ゴルフリゾートタイクーン

Text by 大路政志
8th Feb.2002

お父さんの夢が叶う? ゴルフ場経営シミュレーションが登場

 今回紹介する「ゴルフリゾートタイクーン 完全日本語版」は,そのタイトルが示している通りゴルフ場経営シミュレーション。プレイヤーはゴルフ場の経営者となってゴルフ場をデザイン,運営し,ゴルフリゾートのタイクーン(大君)を目指すことになる。
 「ゴルフはちょっと苦手かも……」という人もいるかも知れないが,ジャンルが経営シミュレーションということもあり,ゴルフに関してそれほど詳しくなくとも十分楽しめる作品となっている(実は筆者も詳しくない)。また親切なチュートリアル機能なども搭載し,シミュレーションゲーム初心者にも優しいことから,ゲームに興味を持っているお父さんにもオススメといえそうだ。

インスタント・アクションモードに目的は存在しないが,ベースの地形パターンを選択することによって難度を変えることができる チャレンジモードには,さまざまなシチュエーションが用意されている。まずはチュートリアルをプレイし,ゴルフ場経営の基本を学んでおこう 親切丁寧なチュートリアルをクリアすれば,どんな仕組みでゴルフ場が成り立っているのかが分かる ゴルファーの視点を借りてリゾート内を散策することも可能。客の視点でホールを回れば,俯瞰では気付かない問題が見つかることもある

親切なチュートリアルが好印象。ゴルフ場経営の初歩が学べる

ホールは,パー数,第一打の方向,フェアウェイのサイズ,ホールの位置という手順を踏んで設置できる

 「ゴルフリゾートタイクーン」には,二つのゲームモードが用意されている。一つは特に目的の設定されていない「インスタント・アクション」モード。もう一つは,あらかじめ設定されている目標をクリアしていく「チャレンジ」モードである。ゴルフというスポーツに関して,大した知識がない筆者は,とりあえず「チャレンジ」モード内のチュートリアルをプレイしてみたのだが,このチュートリアルがすこぶる親切なのが印象的だった
 ゲーム開始直後は,ありのままの自然が広がるマップの中央に,リゾートの拠点となるクラブハウスがポツンと建っているだけ。そんな状態から「ゴルフ場を作れ」といわれても,筆者のような初心者には手も足も出ない。ところがチュートリアルでは,「まずはクラブハウス入り口周辺の木を伐採しましょう」「次にゴルフコースを設置しましょう」「クラブのレンタルショップを設置しましょう」「軽食屋を設置しましょう」「トイレを設置しましょう」……といった具合に,ゴルフリゾート建設に必要な手順を,実に分かりやすく学ぶことができる。チュートリアルが親切なのは当然と言えば当然なのだが,マニュアルの作りがやや不親切だったこともあり,実感として非常に有り難かったのである。この手の(箱庭型)経営シミュレーションは,プレイヤーが比較的自由に環境を構築できる半面,ゲーム的に「有効」な環境を構築することが難しい。その点「ゴルフリゾートタイクーン」は,カユいところに手が届くチュートリアルのおかげで,すぐにでも本格的な「ゴルフリゾート建設」に着手できるのだ。特にゲームに不慣れなゴルフファンならば,この有り難さが身に染みるのではないだろうか。

