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さまざまな交渉が行える外交機能

敵に対する共同戦線で,周囲から総攻撃をかける

  さらにCivilizationIIIの魅力の一つに数えられるのが,「アルファ・ケンタウリ」でフィーチャーされたような機能を継承した,外交交渉の複雑化である。プレイヤーは,ほかのリーダーと接触してから首都に大使館を設置すると,その国のリーダーたちとさまざまな交渉ができるようになる
 その内容たるや多岐に渡っており,不戦条約から戦線布告,領土地図やテクノロジー,贅沢品と資源のやり取りはもちろんのこと,資源の貿易や相互安全保障条約,通行許可といった交渉が可能で,場合によってはいろいろな要素を組み合わせて交渉することもある。贅沢品とは象牙や香料などの特殊資源で,それら8種類の品目が自国に入ってくるほどハッピーな国民が増える。資源も,馬や鉄に始まってウランに至るまで,ユニットの生産には必須のものとなっていて,敵国との戦闘の多くは資源の掌握が目的で引き起こされている場合が多い。
 交渉時には外交アドバイザーが,相手が了承できるほどの条件を提示しているかどうかを事前に教えてくれるので,相手リーダーを怒らせることなく大体の目安が分かるようになっている。相手の要望を先に聞くこともできるので,そこから少しずつ値切っていくというのが一般的なプレイスタイルだろうが,相手に有利な条件にしておけば,次から丁寧な態度で接してくれるようにもなる。余りにも非情な条件,例えば200ゴールドで敵国の街を交換などという条件を提示すれば,表示されている顔グラフィックもメラメラと怒っているものに変化するし,その後の態度にも影響を及ぼしてくるのである。
 リーダーやアドバイザーたちは,前作よりも各段に記憶力をアップさせている。1500年前に不戦条約を結びながら攻撃して滅ぼしたことについて,「お前がローマにやったことは忘れていないぜ!」というようなコメントを出してくる。とくにゲーム難度が高いほどシビアになっていて,Emperorレベルからはプレイヤーが大使館を設置する前に相手同士が提携し合っていたり,安保条約を結んでいてプレイヤーが取り入ることはできないほどだ。
 外交とは直接関係ないものの,制圧した敵の都市の住民たちには"民族"というコンセプトが与えられている。戦争による混乱が終息しても,突然敵国に寝返ってしまったりするのも,これが大きな要因となっているのだ。民族は,Workerの生産や徴兵,故意に飢餓させて人減らしすることもできるが,そういう姑息な手段を使いたくなるのは,民族感情の抑圧には非情な苦労を強いられるためだ。とくに敵国の領土だった戦乱期には,過酷な徴兵を受けていたことが多く,自国に取り込んでも「イヤだ! もう徴兵には行きたくない!」などと,突然街を混乱に落とし入れたりする。自国では少数民族と成り果てた彼らの悲痛な叫びには胸を痛めるばかりだが,感情が落ち着きを取り戻すには相当な期間とプレイヤーの努力が必要なのである。

City Viewウィンドウは,市民や耕作地の状況はもとより,資源や贅沢品の輸入品目や文化度の成長具合も確認できるようになっている 左上のアイコンをクリックしてアドバイザーを呼び出すことができる 科学技術のウィンドウでは,テクノロジーの進化の様子が一目瞭然となっているのがありがたい

陸海空のユニットを駆使した壮絶なバトル

政治制度は,Despotism,Monarchy,Republic,Communism,Democracyの5種となっている
"世界の不思議"を建設すると,文化的な周囲への影響が絶大なものになる

