● エジプトのラー神で,マルチプレイヤーモードを体験!

まるでスタートレックに出てくる宇宙船の内部のようなテスティングルーム。右奥でプレイしているテスター達の動向は,通路側に設置されている外付けモニターでも確認できるのだ

 Ensemble Studios社のテスティングルームは,これまで多くの開発チームを見てきた筆者でも驚くほどの設備を持っている。ざっと見て15台ほどのモニターが配置された2部屋があるのだが,そこに設置されたPCの多くは通路側のモニターにも接続されており,関係者はテスターの肩越しに覗き込む必要なくゲームの進展具合を確認できるのだ。
 Ensemble Studios社の広報担当によると,Microsoft社の傘下となる契約が進められたときに,ゲームテストなどを含めた品質管理の権利をEnsemble Studios社が一切持つという条件を確保できたため,最近では多くのテスターが出入りするようになっているそうだ。今回の取材でも,そんなテスターに混じってマルチプレイヤーモードの開発具合を確認することができた。

 筆者が選択したのは,エジプト文明のラー神だ。2対2のマルチプレイヤーゲームで,味方はポセイドン神,敵はゼウス神とトール神となった。ラーを選択したのは,おそらく一番エイジシリーズの香りがするギリシャ文明とは異なるゲームプレイを期待し,その一方でノース文明ほどの奇抜な変化がないだろうと考えたからだ。
 エジプトのディフェンシブなスタイルは,「Age of EmpiresII」のトゥートンに似ているといえるかもしれないが,それでも「Age of Mythology
」で加わったいくつもの斬新な要素が,まったく新しいゲームへと変貌させた印象も受けた。もちろん,筆者が実際に「Age of Mythology」を触ってみるのは初めてのことなので,ほかの3人は手を抜いてくれるどころかほとんど筆者を放置した状態で,その分どういう運びでゲームが進んでいくのかを確認することができた。

● 守りのエジプト,攻めのノース

大きな石を重ねて作る建築がユニークなエジプト文明だが,資源から石材がなくなったため,すべての建設は木材と金で賄われるようになっている

 守りに強いエジプトとは言われるものの,Archaic Ageで生産できるプロトタイプ兵士ユニットのMilitariaは,ほかの文明と比べても安価で,ラッシュも不可能ではないらしい。もっとも,やはり攻撃力は低いらしいので,ここはエジプト文明の利点でもある経済の基盤作りに専念したほうが得策のようだ。ちなみに,テスターの一人も「Archaic Ageは面白くないね。することって,経済のセットアップくらいだから」と話すように,序盤はほかの3人も黙々と建物の建設を行っていた。
 エジプトの神話は,ギリシャや北欧神話と比べて,一番マイナーな部類に入るかもしれない。そんな中でも,天空の船で月と太陽を引いていたという太陽神ラーの名前なら,1度は耳にしたこともあるだろう。神話世界では年を重ねてオリシス神に権威を渡したとされていて,先史時代のファラオ,アムン・ラーとも重ね合わせられている。このことから,ほかの文明よりも神官やファラオに特典が付けられているようだ。
 例えばエジプトのヒーローは,ギリシャのように個々の人物が名前を持っておらず,すべてファラオに統一されている。ファラオは,ゲーム開始時点から6人のLaborer,一人の神官と共に使用できるのも特徴だ。ファラオはあまり戦闘向きではなく,とくに建設面で威力を発揮する。建物がLaborerによって建築されている場所をクリックするだけで,建築スピードが各段に向上するのだ。さらに,Mythユニットへの攻撃力もある程度持っている。神官は寺院で複数生産できるが,ファラオほど強力ではないかわりに,味方のユニットを治癒できる能力を持つ。ただし,ファラオは死んでもしばらくすれば寺院で復活するが,神官は新たに生産費用がかかるようになっている。