ゴルフ場の建設は簡単。しかし経営は……。

 親切なチュートリアルのおかげで,ゴルフ場建設という大事業にもすんなりと入っていけるわけだが,儲かるゴルフリゾートを経営することは,それほど容易ではない。本作にはゴルフ場に必要な施設やサービスが山ほど用意されているが,当然のことながら資金は有限なので,そのすべてを設置するわけにはいかない。それに,より質のいい施設・サービスを設置するには,基本的に下位の施設・サービスを購入しておかなければならないので,最初は必然的に,効率の悪い経営を強いられることになるわけだ。
 ……と表現すると,「序盤が苦しいだけのゲームなのか」と思う人もいるだろうが,経営が軌道に乗ってからも,悩みの種が尽きることはない。まず,ある程度集客率がよくなると,客から料金が高い」だの「プロのレッスンを受けたい」だの,さまざまな要望が寄せられるようになる。しかし,その要望(施設設置)を実現するための金はすぐには捻出できないので,しばらくは肩身の狭い思いをしなければならない。また,敷地(マップ)の広さも当然有限なので,ゴルフコースのパー数やレイアウトを誤ると,IN9ホール+OUT9ホールの計18ホールを配置することが難しくなってしまうこともある。そのへんのバランス感覚やレイアウトセンスは,一朝一夕ではとても習得できないので,「チャレンジ」モード内の既製のゴルフリゾートを参考にするなどして,試行錯誤を重ねるしかないだろう。

客を満足させるためには,ショップ系の施設だけではなく,宿泊施設やメンテナンス施設も必要になってくる

各施設・サービスの有機的なリンクが重要

 次々と寄せられる客からのクレームや要望に対応しつつ全18ホールをうまくレイアウトしてみると,「ゴルフリゾート」が「街」のように思えてくるから不思議だ。さまざまなショップやレストラン,フィットネス施設や宿泊施設などを周囲に配したクラブハウスは,なるほど,確かに小さな町のようだ。その町には毎日大勢のゴルファーがやってきて,各種サービスを受ける代わりにお金を落としていく。そしてゴルファーたちは,プレイを楽しむために次々とホールを進んでいき,一通り楽しんだ後に再び「町」に戻ってくる。そのせわしない循環を眺めていると,自分の作ったゴルフリゾートが健全に運営されていることの喜びが,ひしひしと押し寄せてくるのだ。これぞ箱庭ゲームの喜び。
 本作の目的はゴルフ場経営という限定されたものであるため,「街」「国」「文明」テーマのシミュレーションに比べ,ゲーム展開の変化に乏しいのも確か。だが,扱われる範囲が限定されているからこその熱気のようなモノが,ゲームを眺めているだけでも味わえるのは楽しい。ゴルファー個々の視点でゲーム世界を散策できるビューモードも搭載されており,この「眺める」楽しみをとことん満喫できる点も,ユーザーには嬉しい配慮だ

リゾートにやってくるゴルファーたちには,詳細なパラメータが設定されている。どんな人がどんな苦情を言ってくるのかを理解し,問題に対処していこう

経営SLGというよりも,環境SLGとして遊ぶべき作品

 とはいえ一つの経営シミュレーションとして本作を見ると,ゲーマーの立場からは物足りなさを感じた。筆者がある程度やり込んでみた実感としては,じっくりとプレイしてお金を貯めつつ,より質の高い施設を設置していけば,ゴルフ場が繁盛するのは時間の問題だった。甚大なトラブルやプラスαの娯楽性(自分の作ったゴルフ場で実際にゴルフゲームがプレイできるなど)もないので,必然的に「眺めているだけ」の時間が長かったのだ。
 しかし,自分のゴルフリゾートを建設・経営する快感は,熱心なゴルフファンであればこそ実感できるものだろうし,そういう人にとっては,ゴルフリゾートを眺めるだけの時間も,至福のひとときといえるのだろう。ゴルファー視点のビューモードや,豊富な地形編集機能などをフル活用し,環境シミュレーション的な観点から楽しむのが,「ゴルフリゾートタイクーン」の理想的な遊び方なのかもしれない。

ある程度リゾートが発展すると,こんなに美しい景観を楽しむことができる。実際にゴルフをプレイする人ならば,ゴルファーたちの行動を眺めているだけでも面白いはずだ

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■発売元:メディアクエスト
■価格:7980円(2002年2月15日発売)
■問い合わせ先:メディアクエスト TEL 03-5805-3629
■動作環境:Windows 9x/Me/XP(日本語Windows Me/XPアップグレード版は除く),Pentium 300MHz以上(Pentium 500MHz以上推奨) ,メモリ64MB以上(128MB以上推奨),空きHDD容量650MB以上

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