● Ian Fischer & Dave Pottinger氏へのインタビュー

 最後に,Age of Mythologyのリードデザイナーであるイアン・フィッチャー(Ian Fischer)氏と,Ensemble Studios社ではテクニカルディレクターを務め,シリーズのゲームエンジンを手掛けてきたデイブ・ポッティンガー(Dave Pottinger)氏の二人にインタビューする機会をいただいた。

Age of Mythologyのプロジェクトでも要中の要,リードデザイナーのイアン・フィッチャー氏(左)と,このゲームエンジンを開発したデイブ・ポッティンガー氏(右)の二人。両氏とも,忙しい時期にも関わらずにリラックスした様子で,終始穏やかな笑顔と物腰が印象的


forGamer.net (以下,4GN):
 ではまず,「Age of Mythology」が生まれた経緯についてお聞かせ下さい

Dave Pottinger (以下,ポッティンガー):
 それでは,私が技術面から話しますね。実は,のちに「Age of Mythology」のゲームエンジンとなるBang!エンジンを開発し始めたのは,もう5年以上も前のことなんです

4GN:
 5年ですか!

ポッティンガー:
 そう。ちょうど「Age of Empires」のリリース直後くらいからですね。私と,もう一人のプログラマーでコツコツと作っていました。このエンジンの制作ばかりに手間取っていたわけではないのですが,3D環境でのリアルタイム戦略ゲームを表現できるようなものを念頭に置いていました

Ian Fischer (以下,フィッチャー):
 我々がどうやって企画を練っていくかというと,どんな企画が面白そうか,または興味を持てるサブジェクトであるかなどを,制作部のみんなで集まってブレーンストーミングしていくわけです。200くらいのアイデアが出ましたね。まあ,我々のような新しい会社では制作進行に関してナイーブな面も多く,途中で「Age of Empires II」を制作する決断もしましたけど,完全な新作ということでは,神話世界を舞台にしようという方向性はその企画会議のときに決定していました

4GN:
 ヒット率や効果が100%とは限らないゴッドパワーの導入など,ランダム性も大きくなっているようですが。

ポッティンガー:
 ある程度のランダム性は,確かにあるかもしれません。ただ,MeteorやTornadoのような一定の範囲にダメージを与えるものは,まずプレイヤーがポイント&クリックした敵ユニットの地点で発生し,そこから不規則に影響していくようになっているのです。もともと,このゲームはどんなプレイヤーでも楽しめるようにと設計していて,RTSをプレイしたことのない人でも,シリーズを通してプレイしてくれている熟練の人でも,マップの見方やインタフェースの使い方を理解していれば,誰でも勝てるチャンスが与えられると思っています。
 しかし,やはりさまざまな神々やユニットが登場しますから,選ばれた神の特性とか,相手の出方を予測できる経験があったほうがアドバンテージになるのは間違いありません。

キャンペーンを進めていくと,ゲームエンジンを使ったムービーを見ることができる。これはかなりゲーム画面に近い角度になっているが,多くのシーンで顔のアップなども使われていた

4GN:
 ヒーローユニットについて,エジプトのファラオはかなり理解できたので,ギリシャとノースについて詳しく教えて下さい。

フィッチャー:
 はい。まずギリシャですが,プレイヤーは一定数のヒーローユニットを作り出すことができるようになっています。ヒーローは,ギリシャ文明の神によって変化するようになっていて,各時代に一人のヒーローを作成できるのです。ギリシャ文明に限っていえば,ヒーローユニットは名前のあるキャラクターユニットで,ギリシャ神話で描かれているアキレス,アトランタ,べレロフォンらが登場します。彼らにはそれぞれ異なるステータスやスキルも用意されているんですよ。例えば,ペルセウスはメデューサの頭を持っており,ときおり手で掲げて敵の複数のユニットを石にしてしまいます。これに対してノースは,エジプトのファラオのように名前がありませんが,登場する機会は無限に設定されています。ノースのヒーローは戦闘から生まれ出るようになっていて,また,Favorを戦いによって生産することもできます。

4GN:
 まだ多くが語られていないシングルプレイヤーモードのキャンペーンについて説明して下さい。

フィッチャー:
 これまでのエイジシリーズのような独立したキャンペーンではなく,すべて一つのキャンペーンでゲームを体験してもらうことになり,それに合わせてシナリオは35種類も用意しています。プレイヤーがコントロールするのは"アルカントス"(Arkantos)という架空の人物で,これをヒーローユニットとしてさまざまな状況をいろんな文明やマップを使って楽しんでもらえるようになっているんです。アルカントスがシナリオの途中で複数のヒーロー達と出会いを交えながら進んでいくというようなストーリー性をこのゲームに持たせました。

ポッティンガー:
 シングルプレイヤーモードでは,3Dエンジンになった利点を存分に味わってもらえると思いますよ。ゲーム内のムービーは,すべてこのゲームエンジンを使って制作していて,ゲーム開始時はカメラがズームアウトしていって馴染みのあるクォータービューになるという工夫を凝らしているんです。パーティクル効果など,DirectXを駆使したシェーダーにも対応していて,照明や炎なども綺麗に表現していますが,それもすべてゲームエンジンを使っているのです。

4GN:
 3Dカードは必須になるわけですか?

ポッティンガー:
 ええ。DirectX 8.0に対応したものを推奨しています。もちろん,その過程でキャラクターやオブジェクトのポリゴン数を自動調節させているので,何もムービーのモデルそのままで重くなってしまうというわけではないので安心して下さいね。

ゲームのイントロで流れるCG映画。映画「Fellowship of the Ring」の冒頭シーンを彷彿とさせる,スケールの大きい戦闘場面だ これは開発途中でデッサンされた,キャンペーン用ムービーのためのストーリーボードである。神殿を探索する主人公アルカントスの後ろに立つアテナ神が描かれている



 細かい部分では書き切れないほどの変更を重ねながら,エイジシリーズの持つ香りと,まったく異なるゲームプレイを兼ね備えた「Age of Mythology」は,2002年8月中旬からマルチプレイヤーモードに関するストレステストが始まり,9月へのリリースへと繋がっていく予定だ
 ライバルとされる「ウォークラフトIII」がすでに発売されており,「Command & Conquer:Generals」の制作も進んでおり,さらにはMicrosoft社自身もブライアン・レイノルズ氏による「Rise of Nations」の発売が控えている。「Age of Mythology」を始めとするソフトが牽引役となって,RTSが再び盛り上がってきそうな気配である。

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