Winning Post6 パワーアップキット

Text by 水道橋郁夫
26th Nov. 2003

 対戦と配合理論。
 競馬シミュレーションゲームの隆盛を支えたのは主にこの2要素だったが,それも今となっては過去の話。各シリーズが最新作を発売するごとに独自の配合理論を積み上げていった結果,複雑怪奇になりすぎて新規プレイヤーがとっつきにくくなってしまったのは,皮肉な流れだったといえるだろう。配合以外にもシステムやイベント,その他競馬野郎の性感帯をくすぐる改良が加えられてきたのにも関わらず,だ。


そうだ,配合は面白いものだった!

番組や種牡馬など,最新のデータ追加はもはや当たり前。もちろんそれだけでは終わっていない

 その傾向は,本作「Winning Post 6 パワーアップキット」の母体である"Winning Postシリーズ"も類に漏れない。しかしこのシリーズを賞賛すべき最大のポイントは,この複雑化した部分を可能な限り噛み砕こうとしている点にあり,とくに2002年12月に発売された「Winning Post 6」では,その傾向が顕著だった。
 例えば生産のベースとなる繁殖牝馬に対して種牡馬を選択すると,サポート役の牧場長がその配合で発生する理論やその是非をフォローしてくれる。少しでも分かりづらい競馬用語が出てくると,秘書が随時解説してくれる。これらを鬱陶しいと感じるプレイヤーは解説のアイコンをクリックしなければいいだけで,競馬の初心者から,競馬及び本シリーズの熟練者まで,誰もがストレスを感じることなくプレイできたのだ
 Winning Post 6についてはレビュー記事「こちら」をご覧いただくとして,本体の発売から1年後に発売された「Winning Post 6 パワーアップキット」では,そんな磨かれ続けているインタフェースが文字通りさらにパワーアップ。個々の繁殖牝馬に適した種牡馬を,発生する理論と共に一覧でリストアップしてくれたりなど,もはや「競馬シミュレーションは配合がややこしいからイヤ!」などという敬遠理由は成立しなくなったといってもいい。そして同時に,どっぷりとマニアックな配合研究を楽しみたい人が,その楽しみを奪われたわけでもない。とっつきやすさとマニアックさの融合に成功した点は,心底感心する。
 加えてパワーアップキットでは,2002年に急死した大種牡馬サンデーサイレンスや,わずか2世代を残して世を去った三冠馬ナリタブライアン,現役のまま世を去ったライスシャワーサイレンススズカなど,志半ばに世を去った馬達を種牡馬としてゲーム内に登場させることも可能になった。日本ではなく,アメリカやヨーロッパで種牡馬デビューさせれば,ひょっとしたらライスシャワーが,ポスト・サドラーズウェルズとして欧州の生産界に君臨することもあるかもしれない……。

新種牡馬配合 オススメ配合一覧 秘書解説
 秘書の解説や,あてがう種牡馬を決めると牧場長がその感想をコメントしてくれる機能は,従来通り。これだけでも十分親切なのだが,石橋を叩いて渡りたいプレイヤーは,時に全種牡馬を選択し,全コメントを聞いたうえで配合を決めようと,七面倒くさい作業を始めてしまうケースがあった。
 親切な機能から生まれてしまった苦労だったが,今作ではオススメの種牡馬を一覧で表示してくれる機能が追加され,さらにもう一段階親切になったのだ。


夢のデータで広がる,そして変わる競馬社会

 今回種牡馬/繁殖牝馬には,この秋17年ぶりの牝馬三冠を達成したスティルインラブや,牡馬二冠のネオユニヴァース,現実の2003年にはまだデビューしたての2歳馬フィーユドゥレーヴといった新データも多数盛り込まれている。そして,それらのデータをカスタマイズするためのエディット機能も今回の目玉の一つだ。

10月に牝馬三冠を達成したばかりのスティルインラブのデータなどもばっちり反映されている

 さすがに血統や因子など,血統の基礎的な部分をいじることはできないが,各馬のスピードやパワー,適正といったABC評価に手を入れられるので,今後の活躍に合わせて修正を入れたり,コーエーの初期設定が気に入らない場合に自分で調整すればいいわけである。
 また,完全オリジナルの種牡馬を一から作ることもできるため,配合の楽しみ方は各プレイヤーの妄想と現実を交えて大きく拡大。いつの間にか複雑怪奇になってしまっていたものを,元来の「楽しいもの」へと回帰させた点は,これまたファインプレイといえるだろう。

