シミュレーション 4Gamer.net Review
 
死闘の太平洋戦争を生き抜け! ドラマチックFPS,シリーズ最新作いよいよ発売

メダル オブ オナー パシフィック アサルト

Text by 虎武須(Kobs)
15th Nov. 2004


前作と大きく変化したシリーズ最新作

平穏な真珠湾を突如襲った零戦の大群。反撃の手段はないのか?

 「メダル オブ オナー パシフィック アサルト」(以下,MoHPA)は,第二次世界大戦時の太平洋戦争を題材としたミリタリーFPSで,エレクトリック・アーツ(EA)から11月25日に日本語版が発売予定となっている。一応は,2002年初頭に発売され,さらに2本の拡張パックがリリースされた「メダル オブ オナー アライド アサルト」(以下,MoHAA)のシリーズ続編となっているが,さまざまな部分でかなりの変化があるので,前シリーズのノリをMoHPAに求めないほうがいいかもしれない。

 何よりも前作と変わったのは,ゲームの設定がややリアル志向へと移行した点だ。MoHAAといえば,コンシューマゲームばりのランボースタイルで撃ちまくりの爽快感を楽しめるゲームだった。ところがMoHPAでは,ミッションは部隊での行動が基本であり,部隊への簡単な指示も出せるようになっているため,慎重な行動が要求される。ステルス性を重視したミッション設定が多く,さらに体力を回復するにも,ヘルスパックの数が非常に制限されており,主に部隊の衛生兵による治療によるものとなったため,前作のように突撃して撃ちまくりというスタイルが好きなプレイヤーには少々厳しい内容となっている。

菊紋を船首に掲げた帝国海軍の空母が徐々に真珠湾に接近する 平和な日曜日の朝焼けに向かって飛び立つ無数の零戦部隊。綺麗だけに恐ろしいシーン 開戦前だったアメリカは,機影をレーダーで察知しつつも空襲と気づかなかった
沈没する戦艦アリゾナ。現在もハワイ(オアフ島)の真珠湾に眠っている ボートの機銃で撃ち落とせたとしても敵の数が多すぎる。一体どうする? 新エンジンで描画された兵士。表情も豊かで,テクスチャもハイクオリティ


凄すぎる臨場感:QuakeIII Arenaエンジンはまだまだいける!?

奇声をあげながら大挙押し寄せる日本兵。ゲームとはいえ恐怖を感じる

 FPSで常に話題となるエンジンは,「QuakeIII Arena」のエンジンをEA自ら徹底的にチューンナップしてDirectX 9に対応させたものが使われている。もっともMoHAAのエンジンもQuakeIII Arenaのもの(こちらはDirectX 8対応)だったのだが,もはや別物と思っていいだろう。
 「ファークライ」や「DOOM 3」といった新世代エンジンの表現力には及ばないにしても,その実力はかなりのものだ。ただしジャングルという,あまりにオブジェクト数の多い舞台のためか,筆者の環境(Pentium4/3.0MHz,メモリー 512MB,RADEON 9600XT 256MB)では極端にフレームレートが落ちるシーンが見受けられた。こういったシーンでは,やはり高スペックのPCが必要だと感じた。

 描画に関してもう一つ注目すべきは,物理シミュレーションエンジンとして「ハーフライフ 2」などと同じくHavokエンジンを採用していることで,水面に浮かぶ死体や,爆発による物理エネルギーの波及などをうまく表現している。こうしたエンジンを駆使しているため,その臨場感たるやかなりのもの。これはエンジンの実力もさることながら,演出や構成が見事であると素直に拍手を贈りたい。映画「パール・ハーバー」での真珠湾攻撃シーンさながらの,ドラマチックかつ大迫力のプレイをぜひ体験してほしい。

 操作性については,キー配置がFPSにおけるスタンダード的なものとはやや異なるので,最初は戸惑うことも予想されるが,とくに使いづらいわけではない。当然カスタマイズも可能なので,大きな問題はないはずだ。
 むしろデモ版(「こちら」)でも各方面から指摘があったマウスの操作ラグが問題だったのだが,最新のパッチを当てることで解消される。また,シングルキャンペーンには航空機を操縦するミッションがあるのだが,これは少し難ありだ。ただし航空機を操縦する機会は極めて少ないので,これに関してはストーリーを楽しむための「おまけ」と思ったほうが良さそうである。

