UnrealIIの最新情報と,Unreal Tournament 2003 Bonus Packの発表

 Legend Entertainment社がラストスパートで開発を進めている「UnrealII:The Awakening」を,実際にプレイしてみる機会に巡り合えた。しかも,今回のCPLの正式種目となった「Unreal Tournament 2003」のために,無料のボーナスパックが制作されていることも,Epic Gamesのゲームデザイナーが公言したのだ。

UnrealII:The Awakening

NVIDIAブースで展示されていたUnreal Tournamentのスペシャルデモを,ゲーマー達といっしょにプレイするクリス・ブレゼンスキー(左)。次世代のゲームクリエイターとして有名で,Unrealシリーズを統括するプロデューサーである

 2003年2月のリリースに向けて順調に開発が進められているのが「UnrealII:The Awakening」で,NVIDIA社のブースで特別にデモが公開されていたほど。マスターアップも,もう"あと数日"というレベルに達しており,予定通りに進行していることを物語っていた。CPLには,Epic Games社からエクゼクティブプロデューサーのクリス・ブレスゼンスキー(Chris Bleszenski)氏も参加しており,報道陣や熱狂的なファンを集めて,Unrealフランチャイズの今後を語ってくれた。
 UnrealIIの詳細については,以前「ここ」で以前に紹介している通り。24世紀の宇宙において,Terran Colonial Authority Frontier Marshalという長ったらしい役職につくジョン・ダルトン(John Dalton)が主人公だ。
 冒頭のオープニングムービーでは,より前線での活躍を求めていたダルトンが僻地でのパトロールという肩身の狭い役職を与えられる経緯が描かれており,ナビゲーターとなるアイダ・シェン(Aida Shen),機械工で武器のアップグレードを行ってくれるアイザック(Issac),そして異星人のNe'Banという脇役たちが紹介されていく。ミッションブリーフィングは3Dのホログラフマップを使って行われ,「Star Trek Voyager:Elite Force」を連想させる。インタフェースで目新しいのは,NPCとの会話を画面左に出てくる複数の選択肢から選ぶという方式が採用されているということだ。アイダとのミッションブリーフィングなどでは,この方式が多用されている。

 まずゲームをプレイし始めて気づくのが,そのテクスチャのきめ細かさだ。前作の8倍にもなるテクスチャを表示できるDXTC(DirectX Texture Compression)をサポートし,少し錆び付いたような鉄パイプから大きなモニターに写し出される光景まで,現段階では最高レベルの表現力である。その代わり(というわけではないだろうが),このデモではエイリアンの表示が6から7体くらいになると,パイプラインに流れてくるテクスチャメモリ量を処理できないのか,フレームレートが激減してしまっていた。ただ,筆者がプレイしたデモは1か月前のβ版であり,これは完成版では修正されるとのことだ。
 最終的なミッションの総数は13となり,10種類の環境(惑星や宇宙空間など)でプレイしていくことになる。レベル数は,おおよそ35個くらいだという。単純なパトロール作業が,ひょんなことから古代生物の秘宝を巡るエイリアン達の争いに巻き込まれていくというストーリーが展開するが,プレイヤーはこの戦闘に巻き込まれた植民地の人間達を救い出し,その原因を探っていく。ミッション内容も当初の救出やパトロールから,やがては敵地への密行などへと変化していくことになる
 面白そうだったのが,アタック&ディフェンスと呼ばれる新しい形式のミッションだ。プレイヤーは,最前線にある味方の砦を敵の来襲から守るため,用意された砲台やレーザーフェンスを設置し,周囲にいるBotの部下に指示を出しながら砦の防御を固めていく。そのセットアップが完了すると,砦の外に四方からドロップシップがやってきて,敵のNPC(機械的なアーマーを装備したものや,女性的なリーダーユニット)が続々と進入を試みる。雰囲気としては,映画「スターシップ・トゥルーパーズ」の1シーンのようだ。

UnrealIIの最新画像はまったく公開されないが,製品版を買ってみれば必ず驚くはずだ。本作を超えるレベルのグラフィックを持つゲームとしては,Everquest2とDOOMIIIくらいしかないだろう

