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「火薬の登場が日本史にもたらした非常にユニークな作用を,ゲームとして再考してみるのは有意義だったと思います」
シヴィライゼーションシリーズが戦国時代に突入すると聞いて,マイケル・フィッターマン氏に追加のインタビューを行った。開発は佳境に入っておりかなり多忙な氏だったが,Sengokuと「CivilizationIII:Conquests」について,さらに詳しく語ってくれた。
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マイケル・フィッターマン
Michael Fitterman
Firaxis Games社で,「シビライゼーションIII」からアシスタント・プロデューサーを務める。ペンシルべニア州立大学に在籍していた頃は,コンピュータサイエンス部門に視覚芸術分野を取り込んだ,独自の学部を作って修士課程を得たという逸話を持つ。
日本にも親戚が住んでいるらしく,日本文化に対する興味がシリーズ最新作に大きく影響を与えている。 |
forGamer.net (以下,4GN):
ではまず,ご自身のご紹介を。
マイケル・フィッターマン (以下,MF):
私はマイケル・フィッターマンといいまして,Firaxis Games社の"なんでも屋"と呼ばれています(笑)。一応「CivilizationIII」から始まって,「CivilizationIII:Play
the World」,そして「CivilizationIII:Conquests」のアソシエイト・プロデューサーをしていますが,そのほかにも脚本やマニュアルのライター,デザイナー,ウェブマスター,そしてマーケティングなど人手の必要なことは全部任されています。この会社に入社したのは,制作チームにインターンとして参加した1999年のことで,それ以前はペンシルべニア州立大学の学生でした。
4GN:
Sengokuコンクエストは,これまでのシリーズの制約をうまく利用した,興味深い作品のようですね。日本人としても,Conquestsで戦国時代がどのように料理されているかに関心があります。今回用意されたほかのコンクエストも,このように従来とは異なる仕様になっているのですか?
MF:
Conquestsには,Sengokuを含めて九つのコンクエストを収録していまして,先史時代から順に,Meopotamia(メソポタミア),The
Rise of Rome(ローマの勃興),The Fall of Rome(ローマの衰退),Mesoamerica(メソアメリカ),The
Middle-Age(中世),The Age of Discovery(大航海時代),The Sengoku Daimyo(戦国),The
Napoleonic Europe(ナポレオン期のヨーロッパ),World WarII in the Pacific Ocean(太平洋戦争)となります。
それぞれのコンクエストに合わせて,個別の機能やゲームシステムを考案しており,一つ一つが個性あるものになっているだけではなく,テーマや歴史面で,辛口のプレイヤーでも納得できるものに仕上げています。
4GN:
Sengokuシナリオには,何人の大名が登場するのでしょうか?
MF:
合計で大名は19人ですね。そのうちプレイヤーが選択できるのは8人で,毛利元就,織田信長,三好長慶,今川義元,武田信玄,北条氏康,上杉謙信,そして伊達政宗となります。選択できない大名も紹介しておくと,大友義鎮,一条兼定,浦上宗景,徳川家康,島津義久,龍造寺隆信,斎藤龍興,松永久秀,長宗我部元親,最上義光。それから浪人(蛮族)も一つのファクションといえますね。
4GN:
オリジナルでは日本のリーダーだった徳川家康が,プレイアブルでないのが非常に興味深い判断ですね。日本の戦国ファンも納得できそうです。
MF:
Conquestsでは,もちろんこれらすべての大名に独自のヘッドアートを用意しています。そればかりか,それぞれの家紋も登場しますし,文明の性格(この場合は大名家の性格というべきか)も違ったものになります。
こういう名前や家紋は,担当者として私が調べあげたものです。アメリカでは家紋まで掲載している文献が少なくて情報収集に苦労しましたが,私自身も日本の皆さんにも満足のいくものになっていると思いますよ。
あと家康ですが,確かに彼は戦国時代の覇者ですが,幼少時代は今川家の人質でしたしね(笑)。
4GN:
デザイナーダイアリーで公表したユニット以外に,Sengokuシナリオに含まれているユニットはありますか?