 さてMoHPAはテーマが太平洋戦争ということで,敵は当然ながら日本軍となる。マーケット的な問題もあってか,敵味方に関わらず日本軍が登場するFPSはこれまで少なかったので,嬉しいと感じる人も多いだろう(敵だが)。  マップが見通しの利かない南太平洋のジャングルであるがゆえに,互いに発見しづらい設定になっていて,おのずと近接戦になる機会が多い。このとき,主人公らアメリカ兵が銃床で殴るのに対して,日本兵は銃剣でグサグサと刺してくる。これがまたなんとも……,新しい感覚だなと感じた。
 全体的にミッションはよく出来ていて,前作同様スクリプトを多用したドラマチックな展開で,プレイヤーを飽きさせることなくキャンペーンを進行できる。なお,前シリーズが繰り返しプレイしても同じ展開になっていたのに対し,MoHPAではプレイするたびに状況に応じてNPCの挙動などが変化するようになっている。遮蔽物に隠れる,ヒット&アウェイを繰り返す,近づけば銃剣や日本刀を振りかざしてくるなど,NPCの挙動はかなり完成度が高い。「お国のためにィィー!」などと叫びながら大挙して突撃してくる日本兵には,恐怖すら感じる。

 マルチプレイヤーでは,お馴染みのチームデスマッチやFFAに加え,"インベーダーモード"が追加された。これは最終目的を達成するためのいくつかの小目的のクリア,または阻止を競うモードだ。バックパックの交換も可能で,あるプレイヤーが一時的に別の兵種の能力を身につけることができるのである。
 こうした新しいモードに加え,"パンクバスター"が標準で搭載されている点も見逃せない。パンクバスターは,ほかのメジャーなFPSでも採用が始まっているチート防止テクノロジで,違法な改造によってゲームを有利に進めようとするプレイヤーをサーバーから排除できる。
 GameSpyを組み込んだゲームサーバーのサーチもできるし,クイックマッチも用意されているので,対戦相手を探すのには困らないだろう。

ガダルカナルの飛行場で再び空襲に。緊迫する戦場 白兵戦ともなれば,敵兵は銃剣や日本刀を振りかざして突進してくる ライフパックも一応用意されているが,全シリーズに比べて数は非常に少ない
Tabキーでミッション内容が表示される。目的を達成しないと先に進めない マルチプレイでは,連合軍側に看護婦スキンも用意されている GameSpyを利用したサーバー検索。Instant Playでクイックマッチもある



太平洋戦争での死闘を生き抜け!

これほどまでディテールに凝った爆発を見たことがあるだろうか?

 総合的に見て,MoHPAは戦場の臨場感や焦燥感をプレイヤーに感じさせつつ,ある程度の遊びやすさを保持したFPS,といった感じだろうか。スクリプトを多用したミッション群という,このシリーズの持ち味は引き継がれていて,これが秀逸であるために多少気に入らない面があったとしても許せてしまう。描画のハデさやAIの素晴らしい出来栄えもあって,完成度の高いミリタリーFPSに仕上がっている
 当時の連合国軍にとって,ヨーロッパ戦線でのドイツの打倒が第一義だったにしても,アメリカにとって日本は卑怯な奇襲によって米本土を攻撃し,太平洋艦隊に大打撃を与えた最も憎き敵だったわけで,おのずとその戦線はいずれも激戦だった。戦場の緊迫感は想像を絶するものだったはずだが,太平洋戦争をテーマに選んだ本作も,そんな雰囲気をよく描けていると思う。
 普段FPSをしない人にも比較的遊びやすい造りになっているので,これをぜひFPSへの入り口として試してほしい。スクリプトを多用している展開が激しく,さらに白兵戦も多いため,ガチガチのFPSファンにはウケが悪いかもしれないが,ぜひ多くのプレイヤーに楽しんでほしい良作だといえよう。

いくつかに分かれたミッションの章を終えると,戦績が表示される トーチカから重機関砲で掃射! 大量の敵を殲滅できるが,命中率はさほどでもない 対戦車砲で日本軍の戦車を撃破! ご覧の通り,かなり派手だ
超低空飛行から日本の空母を蜂の巣に。航空機の操作性には難あり スナイパーライフルがあればかなり有利になるのだが,入手は困難 ちょっと分かりにくいが,ジャングルの川での戦闘。死体は流れていく
上陸後に作戦会議を行っているところ。頭上の星マークは,アメリカ軍の証 マルチプレイでは,連合軍側に看護婦スキンも用意されている ガダルカナルの飛行場での象徴的なショット。吸い込まれそうな空の描写が見事


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■メーカー名:エレクトロニック・アーツ
■価格:8379円(税込)
■発売日:2004年11月25日
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/1.5GHz以上(Pentium4/2GHz以上推奨),メモリ 512MB以上,HDD空き容量 3.5GB以上,VRAM64MB以上のビデオカード(128MB以上推奨),DirectX 9.0c以降
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