Meltdown 2001緊急レポート 2/5
――DirectX 8.1に見るパソコンゲームの進化と今後

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2001/07/27

Text by 奥谷海人

DirectX Graphics

 DirectX Graphicsは,以前は3Dレンダリングに特化した"Direct3D"と2Dレンダリングの"DirectDraw"として知られていたAPIを統合させたもので,DirectXの中でも最も重要でポピュラーな役割を担っている。統合することによってAPIの作動を簡略化し,メモリへの負担も削減させるのに成功しているのだ。
 DirectX 8.0で改良されたDirectX Graphicsの最大の利点といえるのが,プログラマブル・バーテックス・シェイダー(Programmable Vertex Shader)と,プログラマブル・ピクセル・シェイダー(Programmable Pixel Shader)という新しいタイプの機能である。これらは,プログラマやアーティストが特殊効果を製作するうえで,通常の型に捕らわれない独自性の高い表現を可能にしている。

 実際にゲームに反映されるバーテックス・シェイダーの効果の一つに,マトリックス・パレット・スキニング(Matrix Palette Skinning)がある。バーテックス・シェイダーは,それぞれの頂点データにx-,y-,z-軸の数値を与えることができるため,その数値を自在に変換することで,新しいデータ(ポリゴン)を表示することなくオブジェクトを変形させることができるも。1つの関節点につき,最大で32個までの"骨"を与えることができるため,3Dモデルの複雑でスムーズな動きを可能にするのだ。
 同じように,トウィーニング&スキニング(Tweening & Skinning)技法を応用すれば,顔の表情や筋肉の動きなどを,プロセッサの処理にストレスを加えることなくリアルに表示できるようになるため,ゲーム開発者にとってもゲーマーにとっても計り知れない魅力がある。NPCのプレイヤーに対する好感度を,その表情から察知することなどもできるだろうから,今までのように音声やパラメーター表示されていた感情が"グラフィックス"によって表現されるという,映画並みの高度な表現方法も一般化されるかもしれない。
 ピクセル・シェイダーもまた,ピクセルごとの色合いや効果を調整することで,より高度な爆発効果や複雑なテクスチャー効果などを独自に開発できるようになるもの。複数のサンプルデータをレンダリングすることが可能なため,キャラクターやオブジェクトの質感にも現実味をもたせることができる。例えば,体毛やシミのような細かい描写をキャラクターの顔に施したり,レザージャケットもより革っぽく表現できるようになるのだ。解像度によっても異なるが,パソコンゲームではフレームごとに200万に及ぶピクセルをレンダリングしなければならず,そのプロセスをハードウェアに依存することによって,コンソール機にはないパワーを実現しているのである。

少々粗い画面だが,NVIDIAのZoltarと呼ばれるムービーデモから抽出した画像。バーテックスシェイダーのトウィーニング&スキニングを利用し,顔の表情が自由自在に変化する。その生々しさには驚かされる。ちなみにGeForce3でのムービーが「ここ」にあるので,興味のある人はダウンロードしてみてほしい

DirectX Graphicsが見せる最新のグラフィック効果

 DirectX 8.1では,ピクセル・シェイダーのバージョンがShader 1.4へと移行することになる。マイクロソフトでは,あくまでも「DirectX 9.0に搭載予定のShader 2.0への布石」という位置付けしかしていないが,プログレッシブメッシュをサポートするなど,いくつかの点で大きな変更が見られる。
 例えば,テクスチャステージが現行の4ステージから6ステージ(12フェッチ)へとアップされている。今までのバンプマッピングではすでに4ステージがフルに使用されていたから,さらに二つ分のゆとりができることになった。これで,環境マッピングのような効果をバンプマッピングに組み合わせることも可能になっている。また,照明のあたるテクスチャの一部を限定的に明るくするスペキュラー・ハイライティング(Specular Highlighting)という効果を応用し,同じテクスチャーでも違うパターンで見せるというようなトリックにも使えるはずだ。
 さらに,今後期待できるのがNパッチ(Normal Patches)という技法である。頂点データとその接線からベジエ曲線を演算し,それを自動的に三角体に換算する。これにより,1つのポリゴンでも複数のポリゴンに見せることができるのだ。Nパッチは,バンドウィズにストレスを与えることもなく,これまでのデータにも応用できるという利点もあり,3Dモデリングが視覚的に飛躍する。

 

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