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| 戦車と歩兵隊を山越えをさせるために先回りして敵を排除する |
現在,世界で最も著名な軍事小説作家,トム・クランシーの同名小説をゲーム化した「レインボーシックス」(以下R6)は,続編「ローグスピア」の完成度の高さも相まって,あっという間に特殊部隊シミュレーションの金字塔を打ち立てた作品である。
とはいえ,同時期には3Dグラフィックス業界ではちょっとした激動の時期を迎えており,R6シリーズはそれにうまく便乗できなかったため,後発のライバル作品にグラフィックス面などで水をあけられ辛酸をなめる結果となってしまう。コンセプトは今なお超一流であるR6シリーズだけに,多くのファンが熱烈に新作発表を待ち望んだ……。
前置きが長くなってしまったが,要するに"Tom Clancy's"を冠する特殊部隊シミュレーションの新作が,ようやくアナウンスされたわけだ。1本は「Rogue
Spear:Black Thorn」。これはR6シリーズの旧エンジンを使用した新ミッションパック(単体でプレイ可能)といった位置付けで,もう1本が,ここでレビューする最新作の「ゴーストリコン」(以下GR)だ。新作ということで非常にそそる「GR」は,期待通り世界観もトム・クランシーテイスト抜群で,なかなかに心躍らせるものとなっている。
舞台は2008年。超極右政党に支配されたロシアは,再びソ連のような超大国復興を目指して鉄のカーテンの再構成を推し進める。バルト三国再併合を試みたロシアは,NATOとの軍事紛争に突入。戦争の拡大とともに,死傷者・行方不明者数は激増,ついに合衆国陸軍特殊部隊"Ghosts"が投入されるという,緊張感抜群の幕開けである。
ちなみに"Recon"とは偵察任務のことだが,最近は同時に"強襲偵察部隊"組織の名称にもなっている。よって従来の斥候のイメージとは異なり,最強のエリート兵が最高の重装備で,敵地の深部を強引にこじ開けて偵察(Recon)するのだ。ゲーム中でもそうしたテイストは反映されており,なかなかにダイナミックな戦闘が堪能できるのである。
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| 「ローグスピア」よりほんの少しライトな作りになっているが,徹底したリアリズムは失われてない |
同社からほぼ同時期に特殊部隊モノが2タイトルもリリースされたことから,とまどっている人もいるだろう。そこで,R6シリーズとの比較をしながら紹介していこう。
クロースクォーターバトル(室内近接戦闘,以下CQB)に特化し,カウンターテロと人質救出作戦をメインとしていた「R6」シリーズに対して新機軸となるGRは,屋外戦がメイン(回数は少ないものの屋内戦もある)。全15からなるキャンペーンミッションは,広大な戦場での戦闘的な強襲作戦ばかり。
グラフィックスのエンジンも最新のものとなっており,R6のときようなツルツルカクカクの木の時代から飛躍的に進歩したビジュアルが戦場の臨場感を演出してくれる。木漏れ陽が美しい森林,霧に包まれた沼地,砲弾のクレーターだらけでデコボコの廃墟など,ここに掲載している画面写真をひと目見ただけで3Dエンジンの進化は分かるはずだ。
ちなみにタイトルに"RECON"と銘打ってはいるものの,R6で賛否両論あったRECONミッション(発砲厳禁の潜入任務)は本作には,登場しない。これは筆者としては万歳三唱である。
本シリーズの魅力の一つだった,出撃前に侵入経路を計画するプランニング機能は本作ではなくなってしまった。といっても,プランニング自体は屋内戦闘をより楽しむためのモノであったわけだから,これについては気にせずともよいだろう。
そこで気になるのが,プランニングに代わる屋外ならではのシステムは? ということ。代わりというわけではないがGRでは,米陸軍が目下研究中の"ランドウォーリア構想"を取り入れているのが興味深い。これは,従来の歩兵に高度な通信や情報処理能力を持たせ,情報の共有化を行うことでより高度な戦術を可能にしようというものである。ヘッドアップディスプレイなども装備し,防弾チョッキにはセラミックプレートを内蔵,もちろん銃火器の射撃時には赤外線照射機構や夜間補正も十分に可能という,まさに最新鋭の歩兵構想なのである。
ゲームでもそうした点は再現されており,兵士はGPSによって誘導され,常に自分の位置を見失わずに戦える。プレイヤーは分隊長なので,自分の位置だけではなく全隊員の位置を把握し,的確に指示を出さなければならないのだ。戦闘中でも次々とルートを設定してアクティブに指令を下せる点は,GRならではの魅力といえるだろう。
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| 近年ゲームはリアル志向で銃の性能も再現している | MODもこれからどんどん豊富になっていくことだろう | 敵戦車師団の侵攻を食い止めるNATO兵とGhosts。一見,頼もしい陣容だが…… |
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| うわっ! やはり戦車は強かった! このような状況にならぬように注意しよう | 航空支援による爆撃で、戦車が木っ端微塵の図。ムービーではなくゲーム中の出来事 | 空港を襲撃してロシア製超ハイテク攻撃ヘリのKa-50を破壊する |
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| 12名の凛々しいスペシャリスト |
プレイヤーは最初,ライフルマン6名,スナイパー2名,サポート(マシンガンナー)2名,デモリション2名,計12名のスタンダード隊員が与えられる。R6のように,ミッションごとに装備を細かくカスタマイズする仕組みではなく,隊員別にフェイバリットの装備は固定。最初の12名の装備は,M16やらM246やら米陸軍支給のものばかりだ。ちなみにフラッシュバンや突入用爆薬などはなく,代わりに対戦車ミサイルやクレイモアなどが登場するのもGRならではの特徴。