 種牡馬だけでなく,登場人物達もエディット可能だ。調教師,ライバル馬主,牧場の能力データを調整して,今までのシリーズでは見たことのない新たな力関係を構築できるほか,完全オリジナルの新人ジョッキーを作成し,ゲーム内に登場させることもできる
 騎手エディットでは,細かい能力設定はもちろん,デビューから生涯一騎手として競馬人生を終えるか,もしくは途中で調教師に転身させるかといった,競馬人としてのスタートとゴールも設定可能。
 そしてゲーム中にその間を埋める,騎手育成という新たな楽しみ方もプラスされた。初期値がショボめの新人をGIジョッキーに育てるのも,デビューからパラメータ最高の騎手に鞍上を任せ続け,必勝戦術のコマとするのも,プレイヤーの自由。なお,追加された新イベントの中にはエディット新人を登場させないと見られないものもかなりある。有馬桜子や安田千六といった,シリーズを通じてお馴染みのキャラや,アンカツら新登場の実名キャラとの絡みにも要注目。

種牡馬カスタム 種牡馬エディット 牧場カスタム
 デフォルトの能力が気に入らなかったり,データにない種牡馬を登場させたりしたい場合は,エディット機能でグリグリ。
 馬だけでなく,人物データのカスタマイズもできてしまう。

 

新人デビュー 新イベント アンカツ
 生産馬の成長と同時に,新人騎手の成長を見守る楽しみも増えた。
 新登場の安藤勝己騎手などライバルは多いが,新イベントの追加などで,まだ見ぬドラマチックな展開も多い。

 


おまけに初代「Winning Post」体験版も同梱!

 番組は,ヨーロッパのBHBミドルディスタンスチャンピオンシップなど,2003年国内外の最新版に対応している

 ちなみに本体とパワーアップキットではセーブデータの互換性がなく,最初からプレイし直さなくてはならないが,データを引き継いで"大牧場2代目"タイプの馬主としてリスタートできるので,一からやり直す必要はない。
 大牧場2代目は,資金的/設備的に序盤からかなり有利なうえ,ひと口馬主のクラブ経営をやり直せ,さらにエディットで追加した種牡馬達の個人所有ができる馬主タイプで,プレイ年数はリセットされても内容としてはそれを補うだけの価値がある。またゲーム開始時には"EASY" "NORMAL" "HARD"の3段階で難易度を設定できるようになったため,今までの苦楽を振り返りつつ,新たな道を選ぶのも手だ。
 さらに今回は,「コーエー25周年記念パック Vol.6」(「Winning Post」「水滸伝・天命の誓い」「蒼き狼と 白き牝鹿・元朝秘史」)に収録されている初代Winning Postの体験版もおまけに付いてくる。これでノスタルジーに浸るのも,最新作との比較で「Winning Post」シリーズ歴史を探るのも,なかなかオツだと思う次第。

対戦シリーズ 一発勝負の新馬戦 府中も新しく
 国内外の番組は2003年のそれに対応。イギリスのBHBシリーズも導入されたほか,新馬戦も現実と同じくデビュー戦限定の一発勝負となった。
 東京コースの改装ももちろん反映されている。

 

定により,現実にいなくなってしまった馬達を種牡馬として再登場させることも可能。しかも繁殖入りの地域を問わないため,よりifの競馬史を広げられるように 強豪馬に「レース観戦」のチェックを入れておけば,その馬が出走したGIの結果などを見逃すことなく,昨今の競馬事情に置いてけぼりにされることもなくなる 最初に選べる馬主タイプに,「大規模牧場2代目タイプ」が追加された。これを選択すれば「Winning Post6」での成果を,ある程度「パワーアップキット」インストール後のプレイに引き継ぐことができるのだ
今となっては初めて見る人も多い? 初代「Winning Post」の体験版も同梱。旧作をエミュレータ本体と一体にして売り出すパターンは最近のはやり 左が初代,右が最新版。同じ東京の最終コーナーを回るところだが,さすがに時代を感じる。でも初代も遊び出すと,結構本気でハマったりなんかして

 

 

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■発売元:コーエー
■価格:5800円(with パワーアップキットは1万3800円)
■問い合わせ先:ユーザーサポート TEL 045-561-6861
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumII/333MHz以上(PentiumIII/700MHz以上推奨),メモリ128MB以上(推奨256MB以上),空きHDD容量 100MB以上(本体とは別。with パワーアップキットは計900MB以上必要),ビデオメモリ8MB以上のビデオカード(推奨16MB以上)
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