 建設面の効率の良さからスピーディな都市建設ができるエジプトだが,ギリシャは金鉱と木材精製所が同じ建物で賄われ,ノースがオックスカートを利用できるのに比べ,エジプトはそれぞれの資源生産の建物を建てなければならなくなっている。ただ,この面ではそれほど大きな費用の差はなく,さらにファラオが建設と同じように生産スピードを向上させることも可能だ。
 プレイしていて気付くのは,ゲーム中に登場する狩猟用動物が大幅に増えたことだ。ヒツジやオオカミを始め,ブタ,シマウマ,ライオン,ワニ,イノシシなどさまざまな動物が登場する。どの動物も狩って食用にできるし,前作までのように家畜系なら町の中心付近に連れ帰ることも可能だ。もっとも,序盤で狩猟によって農民ユニットを危険に晒すよりも,荒廃しなくなった農地を作ってしまったほうが手っ取り早い気がするし,今回からは漁業の生産性が向上したようだ


● 相手との攻防における戦略性を重視した対戦ゲーム

悪名高い(!?)エイジシリーズのプレリリース用画面写真らしく,かなり作られた画像ではあるが,その分Age of Mythologyの壮大さが強調されているのも事実。エジプトのチャリオットの軍列がジャイアントの乱入を食い止めようとしているシーンだ

 プレイテストの開始直後,隣りでゲームの説明をしてくれていた品質管理部門のディレクターに,かなり初期にモニュメントを建てることを勧められた。少しでも早く,MythユニットやMythユニットのアップグレードに使うFavorを貯めるためだ。このプレイテストのあとで,別のテスター二人による対戦を見せてもらったが,私が見ていたプレイヤーもギリシャの神殿を先に建設していたから,これが一般的な順序なのだろう。Laborer二人とファラオを使えば,一瞬でモニュメントを建設できた。バラックや製材所,金鉱,農地,ドックとファラオを組み合わせれば,確かに凄いスピードで都市を広げていくことが可能だった。
 筆者が質問したりゲームの内容を聞いたりしているうちに,ほかの3人は次の時代であるClassical Ageに移行してしまったようで,騎馬隊の列やMythユニットが筆者の都市の中を素通りしていくようになった。それに続いて我がラー帝国もClassical Ageに突入。上位中央部のバーが100%になったと共に,ポップアップ型のウインドウが現れて2神のうちから1神を選択する場面に。選択したのは,スフィンクスが生産できるバスト神だ。バスト神を選択することでMythユニットとして使用できるのが,時代を経るごとに2度のアップグレードができるスフィンクスだ。人間ユニットならともかく,2度もアップグレードを重ねることが可能なMythユニットといえば,このスフィンクスとギリシャ文明のコロッサスしかないらしい
 ところで,我々が使用していたマップは"Mediterranean"(通称Med)というもので,中央に大きな海が存在し,その周囲は陸続きになっている。筆者はその北東に陣取っており,その下方に味方が,左手の北西部には敵のトール軍がある。すでにドックを建設して海上に出ている筆者は,さらに視野を広げるためにスフィンクスを使ってまだ見ぬ敵の領地へと進んでいった。
 選択したバスト神のゴッドパワーは,日食によって一定時間マップ全域に暗やみをもたらし,弓兵系統のユニットが使用できなくなるという"Eclipse"だ。ちょっとマイナーなゴッドパワーだが,大まかにいって弓兵の攻撃力が強いノース文明の攻撃を交わすときに有効かもしれない。強力なMythユニットと使いどころの難しいゴッドパワーのコンボで,第2レベルの副神が微妙に表現されているのだろう。

 Age of Mythologyで新しく登場したのが,Settlementだ。これは,第2の町の中心というような役割があって,ここを占拠しておけば人口キャップを上げることが可能になる。また,達成するのは難しいと思われるが,今作からマップ中のすべてのSettlementを占領することで勝つという勝利条件が付け加えられている。Settlementの総数は,マップの大きさやゲームへの参加人数によっても異なるが,最大で1プレイヤーにつき三つくらいになるらしく,筆者らがプレイしているマップでは五つ確認できた。そのうち一つは筆者の都市の後方にあり,もう一つは程近いところにあって,すでにトール軍が占拠していた。


● 使い所を考えながら使用するゴッドパワー

ゴッドパワーで竜巻が敵の侵攻を食い止める。Age of Mythologyでは,海戦も重要な役目を果たしている。海洋専用のMythユニットもおり,プレイヤーの選択によっては幅の広いゲーム戦略が要求される

