「Yogurting」

Ko, Dong Il(DiKo)氏 ■Ko, Dong Il(DiKo)氏プロフィール■
30歳。ソウル大学コンピュータ工学科で修士となり,NC Soft社CEOのTJ.Kim氏とは先輩後輩という縁から,1997年同社にプログラマーとして入社。「Lineage」のデータベース関連サーバープログラムを主に担当する。その後,日本ATR(コンピュータに関する研究所),韓国電子通信研究院(ETRI)でバーチャルリアリティを研究し,1999年末にNtix Soft社(旧Taff System社)に入社。MMORPG「ルシアド」のプロデューサー兼サーバープログラマーを担当する。現在は「Yogurting」のプロデューサーを務めている。Ko氏は以前,Hitel(日本のニフティサーブやPC-VANのような,パソコン通信コミュニティ)で"ANIMATE"という同好会を直接運営していたほど,日本のアニメーションのファンである。

ジャパニメーションの影響を
強く受けたKo氏が,
「Yogurting」でMMORPG界に
パラダイムシフトを起こす!

 韓国を代表するオンラインゲーム「Lineage」(リネージュ)。Ko氏がLineageに関わっていたというのは,実は韓国ゲーム業界でもあまり知られていない話だ。
 日本の東京大学に相当するソウル大学のコンピュータ工学科で,のちにNC Soft社CEOとなるTJ.Kim氏と先輩後輩の関係だった彼は,その縁でNC Soft社に入社。なんとLineageの立ち上げ時からその現場に立ち会っていたのである。
 パッケージゲームを作り続けてきたほかのクリエイター達とは違い,オンラインゲームが出発点である彼は,韓国で最もオンラインゲームの開発に詳しい人物の一人といえるだろう。そのKo氏が初めてプロデュースするオンラインゲーム「Yogurting」は,いやがうえにも期待が高まるタイトルである。
 "学園アクションアドベンチャーオンラインゲーム"という,なんとも独特なゲームYogurtingに関して,まだ韓国のメディアにも公表していない詳細を,初めて4Gamerに対して語ってくれた。

MMORPG「ルシアド」が,
"学園アクションアドベンチャー
オンラインゲーム"になったわけ

〜我々が作るべきものは,まったく新しいオンラインゲームである,
Yogurtingをおいてほかにないと思ったのです〜

Kim, Dong Wook(以下,4G):
 Yogurtingは,最初「ルシアド」というMMORPGとして開発されていましたよね([韓国ゲーム事情#87]参照)。なぜ,タイトルもジャンルもまったく違うものへと変えたのでしょうか?

Ko, Dong Il(以下,Ko):
 それは,"状況"と"目標"が変わったためです。ルシアドの場合は"良くできた3D MMORPG"が目標でしたが,NEOWIZ社がNtix Soft社(旧Taff System社)の筆頭株主になったときに,NEOWIZ側から,"まったく新しいオンラインゲームを開発し,これまでのパラダイムをシフトさせる"という目標を与えられたんですね。
 これは非常に困難な課題ですが,我々はその目標を実現するために必要な基盤を(NEOWIZ社の協力によって)確保したと確信したため,大きな方向転換を決めたのです。
 このプロジェクトは,"GOOD"ではなく"GREAT"を要求しました。そのために必要な資金は,NEOWIZ社によってもたらされました。そこで我々が作るべきものは,まったく新しいオンラインゲームである,Yogurtingをおいてほかにないと思ったのです。

4G:
 なるほど,よく分かりました。しかしそれにしても,"学園アクションアドベンチャーオンラインゲーム"とは,またもの凄く変わったゲームですね。どういうストーリーが展開するのでしょうか?

