|
|
![]() |
| コースマップ表示,デジタルメーター,MPH表示など,好みに応じて表示設定を変えることも可能だ。だが,コースマップ表示は,見て分かるかもしれないが意外と使いにくい |
マイクロソフトが放つラリーシミュレーションゲーム「マイクロソフト ラリースポーツ チャレンジ」(以下,RSC)。Xbox版からの移植作となる本作だが,今年は元気がなかったPC版ラリーゲームだけに発売を待ち望んでいた人も多いはず。しかも発売はマイクロソフトであるが,開発はDigital Illusions(以下,DICE)が行っており,DICEといえば"Swedish Touring Car Championship","Rally Masters","Sports V8 Challenge"など良質のドライブゲームを開発してきたソフトハウスだけに期待できないわけがない。
公式サイトを始め,本サイト内の「こちら」などで既に多くのスクリーンショットが掲載されているので,グラフィックスは文句なしの出来映えなのはご存じの人も多いはず。登場車種はメーカー正式ライセンスを取得し,29台すべてをほぼ完璧に再現。古いラリーファンなら泣いて喜ぶ往年の名車も見事に再現している。さらにエンジンサウンドも実車サンプリングというこだわりようで,グラフィックスを見ただけでプレイしたくてウズウズしているラリーファンも多いことだろう。
RSCでは,ラリーゲームの多くで採用されているスペシャルステージ形式(規定区間をいかに速く走るかを競う)のラリーのほかに,"ラリークロス","ヒルクライム"という目新しいカテゴリも登場している。
ラリークロスは,「単なるアーケードモードじゃん」と誤解されてしまうことも多いのだが,ターマック(舗装路)とグラベル(未舗装路)が混在する"周回コース"で複数のマシンでレースをするという,実在するラリーカテゴリである。当然,並んでドリフト,ちょっとした接触なんて当たり前だ。日本でもJAF公認競技として盛んに開催されてはいるが,メインはヨーロッパ。こちらでは選手権として行われるほどの人気ぶりなのだ。
一方のヒルクライムは,簡単にいえば山登り。標高差が1000mもある山道(峠道)を,頂上目指して一気に駆け登る。使われるマシンはクラスにより分けられるが,アンリミテッドクラス(改造無制限)のマシンは車重1t以下,600〜1000馬力,巨大なダウンフォースを生み出すリアウィングを搭載しているというモンスターマシンだ。路面は急勾配で滑りやすいグラベルが多く,コース脇にはガードレールはなく,おまけに即崖になっているところがほとんどで,一つのミスが命取りとなる。勾配で先の見えないコーナーあり,ヘアピンの連続あり,ジャンプしたら着地地点に道がなかった……なんてことさえあり,大迫力のラリーカテゴリという意味で人気が高い。ヒルクライムを知らない人でも,"モンスター田嶋","ツインエンジンのカルタス","パイクスピーク"(パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム)という言葉は,ラリー好きの人ならば耳にしたことがあるはずだ。本作RSCでは,モンスター田嶋選手が使用する"SUZUKI
ESCUDE PP SPECIAL"が登場する。
![]() |
| "広大な砂漠"というイメージのサファリでも街並みの中を走るところもあり,同じレース内でさまざまに変わる風景が美しい |
メインとなるのは,レースに参加しポイントを稼いで上のクラスを目指す"キャリアモード"。ほかのラリーゲームのチャンピオンシップモードに相当するモードで,最下位のプロクラスからレースに参戦し,ポイントを稼いでエキスパート,クラシック,アンリミテッドへと上位クラスへ進んでいく。レースはいくつかのステージで構成される"イベント形式"で,すべてのステージを完走することにより,トップスピード,ラップタイム,マシンダメージなどでポイントを得ることができる。ポイントは合計ポイントに合算され,一定のポイントに達すると次のクラスへ進むことができるようになり,特定のイベントをクリアすると使用できなかったマシン,コースなどのロックが外れるという流れだ。
