ウィザードリィ8 日本語版
Text by 朝倉 哲也
26th Dec.2001
ついに発売された最新作
|
Fireball炸裂! 魔法のグラフィックスはかなり派手だ |
2001年も終わろうかという12月20日,ローカスよりSir-Tech Canada開発の"本家Wizardryシリーズ"最新作「ウィザードリィ8日本語版」(以後,Wiz8)が発売された。わざわざ"本家"と断ったわけは,日本においては独自のWizardryシリーズがコンシューマゲーム機を中心に発売されているからである。
もちろん,それらもみな正規の手続きを経て開発されているのでレッキとしたWizardryではあるが,やはりオリジナルの開発元であるSir-Tech
Canadaのものが正統性という点では非の打ちどころがない("分家"の一つである「Wizardry
クロニクル」のレビューは「ここ」)。
さて,このWiz8発売に関してはいろいろとゴタゴタがあったようで,開発が終了したという話を聞いてから発売にいたるまで数か月を要している(そのあたりについてはニュースの「ここ」でお伝えしている)。ひょっとしたら発売されずにこのままお蔵入りとなってしまうのかと危惧された矢先にアメリカでの発売が決定,続いて日本においても日本語版の発売が決定するという具合にとんとん拍子に話が進み,ついに発売となったわけだ。
Wizファンは言わずもがな,RPGが好きな人には大変嬉しい年末となったのではないだろうか。
Wiz8は,前々作「WizardryVI:Bane of The Cosmic Forge」(以後,Wiz6),前作「Wizardry
VII:Crusaders of The Dark Savant」(以後,Wiz7)から続く,三部作の締めくくりとなるゲームだ。とはいえ日本語版Wiz6発売からは10年が,日本語版Wiz7発売からは7年が経過しており,それまでのストーリーの流れを知らない人がかなり多いと思われる(というより普通の人は知らない)。
簡単ではあるが,「ここ」でWiz6,Wiz7のストーリー紹介をしておいたので参考にしてほしい。もちろん以前のゲームのことなどまったく知らなくても十分楽しむことはできるが,知っていればより一層Wiz8を楽しむことができるというものだ。
なおローカスからは,初代WizardryからWiz7までを一つに収めた,大変お買い得なパッケージ「Wizardry
コレクション」が発売されている。以前のWizardryを知らない人で,やってみたいと思うなら絶対にお勧めのパッケージだ。
3D/リアルタイム……大きく様変わりしたWiz8
|
NPCがモンスターに襲われている!助けるも助けないもプレイヤーの自由 |
Wiz8での最大の特徴が,フル3Dへの進化とリアルタイム制の導入だろう。Wiz6のころから3D風の表示がなされていたのではあるが(いや,もっというなら初代から"3D風"ではあったが),本作において,ゲームに登場するすべてのものがポリゴンで作成された完全3Dへと大きく進化した。Wiz6,Wiz7を知るファンならば,本作を初めてスタートさせたときに驚いた人も多いだろう。そこには,以前のように4方向にしか移動できないシステムはなく,望むところに自由に行くことができる,まるで「EverQuest」や「Unreal」のような世界が広がっているのだから。
また,リアルタイム制が導入されたおかげで,街の中などを人々が歩き回っているほか,遠くのほうにいるモンスターがこちらを発見して近寄ってくるのが分かるという"歩いているといきなりモンスターとエンカウント→戦闘"という通常のRPGの王道ともいえるシステムも消え去った。体力などがヤバいときにモンスターを見かけたらサッサと逃げ,回復して準備を整えてからいざ勝負,ということもできるわけだ。
そのほかにも,プレイヤーが作成したキャラクター以外に2人までのNPCをパーティに入れることができる。新職業"ガジェッティア"の追加など,革新的な改革が施された意欲作となっている。
初代Wizardryのファンには,このような新機軸を潔しとしない向きもいるようだが,筆者の感想としてはこれは大成功ではないかと思っている。
