シミュレーション 4Gamer.net Review
 
広大な土地を走るミニチュア列車に心癒される瞬間
トランスポートジャイアント 日本語版
Text by 岩尾ゴワス
14th Oct. 2004


牧歌的な雰囲気を濃厚に漂わせる運輸SLG

2Dのクォータービューから都市や輸送機体を眺められる。3D描画やネットワーク対戦などの目新しい要素がないので古くさいイメージがあるが,逆に箱庭作成に特化したシステムは一種のすがすがしささえある

 時代の背景に合わせて牛馬や列車,船舶,飛行機などを使って輸送経路を構築し,資源を工場に,また人を都市に運びながらプレイヤー企業の資金を増やすというのが目的のこのゲーム。同系統のタイトルとしては「レイルロードタイクーン」や「トランスポートタイクーン」「A列車で行こう」などが挙げられるが,本作の特色は,鉄道時代以前の牛馬を使った時代からプレイができる点だ。また妙に3D表示にこだわったり,ライバル会社を蹴落とすことに全力を挙げたりといった要素を入れず(一応競合他社の設定もできるが,正直あまり気にならない),2Dのクォータービューで箱庭をいじる感覚を味わうことにシステムを特化させた点が,個人的には小気味よく思えた部分だった。ただ,このへんはガツガツとプレイをする人には少し物足りないところかもしれない。

 ゲームモードは,古い時代から新しい時代まで一連の流れをシナリオ別に楽しめる「キャンペーンモード」と,自分の好きな時代で都市と輸送手段の進化を見つめられる「エンドレスモード」の2種類がある。どちらも最初に遊ぶときは舞台を「USA」にするか「Europe」にするかを選べるが,USAは大地がメインとなるのに対しEuropeは海洋の比重がかなり高いのが特徴だ。
 輸送手段は「馬及びトラック」「列車」「船舶」「大型気球」「飛行機」「ヘリコプター」の六つに分類され,約150種類の輸送機体が登場する。大型気球などは完全に趣味の範疇で,実際の輸送には向かないのだが,そこは「牧歌的なイメージ」を漂わせる本作ならではの味わいの部分だから,「使えない機体でも使う」のが漢気というものだ。

自分の考える輸送手段に合わせて路線を作り,そのための輸送機体を購入する。機体の描き込みは緻密だ 輸送は馬車駅や列車駅といったターミナル間で行われる。目的の都市や生産拠点の付近に作ろう 列車駅は,拡張コマンドで接続路線を増やしていける。荷物の搬入拠点となる駅はどんどん拡張を行おう
ゲームには150種類に近い輸送機体が登場する。西部開拓時代に活躍した馬車から,より多くの乗客と荷物を搬送できる列車/船舶,空を飛ぶ大型気球や飛行機など実にさまざまだ。輸送の目的に合った機体を使うのが基本だが,このゲームは雰囲気を楽しむことも大事なので,あえてムダな輸送機体を使うのも潔い


キャンペーンもエンドレスものんびり楽しみたい!

ターミナルとターミナルをつなぐときは,どれだけ効率的に輸送機体を循環させられるかがポイント。搬入先で荷物を降ろしたあと別の荷物を積み,また別の搬入先に運ばせるといったようにムダのない搬送を心がけよう

 それではゲームの内容について触れてみたい。まずはキャンペーンモードについてだが,本作では最初に遊べるシナリオはUSAもEuropeも1本ずつとなっている。どちらもそのシナリオをクリアすることで,次のシナリオに挑戦できる形だ。キャンペーンではUSAを初心者向け,Europeを上級者向けという位置づけにしており,USAは馬車を使った材木の運搬という簡単なプロジェクトで始まるのに対し,Europeではオリンピックの開催場設営に必要な物資の運搬というハードルの高いものとなる。このゲームの全貌を把握するなら,馬車から始まって鉄道,船舶と一連の流れをつかめるUSAシナリオ7本をまず遊び,そのあと上位の輸送機体を使うことになるEuropeシナリオ7本に挑むのがベストだろう。
 一方のエンドレスモードは,USAとEurope合わせて40種類用意されたゲームマップの中で,自分の好きなマップと始める年代(1850〜2000年まで25年きざみで7パターン)や競合他社,難度などを選んで,あとは200年間好きに遊べるモード
 キャンペーンモードではプロジェクトミッションのクリアだけが目的なので,輸送手段の敷設は単一でもかまわないが,エンドレスモードでは都市を発展させることも楽しみの一つになる。その都市が必要とする物資を運び込むために資源→工場→都市のラインを考えて敷設したり,都市の住人の旅先など把握して輸送手段を構築する必要がある。当然,輸送手段は単一では賄えないので,場所に応じて馬車やトラック,列車,船舶などを絡めて施設しなければならない。
 こう書くと「うわーたいへん」という気がするかもしれないが,キャンペーンモードもエンドレスモードも基本的に「のんびり楽しむ」を主目的にしているので(筆者が勝手にそう考えているだけの可能性アリ),最初は難度を低めにして美しく描き込まれた大地や都市,そしてマップ上を愛らしく進む馬車や列車などを見て癒されるのが正しいプレイスタイルといえよう。

