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戦略と戦術,両方の奥深さを追求した本格派RTS |
ウォリアーキングス バトル 日本語版 |
Text by Sluta |
28th Oct. 2004 |
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戦闘部分の重要さが際立つリアルタイムストラテジー
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ナレーションの英語はそのままに,テキスト部分が日本語化されている |
「ウォリアーキングス バトル」(以下,WKB)は,ヨーロッパ中世の世界観にファンタジー要素を加えた形の,オーソドックスなRTSだ。本作は「Warrior
Kings」(日本語版はサンソフトから発売)の続編で,基本システムやグラフィックスはそのままに,前作になかったスカーミッシュモードが搭載され,AI周りが強化されている。
WKBの特徴としてまず目を引くのが,いわゆる勢力や種族といったものはゲーム開始時点では存在せず,プレイヤーがゲーム中で建設する建物を選ぶ過程で選択していくという点。"インペリアル"(宗教的,信仰的),"ルネッサンス"(技術信奉的),"ペイガン"(異教的,原始的)の三つのタイプに加え,中間のハイブリッドである"インペリアル
- ルネッサンス"と"ペイガン - ルネッサンス"の,計5系統に分かれる。
攻撃力ではペイガンが一歩抜きん出ているが,ペイガンに対する強力な対抗手段を持ち防御力に優るインペリアル,そして経済力に優れ,近代兵器を駆使するルネッサンスというように,進化したあとの個性はハッキリと分かれる。インペリアル→ペイガン→ルネッサンス→インペリアルというように,三すくみの有利不利があるので,ハイブリッドな系統を選ぶことも含め,最終的にどの系統へと進化するかは,相手を見ながら選択していくのが最適の戦略となる。ただ,相手が進化するのを待ってからこちらが選ぶというのではその時点で一歩出遅れてしまうわけで,そこが非常に戦略的判断を要するところだ。
またWKBは,ほかのRTS以上に,ユニット同士の相性関係を強く設定している。具体的には「重騎兵は軽歩兵と軽騎兵に勝る」「重歩兵は重騎兵に勝る」「軽歩兵は重歩兵と軽騎兵に勝る」「軽騎兵は重歩兵に勝る」の四つで,とくに軽歩兵・軽騎兵は重騎兵に簡単に粉砕される。
地形効果や陣形効果も強調されており,プレイヤーの戦術センスがかなり要求されるシステムになっているのは間違いない。筆者は割と「内政で勝つ」プレイスタイルになりがちなのだが,経済力で大きく差をつけているはずの敵AIにかなり苦戦した。生産系のRTSの中でも,かなり戦闘重視のバランスといっていい。
プレイヤーの陣地は,「市内」と「郊外」の二つに大きく分かれる。「市内」は館を中心とした壁に囲まれた区域で,主に軍事施設や研究施設を建設していく。金を産出する商店も市内に建設する。「郊外」は村を中心とする資源産出拠点で,付近に農場を建設したり,木や石,金を採取したりする。
WKBの資源収集のルールは少々特別で,村に集めた資源はそのままでは使用できず,荷馬車に載せ,市内の館へと運び込むことによって初めて資源がストックされる。よって村から館の間をひっきりなしに荷馬車が往復するわけだが,このルートが補給路であり,生命線となるわけだ。なお,館や村は複数建設することができるが,すべての館が破壊されたら敗北となる。基本的な勝利への道は,この補給ルートを寸断するか,あるいは直接に館の破壊を目指すかという,二つである。
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インペリアルは,神の力を借りて戦える。防御に強い |
ペイガンは,数多くの悪魔を呼び出せる。攻撃力は随一 |
ルネッサンスは,先進技術を使えるほか,経済力に優れる |
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建設する建物を選択することにより,系統の進化をしていく |
地形効果は絶大。丘の上に陣取って射撃すればかなり有利 |
手前が館で,奥が村。この2地点を結ぶルートが補給ルート |
個性豊かなAI将軍により,リプレイ性が高いシングルプレイ
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キャンペーンは,スカーミッシュモードに連続性を持たせたような形式だ |
ゲームモードについて見ていこう。シングルプレイはチュートリアルとキャンペーン,スカーミッシュの3種。キャンペーンは,ヨーロッパをモチーフにしたと思われる仮想の世界オービスを舞台に,かつての都であったリグリエンシスという州の奪還を目指す。ストーリーもあるにはあるが,実際には,だんだんと難度が増していくスカーミッシュを連戦していくという感じだ。世界各地の新しい州を獲得するたびにボーナスが与えられ,初期資源が増加したり,より進んだ進化ができるようになる。
スカーミッシュモードは,一つのマップを選択し,自由なオプションで敵AIと戦うゲームモード。これは生産有りの通常モードと,あらかじめ選んだ軍隊のみで戦うヴァルハラモードの2種類がある。