イベントはラリー,ラリークロス,アイスレース,ヒルクライムが混在しており,イベントごとにやり直しも可能なので,納得の行く結果が出るまで何度もプレイできるのは嬉しい。RSCでもマシン破損はリアルに再現されているが,"修復"という概念はなく,変わりにポイントに影響がでる。本物のラリーでは修復が重要な要素となるため,その概念がないというのは賛否両論意見があると思うが,マシンを壊さないように走るという点では同じことだといえるだろう。
キャリアモードのほかに,3台のライバルマシンと競い合う"シングルレース",タイムを刻むことだけに専念する"タイムアタック",LAN/インターネット上で4人までの対戦ができる"マルチプレイ"が用意されている。どのモードもコースは自由に選択できるようになっているが,キャリアモードの進行状況により使用できるマシン,コースに制限がある(マルチプレイでは,制限なしにすべてのマシン・コースが使える)。
マルチプレイ以外では走行終了後にリプレイを見ることができ,さまざまなカメラアングルで自分の走りを堪能できる。だが悲しいかな,リプレイを保存できないのだ。レースゲームのリプレイフェチ(きっと多いに違いない)としては,悲しい限りである。可能であればマルチプレイでのリプレイのサポート,リプレイ保存機能はパッチなどで追加してほしいところだ。
![]() |
| ヒルクライムでは,コース脇が崖というところが多々ある。しかも勾配で先が見えないこともあり,ジャンプしたら谷底へ…… |
ドライブモデル(挙動)については,久しぶりにマシンを思い切り振り回せるラリーゲームが登場したといってもいいだろう。"走らせるのが楽しい挙動"というのがピッタリで,ステアリング,アクセルコントロールでリアを流し,カウンターを当ててコーナーから立ち上がる……というラリー基本ドライブは当然のこと,アクセルオフからのドリフト,フェイントを使った荷重移動からのドリフト,アンダーステア時のタイヤのグリップ回復などさまざまなテクニックを使い,プロドライバー顔負けのドライビングを手軽に楽しめるところが嬉しい。さすがに,初めてラリーゲームをプレイするという人が最初から思い通りにマシンコントロールするということは難しいかもしれないが,下位クラスのマシンで何度か走れば次第にコツがつかめてくるはずだ。駆動方式,マシン特性,路面,セッティング(タイヤ,サスペンション,ギアレシオ,パワーレシオ,ブレーキバランス,ハンドルなど)などもキチンと再現され,さまざまな違いがマシン挙動に反映されている。マシン破損に関してはボロボロになっても挙動などに違いが感じられなかったのが,前述した修復も含めて残念なところだ。
全体的にアーケード寄りの挙動といえなくもないが,シミュレーション要素も含みつつ手軽にマシンコントロールを楽しむことのできる,そんなドライブモデルになっている。しかし,手軽に……といっても決して初心者向けだといえないのは,キャリアモードで経験を積んで上位クラスのマシン,コースが使えるようになった時だ。上位クラスともなるとレースではAIカーも速くなり,簡単に優勝させてくれるほど甘くはない。しかも同じレベルのマシンを使わなければ,いくら頑張ってコースを攻めもタイム差は歴然,気合いばかりの最後尾……という結果になる。それなら同じレベルのマシンを使えばいいということになるが,上位クラスのマシンは腕前に自信のあるラリーゲーマーとて簡単に扱える代物ではないということを断言しておく。とくにアンリミテッドクラスのマシンはストレートでさえ真っ直ぐ走らせるのがやっと……「ホントにこ
![]() |
| マシン選択画面では,スペックを見ることができる。スピード,ハンドリング,加速によってマシン特性に違いがでるので,参考にするとよい |
んなマシンを操っているの?」というレベルである。
ドライブモデルと共に面白さを引き立てているのがコースレイアウトだ。周回コースのラリークロス,アイスレースは単調なコーナーの組み合わせになってしまうのは仕方がないとして,"ウリ"でもあるラリーモード,ヒルクライムについては,コースレイアウトが実に良く計算されている。ラリーモードではグラベルメインのSAFARI,マッド(泥濘)メインのPACIFIC,ターマックメインのMEDITERRANEANと大きく分けられ,それぞれに特徴を持たせるように作られている。さまざまに変わる路面変化,コース内外の起伏(うねり)で乱れる挙動,コース脇には木々や岩肌が立ち並び,一瞬のミスで大きくタイムを落とすことになる。スピード感がかなりあるので,思わずアクセルを緩めたくなる衝動に駆られてしまうこともたびたび。やり甲斐があり,難しいけど熱くなれるコースが全48コースも用意されている。
