「Bloodrayne」 with Mark Randel
#1

Text & Photo by 奥谷海人

■Terminal Reality, Inc.とは?

ダラス近郊のルイスビル市にあるTerminal Reality社のオフィスビル。木々に囲まれ,テキサスとは思えない落ちついた雰囲気である
 最近では「Nocturne」「Blair Witch」シリーズなどで日本でもお馴染みのTerminal Reality社は,俗に"ダラス・スクール"と呼ばれるテキサス州ダラス圏内にあるゲーム開発会社の一つだ。ご存知のように,アメリカ中南部最大の都市ダラスには,小規模ながらも素晴らしい技術を持ったゲーム会社が1990年代中期から続々と頭角を表し,id Software社や3D Realms社,Ritual Entertainment社,Emsemble Studios社,旧ION Storm社などを中心に,ゲーム開発の都を形成するに至った。その夢は失敗してしまったが,販売会社に変わってゲーム開発者自身がビジネスの主導権を確保しようと,6社の開発元が寄り合わさってGathering of Developers(通称GoD)というブランド会社が発足され,Terminal Reality社もその一員として,同社の経営方針の決定に関与していたこともある。

 Terminal Reality社が設立したのは,若くしてMicrosoft社の「Flight Simulator」のゲームエンジンを開発したマーク・ランデル(Mark Randel)氏が独立した1995年のことだ。同社の処女作は,同じくMicrosftから発売されたアクションシューティング「Terminal Velocity」である。
 ランデル氏自身はゲームデザイナーではなく,「僕は生粋のプログラマーだから」と立場を表明している。そのためか,Terminal Reality社の作品群を見ていても,アドベンチャーからアクション,フライトシム,レーシングなど,ジャンルが多岐に渡っているし,最近ではPCだけでなく,プレイステーション2やXbox用のゲームも開発している。Microsoftからも「Monster Truck Madness」というレーシングシミュレーションをリリースしていたが,PCで発売されたオフロードレーシングの「4×4 Evo」の続編は,Xbox発売のとき,同時リリースタイトルの一つに名を連ねた。

 ランデル氏の作品には,いつも"物理効果のシミュレーションを実現することの楽しさ"という,開発者としての興味が追求されているような気がする。3Dの地形を生かして「セスナの浮遊感はFlight Simulator以上」と言われた「Fly!」がその典型的な例だろうし,「Nocturne」で達成されていた衣服のシミュレーションだって記憶に新しい。ただ小資本のゲーム会社ゆえに,ライセンスされた飛行機の少なさとか,ゲームデザインでの未熟性などは指摘される部分であろうが,ランデル氏と彼の率いる一団が,アメリカでも屈指の人材の集まりであるのは間違いないだろう。

マーク・ランデル氏はアメリカでも有数の技術屋で,「Flight Simulator 3.0」の基礎部分を構築したプログラマーとしても名高い。彼のコードは最新のバージョンでも生かされているというから驚きだ


■Bloodrayneは11月に発売予定

人間とヴァンパイアの間に生まれたブラッドレインは,感情のない殺人マシーンとしてナチスと戦う。日本には馴染みのないゴシック系のヒロインだが,欧米での人気の潜在力はララ・クロフト並み!?
 さて,そんなTerminal Reality社が現在開発しているのが,PCはもとより,NINTENDO GAMECUBE,プレイステーション2,Xboxといった幅広いプラットフォームでリリースが予定されている「Bloodrayne」というアクションアドベンチャーである。
 ノリとしては,Nocturneと「トゥームレイダー」を足して2で割ったような感じで,大人のゲームを意識した軽快ながらも残虐的なアクションと,ちょっぴりセクシーな女性を主人公にしたゲームとなる。シングルプレイヤー専用のゲームだが,コンソール機に合わせたスプリットスクリーン(画面分割)モードなら複数で楽しめるようだ。

 発売元は,ニュージャージー州で1986年に発足し,ハドソンの「ボンバーマン」シリーズなどをアメリカで販売してきたMajesco Games社。昨年末にはイギリスのRage Games社と提携するなど,ここ1年ほどで非常に活発な動きを見せるようになった販売会社である。Bloodrayneは同社初のマルチプラットフォームソフトとして開発されており,アメリカでは11月に発売される予定となっている。現在はβ版開発に向けたラッシュという忙しい状況の中で,Terminal Reality社にお邪魔させてもらった。






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