スキーリゾートタイクーン

Text by 大路政志
16th Feb.2002

お馴染みの「タイクーン」シリーズにスキーリゾート版が登場!

スキーヤー,スノーボーダーの視点でリゾート内を散策する機能もある。モーグル(雪のこぶ)地帯などでは迫力のある映像が楽しめるぞ

 今回レビューする「スキーリゾートタイクーン」完全日本語版は,タイトルが示している通りのスキー場経営シミュレーション。大ざっぱにいえば,前回レビュー掲載した「ゴルフリゾートタイクーン(以下「ゴルフリゾート」)」のスキー版である。用意されているモードやゲーム性,楽しみ方などから見ても,「ゴルフリゾート」と非常に近いものに仕上がっており,アクションゲームの苦手なスキーファンでも気軽に遊ぶことができるはずだ。
 だが,ゴルフ場とスキー場では,経営システムや競技(遊技)性が異なるため,実際にプレイしたときの印象も,かなり違ったものになっている。「ゴルフやスキーには詳しくないけど……」というユーザーは,本作と「ゴルフリゾート」のレビューを併読し,自分の好みに合った作品はどちらなのかを見極めてほしい。

親切なチュートリアルは本作でも健在

 ゲームモードの構成は,「ゴルフリゾート」とほぼ同様。六つのスキー場候補地から好きなシチュエーションを選び,自由に遊ぶことができる「インスタント・アクション」モードと,困難な状況を克服し,さまざまな目標をクリアしていく「チャレンジ」モードを楽しむことができる。そして「チャレンジ」モード内にあるチュートリアルの親切さも,「ゴルフリゾート」と同様のレベルだった。
 ゴルフなどゲームでしかプレイしたことのない筆者でも,スキー(スノーボード)は一応嗜んでいるのだが,いきなり「スキー場を作ってみろ」といわれても,どこから手を付ければいいのかサッパリ。しかし,スキー場建設の基礎を手取り足取り教えてくれるチュートリアルのおかげで,すんなりとゲームを楽しむことができたのである。その半面,本作のマニュアルはやや不親切(施設・アイコンの説明やトラブルシューティングが大半を占める)だったのだが,マニュアルの必要性をほとんど感じさせないチュートリアルは,ゲーム初心者にとってはむしろ親切とさえいえるだろう。

リゾートが発展してくると,マップはこんなににぎやかに。それに伴い,客の要望も多種多様なものになってくるので,経営の参考にしよう

自由度の高さと経営面のシビアさが魅力!

突然発生する雪崩は客のみならず,経営者にとっても脅威。客や施設が巻き込まれれば,大きな被害を被ることも……

 本作と「ゴルフリゾート」を,純粋に経営シミュレーションとして比較してみると,本作のほうがより手応えがあり,自由度が高いように思われた。ゲームスタート直後,リゾートの基本デザインの場面では,一般的に18ホール(最低でも9ホール)ないと形にならないゴルフ場に対し,スキー場の場合は,雪山にリフトさえあればある程度は成り立ってしまう。もちろん地形のパターンや配置したい施設なども考慮しなければならないが,マップのスペースが限られている両作品では,デザイン上の自由度は明らかにスキー場のほうが勝っている。自分の考えるデザインを忠実に再現できる喜びは,ゲーマーにとっても熱心なスキーファンにとっても,重要な評価ポイントとなるのではないだろうか。
 ゲームに登場する施設・サービスの豊富さは,「ゴルフリゾート」に引けを取っていない。施設・サービスの種類としては,それほど大きな差は見られないのだが,本作のゲーム内にはスキーヤー,スノーボーダーという2種類の客が登場する(「ゴルフリゾート」はゴルファーのみ)ため,施設にもそれぞれの客層に特化したものが用意されているのだ。また,スキーヤー,スノーボーダーのほうが,ゴルファーよりも所持金額が少ないので,経営面(各施設のグレードや価格設定)でもよりシビアな手腕が要求されることになる。「ゴルフリゾート」の場合,じっくりと時間をかけ,宿泊施設やショップを最高級のものにグレードアップしていけば,タイクーン(大君)の証である五つ星が簡単に取れてしまうが,客単価の低い本作ではプレイヤーの腕次第で,経営が軌道に乗るまでの時間に大きな開きができてしまうのだ。

ゲームの中だるみを回避する工夫が生きている

 この手の経営シミュレーションは,経営が軌道に乗った途端にやることがなくなり,ボーッとモニターを眺めるだけの時間が増えてしまいがちだ。「ゴルフリゾート」の場合は,そういったゲームジャンルの呪縛を和らげるために,ゴルファーの視点でリゾートを眺める機能が用意されていた。モニターを眺める時間が増えるなら,「眺める」ことをも楽しませてしまおう,という発想である。
 本作にもスキーヤー,スノーボーダーの視点でリゾート内を散策する機能が用意されているが,辺り一面の雪景色を眺めていても,正直それほど面白くはなかった。また,ゴルフには「スコアを競う」という競技性が存在するため,ゲーム内のゴルファーの視点でゴルフを観戦することにも魅力があったのだが,スキーを楽しむ一般客からは,「競う」ことの楽しみを見出すことが難しい。
 しかし,本作には「雪崩」という要素が存在しているので,経営が軌道に乗ったからといっても,決して気を抜くことはできない。どんなに順調に発展しているリゾートでも,大きな雪崩によってダメージを受ければ,それまでの苦労の何割かが確実に無駄になってしまうからだ。また,雪山には伝説の類人猿「ビッグフット」が出現し,客を連れ去ってしまうことまである。ビッグフットと共存するための施設「ビッグフット保護団体」も用意されているが,その購入金額はべらぼうな資金が必要になるため,当分の間は被害に悩まされることになる。このような「突発的なアクシデント」が,ゲーム展開にほどよい緊張感をプラスしているわけだ。

リフトを作ってランマーカーを設置,メンテナンス施設やレンタルショップや遊戯施設を建てる……。設置できる施設数が多いのでやるべきことはたくさんあるぞ

ゲームとしてしっかり楽しめる箱庭SLG!

 「ゴルフリゾート」と本作を比較してみると,より受動的な楽しみ方が向いているのが「ゴルフリゾート」であり,より能動的な楽しみ方が向いているのが本作である,といえるだろう。売り上げや総入場者数などを気にせず,環境ソフト的な楽しみ方が好きなゲーマーなら,どちらかというと「ゴルフリゾート」のほうがオススメだし,とにかく思い通りのリゾートをデザインや経営に奔走したいなら,本作のほうがいいはずだ。
 いずれにせよ,どちらの作品も水準以上の面白さを秘めるゲームであることは確かなので,スキーに興味があってもなくても,面白い経営シミュレーションをプレイしたい人は,ぜひともプレイしてみてはいかがだろう。

あらかじめ設定された目標のクリアを目指すチャレンジモード。チュートリアルを含めて計5種のチャレンジが用意されている 目的の設定されていないインスタント・アクションモードでは,マップ(雪山)の種類を選ぶことができる

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■発売元:メディアクエスト
■価格:7980円(2002年2月15日発売)
■問い合わせ先:メディアクエスト TEL 03-5805-3629
■動作環境:Windows 9x/Me/XP(日本語Windows Me/XPアップグレード版は除く) Pentium 300MHz以上(Pentium 450MHz) ,メモリ64MB以上(128MB以上推奨),空きHDD容量400MB以上

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