シミュレーション 4Gamer.net Review
 
「レインボーシックス3」初の拡張パック,待望の日本語版

レインボーシックス3 アテナソード
完全日本語版

Text by 松本隆一
9th Nov. 2004


超エリート対テロ精鋭特殊秘密部隊レインボー
誰でもその隊員になれるのだから夢のような話

特殊部隊アクションの代名詞といってもいいほどポピュラーな,「レインボーシックス」シリーズ最新作に期待の拡張パックが登場。新たなミッション,新たなマルチプレイモードなど,見逃すわけにはいかない内容だ

 国際社会に吹き荒れる,テロの嵐。それに対抗すべく,各国の特殊部隊から精鋭を選りすぐって組織した超エリート対テロ部隊が"レインボー"だ。決して,6人組の戦隊もので,レインボー・イエローはカレー好き,レインボー・ピンクとレインボー・ブラックは私生活でもできているとか,そういう話ではないから要注意。
 このシリーズは,ポリティカル・フィクションを得意とする人気作家トム・クランシーが立ち上げたゲーム会社Red Storm Entertainmentから,1998年に発売されたゲーム「Rainbow Six」が元祖。同時に上梓された小説「レインボー・シックス」は,全米でベストセラーになった。いろいろ調べたのだが,小説の設定をベースにゲームのシナリオが書かれたのか,ゲームの設定を小説化したのか,はっきりしない。まあ,それほどの"ゲーム大好きおじさん"トム・クランシー入魂のゲームである,ということなのだ。

 翌年にはさっそく続編の「Rainbow Six 2:Rogue Spear」が登場し,2003年になると4年ぶりのシリーズ最新作「Rainbow Six 3:Raven Shield」が発売されている。コンシューマにも移植されており,レインボー部隊は人気ゲームシリーズなのである。
 それぞれの作品にはいくつかの拡張パックや追加ミッションなどが出ているが,今回紹介する「レインボーシックス3 アテナソード 完全日本語版」は,ユービーアイソフトから昨年リリースされた「レインボーシックス3 レイブンシールド 完全日本語版」拡張パックだ。レイブンシールドで取り除いたはずのネオ・ファシストのテロリストが,まだ生き残っていてこっそり悪事を企んでいた,という設定で,新キャンペーン(8ミッション)と5種類のマルチプレイモードなどが追加されている。
 ちなみにこの日本語版,ムービーシーンの吹き替えを含めてほぼ完全に日本語化されていて,非常に感動的(画面に登場する新聞の見出しまではできなかったようだが……)。筆者は英語には困ってないつもりでいたが,これをプレイしてみて,自分が話の半分ほどしか理解していないことを知り,かなり照れくさい。セリフも格好良く,気合入ってます。

 関係ないけど,トム・クランシーシリーズはどうしてこうサブタイトルが格好いいのだろうか。「ローグスピア」とか「アテナソード」とか,シリーズは違うけど「パンドラトゥモロー」とか,いかにもクールでやる気が出てくるじゃありませんか。

レインボーシックスとは,このジョン・クラーク隊長のコードネーム。ちなみに,副隊長はレインボーファイブ 状況説明画面。ストーリーはとくに作戦には関係ないが,いつもながら最新国際情勢を反映した内容が大人っぽい 選べる武器類は60種類以上。ただし一人が持ち歩けるのはメインとサブの二種類。敵の落とした銃は拾って使えない
突入プランをここで作成する。細心かつ大胆に作戦を立て,それを頭に叩き込め。私には無理だったが,皆は叩き込め 突入開始。左端にある丸い中継点を次々に踏んでいけば,プラン通りに移動できる。たまに見失うのは私だけか 敵の位置は毎回微妙に変化するので注意が必要だ。本物の突入作戦だったら,二度とやり直しはきかないのだぞ


綿密なプランを立て,最新鋭の兵器を駆使して
奴らを倒せ! にしても敵は強いなあ

アルファ,ゴーゴーゴー! 照明を撃って暗闇を作ったりはできないが,グラフィックスや人物のモデリングはとくに不満のないレベル。マップは結構広く,思わぬところから撃たれたりするので,かなり緊張する

