Text&Photo by 奥谷海人

〜Halo開発者インタビュー その2〜




ランディ・ピッチフォード/Randy Pitchford
〜 エクゼクティブ・プロデューサー

「まず自分達の満足できるものを仕上げたということに,喜びを感じているんです」

4GN:  Haloのプロジェクトが始動し始めたのはいつ頃からでしょう?
ランディ・ピッチフォード(以下,RP):
 ちょうど1年ほど前からでしょうかね。プレイアブルなものが出来あがったのが,今年の1月でした。
4GN:  移殖が始まった時点で,Xbox版の発売から半年以上経っているのですが,どうしてそんなに時間が掛かったのでしょう?

RP:
 個人の開発者レベルでは,MicrosoftやBungieの連中とHaloの感想を話したりしていたんですが,昨年の夏に,Microsoftの担当者から「君達にピッタリのプロジェクトがあるんだけど興味ない?」って誘われたのが,ことの始まりだったんです。
 で,詳しい話を聞いてみたら,HaloのPCへの移殖だって分かって,私も正直ビックリしました。すでにMicrosoft内部で行われているものだと思っていましたから。私は,HaloをプレイするためだけにXboxを買ったくらいですから,その話が来たことが嬉しかったですね。

4GN:  どうして,GearboxにとってPC版への移殖作業がピッタリだと判断されたのでしょう?

RP:
 HaloをPCに持ってくるときの絶対条件が,マルチプレイヤーモードの追加だったわけですが,それはつまりTCP/IPにも対応したネットワークコードを最初から書かなければならないということでした。移殖作業ならともかく,そういうFPSにおけるネットワークエンジンの制作として信頼を寄せていただいたのが我々のチームだったということで,非常に光栄に感じています。
 PC版が2年遅れになったというタイミングに関しては,それほど悲観的には思っていません。DirectX 9.0とその対応カードがリリースされたのは今年に入ってからですし,我々ができる範疇で腕を見せるには,逆に絶好の機会だと考えています。
 もし,1年早くリリースされることになっていたら,少なくてもグラフィックス面ではXboxと変わらないもので妥協していたでしょうからね。

4GN:  グラフィックス技術も日進月歩ですからね。

RP:
 実は6年前にこの会社を建てる以前に,3D Realms社であのプロジェクトの初期制作に参加していたんですけど, 当時は(3Dfx社のVoodoo用の)Glideモードをサポートするべきかどうかの議論をしていたんです。
 その後NVIDIAが台頭して7世代経ち,さらにはATIとの激しいポジション争いを行っていますよね。我々ゲーム開発者とはまったく異なるサイクルで,どんどんとグラフィックス技術が向上しているってことです(笑)。

4GN:  最近では,NVIDIA社のCgなど,ビデオカードが一つのコンソール機のように捉えられ始めていますが,この動向については?

RP:
 まあ肯定的に捉えると,そうやって競争している市場は健全な証拠ですよね。より良い製品を作ろうとか,自分達のカードをサポートしてもらうためにゲーム開発者と密に連絡を取るというのは,悪いことではないと思います。
 3Dfx社も,ゲーム開発者の意図と離れて一人歩きし始めたから,ああいう結果になったともいえますよね。市場動向を探りながら,技術革新していくのは,大変なことじゃないですか? あの業界にいなくて良かったと思いますよ(笑)。

4GN:  Gearboxにソフトウェア技術者はどのくらいいるのでしょう?

RP:
 30人のうち,10人がプログラマで,あとはアートなりデザインなりになります。Haloに関しては,テスティングでMicrosoftと協力できるのは心強いですね。

4GN:  移殖とはいえ,なかなか技術力の高さが伺えます。あのローディング時間の極端な短さとか。

RP:
 ああ,あれいいでしょ。我々のお気に入りなんですよ。
 実際は技術的には大したことではなくて,今まで誰もやってこなかったってだけなんですけどね。PCからコンシューマへの移殖,そしてコンシューマからPCへの移殖の両方の経験を積んできたのが良かったと思います。

4GN:  正直なところ,コンシューマからの移殖という理由だけで,Haloを敬遠してしまうようなゲーマーもいるのではないですか?

RP:
 まあHaloに興味を持ってくれた人は買うわけですし,興味がなければ買わない。でも,シングルプレイヤーゲームは,Xbox版を体験していない人にはぜひ遊んでもらいたいくらい色褪せていないと思いますし,マルチプレイヤーモードも良い感じで出来あがっています。
 グラフィックスだって手を抜かずにアップグレードしているので,我々自身では非常に満足しています。多くの人が手に取る価値があると確信していますが,まず自分達の満足できるものを仕上げたということに,喜びを感じているんです。それでいいんじゃないでしょうか。

4GN:  マルチプレイヤーモードは,移殖ではないわけですし。

RP:
 ええ。それだけでも,新しいゲームなわけですからね。

4GN:  MODコミュニティへのアピールも図るとのことですが。

RP:
 はい。Halo製品版がリリースされてから序々に開発ツールを公開して,MOD開発者のみなさんにコンテンツを制作してもらおうと考えています。
 公開する予定のツールには,「Guerrilla」(ゲリラ)というテキストベースの自社アプリケーションを予定していて,わざわざプログラムを書き直すことなくテキスト変更するだけで,爆発効果の色などを調節できるようになるのです。また,マップをリロードするだけで改良が反映されますから,デザイナーがプログラマの手を煩わせることなく調整できるようになっているのです。
 あとは,「Sapien」(sapience=知恵 から来ている名前か?)というエディティングツールも公開しますし,gmaxのサポートも考慮しています。9月にはMOD制作者専用のフォーラムをオープンする予定ですし,説明ページなども追加していく予定です。国籍に関わらず,MODに興味ある人は参加してほしいですね。

4GN:  最後に,Gearbox Software社からオリジナル作品が発売されるのは,いつくらいになるのでしょう?

RP:
 まあ,時期を見て発表しますよ(笑)。

 「Halo:Combat Evolved」は,アメリカとヨーロッパでは2003年9月23日に同時発売される見通しで,CPLなどトーナメント競技会を中心に大きな人気を勝ち得る可能性は十分にある。
 まだ具体的な発表は行われていないが,キャンペーンモードではストーリーも重要な要素だけに,日本を含めたアジアへのローカライズも積極的な展開が予想される。軽快なマルチプレイヤーモードは,10分でも10時間でもプレイヤーの好みで楽しめるような手軽な印象があり,コアなファンから初心者まで幅広くアピールできそうだ。


<<Halo開発者インタビュー その1へ

<<プレビュー記事へ

※記事中のScreenshotsは,すべて開発中のものです。ご了承ください。