武田信玄Text by Iwahama
今まで,日本の戦国時代を舞台としたRTSといえば,「信長の野望 嵐世記」と「SHOGUN TOTAL WAR」あたりの名前が最初に挙がるところだろう。この二つはまったく違う方向性で作られたゲームだが,どちらもとても面白いし,完成度も高い。じゃあこの「武田信玄」(以下,武田)はどうかというと,これまたちょっと違った方向性を持っている。 筆者が武田をプレイして最初に感じたのは,合戦シーンのリアルさだ。グラフィックスは見てのとおり2Dである。3Dグラフィックスで描かれたSHOGUNの派手さは,ここにない。しかしライト兄弟が生まるずっとずっと昔のこの時代(レオナルド・ダ・ヴィンチがヘリコプターの設計図だけなら描いてたけど),数千〜数万の軍勢が戦う合戦は"広さ"わりにほとんど"高さ"がなく,ほぼ2D上で行われるといってもいいだろう。だから,1対1の戦いなら3Dのほうがリアルに表現できても,戦国時代の合戦を表現するには2Dのほうが合理的なのだ。そして武田は,合戦を2Dで"リアル"に表現することに見事成功している。この"リアルな合戦"こそが,武田の方向性であり,ウリになっているのだ。 ゲームモードは,"キャンペーン・モード" "合戦モード" "対戦モード"の三つが用意されている。 陣形が戦況を左右する! こだわりの合戦シーン
さて,武田のウリであるリアルな合戦シーンについて語ろう。 "陣形"が重要なのは,つまり武田の合戦が"本物の合戦"に近いからだろう。もちろん,RTSならどれでも陣形的なものは重要である。だが,武田の場合は極端に1ユニットが小さく,しかも数が多いため,より細かい部分で"ユニットの並び"を気にする必要が出てくる。「一列にズラッと並んだ槍隊を崩すのは大変だ」という戦国時代の武将には常識であることをすんなり理解できる……というのは,この武田ならではの醍醐味かもしれない。 海外ゲームといって侮るなかれ 武田を開発したのは,実はMagitechというカナダのメーカーだ。普通のRTSならともかく,日本の戦国時代が舞台となれば多少不安になるのは仕方がないだろう。実際SHOGUNは,かな〜り怪しい要素てんこもりだったし(それも魅力の一つだったが)。しかし,Magitechはなかなかがんばっている……と思う。もちろん,違和感を覚える部分がまったくないとはいわないが(ゲーム中に「到着ぅ〜!」という雄叫びが聞こえるのは筆者だけだろうか?),それにしてもよく勉強しているようだ。ちょっと日本を意識しすぎな感のあるグラフィックスを差し替えれば,日本のメーカーが作ったといわれても信じてしまうだろう。もしこの点で購入を躊躇している人がいたら,「余計な心配」だと言い切ってしまおう。 あとはゲーム性の問題 ここまで"リアル"という言葉を繰り返してきたが,ゲームには,もっと大事なものがある。ゲーム性だ。純粋にゲームとして武田を見ると,正直不満もある。たとえばキャンペーン・モードでは,「川中島の戦い」から急に難度が上がってしまう。実は残念なことに,武田には"チュートリアル"がない。だからRTS慣れした人ならともかく,"戦国"という言葉に惹かれて遊んだ人のウン%は,「川中島の戦い」で投げ出してしまうことになりかねない。 とはいえ,ある程度慣れればあとは楽しき桃源郷。次回作にはその敷居を低くするためのチュートリアルをぜひとも期待したい。もちろんRTS慣れした,「リアルな戦国時代を体験したい」というユーザーにとって高クオリティのゲームなのは間違いないだろう。
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