WKBのシングルプレイについては,"AI将軍"のことを抜きにしては語れないだろう。WKBにおいては,敵AIは「初級」「中級」「上級」という単純な区分ではない。さまざまな個性を持ったAI将軍が数十人存在しており,彼らと対戦することになるのだ。AI将軍は「軍事
- 経済」「歩兵 - 騎兵」「外交頻度」「欲深さ」など14のパラメータを持っており,それぞれのパラメータの強弱で性格が決定されている。なお,WKBにはAI将軍エディタが付いていて,これら14種のパラメータを自由に設定してオリジナルのAI将軍を作成することも可能。この個性豊かなAI将軍達の存在により,シングルプレイのリプレイ性が高くなっているのは,高く評価したい部分だ。
ただしAIについてもう少し深く見てみると,兵の相性を衝いた攻撃や地形を生かした展開はなかなかうまく,密偵をうまく使ってくるなど嫌らしさは感じられるものの,特殊能力の使用や陣形の運用,内政などでは人間プレイヤーに遠く及ばない印象。ともあれ,AIに関しては水準以上の出来であることは確かだ。
マルチプレイは,GamespyかTCP/IP接続のいずれかで,スカーミッシュモードをプレイ可能だ。なおマルチプレイのみの特徴として,海戦が行える点と,キングピースモードという,敵の王の打倒が勝利条件となるモードがプレイできるという点が挙げられる。
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AI将軍のグラフィックスは,もうちょっとなんとかならなかったのかと思ってしまう…… |
本作のスカーミッシュモードは,ランダムマップではなく,既存のマップから選ぶ形式 |
生産要素のないヴァルハラモードでは,このように開始前に軍事ユニットを編成する |
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ヴァルハラモードでは,マップ上の旗を占領している時間を競い合って勝敗を決める |
チュートリアルは丁寧だが,序盤の解説しかしてくれない。中盤以降の説明が欲しい |
陣形は,縦,横,円,楔形の4種類。それぞれに長所/短所などの特性がある |
コアなRTSを求めるプレイヤーには挑戦の価値あり
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司教はインペリアルの最強ユニットで,五つの神の力を繰り出せる |
このように,ゲームの作りこみにはなかなか手が込んでいる本作ではあるが,グラフィックスに関しては2年以上前に発売された前作と同じということもあり,かなり古めかしい印象は拭えない。ただ,フル3Dグラフィックスで自由な視点移動ができるし,ユニットのアニメーションも凝っているので,どう感じるかは好みの問題だろう。しかし,ズームアウトした視点で見たときの,林や畑の中にいるユニットの視認性の悪さや,敵味方の区別のしづらさは気になった。
また,プレイヤーが操作する軍事ユニットの思考ルーチンの弱さも目立つ。陣形にしたときにぎこちない動きをする,すぐ近くで味方が攻撃されているのに反応しない,などである。内政は簡略されているので忙しくないが,戦闘部分ではユニットに細かく指示を与えてやらないと,うまく動いてくれない。マップは広大で,最大で一陣営あたり800ものユニットを操れるだけに,残念な部分である。
とはいえ,一人一人のユニットに実際に具体的指示を与えたくなってしまうほど,WKBのユニットは個性豊かで,多くの特殊能力を持つ。ユニットに与えられる命令は,合計で70種類にも及ぶ。中には「移動」「停止」「射撃中止」など基本的なものもあるが,それらを差し引いてもユニットが行使できる特殊能力は相当数に及ぶ。
WKBの醍醐味は,前述した進化時の選択や,ユニット間の相性や,豊富な特殊能力といった,プレイヤーが取れる選択肢の多さにこそあるといえる。かなり忙しい操作を要求されると同時に,よく考えることも要求される,かなりハードコアなRTSだが,グラフィックスや雰囲気ばかりのRTSとは正反対の本作は,腕に覚えのあるプレイヤーには挑戦のし甲斐があるのではないだろうか。
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司祭は悪魔祓いをすることができ,ペイガンのユニットに対して非常に強い |
聖騎士は攻撃以外に,ほかのユニットの耐久力を回復させる能力を持っている |
銃手は銃剣を装着させた場合に限り,重歩兵として使用できる。銃は使えなくなるが |
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ルネッサンスの最終兵器である遠投投石器。その射程はとてつもなく長い |
ペイガンのアーチドルイドは,マップ上にある資源からエレメンタルを召喚できる |
アバドンはペイガンの特殊ユニットで,地震を起こして手当たり次第に破壊を繰り返す |
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■問い合わせ先:セガPCユーザーサポートセンター TEL 0570-000-354
■価格:8190円(税込)
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