キャンペーンモードで最初に選べるシナリオは,USAとEuropeで各1本。それをクリアするとシナリオは増える キャンペーンモードではプレイ開始時にクリア目標が設定されるので,それを目指して輸送手段を考えよう プレイ中には新機体の登場イベントも発生する。ただし,新しい機体がそのときに必ず役に立つとは限らない
エンドレスモードでは,最初にプレイ年代やプレイマップが選べる。鉄道好きな人はUSAマップがよいかも クリア目的がないエンドレスモードでは,写真のように短い路線をチマチマ作って楽しむのもアリだ プレイ中にはさまざまなイベントも発生する。イベント内容に応じて輸送手段を変えるなど対応を考えよう



ゲームは面白いのにシステム的な不親切さが非常に残念

筆者がゲーム中でもっとも癒された瞬間。USAキャンペーンの「ゴールドラッシュ」で,金塊を満載した列車が愛らしく進んでゆく。ゲームシステムには相当不親切な部分が多いが,こういう楽しい要素は多いのだ

 この「トランスポートジャイアント」は,まさに癒しの要素をふんだんに持ったゲームといえる。キャンペーンモードはクリア目的もあるので,そうのんびりとはいかないかもしれないが,エンドレスモードでは広い大地のごく端っこで短い路線を作り列車の往復を眺めているだけでも,非常に楽しい。とかいいながら,筆者のお気に入りはUSAキャンペーンの「ゴールドラッシュ」だったりする。マップ最深部の大金鉱と都市をつなぎ,金塊を満載した貨物列車が峡谷を抜けて突き進むシーンが,非常に愛らしく楽しかった。

 ただし,本作をプレイするにあたってどうしても覚えておいてほしいこともある。それはこのゲームのインタフェースが「とんでもなく出来が悪い」ということだ。まず各機能がメニューのどこに格納されていて,どのボタンを押せば次の設定に進むのかといったことが,独特かつ複雑なうえ説明が極端に不足している。鉄道の路線を敷くにしても,起点と終点とクリックするだけでOKといった簡単設定の概念が「まったくない」のか,いちいち駅と駅の間隔を測りながら路線の敷く作業が「とんでもなく面倒くさい」のである。筆者のプレイ時にマニュアルがなかったせいもあるのだが,鉄道の路線をつなぐときは一筆書きの要領でなければ駅間をつなげないと思って大陸上に大環状線を築き,のちに「Enterキー」を押しながら駅を設置すれば必ずしも駅間をつなぐ必要はないことを知ってア然としたものだ。

 というか,基本的だが分かりにくい数々のインタフェースを教えてくれるチュートリアルが,なぜ存在しないのか理解に苦しむ。武器を使って敵と戦うだけのRPGすらチュートリアルで操作を教えるのが基本になっている昨今,このゲームの不親切さはどう評価したものだろう。筆者が漠然と考えるに,このゲームのシステムに慣れないあいだのストレスと癒しの比率を「ストレス9:癒し1」とするなら,慣れたときでも比率は「ストレス4:癒し6」程度だと見る。筆者のように「仕事」で意地でもシステムに慣れなければならない人種と異なり,ごく一般の人は慣れるのが面倒くさいと思ったらすぐにゲームを投げ出すであろうことを思うと,正直このタイトルは素人には諸手を挙げてオススメはしにくい。

 以前「ナイトシフト」のレビューを書いたときに触れたことだが,ライブドアは今後もっとユーザー寄りのローカライズを行ってもらいたい(チュートリアル機能を独自に追加するのは難しいだろうが)。この「トランスポートジャイアント」は,埋もれさせるにはもったいない素材なのだから。

キャンペーンのひとコマから。「馬車が動かない!」というときは馬車駅が路面に接していないということも 列車駅をつなげるときも,起点と終点から線を伸ばして中間付近で結ぶのが手堅い手段(手間はかかるが)。別ルート用の列車駅は「Enterキー」を押せば新規に作れることを筆者は偶然知ってキレそうになったことも
以上のほかにもゲームを遊んでいると不意に「橋が作れない!」「トンネルが作れない!」「路線が伸ばせない!」といった問題に直面することがある。これらは「資金不足」「路線上に障害がある」といった点で見直すと解決できることが多いが,建設できない理由を示してくれないのがこのゲームのもっとも不親切な部分だ

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■メーカー名:ライブドア
■発売日:2004年10月8日
■価格:8379円(税込)
■動作環境:Windows Me/2000/XP,PentiumIII/500MHz,メモリ64MB以上,空きHDD容量 1.2GB以上,DirectX 8.1以降
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