シューティングゲームである程度の多様性を維持するためには,自機の攻撃システムが工夫されている必要がある。望まれるのは,指先に課せられる動きへのオリジナリティだ。そしてこの「TECHNO-SYLPH」は,そうしたオリジナリティとして自機を成長させる要素を盛り込んだ作品である。 画面は上を奥に倒しこんだ3D風のタイプ,キャラクターは立体的だが高低差の要素はなく,ゲームはあくまでも平面の中で完結する。このように見た目はシンプルだが,自機のパワーアップシステムは一転してかなり複雑だ。それに加えて機体そのものが入れ替わる要素もあるので,プレイヤーが面倒を見る領域は広くかつ細かい。 何より特筆すべきは,ボムを発射すると自機がパワーアップするというユニークなシステムだろう。また,ノーマルのショットは攻撃レベルを任意に変更可能で,レベルを上げすぎるとエネルギー補充の効率が悪くなる。同様にボムの攻撃レベルも任意に選択でき,レベルの高いボムはエネルギーを多く消費する。 一方,ほかの弾幕系シューティングと同様の,敵の攻撃に翻弄される趣を求めると,このゲームではとりあえず肩すかしを食らってしまう。プレイヤーの忙しさを踏まえてか,かなり抑制の利いた敵配置が続くのだ。エリアとしての区切りはあるものの,エリアごとに激しい攻撃を担当するボスが出てくるわけではない。とくに序盤の攻撃は非常に散発的で,プレイしていてほとんど圧力を感じない。 しかしその薄さは,自機のパワーアップを図るためにプレイヤーに与えられた余裕に過ぎない。作業を理解せずに薄い敵を軽く捌いて,3D風ゲームにありがちな避けの難しさゆえに攻撃が淡白に設定されているのだと一人合点してしまっては,このゲームのこのゲームらしい楽しみ方にはたどりつけない。 難易度設定は存在せず,コンフィグレーション要素もごくわずか,背景の雲のグラフィックスを表示する/しないくらいである。理想をいうならパッドやスティック用にボタンの割り当て変更くらいは欲しいところだが,そこは仕方がない。見た目や展開のシンプルさと逆に,複雑な自機のシステムを使いこなすのが楽しい,やり込み甲斐のある一本といえる。 (八重垣那智)
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