  リーダーばかりでなく,ユニットは総体的に思考ルーチンが強化されていて,防御率の高くなる山側から攻めてきたり,補給路や資源のある部分を狙い撃ちしたりしてくる戦略性も持っている。高い難度ほど敵のユニットにボーナスが加算されているようだが,一端戦争が勃発すれば,驚くほどの効率で攻撃を仕かけてくるのには驚きだ。英語版ではVer.1.17パッチの登場によって,Workerユニットがすでに開墾してある場所に手を加え直すという不都合も解消したが,工業化によって引き起こされる土地の汚染だけを担当してくれるようになったなど,ファンの声に耳を傾けた改善もなされている。非常に評価できるポイントだ。
 戦闘は,時代が進展していくつかの文明が淘汰されるころになると激しさを増し,敵の都市を奪取するのも難しくなる。たとえ制圧できても,人口が20を超えるような都市であれば抵抗勢力の文化嗜好を押さえ切れず,数ターン後にはかなりの確率で寝返られてしまうのだ。また,爆撃機や船団の鬱陶しいほどの爆撃により,どんなにうまく戦っても両国土の破壊は逃れることができない。しかも,前作のように議会の抵抗こそなくなったが,あまりにも好戦的な戦い方では自国民の反戦気分が上昇し,多くの自国都市で生産機能がストップしてしまうこともある。相当な武力を蓄えて一機に攻撃するとか,相手国に先に攻撃させることで国民の反戦気分を先延ばしするなどの作戦となるだろう。とにかく,周囲から複数の敵の攻撃にさらされるのは,相当な脅威となっているのだ。
 細かいところに目をつけると,海戦ユニットは地上ユニットへの直接攻撃ができなくなり,爆撃が大きな任務になったことに気づく。さらに飛行ユニットも変更があり,爆撃であればユニットへダメージを与えられるものの,すべては都市を起点にしたミッションベースとなり,移動中の燃料補欠で墜落するなどの事態は起こらなくなった。CivilizationIIでは,Settlerユニットが開拓者も兼ねていたのだが,最新作ではWorkerユニットが登場しているというのは,すでに記述した通り。WorkerやSettler,そしてキャノン砲などの自己防衛が不可能なユニットは敵の攻撃を受けると捕虜となり,敵に略奪されてしまうようになっている
 さらに,日本文明のサムライやインドの象騎兵,ドイツのパンツァーといったように,それぞれの文明に合わせたユニークユニットが1種類ずつ用意されているのも,Age of Empiresを意識したようなニクい演出だ。ユニークユニットがあるだけで,すべての文明で試してみたくなる人もいるだろうし,各文明は文明気質だけでなく個々のユニークユニットを活用したゲーム展開を考慮する必要もあり,プレイヤーには複合的な思考を要求している。このあたりは,"Thinking man's Game"(考える人のためのゲーム)などと呼ばれているゆえんだろう。本音では,すべてのユニットを民族に合わせた仕様にしてもらいたかったが,それは「Civilization IV」なりに期待することにしておこう。
 攻撃ユニットは,経験を積むことでベテランユニットからエリートユニットへと成長していくという新要素も楽しい。多くのユニットは一定の資金を払ってアップグレードをすることによって,解隊せずに進化させていくことができる。これによって,槍兵が現代にまで存続するというような時代考証の不自然さも解消されている。
 ユニットのバランスに関しては,ほかのマイヤー作品がそうであるように,ほとんど完璧な状態になっていると思う。隠れステータスとして,槍兵は騎馬兵に強かったり,ソードマンは弓兵に強いということもあり,どのユニットも確実に一長一短が設けられている。中級レベルでは,同じユニット同士がぶつかれば,攻撃値や防御値で設定された通りの結果が出るようで,非常にフェアな戦闘になっているのだ。ゲームの終盤ではほとんどの場合,防御値が最も高いMechanized Infantryと攻撃ユニット最強のModern Armorしか生産しなくなるが,大概そのあたりでゲームの決着が付いていることが多い。開発者は,いろんなユニットを用意するのではなく,単純な戦力拡張であれ,戦争な文化による陣地の取り合いを意図しているのだと察することができよう。

