シミュレーション 4Gamer.net Review
 
遂に禁断のドライバーダメージまで再現したラリーゲーム登場
エクスパンドラリー 日本語版
Text by UHAUHA
2nd Nov. 2004


ラリーゲームでは目新しいキャリアモード採用の異色作

細かいところまで描き込まれた,淡い光に包まれたような幻想的なグラフィックスが本作の特徴だ。空を流れる雲の落とす影までも再現されており,そういったこだわりがリアリティある風景を創り上げている

 今年は「Richard Burns Rally」「Colin McRae Rally 2005」そして「Xpand Rally」と,立て続けにラリーゲームが登場し,どれを買っていいのか分からないという,ファンの嬉しい悲鳴すら聞こえる豊作の年。その中で今回レビューするのは,3作の中で唯一(執筆時点で)国内代理店のマイクロマウスから発売された「エクスパンドラリー 日本語版」。大手量販店などで手軽に入手できるうえに,ゲーム中のテキストはすべて日本語化されているという至れり尽くせりでの登場だ。

 プレイヤープロファイル作成時に,"アーケード/シミュレータ"のリアリティレベルが選択できる。挙動(ドライブモデル),ダメージ処理(マシンダメージや摩耗など),ペナルティの制限などに違いがあるようだが,ダメージ処理以外の部分ではそれほど大きな違いは感じられない。複数のプロファイルを作成できるので,気になる人は走り比べてみるのも面白いかもしれない。

 メインとなる"ラリー・チャンピオンシップモード"は,さまざまなラリーに参戦して賞金を稼ぎ,新たなラリーカーや強化パーツを購入して次のステップに進んでいくという,まさにラリー版グランツーリスモといった内容。むしろキャリアモードと呼ぶのが正解かも。
 登場する8クラス35種類以上のラリーカーは,リオン,タイニー・フーパー,モンスーンなどすべて架空の名前が付けられているが,見る人が見ればプジョー,ミニ・クーパー,ランサーなど,デザインから判断できるものばかり。
 ラリーは,グランド・キャニオン・カップ,1600エクスパンド・チャンピオンシップなどシリーズ戦があり,その中にアメリカ,ケニア,ポーランドなど五つの地域を舞台にした70種類のレースが用意されている。シリーズ戦の構成は,三つの周回コースで戦うものや四つのスペシャル・ステージで戦うものなど,バリエーションが豊富。優勝を目指すのはもちろんのこと,シリーズ戦の全レースで2位以上などのクリア条件を満たせば,次のステップへの道が開いていく。

 キャリアモードのほかにはシングルレースがあり,キャリアモードで走れるコースを,資金に関係なくすべてのラリーカーやパーツを使って走ることができる。セッティングやパーツの組み合わせをここで試してから実戦投入……という使い方ができるので便利だ。またマルチプレイヤーではLANとインターネットでのマルチプレイをサポートしており,ロビーサーバーに接続して世界中で立ち上げられているホストに接続する手軽さ。対戦者捜しに困ることはなさそう。

光と影に重点を置いたグラフィックスは,美しいの一言。遠方に見える風景も,細かく再現されている レース中には動物達と遭遇することも……。ギャラリーや動物と接触するとペナルティを受けるのでご注意 夜間は,ライトを点けても先が見えにくい。GPSアンテナを装着するとコースが表示されて少しは救われるかも
ドライバーズビューでは汚れていくフロントガラスを見られる。ちなみにワイパーは自動 実名で登場するラリーカーはないが,ファンであればどの車が基になっているか判断できるだろう キャリアモードでは,次のステップのラリーに出場するには条件がある。経験を積んで次のステップを目指そう


強化パーツを使い,セッティングで最大限の性能を引き出せ

ハンドル操作とアクセルワークで簡単にドリフトさせられるので,プレイしていて楽しい。しかし狭い部分も多く,コーナーや路面に合わせたスピードで行わなければ,障害物に当たったりコースアウトすることになる

 挙動は,リアリティを"シミュレータ"に設定しても,なおアーケード寄りという印象を受けた。タイヤと路面の接地感が薄く,アクセル全開状態でもステアリングをスパッと切り込むだけで簡単にリアが流れるし,アクセルオフ→オンからのドリフトなども手軽にできるため,振り回しやすい挙動といえる。とはいえ,荷重移動やタイヤに駆動が掛かっている/掛かっていないときの挙動変化や駆動方式の違いによる挙動特性(FF車のタックインなど)といったシミュレータ要素はしっかり押さえており,アーケード派もシミュレーション派も受け入れられる無難な味付けだ。
 気になったのは,ターマックの挙動。ハンドリングがクイック過ぎて不自然さが感じられ,セッティングで誤魔化しても納得できる挙動にはできなかった。