Ko:
 では,ひと通り紹介しておきましょう。

 ある日,"果てしない休日現象"(EVP:Endless Vacation Phenomenon)が全世界を襲った。休日でもないのにすべての学校の授業がなくなり,またほとんどの教師もどこかへ消えてしまったのだ。しかもさらに不思議なことに,生徒のほかには,この現象について誰も変に思っていないのであった……。
 消えなかった教師達も何も分からないという状況の中,"学生連合会"の調べで判明したのは,学校に植えられている"世界樹"の共鳴が呼び起こした次元のねじれの影響という説,全世界中に隠された"オーパーツ"(OOPARTS:Out of place artifacts)による影響という説,そして学校の陰に隠された悪の勢力の陰謀という説など,珍妙な推測だけだった。
 またEVP後の学園内外では,奇妙な事件が続出し始めていた。学生連合会は指揮下の組織を動かして,さまざまな事件の解決を図ると同時に,学園の正常化のために,独自の授業(クエスト)を始める。
 さらにはEVPを終わらせようとするPTAや,逆に維持しようとする商人連合会(学園内で戦闘が起こる世の中になったため,牛乳――体力回復ポーション――の需要が急増した)といった組織が,それぞれの思惑で暗躍し始めるのであった。

4G:
 まさに"Koさんワールド"ですね。確かにこのような設定は,今までのMMORPGでは考えられませんでした。ところでKo氏が日本のアニメーションの大ファンであるためか,イメージイラストやビジュアルが,非常に日本風ですね。これは,日本市場への進出も計算に入れているということでしょうか?

Ko:
 日本への進出を念頭に置いているというのは,事実です。ただ本作が日本風なのは,単に私を含めた開発スタッフ達が,一番好きで,一番得意なものだからです。私は幼い頃から数多くの日本のコミック,アニメーション,ゲームを楽しんで育ちました。個人的には,私が好きで楽しんできたこれらのものに対して,Yogurtingで一種の恩返しをしたいと考えています。つまり,コミックやアニメ,ゲームからもらった楽しさを,より新しい形で創造/発展させて,多くの人に分けてあげたいと思っているんですよ。

 

あまりにも特徴的なシステムについて

〜Yogurtingは,オンラインゲームにおける新しい
パラダイムを提示することになるでしょう〜

4G:
 本作のシステム面での特徴について教えてください。

Ko:
 一般的なMMORPGと比べて最も特徴的なのは,"エピソードシステム"です。Yogurtingには,既存のMMORPGのような"狩り"を行うためのフィールドが存在せず,すべての戦闘は,1〜32人がセッションを形成してプレイする"エピソード"内で行います。これは,セガの「PHANTASY STAR ONLINE」(PSO)を想像してもらえれば分かりやすいと思います。
 PSOの場合は,"コンシューマゲーム機でオンラインでのマルチプレイを実現するためのシステム"ならば,Yogurtingの場合は,"オンラインゲームに,アーケードゲームやPCのシングルプレイゲームにある楽しさを持たせるためのシステム"といえます。
 Yogurtingのエピソードは舞台が学園だけに,学校ならではの魅力的なストーリーが展開します。既存のオンラインゲームでは想像できなかったような新しい楽しさを味わえるはずですよ。

4G:
 PSOのように,毎回ある程度の人数で集まって,エピソード単位でプレイしていくわけですね。ではエピソードに参加する人数が違うとどうなるのでしょうか? 例えば4,5人で挑む場合と30人の場合では,敵の強さや数が変わるのですか?

Ko:
 人数が違えば,難度も変わってきますね。例えば少ない人数だと報償(Reward)を独占できる代わりに,その分エピソードのクリアが難しく,また時間もかかってしまいます。ただこのあたりに関してはまだ調整している段階ですので,今後βテストなどの状況を見つつ,モンスターの強さやRewardのバランスを調整する予定です。

4G:
 本作の場合,キャラクターはみんな学生になるわけですが,一般的なMMORPGでいうクラス(職業)やギルドのようなものはありますか?