各隊員には武器取り扱い/隠密性/持久力/リーダーシップの四つの能力がある。一つのミッションに出撃して生還するたびに,各隊員には+1ボーナスポイントが与えられるので隊員を育てる楽しみもある。ちなみにスナイパーや破壊工作を行なうデモリションは隠密性が必要だし,マシンガンを派手にブッ放すサポートは,隠密性よりも持久力が必要になるので覚えておくといいだろう。
また本作の注目すべき点として,各ミッションの必須任務のほかに"Xミッション"がある。このミッションを達成すると,"スペシャリスト"という隊員が部隊に追加されるのだ。
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| 現地にて味方に直接指令を下せる |
その名からも分かる通り,スペシャリストはスタンダード隊員よりも優れた能力を持っている。装備も個性的なものばかりで,ランドウォーリアシステムが生んだ最新兵器OICW(Objective Individual Combat Weapon)を始め,SA-80,MP5-SD対人センサー,ライフルも50口径の巨砲M82A1,山猫で有名なドラグノフ,マシンガンはMG3やRPK74など,それだけで人柄が見えてきそうなバリエーションである。何よりスペシャリストは容姿やファッションも個性的で,女性隊員もいる。有志の制作による,スーザン・グレイ隊員のランジェリー壁紙の存在も確認されたりするので,興味がある人は探してみよう。
オリジナルタイトルであることを強調してきたが,前作から受け継いだイイ点もある。それはゲーム全体に漂うドライで殺伐とした雰囲気。個々の隊員ごとに身体能力に差はあるし,銃器別に殺傷力も異なる設定がなされているにもかかわらず,撃たれればだいたい一発で死んでしまうハードな世界である。
この感覚こそ,このシリーズならではのリアリティだろう。ちなみに上級レベルに設定すると,どんな遠距離からでも拳銃一発でこちらの眉間を撃ち抜いてくるような悪魔的なCPUの射撃も,R6からちゃんと継承しているのだ。
……などと書いてしまうと腰が引けてしまう人もいるだろうが,ぶっちゃけた話,初級レベルは全然簡単だ。ここまで読んでくれた人なら気付いただろう。さまざまな面でリアルになっているものの,隊員ごとに固定された装備,ステージごとに追加される能力値とスペシャリストの存在といったように,GRのブリーフィング部分は複雑にする方向を選ばず,より簡略化されてゲーム性強く仕上がっているのだ。装備選びに頭を悩ませることもなく,素直に出撃して思う存分戦える。おそらくはR6の難易度の高さを考慮した結果,こうなったに違いない。R6を投げ出してしまった人でも,本作なら隅々まで遊ぶことができるはずだ。
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| やっぱりマルチが一番楽しい。海外では韓国サーバが軽いので密かに狙い目。仲良く遊ぼうね |
最大36人対戦可能なマルチプレイも壮絶に面白い。キャンペーンの15ステージに加え,五つのマルチプレイ専用マップも収録されている。
アクション色の濃い一般のFPSとは,まったく異なったゲームである。ジャンプしながら敵の銃撃をかわすなんて曲芸はできないが,味方の援護射撃を頼りに突破口を切り開くという,オトナの銃撃戦が楽しめる。
ホストの設定可能な項目は多岐に渡り,チーム戦もデスマッチもお手のもの。GPSをオンにすれば,広大なマップでも敵の位置をある程度は把握できるので短期決戦に仕立てられるし,逆にオフにすれば,敵の位置が掴めない非常にスリリングな戦いとなる。Respawn(死後復活)がオンなら派手な銃撃戦となるし,オフなら誰もが慎重となりこれまたスリリングな戦いとなる。
具体的にほかのマルチプレイ作品と比較してしまうと「デルタフォース」シリーズのようにスナイパーが戦場を制することもないが,「カウンターストライク」のように足で稼ぐゲームでもない。「Return to Castle Wolfenstein」のようにド派手でもなく,かといって「Operation Flashpoint」ほど忍耐強い射撃も必要ない。「SWAT3」のように1人対複数からの逆転が絶望的とも限らない。ついでにいうと「Tribes2」ほど大規模な戦争にもならず,「エイリアンvs.プレデター2」のような檻の中での殺戮劇とも違う。ここ最近の主流タイトルの中では,どこかに一部突出しない,バランスの良さを持つ作品である(一応フォローだけど,筆者は全部好きです,全部)。
何者も寄せ付けない超豪華フルコースだった「ローグスピア」と比較すると,微妙に小粒めいてしまったイメージはあるが,そんなことはゲームの面白さとは関係ない。2002年3月には完全日本語版,そして海外では早くもミッションパックが発売される。R6に代わり,今後のユービーアイソフトの主力となるタイトルであることは間違いないのだから,今後数年に渡って楽しむつもりで購入しよう!
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■発売元:ユービーアイソフト (c)2001 Red Storm Entertainment, Inc. Red Storm and Red Storm Entertainment are trademarks of Red Storm Entertainment, Inc. Red Storm Entertainment, Inc., is a Ubi Soft Entertainment company. All Rights Reserved. Tom Clancy's Ghost Recon is a trademark of Rubicon, Inc. under license to Ubi Soft Entertainment. |
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