 ラリーゲームでは目新しい強化パーツについては,タービン,コンピュータ,サスペンション,ショックアブソーバー,ラジエターなど約800種類が用意されている。所有するラリーカーそれぞれにパーツを装着することができ,パーツによっては性能違いが2〜4種類用意されている。
 キャリアモードでは装着したパーツは取り外すこともワンランク下げることもできず(ここが実に不満),走りやすさやタイムアップを狙ってパーツを購入したのに,逆に走りにくくなったり,タイムが落ちることもある。そんなときラリーカーを売却するのは勿体ないので,マシンセッティングを調整して誤魔化すのも手だろう。
 車高,サスペンションの硬さ,ブレーキの制動力,前後バランス,ステアリングレスポンス,ミッションのギア比といった各要素を,"硬め" "ややクイック"などアバウトながらも数段階で調整可能となっている。その違いは挙動に明確に表れるため,テスト走行を繰り返してベストなセッティングを見つけたい。

スノー/アイス路面用のスパイクタイヤを装着しているときにターマックを走ると,火花の出る演出も 車が横滑りしたり,リアが簡単に流れる味付けの割に狭いコースが多く,車をコントロールする腕が要求される ラリーカーがコースを走り抜けると,タービュランスにより周辺の草木がしっかり揺れるところにも注目
ターマックの挙動だけは違和感を感じた。クイック過ぎて,慎重にハンドル操作をしないと真っ直ぐ走れない キャリアモードでは,賞金を得て強化パーツを購入。必ずしも走りやすくなるわけではないので注意すること セッティングでは日本語の説明が表示されるので,まったく分からない人でも安心。調整して走り比べてみよう



壊れるのはラリーカーだけじゃない
ドライバーも怪我をするのだ!

ドライバーダメージが細かく再現されたのは,ドライブシミュレータ初といってもいいだろう。たった1回のクラッシュでも怪我の程度によっては走行不能となる。車とドライバーのダメージは,右下のゲージに表示される

 マシンダメージ処理も手抜きなく再現されており,見た目も大御所Colin McRae Rallyシリーズと比べても負けず劣らず,いかにも"ぶっ壊れた"と感じさせる派手めの演出が好印象だ。もちろん各所のダメージは挙動に反映される。
 とくに痛々しいのが,ドライバーダメージも再現されているところだ。ドライバーは頭,腕,体,足にダメージを受け,腕に大きなダメージがあれば操舵性に影響が出るなどドライブに支障が起こる。とくにリアリティレベルをシミュレータにした場合には,小さいなクラッシュとてラリーカーもドライバーも瀕死状態になることも少なくないため,走り慣れたコースでさえ常に集中しなければならない。ゲーム中はかなりの緊張感を味わうことになるだろう。

 光と影を強調したグラフィックスも独特で,やんわりとした光に包まれた幻想的な仕上がりとなっている(オプションでオフも可)。またリプレイ機能の豊富さも特筆すべき点となっており,外部視点やボンネット視点などの定番モノのほかにオービット視点,タイヤ視点,ヘリコプター視点など10種類のカメラアングルが用意されている。しかもそれに加えてモーションブラー,白黒テレビ,オールドムービーなど10種類以上のエフェクトがあり,カメラアングルとエフェクトをランダム設定にして眺めていると思わず見入ってしまう。サウンドこそ入らないものの,リプレイをAVIファイルにすることもできるので,カメラアングルなどにこだわったムービーを作成するのも面白い。

 ゲームとしてはアーケード寄りで,どちらかというと初〜中心者にオススメなレベルではある。だが,単にラリーカーを走らせチャンピオンシップを争うだけでなく,ラリーカーを購入してパーツ強化していくという楽しみもあり,ドライバーダメージなど過去のラリーゲームにはない要素も手伝って,マニアの人でも新鮮味を感じながら楽しめるだろう。ほかのラリーゲームにはない魅力満載の本作,挑戦してみてはいかがだろうか。

 最後になってしまったが,本作にはオリジナルのコースやカーテクスチャを作成できる"Chrome Ed"というエディタが付いてくる。残念ながらこの機能は日本語化されておらず,「はい」と渡されてもサクッとコースを作れるほど簡単なものではない。
 幸い国内版公式サイトにエディタマニュアルがアップされているので,参考にしつつオリジナルコースを作成してほしい。"エディタマニュアル(その1)"とあるところからも,"その2"はカーテクスチャかなと期待しつつ……。

車もドライバーも瀕死状態。ここまでボロボロになってしまうと,フィニッシュラインに辿りつくまでが大変 頭部に大きなダメージを負うと,クラッシュ時に一瞬真っ暗になったり,物がブレて見えたりと支障が出てくる リペアは時間制限などなく修理費さえ払えば完璧に直ってしまう。派手に壊しても意外と安いのは不自然かも
デモ版リリース時から注目を集めていた,本作のリプレイ機能。豊富に用意されたカメラアングルとエフェクトによる美しいリプレイは,ずっと眺めていても飽きない


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■メーカー名:マイクロマウス
■価格:8190円(税込)
■発売:10月22日
■動作環境:Windows 98/Me/XP,PentiumIII/1.3GHz以上(2GHz以上推奨),メモリ 256MB以上(512MB以上),HDD空き容量 500MB以上,VRAM64MB以上のビデオカード(VRAM128MB以上推奨),DirectX 9.0以降
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