Ko:
 クラスはありませんね。私は,クラスを複雑にすることで,キャラクターの能力に制限を設けたり,余計なプレイ時間を増やす(スキル上げなど)ようなことはしたくないんですよ。それより,誰もが自分の好きなようにゲームを楽しんでほしいですね。
 あとギルドはありませんが,"同好会"というものがありますよ。時期が来れば,詳しく説明しますね。

4G:
 分かりました。では,それ以外の特徴を教えてください。

Ko:
 先ほどちょっと述べましたが,エピソードをクリアすると報償(Reward)を得られるリワードシステムがまず挙げられます。ほかにも,エピソードクリア後にも緊張感が継続する取得物分配システム,レベルという概念をなくした新しい成長システムなど,たくさんのYogurting独自のシステムを用意しています。実際に本作をプレイしてもらえれば,いかに新しいゲームかを感じ取ってもらえると思いますよ。

4G:
 今ちょうど出てきたのでお聞きしたいのですが,アイテムの獲得方法が非常に独特らしいですね。

Ko:
 取得物分配システムのことですね。確かに,一風変わったシステムを採用しています。アイテムの獲得はエピソード内で行うわけですが,一般的なMMORPGと違って,モンスターを倒したらすぐにアイテムを入手できるというわけではないんですよ。
 モンスターを倒すと一定の確率でアイテムをドロップしますが,この時点では誰のものにもならず,画面右側にある"取得物ボックス"に入ります。このボックスは,そのエピソードに参加したキャラクターの人数分作られて,誰がどのモンスターを倒したかには関係なく,ドロップしたアイテムは順番にそれぞれのボックスに分配されていくんですよ。
 これによって,戦闘の合間にアイテムを拾うという行為が不必要になり,ゲーム展開がスピーディになります。またアイテムの横取りといった行為を防ぐ効果もありますね。

4G:
 アイテムが順番に平等に分配されるのでは,戦闘に大きく貢献したプレイヤーにとっては不公平に感じませんか?

Ko:
 いい質問ですね。実は,このシステムにはまだ続きがあるんですよ。エピソードに参加したキャラクターは,エピソード内で獲得したポイントによってランキングが決まり,その順位が高い順に,どの取得物ボックスの中身をもらうか,選択できるんですよ。
 ここで面白いのが,ボックスを開けるまでは,その中にどんな"種類"のアイテムが入っているかが分かるだけで,実際にどんなアイテムなのかは分からないようになっていることです。そのため,エピソード進行中には自分の順位を予測しつつ,どのボックスを選ぶべきか常に注意を傾けているべきだし,ボックスを選んだあとも,希望するアイテムが手に入るかどうかという,ちょっとした緊張感を味わえるわけです。

4G:
 おお,それは面白そうですね。Yogurtingをプレイするときは,常にドキドキ感がつきまとうわけですから,これは非常に良いアイデアだと思います。MMOで問題になりがちな"アイテム"についての一種の解決法でもありますし。
 ただ,こういった独自性を打ち出せば打ち出すほど,一般的なMMORPGに慣れた韓国のゲーマー達にとって,ちょっと手を出しづらいタイトルになってしまう心配もありますね。その点に関しては,どうお考えでしょうか?

Ko:
 既存の多くのMMORPGは,一つの完璧な"仮想世界"を作るのが目的で,プレイヤー達にはこの仮想世界への入場料を支払ってもらう形になっています。私は,このような方式は"多くの人が集まって楽しむ遊技"の一つの形態にすぎず,プレイヤー達が本当に望む"絶対的な趣向"ではないと考えます。
 Yogurtingは,ゲームそれ自体を追い求めています。Yogurtingは,ゲームをプレイしたあとの結果のために,長い時間を犠牲にはさせません。その"プレイの過程自体の楽しみ"を追求しているんです。
 本作は,MMOという形態のゲームの新しいパターンを示すことで,プレイヤー達に"ゲーム"としての楽しさを与えることになるでしょう。私は,数多くのゲーマーが,こういったものを渇望していたと確信しています。質問に話を戻すと,確かに本作には目新しい要素が多く,しばらくはプレイを躊躇する人もいるかもしれません。しかし最終的には,誰もが「より面白いもの」を選ぶはずです。