MF:
そうですね。スタンダードユニット(CivilizationIIIで登場したもの)以外でいうと,武士(Bushi:初期の戦士型ユニット),騎乗サムライ(Mounted
Samurai),槍兵(Samurai Spearman),弓兵(Samurai Archer),騎馬弓兵(Samurai Horse Archer),山伏(Yamabushi
Monk),農民労働者(Peasant Worker:アップグレード後),石弓兵(Stone Crossbowman),攻城石弓機(Siege Crossbow),ロケット台(Rocket-Cart),大砲(Fire
Cannon),そして将軍(Generals)と軍団(Armies)となります。
4GN:
記事中では,火薬系の武器(ユニット)が,すべての武器(ユニット)に取って代わると書かれていますが,これはゲーム終盤でのテンポを速めるための処置でしょうか?
MF:
はい。火薬系の技術の発達は,その理由からテクノロジーツリーの最後に登場することになります。シヴィライゼーションIIIが非常に時間のかかるゲームだったのは事実ですが,私が担当したシナリオでは,武力的に先行した文明が制覇しやすくなっているのです。
また,火薬の登場が日本史にもたらした非常にユニークな作用を,ゲームとして再考してみるのは有意義だったと思います。天下泰平に加速していくという意味でも,ゲームにおける火薬の存在を表現した結果になっているのです。
4GN:
ゲームはどの時期から始まるのですか? また,火薬の開発以降も現代へと向かってプレイし続けることは可能ですか?
MF:
Sengokuシナリオは,文明が継続するのに必要な基本的なテクノロジーを開発した状態でプレイし始め,火薬の開発によって終わります。もし,現代までプレイしたいというコアなプレイヤーがいたら,最新バージョンのエディタで改変することで,シナリオを近未来までプレイすることもできます。
4GN:
オリジナル版は,近代の地名が初期に発生するなど,日本人のプレイヤーにとっては不満のあるシステムでしたが,今回その点での改良は行われていますか?
MF:
もちろん! Sengokuシナリオのような同じ国のマップの地名生成システムは,大名のスタートポイントによって決まるようになっています。日本の中央で始めたら,京都だとか金沢から始まるようになってるんですよ。
4GN:
なるほど。記事によると,蛮族(浪人)の宿営地は資源の眠る地域にあるようですが,これはプレイするたびに同じ状況でマップが作成されるということですか?
MF:
その通りです。初期に周辺を探索していく過程で蛮族の宿営地に出くわしますが,これらは大抵都市の拠点となるような戦略的な場所にあるように配慮しました。ほとんどの宿営地が蛮族に占拠されていますから,必要な資源を入手するにはリスクが伴うわけです。
4GN:
浪人を敵に差し向ける方法は? プレイヤーが生産できるようになるのでしょうか。
MF:
テクノロジーツリーに浪人との交渉技術が含まれており,これを発見すると浪人を"生産"できるようになります。浪人ユニットは無国籍ですから,敵地の攻撃や破壊,探索などに利用できるのです。
4GN:
Sengokuシナリオでは,七不思議はどのように登場しますか?
MF:
七不思議や"都市改善"に関しては,オリジナルのもので不可欠なものや興味深いものは残すようにしました。そこから,それらの施設や建築物を日本風に改良しています。例えば,出雲大社(Izumo
Shrine)の場合はコロッサスをベースにしており,そこに日本に調査に出かけたときに得た情報から調整を加えています。
4GN:
ConquestsにはPlay the Worldも同梱されますね。Sengokuを含めたすべてのシナリオも,マルチプレイヤーモードに対応しているのでしょうか?
MF:
もちろんですよ! Sengokuを含めたすべてのシナリオを,LANやインターネットでプレイすることが可能ですよ。プレイヤーは,プレイアブルな大名であれば自由に選択することができます。
4GN:
アメリカでの発売予定は?
MF:
少し遅れて2003年11月中になりましたが,すでに最終テストの段階に入っています。プレイヤーには,シリーズの伝統の延長線上にあるConquestsを,たっぷりと楽しんでほしいですね。
CivilizationIIIの開発者が,ゲームシステムを利用して日本の戦国時代を再現しようと試みているあたり,シリーズファンとしても日本人としても,非常に興味深い話である。今回はSengokuシナリオの話に特化したが,CivilizationIII:Conquestsには,ほかにも八つのシナリオが盛り込まれている。日本文明は最終シナリオの太平洋戦争にも登場し,真珠湾攻撃を再現するために,日本のゼロ戦が空襲する場面から始まるのだという。
再び我々を,寝食を忘れた生活へと引き込んでくれそうだ。

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