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ラリーゲームではなく,ラリーシミュレータと呼べる作品が現れた |
Richard Burns Rally (U.K.版) |
Text by UHAUHA |
26th Nov. 2004 |
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「この秋の大型ラリーシム3タイトル比較レビュー」は,「こちら」
マニアをも唸らせる"硬派"なラリーシミュレータが登場
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簡単に見えるコーナーですら,しっかり速度を落として車の動きを確かめつつ攻めなければ,いとも簡単にコースアウトしてしまう。ラリーカーの挙動のみならず,さまざまなところにリアルさを追求したラリーシミュレータだ |
今回紹介する「Richard Burns Rally」は,2001年世界ラリー選手権(WRC)を制したリチャード・バーンズが監修するラリーゲームだ。バーンズは今年2004年はスバルから参戦することが決まっていたが,2003年シーズン途中で病気療養(脳腫瘍)のため一線から退いている。
そのバーンズの名を冠した本作は,ラリーゲームというよりは,「Grand Prix Legends」や"NASCAR Racingシリーズ"などと同類のコテコテのシミュレータと呼ぶに相応しい仕上がり。シミュレーション要素を好むPCゲーマーにとっては,待ちに待ったラリーシミュレータの登場といえる。今回はそのへんのことを重点的に見ていくことにしよう。
ゲームモードは,本作をプレイするうえで必要な走行テクニックを身に付けられる"Rally School",登場するすべてのコースとラリーカーを使い自由に走れる"Quick Rally",ライバル達と各国を転戦してチャンピオンシップを戦う"Rally Season",最大4人のプレイヤーと交代制でラリーを楽しめる"Multiplayer",七つのステージでRichard Burnsとタイムを競い合う"Richard Burns Challenge"の5種が搭載されている。
ステージはUSA,Great Britain,Finland,France,Japan,Australiaの6か国それぞれに6ステージで,合計36ステージが用意され,日本は2004年WRC初開催となった北海道が舞台となる。
本作はキーボードやゲームパッドでは満足にプレイできず,ステアリングが必須だ。ちなみに筆者は"メーカー動作保証外"だがPlayStaion2のGT FORCE Proを使用しており,Logitech製ドライバを使えば動作する。使用感も素晴らしいのでお勧め。マイクロソフトサイドワインダーホイールでも問題なく動作するので,ご安心を。
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収録されたラリーカーは少なく,モデリングも2004年レベルではないが,それよりも挙動を楽しむのが本作のスタイル |
お勧めの3Dナビゲーション機能。コ・ドライバーとは別にステージ上にコーナーや轍の場所を表示してくれる |
最初からすべてのラリーカーは使えず,ゲームモードをこなしていくとロックが外れるという,お決まりの仕様 |
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Japanは2004年ラリー・ジャパンの熱が冷めやらぬ北海道が舞台。狭くバンピーなグラベルを攻め続けろ |
道幅も広いUSAのステージ。滑りやすいうえに"うねり"で挙動を乱すので,アクセル全開のままでは走れない |
雪上ステージは滑りやすいが,路肩に積もっている雪をうまく使うと気持ち良くラリーカーを振り回せる |
車体の動きを感じ取りコントロールしろ! こだわりの挙動再現
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コーナーの立ち上がりで4本のタイヤが路面をかいて,ラリーカーを前に押し出していることを体感できる。とくにリプレイではラリーカーの挙動が忠実に再現されていることがよく分かる |
グラフィックスに関しては,正直2004年レベルとはいえないクオリティだが,本作の本質は静止画ではなく動きにある。RBRの神髄というべきマシン挙動は,一言でいえば"不自然な補正のない,理に適った挙動"だ。アクセルを踏み込んだ瞬間から,4本のタイヤが回転して車を移動させているのを感じ取れるところが素晴らしい。挙動はタイヤの状態を基準に作り出されており,ハンドルを操舵したときに路面状態やそれぞれのタイヤにかかる荷重や摩擦度を計算することで,車の進むべき方向を導き出している印象だ。
またタイヤが温まるまではグリップ力が低く,ブレーキがロックしやすくなり,ステージ後半になるとタイヤが摩耗してグリップ力が低下するなんてところまで再現されている。タイヤの状態を感じ取りつつ,それに合わせてハンドル/アクセル/ブレーキをコントロールできるようになると俄然面白くなってくる。
挙動を生み出すのはタイヤだけではない。セッティングも当然非常に重要なファクターとなっている。Differential,Suspension,Tires,Brakes,Gearsを調整することができるのだが,Suspension一つ見ても,Dampers,Springs,Geometry Front,Geometry Rear,Rollbar/Steeringの項目があり,足回りなどは4本それぞれを細かく調整が可能となっている。
重要なのがDifferential(デフギア)の調整だ。タイヤの回転差を補うLSDを電子的に制御するアクティブLSDの調整で,ブレーキング時にはデフをロック,コーナー進入時にフリー,加速時に再びロックといった前後のデフ調整のほか,センターデフの調整やトルク配分まで調整できるのが素晴らしく,ドライビングスタイルに合わせて調整をすれば旋回性能や加速性能を高められる。とはいえ,各項目ともmm単位,0.1°単位での調整とマニアックな仕様なので,それなりの知識は必要となり,かなりコアなレースシムプレイヤーでさえ,おいそれとは手出しできないだろう。
本物に忠実な挙動だけに,いきなりほかのモードをプレイしようとすると「Schoolをやってないぞ」(意訳)と怒られてしまう。まずはRally Schoolで必要なテクニックを習得しておくべきだ。Rally Schoolには基本編のBasic Driving(6課目)と応用編のAdvanced Technique(11課目)があり,ライン取りと速度,アクセルオフによる荷重移動,パワースライドなどの課目が用意されている。