 もはやほかのプレイヤーとは各段の差が付いてしまっているのだが,ここでシージ塔を作るためのワークショップ建設を勧められ,このSettlementを攻撃してみた。シージ塔は,エジプト軍の通常ユニットの中でも非常に強力にできているらしく,移動スピードは遅いが中に最大で5人までの人間ユニットを搭載できる。このシージ塔2台に弓兵を詰め込み,スフィンクスやワニ型のMythユニット(名前不祥)数ユニットでガードさせてトール神のSettlementに攻めてみた。結果は相手のジャイアントに蹴散らされてしまい,この軍団に神官も付けておくべきだったと後悔。
 プレイしているうちに気付いたのは,それぞれの建物が時代の進化に合わせて大きく壮大になっていくということだ。 適当に設備を増やしていっても,第3時代のHeroic Ageともなれば,見応えのある街並みになってきた。
 Heroic Ageで選択したハトホル神のゴッドパワー"Lucast Swarm"は,いなごの大群を発動することで相手の農地に大きな被害を与える。実はArcaic Ageでラー神のRainを使用しなかったのは解説をしてくれたディレクターの指示によるもので,この二つのゴッドパワーはコンボとして使えるのだ。まず,相手の土地にスカウトとしてスフィンクスを送り込んでトール軍の町の中心を囲む農地を見つけ出し,そこへLucast Swarmを発動してみると,いなご達が農地を一つ一つ破壊していく。気が付くとトール軍の農地を完全に食い荒らして,食料生産能力がゼロになってしまっていた。そこでRainを発動して,自国の食料生産を1分間だけ向上させるのだ。姑息な手段のような気もするが,Rainはマップ全域に影響するものなので,少なくともハデス神はRainの恩恵を被っていることになる。
 ハトホル神で使用可能になったロックは,大きな野営テントをくちばしに抱え,Mythや人間ユニットに関わらず10ユニットまでをスピーディに敵陣営に持ち込める。ただ,ロック自体には攻撃力がなく,味方ユニットを下ろす前に敵に倒されると全滅してしまうので,Eclipseとの併用が一番効果的になるだろう。このように,各時代に登場するゴッドパワーとユニットをうまく組み合わせて使うのが最良のようだった。

 デモのショーケースとしての対戦だからか,ほかの3人は筆者の陣営のそばまでユニットを動かして,戦いを見せてくれている。味方のポセイドン神は海の神として名高いが,実際には海馬に乗って地上を駆け回ったりと騎馬能力も相当あるらしく,相当数の騎馬軍団を貯め込んでいる。対するゼウス神は,第四時代Mythic Ageのヘラ神を選択すると使用できるメデューサを使いポセイドン軍を石化して殺すという戦法で,さらにはクラーケンが空中に舞っていたりする。トール神は大きな木槌を抱えた人間ユニット(名称不明)が大量に駆け回り,建物を次々と壊していく。このころになると視覚的にもかなり壮大な戦闘になっており,巨大なMythユニットや起死回生を賭けたゴッドパワーの発動などで白熱してくる。
 遅れてMythic Ageを迎えた筆者は,ホルス神を選んでゴッドパワーの"Tornado"を使ってみた。Tornadoや"Meteor"のような攻撃型のゴッドパワーは,クリックした敵ユニットに必ずヒットするが,その後どこへ飛んでいくかは分からない。その動きはかなり不規則で,どれだけ敵にダメージを加えられるかは運による部分が大きいといえよう。筆者の場合,Tornadoが逸れて海の方角に行ってしまったので数ユニットしか被害を与えられなかったのだが,敵や味方のユニットが巻き込まれて空中に吸い上げられていく様子や,海上では青い竜巻になるというような細かい演出を確認出来た。

 以上が筆者によるマルチプレイヤーモードの様子だが,ラー神を例にしたゲームプレイは理解できただろうか。この後,別のテスター二人による1対1の対戦を見せてもらったが,筆者が見ていたほうのエジプト文明は,やはり最初から寺院をモニュメントを建てることで,少しでもFavorを貯めようという作戦を取っていたのが印象的だ。ノースのほうも,ドワーフを生産して相手陣営の金鉱にまで手を付けていたし,どちらも特性をうまく生かした戦いをしていたのが分かる。ゲームのペースも良く,8分程度で両者が第二時代へと進化したあとは,攻防を繰り返しながらも40分すぎにノースの勝利となった

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