4G:
 なるほど,よく分かりました。どのような面白さを見せてくれるのか,期待しています。

Ko:
 個人的には,オンラインゲームは一つのプラットフォームであり,プレイヤー達に販売するものは,そのプラットフォーム上に乗せられるコンテンツでなければならないと思っています。
 本作で一つ一つのエピソードをクリアしていく楽しみは,MMORPGというジャンルが出現する以前に多くの人が"ゲーム"と呼んだものの持つ,最も普遍的な楽しさに通じます。Yogurtingは,オンラインゲームにおける新しいパラダイムを提示することになるでしょう。プレイヤー達に,サービスの使用料としてではなく,"魅力的なコンテンツ"に費用を支払ってもらうオンラインゲームを目指して,鋭意開発中です。

 

韓国では2004年内にオープンβテスト開始!
……日本では?

〜私達が追い求める,オンラインゲームの新しい楽しさを,
多くの日本人にも伝えたいと思っています〜

4G:
 Yogurtingを開発していて,一番苦労したのはどういう部分ですか?

Ko:
 今でこそ開発スタッフの全員が同じ考えで動いていますが,Yogurtingは既存の"成功した"MMORPGとは似て非なるものであるため,開発当初には多くの反対意見などがありました。そのたびごとに「我々は誰も挑戦しなかった冒険をしている」という私の確信を説明し,スタッフ達を説得して開発を進めることが,苦労したというか大変でしたね。

4G:
 新しいものを作り上げるためには,スタッフ全員の理解と協力が必要ですからね。ところで今,開発スタッフはどれくらいいるんですか?

Ko:
 まずプロデューサー,つまり私が一人と,アートディレクターが一人,ゲーム企画が7人,グラフィックス担当が27人,プログラマーが15人という構成ですね。今後も継続的に人員は増やしていきますよ。また開発費用は,もちろん正確な数字はいえませんが,ルシアドのときから数えれば日本円にして10億円くらいかかっていますね。

4G:
 それは凄い。まさに期待の大作ですね。実際に韓国でプレイできるようになるのはいつごろでしょうか? また日本での予定も決まっていれば教えてください。

Ko:
 まず韓国ですが,2004年内にはオープンβテストを行う予定です。また日本など海外でのサービスはまだ正式には決まっていませんが,個人的には,2005年の夏頃には日本でもサービスかβテストを始めたいと思っています。

4G:
 楽しみにしておきます。それでは,Yogurtingに期待している読者に,ひと言コメントをお願いします。

Ko:
 Yogurtingは,既存の"同じような"MMORPGとは違い,"ゲームをプレイする楽しみ"それ自体を与えるオンラインゲームになるよう,すべてのスタッフが一所懸命に開発しています。私達が追い求める,オンラインゲームの新しい楽しさを,多くの日本人にも伝えたいと思っています。
 4Gamerの読者のみなさん,ぜひ応援してください。

 

 これまで韓国でも,話題ばかりが先行していた感があったYogurtingだが,実際にKo氏に話を聞けば聞くほど,これは評判どおり,いや,評判以上のデキになるだろうと思えてきた。案外,この冬の韓国オンラインゲーム業界の話題は,Yogurtingが独占してしまうかもしれない。……そう思えるほど,Ko氏の話は面白く,期待させてくれた。
 コミックやアニメーション,ゲームを通じて,日本の文化に馴染んできたKo氏の感性は,むしろ同じ韓国人よりも日本人に受け入れられやすいかもしれない。日本でのサービス元も決まりつつあるという情報もあるし,おそらくは日本でもサービスされることになるだろう本作,今から注目しておくべきタイトルかもしれない。

YOGURTING
スクリーンショット

 

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