 ゲームシステムは,単純なアクションではなくストラテジーの要素も多く含んだ個性的なものだ。プレイヤーは,自ら突入して敵を倒すだけではなく,最大で3チーム8人からなる部隊に次々に命令を与えて,エリア内のテロリストを制圧する。とはいえ,マップは非常に広く,各チームはいろんな場所から突入するので,直接マウスを当てて命令を下すのは無理。そこで重要になるのが突入プランである。
 プランニングフェーズでは,マップを見ながら突入場所,移動経路,チーム編成,使用火器などを非常に細かく設定でき,プレイヤー以外の隊員達はそのプランに従って行動するわけだ。途中いくつかの待機場所を設定し,次の行動へ移るときに,プレイヤーからの「ゴーコード」を待たせておける。これにより,同じ部屋に多方向から突入する「同時並行侵入」などが可能になるのだ。また,プレイヤーは特定の隊員だけを演じるわけではなく,キー操作で好きなチーム,隊員を次々にアクティブにすることができる。操作している隊員がうっかり撃ち倒されても,別の隊員となって作戦を続行できるという寸法だ。
 このプランニングが楽しい,という人も多いようだ。時間をかけてベストプランを立て,あとは「観戦モード」で事態の成り行きを楽しみ(「ゴーコード」は出せる)クラーク気分を味わうのだとか。アクション要素を完全に排した,シミュレーションゲーム感覚である。

 とはいえ,病的な方向音痴である筆者は,いつもここでつっかえる。経路だけではなくタイミングの取り方も重要だし,建物が多層階構造だと,自慢じゃないがマップの上でさえ自分がどこにいるのだか分からない。しかし,そういう困った人のためにはあらかじめお手本プランが用意されているので,それをそのままロードして使ったり,適宜改良して使用すればいいのである。どうもありがとう。また進入経路に沿って,その場所がどういう景色なのかカメラで見ることもできるので,そうした情報を十分頭に叩き込んでおくべきである。でも,あれ,ここどこ?

 それではメインであるアクション(シューティング)部分のお話に移ろう。はっきりいって,ゲームの難度はとても高い。急所をヒットされれば即死だし,ケガをしても,移動速度などに制限が加えられる。しかも体力回復アイテムはなく,作戦途中でのセーブもできないので,ぬるさに定評のある私は緊張の連続。マップは広く構造は複雑で,しかも敵の数も多いため,味方がバタバタ倒れて最初はかなりぶったまげるだろう。少なくとも私はたまげた。
 基本的にAI対AIの撃ち合いが多く,味方が強すぎるとプレイヤーの出番がなくなるので,こういうゲームバランスになったと思う。だが気がつくと自分一人になっていたり,小説では重要な役柄のディング・シャベスまでが「マンダウン!」で,あっさり死んだりして,なるほど対テロ特殊作戦の世界は冷酷だ。隊員が死亡すると当然次のマップでは使えないので,筆者のように終いにゃ「アサルト予備」隊員ばっかりじゃん! てなことにならないためにも,隊員の損耗には気をつけたい。
 しかしながら,前作までに比べてAIの出来はかなりいい。鍛えられた特殊部隊員らしく動作は敏捷だし腕は立つし,私が見つけられない敵をバリバリと倒してくれたりと,使い方を間違えなければ役に立つ連中だ。あんまり融通が利かないところがちょっと問題だが。幸いなことに,各ミッションは長くても20分かからない。このさい,仲間と人質を何度も何度も何度も犠牲にして練習を積むしかないのだ。

 また,閃光手榴弾,ハートビートセンサー,ナイトビジョンなどのハイテク機器を使いこなしてテロリストを無力化していくのも楽しい。金と技術に物をいわせろというわけですな。「スムース姿勢移動」など,前作までにはなかった動作を使えばより効率的に作戦を進められるので,「私は絶対にトレーニングはしない!」という信念がある人以外,レイブンシールドのほうにあるトレーニングミッションで新しい動きを習得しておくべきだ。サボって後悔した私が言うのだから間違いない。

スコープへは小気味良く切り替わるので,使いやすい。敵がこちらを見つける前に撃ち込むのが基本だと思う 人質がいる場合,連れていくか置いていくかを選べる。人質救出任務では当然,人質を殺されては負けだ アクションキーを押し続けると,このクイックオーダーインタフェースが呼び出され,簡単に命令が下せる
予定された回収地点まで人質を連れ戻れば,作戦成功だ。フラッシュやサイレンサを使って静かに行動しよう 暗いところでは暗視ゴーグルが便利だが,視界が狭まり,また画面が荒くて見にくくなる。かなりリアルっぽい タイムアタックのミッションもある。目的地を把握することと素早い制圧が必要とされ,難度はまた一つ上がる