 「Unreal Tournament 2003」をプレイした人なら,UnrealIIの主人公の動きが相当遅いように感じられるかもしれない。筆者も,しばらくの間必死になってRunボタンを探していたほどだ。これは,主人公ダルトンが重装備の海兵隊であるという設定から来るデザイン面での選択らしいのだが,ペースの速いFPSに慣れ親しんできたプレイヤーにとっては,少し違和感を感じるかもしれない。
 ゲームエンジンを使ったスクリプトイベントも多用されている。第1ミッションでは,プレイヤーがエレベーターに乗ったところでいきなり「前作に捧げた」とブレゼンスキー氏が語るイベントが発生し,最初のスカージが登場することになるのだ。UnrealIIでは,スカージが数種類登場するとのことだが,前作よりもモデリングのポリゴン数やテクスチャーがアップグレードされていて,強暴になった雰囲気だ。しかも,爪を動かして弾丸を弾き返すという技まで身に付けている

 残念なのは,開発の短縮及びUnreal Tournamentとの差別化という名目で,マルチプレイヤーモードが見送られることが,すでに1年前に決定していたという事実である。これについては,CPLに参加するようなファンはかなり否定的なようだった。これまでのFPSを考えてみても,マルチプレイヤーモードで好評価を得なかったタイトルは短期間で話題にならなくなるという宿命を抱えている。それは,シングルプレイヤーモードで評価の高かった「No One Lives Forever」が商業的には今一つだったことからも明らかだろう。ブレゼンスキー氏は,「PHLW(Post Half-Life World)のトラウマだ」と表現していたが,UnrealIIがこれを乗り切るソフトになり得るのかが見物である。

Unreal Tournament 2003:Bonus Pack1

Unrealシリーズの今後について語るクリス・ブレゼンスキー氏。現在は,シングルプレイに重点を置いたUnreal X(オリジナルシリーズ),マルチプレイヤー専用のTournament,そしてコンシューマ向けのChampionshipと3種のシリーズに枝分かれしているが,彼はその世界感の統括を任されている

 会場では,UnrealIIの情報ばかりでなく,現在Epic Games社で制作が進められている「Unreal Tournament 2003:Bonus Pack 1」のプレビュー版が初めて公開された。これは,同社の公式Webサイトで無料で配布される予定のもので,合計で300MBほどのファイルには九つのマップが用意される予定だという。リリース予定日については,"数週間後"という曖昧な期日のみで説明された。
 まだ正式なプレスリリースなどが公表されておらず,筆者の聞き違えであったり,今後仕様変更が行われる可能性はあるが,三つのゲームタイプが開発されていて,Last Man Standingをさらに洗練させたものや,Invasionと名付けられた新しいものなどが加わる。テクスチャなどのアートは新しいものが用意され,オリジナルのマップには少なかった1on1のデスマッチにちょうど良い大きさのレベルも含まれる。
 公開されたマップの中には,"Turbine"を思わせるクラシックなアリーナ形状の"Mixer"と呼ばれる1on1用のデスマッチ用のマップのほか,"Injection"や"Iron Deity"という4on4に適度な大きさのマップ,さらにはCTF用の"Double Damage"など。中でも異彩を放っていたのが"Ice Tomb"という名称のマップで,マップのオブジェクトすべてで,氷のような青白いテクスチャが使用されている。「映画『Lord of the Ring』のMoria(モリア:ドワーフの地下都市)に似過ぎてしまったために,テクスチャを変えてみたら大当たりだった」とブレゼンスキー氏が説明するように,これまでのFPSには余りなかった神秘的な雰囲気がある。しかも,隠れるところも少ないためにキャンピングには適していないという一種の利点も出てきそうだということだ。
 なお,少しコンシューマゲームを意識し過ぎたアナウンサーの声には批判も多かったのか,ボーナスパックではセクシーな女性の声も含めて複数の音声ファイルが用意されるという。さらに,MP3ファイルを使ってプレイヤーの好みの音楽をバックグラウンドミュージックとして使えるようになるなど,ファンの要望を汲み取ったアップグレードが行われている。

この2枚の画像はプロジェクターからの撮影なので汚いが,Unreal Tournament 2003のボーナスパックのものである。それぞれ,Ice TombとInjectionというマップの試作版

 次に,これもまたFPSゲーマー期待の話題作「Counter-Strike:Condition Zero」「HALO:Combat Evolved for PC」の最新情報をお伝えしよう。「こちら」でどうぞ!

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