プレイヤー達を発見したゴーレムが地響きを立ててこちらへ接近してくるとき……。遠くのほうでゴーストと思われる人影がゆらゆらしているのを見かけたとき……。街中をパトロールしている衛兵達と力を合わせてモンスターを撃退したとき……。炸裂するFireballの魔法の炎が画面の彼方へ消えてゆくとき……。プレイヤーはWiz6を境に大きく変わったWizardryシリーズの集大成をそこに見るだろう。本作こそがWizardry究極の進化型であると言いたい。
|
|
|
サイオニックの魔法を得意とするMook達 |
スライムとはいえ,終盤に登場するものはかなり強力だ |
以前からのWizardryシリーズをプレイした人にはおなじみの"あのお方" |
Wiz8最大の楽しみ,それは戦闘だ
|
海の怪物「Nessie」。HPが優に800を超えるWiz8でも最大級の化け物 |
プレイヤーがWizardryに求めるもの,それはレベル上げであったり,アイテム集めであったりするわけだが,Wiz8では戦闘が実に面白い。3D&リアルタイムになったことで,モンスターは,いつでもどこからでも襲ってくるようになったというのが一番の要因だろう。
何気なく丘を越えた途端,向こう側にいたモンスターと鉢合わせ,などということが頻繁に起こるのである。また,本作から"戦闘から逃げる"というコマンドがなくなっている。常に四方に気を配ってイチ早くモンスターを発見し,敵の強さを見極め,かないそうもなければ撤退し,イケそうなら準備を整えて……という,ほどよい緊張感をプレイヤーに与えることに成功している。
その肝心の戦闘にはPhased Combat System(フェイズドコンバットシステム)という方法が採用されており,キャラクターの能力値,装備している武器の種類,スキルの値などが総合的に計算されたうえで,敵味方入り乱れての大乱戦が繰り広げられるようになっている。単純に能力値の高いほうが先に行動するというわけではないので,"誰が,いつ,どこで,誰に,どのような"攻撃を加えるかという戦略を練ることができるところが,戦闘に奥深さを与えている。
実際筆者も,とある場所に待ち構えている6人のSorceress,2体のDeath Lord,1人のSorceress Queen(全員が高レベル魔法のエキスパートでヒットポイントも高く,Death
Lordなどは一撃で息の根を止める魔法を連発してくる強敵。戦闘が始まると,Sorceressがそれぞれ召喚するエレメンタル4〜5体がさらに加わり,総勢で13〜15体くらいになるという泣きたくなるような布陣だ!)という,そうそうたるメンツを相手に全滅を繰り返すこと4回。
レベルを上げて再度挑戦するのも腹立たしかったので,なんとか現時点で倒す方法はないかと,頭をひねって考えた出した作戦が功を奏し,パーティから3人の犠牲者を出したものの,どうにか敵の掃討に成功,ナイスな武器と大量の経験値をゲットしたことがある。この達成感といったら筆舌に尽くしがたいもので,このような戦闘を"長い"とか"冗長である"とか"面倒くさい"としか感じられないようならば,Wiz8はプレイしないほうがいいだろう。ボタン連打でカタがついてしまう軟弱なRPGでは決して味わうことのできない頭脳戦が要求される,これこそがWiz8の面白さなのだ。
多少の不満は残るが,最高におもしろい!
この見出しが,筆者のWiz8に対する偽らざる感想である。アイテム移動などのときにインベントリー画面を閉じると,アイテム表示欄が必ず一番最初まで戻ってしまい,また下までスクロールさせなければならなかったり,マウスのホイールでアイテム表示や会話表示などのスクロールが行えない(英語版はできるのに!),複数のアイテムを一度に売れないなどいくつか不満はあるものの,クリティカルなものではない。いわばパッチで対処できるような,使い勝手に類する点での不満である。
だがそれらも,Wiz8の面白さの前には些細なことに過ぎない。「ウィザードリィ 8」こそ,Wizardryファンであろうがなかろうが,海外RPGが好きな人には絶対にお勧め,2001年の終わりを飾るにふさわしい,本年のRPG最高傑作であると断言する。
|
|
|
とある場所で宝箱を守る三つ首の蛇,Gazer |
この敵の数を見てほしい…… |
バードなら誰でもが欲しがる最強クラスの楽器がこれだ! |
|
|
|
同士討ちをさせる魔法は実に有効 |
ちょっとHな,山の妖精達。でも攻撃は超イタイ |
装備させればパーティの破壊力が確実に1ランクUpするほどの力を秘めた,あの伝説の聖剣 |
|