ドライブモデル,コースなど良いものが揃っているだけに,残念なのがフォースフィードバックの再現だ。路面がグラベルだろうがアイスバーンだろうが,ステアリングから伝わってくる振動,操作感はほぼ同じといってよく,轍や雪にタイヤを取られるとステアリングが重くなったりすることもない。このあたりは,さすがにもうちょっと頑張って欲しかったところだ。
それと,好みの分かれるのが"コースアウト時の処理"だろう。大きくコースアウトしてしまうと"強制復帰"となり,自動的にコース内に戻されてしまう。コースアウトしてもコース以外の部分を走り続けられるラリーゲームが多い中,もうちょっと走らせてくれ!! と思えるところがたびたびあった。当然ショートカット時にも適用されるので,大きくショートカットしてしまうと,あらら,ダメか……なんてことになる。自分でマシンをコース上に戻す機能(リセット機能)が付いているのだから,もう少し自由度を持たせてくれてもいいんじゃないかな,と思った次第。
![]() |
| 名車LANCIA DELTA S4。注目したいのは破損の再現度。左側中央を軽くぶつけているが,よく見ると左側のエキゾーストパイプも少し曲がっている…… |
本作のマルチプレイは,LAN/インターネット回線を使って"4人まで"遊べる。Swedish Touring Car Championship,Rally
Mastersなどで定評のあるマルチプレイを実現しているDICEというだけあり,接続やゲーム中の安定度(切断,ラグなど)は抜群だ。マルチプレイを選択すると,ゲーム内ではなくデスクトップに戻り,専用のロビーサーバーが起動する。チャットはロビーでのみ可能で,日本語も問題なく使用できる。マルチプレイではキャリアモードの進行状況とは関係なしにすべてのマシンを選択することができるので,相手がどのマシンを選んだかはゲームが始まらないと分からない。マシンにより,タイム差が大きく開いてしまう場合もあり,事前にチャットで使用するマシンのクラスなどを決めておいたほうが,より熱いバトルを楽しむことができるだろう。
先行するマシンがコースアウトして残していった看板などがコース上に残っていたり,前方のマシンがリアのコントロールを失って崖下にすっ飛んでいくのが見えたり,ぶつけて崖下に押し出すなども可能で,かなり盛り上がることになるだろう。どちらかといえばワイワイと騒ぎながら走り回るというプレイスタイルのほうがいいのではないだろうか。なお,コリジョン(当たり判定)はOFFにすることもできるので,純粋にタイム争いをしたい場合に使うと良いだろう。
リアルにモデリングされたマシン,マシンごとにサンプリングされたエンジン音,美しく変わる風景,遠方の風景からコース脇のオブジェクトまで細かく描き込まれ,誰でもマシンを振り回すことのできる挙動,良く考えられたコースレイアウトなど,トータルバランスが取れているラリーゲームだ。とりわけ,アーケードライクなものを好む人に強くお勧めしたい。逆に,コテコテのシミュレータ好みの人には受け入れがたい部分も多いが,"アーケードゲーム"と割り切ってプレイすれば十分に楽しめる。
ドリフトをコントロールし,ラリースポーツを存分に楽しむことができる味付け,そして取得ポイントでさらに上のレベルがプレイできるようになるなど,やる気にさせる仕上がりになっている。馴染みの少ないラリークロス,ヒルクライムをぜひプレイして,WRCとは違ったラリースポーツに挑戦(チャレンジ)して,今までのラリーゲームとは一味違うラリーの世界に浸っていただきたい。
最後に。
今回のレビューではグラフィックスに関してとくに触れなかったが,スクリーンショットを見てもらえれば分かるように,ドライブゲーム最高峰といっても良いグラフィックスとなっている。当然それと引き替えに比較的ハイスペックなPC環境を要求しているので,「自分のPCではどのくらい動くの?」という人は,まずは当サイト内「こちら」で日本語体験版をダウンロードして試してみてほしい。フレームレートが操作感にも影響を与えるドライブゲームだけに,ゲーム内容を確認すると共に,どの程度キチンと動くのかも確認しておきたいところだ。
|
■発売元:マイクロソフト (c) 2002 Microsoft Corporation. All rights reserved. |
![]()