武田信玄

Text by Iwahama
23rd Jan.2002

2Dだからこそのリアルさ

 

敵の軍旗を1本倒すごとに,豪胆値を300稼ぐことができる。育てたい武将に倒させよう

今まで,日本の戦国時代を舞台としたRTSといえば,「信長の野望 嵐世記」と「SHOGUN TOTAL WAR」あたりの名前が最初に挙がるところだろう。この二つはまったく違う方向性で作られたゲームだが,どちらもとても面白いし,完成度も高い。じゃあこの「武田信玄」(以下,武田)はどうかというと,これまたちょっと違った方向性を持っている。

 筆者が武田をプレイして最初に感じたのは,合戦シーンのリアルさだ。グラフィックスは見てのとおり2Dである。3Dグラフィックスで描かれたSHOGUNの派手さは,ここにない。しかしライト兄弟が生まるずっとずっと昔のこの時代(レオナルド・ダ・ヴィンチがヘリコプターの設計図だけなら描いてたけど),数千〜数万の軍勢が戦う合戦は"広さ"わりにほとんど"高さ"がなく,ほぼ2D上で行われるといってもいいだろう。だから,1対1の戦いなら3Dのほうがリアルに表現できても,戦国時代の合戦を表現するには2Dのほうが合理的なのだ。そして武田は,合戦を2Dで"リアル"に表現することに見事成功している。この"リアルな合戦"こそが,武田の方向性であり,ウリになっているのだ。

 ゲームモードは,"キャンペーン・モード" "合戦モード" "対戦モード"の三つが用意されている。
 "キャンペーン・モード"では,タイトルにもなっている武田信玄とその軍勢を操り,彼が果たせなかった"日本統一"を目指すことができる。といっても内政的な作業はまったくなく,できることは合戦と休息のみ。休息を選べば前の合戦での疲労を取ることができる。ちなみに時間は年単位で進むため,休息をしている1年の間に他国も力をつけるし,場合によっては敵国に攻められることもあるわけだ。うまく休息を挟みながら合戦して勢力を伸ばし,信玄の悲願を達成しなければいけない。
 "史実の合戦モード"は,説明するまでもないと思うが,純粋に合戦のみを楽しめるモード。名高い「川中島の戦い」などを筆頭に,武田信玄に関わった数々の合戦を選ぶことができる。そして"対戦モード"は,……これも説明するまでもないが,LANやインターネットを使ったプレイヤー同士(二人限定)での対戦プレイ用モードだ。基本的には"史実の合戦モード"を二人で遊ぶものだが,ちょっと嬉しいことに,このモードに限り武田信玄以外の大名を選ぶことができる。あえて信玄の生涯のライバル,上杉謙信となり,友人率いる武田軍を撃破するのもまた一興だろう。

陣形が戦況を左右する! こだわりの合戦シーン

史実に沿ったイベント盛りだくさん。海外製といってあなどれません

 さて,武田のウリであるリアルな合戦シーンについて語ろう。
 合戦シーンの中で最もリアルさを感じたのは,"陣形"だ。これが,筆者には非常に衝撃的だった。なにが衝撃的だったのか? なんと,それぞれの陣形の違いが文字通り"形"だけなのに,その選択が勝敗に大きく関わってくるのだ! 戦国ゲームファンならよくご存じだと思うが,この手のゲームでは陣形同士の有利不利を相性のようなデータを設定して表すことが多い。ところが武田における"陣形"には,まったくそういったデータ的な違いがない。にも関わらず,収録された16種類の陣形(しかも当時の資料そのままに再現されている)にはすべて,有利/不利な陣形が存在する。つまり本当にユニットの並びだけで,"陣形"というシステムを完全に表現しているのだ。

 "陣形"が重要なのは,つまり武田の合戦が"本物の合戦"に近いからだろう。もちろん,RTSならどれでも陣形的なものは重要である。だが,武田の場合は極端に1ユニットが小さく,しかも数が多いため,より細かい部分で"ユニットの並び"を気にする必要が出てくる。「一列にズラッと並んだ槍隊を崩すのは大変だ」という戦国時代の武将には常識であることをすんなり理解できる……というのは,この武田ならではの醍醐味かもしれない。

海外ゲームといって侮るなかれ

 武田を開発したのは,実はMagitechというカナダのメーカーだ。普通のRTSならともかく,日本の戦国時代が舞台となれば多少不安になるのは仕方がないだろう。実際SHOGUNは,かな〜り怪しい要素てんこもりだったし(それも魅力の一つだったが)。しかし,Magitechはなかなかがんばっている……と思う。もちろん,違和感を覚える部分がまったくないとはいわないが(ゲーム中に「到着ぅ〜!」という雄叫びが聞こえるのは筆者だけだろうか?),それにしてもよく勉強しているようだ。ちょっと日本を意識しすぎな感のあるグラフィックスを差し替えれば,日本のメーカーが作ったといわれても信じてしまうだろう。もしこの点で購入を躊躇している人がいたら,「余計な心配」だと言い切ってしまおう

あとはゲーム性の問題

 ここまで"リアル"という言葉を繰り返してきたが,ゲームには,もっと大事なものがある。ゲーム性だ。純粋にゲームとして武田を見ると,正直不満もある。たとえばキャンペーン・モードでは,「川中島の戦い」から急に難度が上がってしまう。実は残念なことに,武田には"チュートリアル"がない。だからRTS慣れした人ならともかく,"戦国"という言葉に惹かれて遊んだ人のウン%は,「川中島の戦い」で投げ出してしまうことになりかねない。

 とはいえ,ある程度慣れればあとは楽しき桃源郷。次回作にはその敷居を低くするためのチュートリアルをぜひとも期待したい。もちろんRTS慣れした,「リアルな戦国時代を体験したい」というユーザーにとって高クオリティのゲームなのは間違いないだろう。

別働隊は戦場で戦わせる以外にも,敵軍の別働隊の行動を阻止させることもできる 1部隊単位にも陣形があるうえ,さらに部隊内の小隊は"隊列"を組むことができる 古今東西のすべての戦争の中で最も死傷者率が高かったという「川中島の戦い」。ゲームでも壮絶だ……
1280×1024ドットの解像度にも対応。さらに多くのユニットを一度に見ることができる 武田騎馬軍が通ったあとには,屍の山が築かれる 合戦後に武将ごとの戦績を見ることができる。討死の数はもちろん,豪胆値も重要だ

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■発売元:メディアクエスト
■価格:6980円
■問い合わせ先:メディアクエスト TEL 03-5805-3629
■動作環境:Windows 9x/Me/2000/XP,PentiumII/200MHz以上,メモリ128MB以上,空きHDD容量1GB以上
■体験版(50.2MB):http://www.4gamer.net/patch/demo/data/takeda.html
■ムービー(13.5MB):http://www.4gamer.net/files/movies/takeda.mpg

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