおいて重要なポイントになるんだ

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