それぞれの課目には課題が用意されており,左足ブレーキの課目ではコーナー進入時110km/h,ハンドブレーキ使用不可,アクセルを踏んだ状態でブレーキを使用する,といった課題をクリアする必要がある。また制限時間も設けてあり,例えば19s - Pass,17s - Perfectという場合には19秒以内で走れば課目クリアとなるが,狙っていきたいのがPerfectの17秒以内。すべての課目をPerfectでクリアできれば,必要なテクニックは身に付いているはずだ。とくにSchoolコースを80秒以内(Perfect)で走り切るという最後の課題は,何度もプレイしたくなるほど燃えるうえ,必要なテクニックをすべて使うので,純粋にお勧めだ。
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ただでさえ難しい北海道。雨ともなると難しさは倍増する。天候や路面状況に合わせてコントロールすべし |
マシンセッティング項目はかなりマニアック。知識がないと,どこをどう調整していいのか分からない |
クネクネとしたステージでは,ステアリングを切り過ぎるとスピンする。路肩を使って直線的に抜けよう |
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タイヤの接地感が素晴らしいため,登りから下りに変わるときなどスッーと重力が抜ける感覚を味わえる |
スクールでは課目ごとに課題やタイムがある。デモ走行も見てから挑戦だ。Perfectタイムを目指そう |
スクールではタイムはクリアしても,課題をクリアできなければ意味がない。悪かった点をチェックしよう |
難しい中にある面白さがたまらない!
ラリーファンならやらなくてどうする?
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フィニッシュ地点(赤いボード)でタイム計測は終了し,その先にある計測タイムを記入してもらうストップコントロール(赤字にSTOP)まで走らせればステージは終了。こんなところまで再現している
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リアリティを感じるのは挙動だけではない。Rally Seasonでは実際のWRCと同様3日間3レグ制が再現されるうえ,時間が"リアルタイム"で流れている。レッキ(下見走行)などもあるため,本当にラリーに参戦しているようで面白い。またWRCと同様,前ステージのタイム(遅い順)により次々にスタートする。早くスタートする場合,路面上に多くの砂利が浮いておりタイヤはグリップは得られず,逆にスタート順が遅ければ比較的綺麗になった路面を走れるため有利になる。このスタート順による路面状況の違いが再現されており,良い状況でスタートをするには常に上位タイムを叩き出しておく必要があるのだ。遂にここまでシミュレートするラリーゲームが出てきたのである。
ラリーゲームに欠かせないダメージ再現は,ボディが凹んだりするのは当然のこと,車体の各所に受けるダメージが緻密に計算されており,例えばエンジンの吹けが悪くなるなど,ダメージの大きい部位により挙動に変化が現れる。挙動のところでも触れたが,足回りにダメージを受けたときなど,どの車軸にどれだけのダメージを負ったかで挙動変化が顕著に現れるあたりは「しっかりダメージをシミュレートしているんだなぁ」と痛感させられる。
またRally Seasonでは,サービスエリアに戻ったときにリペア(修理)が必要となるが,前述したとおり時間がリアルタイムに進んでおり,それはサービスエリアも同様。「どこを直そうか」などノンビリと考えている暇はなく,ここではメカニックの苦悩を味わうことになるのだ。
ザッと本作の特徴的な部分を見てきたが,"ゲーム"と思わせる要素は一切なく,「ラリーシミュレータ」と呼ぶのがピッタリというのがお分かりいただけただろうか。本作をプレイしてしまうと,これまでリアルだと言ってきたラリーシムすら"ゲーム"っぽく感じてしまうかもしれない。コアなラリーゲームファンの中にも難しいと感じる人は多いと思うが,プレイするたびに腕が上がっていくのが分かり,難しさの中にも気持ちいい面白さがあるのが本作の魅力だろう。
本作をプレイすればラリードライバーの凄さを体感でき,プレイしたあとにはジットリと汗をかいてしまうこともしばしば……。まさに過酷なラリーの本質を味わうには持ってこいの1本だ。
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Rally Seasonでは,時間がリアルタイムに流れている。時間の許す限りレッキでステージを下見しておこう |
横転したりコースアウトしたりして脱出できなくなったら,ギャラリーに助けてもらおう。ちょっとだけ粋な演出
| サービスエリアでもリアルタイムに時間は流れる。Manager Adviceを選べば,重要修理箇所を選択してくれる |
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スタート順による路面状況の違いが再現されている。ちなみに左がトップスタート,右が最後スタート
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ここまで壊れると,時間内で完全に修理するのは不可能だ |
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■メーカー名:SCi
■価格:49.99ドル(オーバートップ価格:4980円)
■発売:2004年9月3日(海外のみ)
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,CPU 1.6GHz以上(2GHz以上推奨),メモリ 256MB(512MB以上推奨),HDD空き容量 3.1GB以上,VRAM64MB以上のビデオカード(VRAM128MB以上のNVIDIA GeForce FX 5600またはATI RADEON 9800以降推奨),サウンドカード EAX Advanced HD compatible sound card推奨,ゲームデバイス Logitech MOMO Racing Force Feedback Wheel推奨
■デモ版
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