マルチプレイにはAIをしのぐ猛者どもが集結
ぜひ仲間を作って殴り込みたい

アテナソードでは,5種類ものマルチプレイモードが追加された。マルチでは,協調するにしても敵対するにしても,AIとはまったく違う戦い方を要求される。だが人間相手に戦うのはやはり面白い。負けると倍は悔しいが

 レイブンシールドと連続してプレイしてみるだけで,グラフィックスは改善されているのがよく分かる。テクスチャも細かくなり,家の造りやオブジェクトなど,南欧の雰囲気が良く出ている。行ったことはないが。
 人物のモデリングは普通の部類だが,それだけによく動き,推奨環境(記事末参照)を満たしていれば,まずストレスは感じないだろう。倒されるときの人間の動きには物理計算が行われているようで,敵テロリストは(ときには味方も)なかなかいい「やられっぷり」を見せてくれる。弾着は結構派手だし,味方がそのつど「敵を倒した」と言ってくれるので,分かりやすい。

 さて,シングルが終われば,次はお楽しみのマルチプレイである。マルチプレイには,これまでのゲームタイプに加え「敵対テロリストハント」「カウントダウン」「カミカゼ」など新たに5種類も加えられており,遊びでがある。いろいろやってみたが,やはり誰も来ないときは一人でも遊べるテロリストハントが面白く(マルチプレイの意味がないが),それ用のサーバーも多いようだ。頼りにならないAIの味方より,人間と協力したほうが当然楽しい。とはいえ,私自身はかなり最初のほうで撃ち倒されることが多く,ラウンドが終わるまで幽霊のように背後から観戦モードで仲間を温かく見守る,というケースが多いような気がするが,気にしないことにしよう。どうもすいません。

 参加人数が少なめ(最大で16人だが,もっと少ないサーバーが多いみたい)なので,やはりチームなり仲間なりを作り,現実のサバイバルゲームのように協調したプレイを心がけないと,やられてばかりで面白くないだろう。お互いに「ディング」とか「ハイダー」などと呼び合うと,マニアならさらに雰囲気が高まるのではないでだろうか。

 というわけで,特殊部隊ものがお好きならプレイする価値のある一本といえる。実をいうと,私も特殊部隊好きのはしくれとして初代「レインボーシックス」と「ローグスピア」をプレイした経験があるのだが,結局,難しくて終わらせられなかったという悲しい記憶がある。今回は,難度こそさほど違わないものの,細かいところがいろいろ親切になっているので,なんとかクリアできたのだ。もし,同じ苦い経験をお持ちの人がいるなら,今度こそテロリストを叩きのめす良いチャンスですよ。

撃たれたので,ラウンドが終わるまで仲間の戦いぶりを観戦モードで見る。私の場合,この時間帯が長いような 「敵対テロリストハント」では,敵は人間とAIの両方。やはり人間のほうが手強いような気がするが,AIも侮れず ヘッドショットはいつでも有効。撃たれたときのモーションはそのつど違っていて,見ていてなかなか楽しい
敵AIは銃撃だけでなく,手榴弾を投げてくるなどなかなか小技も利かせる。だが,距離を取っておけばこっちのもの 一発でも撃たれればほぼお終いなので,マルチの緊張感はキツい。でも,こんなに倒してやった。エラいぞ,自分 こちらは爆弾を守り,爆発を止めようとやってくる敵と戦うというマルチモード。戦略はいろいろ考えられよう


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■メーカー名:ユービーアイソフト
■価格:価格:5040円(税込),本体とのセットはオープン
■発売:2004年10月15日
■問い合わせ先:TEL 0570-040-401(祝祭日を除く月〜金 10〜18時)
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/800MHz以上(1.3GHz以上推奨),メモリ 128MB以上(512MB以上推奨),空きHDD容量 1.6GB以上,32MB以上のメモリを搭載したビデオカード(128MB以上推奨),DirectX 8.1以降
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