 しかし,Explorerのように生産可能になった時点ではほとんど役に立たなくなっているユニットがあるのも事実。前回は,Explorerを南極や北極に送り込んで手付かずの未開拓部落を大量にせしめることができたのに,今回は敵地への探索以外に用はない。また,敵に国籍を悟られずに済むPriveteerも,攻撃能力が1しかないために全く歯が立たないのだ。大量に生産して海上封鎖などには利用できるかもしれないが,せめて敵の農地に危害を与えられるような爆撃能力があればよかったのではないかと考える。さらに,前作で登場したスパイや外交官ユニットがコマンドで行うミッションへと変化しているのは評価の分かれるところで,とくに敵ユニットを寝返らせたり,敵地で原爆を炸裂させるようなテロ行為(?)ができなくなったのは個人的に残念だ。
 Civilizationシリーズの伝統として(もっとも,RTS系全般にもいえることだが),時折理不尽な勝敗がつくようなこともある。極端な例でいうと,2機のタンクが20騎の騎馬兵の群れにやられてしまうようなときだ。いくらなんでも馬がタンクにかなうわけなどないのだが,しょせんコンピュータゲームは数値と数値のぶつかり合いが織り成す遊び。こういうときは黙って目を瞑って,騎兵がタンクの背後から近づいて飛び移り,操縦室に手榴弾を投げ込んで……という姿を想像するのが正しい作法と心得よう。

特殊ユニットを含めたすべてのユニットは,3Dモデルでアニメーションしたものを2D化した細かい描写が魅力的だ 島や敵国領土付近の飛び地は,ユニットの輸入に時間がかかるために敵からも狙われやすい エリートユニットで対戦していれば,時折リーダーユニットが登場する

細かい変更も満載で新参者も熟練者も満足できる

国民の人気によって宮殿が建設されていく

  元祖テクノロジーツリーは,四つの時代区分に分けられ,古代,中世,産業,現代にまたがって用意されている。一つの時代のテクノロジーは,すべて習得してからでないと先に進めないというシステムなのだ。テクノロジーの種類によっては,世界の不思議を建設する機会が到来する。本作からは,文明の気質に合わせた不思議の特性もフィーチャーされ,例えば「万里の長城」で軍事主義の文明が,「バッハの音楽聖堂」なら宗教主義の文明が黄金時代に突入することもある。黄金時代になれば,生産力が一時的に強化されるという恩恵を受けるので,自ずと文明の気質にあった世界の不思議を狙うようになるのだ。
 今回は,同じ国家の都市であれば,同時に同じ不思議を建築できなくなっているので,すべての不思議を掌握するのが相当難しいこととなっている。とくに高レベルでプレイすれば,古代から中世にかけての不思議を一つ取ることさえままならないこともあるだろう。しかし,この"世界の不思議"を集める楽しみは,ほかのゲームではお目にかかれない楽しみとなっているのはいうまでもない。歴史を体験しているような気持ちになれるのも,これに起因するところが大きいはずだ。
 今作から世界の不思議は大きなものと小さなものの2種に区分されており,小さな不思議であれば,ある条件を達成すればどの文明でもまんべんなく建設できるようになる。これも新しい発想の一つで,なかなか条件を整えられずに四苦八苦するようなものもある。とくに,鉄鉱と炭坑が生産領域に存在しないと建設できないIron Worksは,ちょっとやそっとではお目にかかることはないだろう。
 忘れてならないのが,CivilizationIIIでエリートユニットが激戦を繰り返すことで登場する「リーダーユニット」の存在だ。これは歴史上の実物の英雄たちで,イギリスならチャーチル,エジプトならラムセス王らが出現する。リーダーはそれだけでは無抵抗なので,自国の都市へと輸送してやらねばならず,そこで三つまでのユニットを束ねることができるArmyユニット(小さな不思議のペンタゴンを建設すれば四つまでのユニットを収納可能)へと進化するか,建設中の不思議を一気に作り上げてしまうのに役立てる。もちろんリーダーユニット出現の機会は敵国にも与えられており,敵がArmyで攻めてきたときなどは,小憎らしいほどのドキドキ感に包まれることになるだろう。
 中国文明でプレイした場合は,いきなりジンギスカンが登場するのにはガックリで,これをもって前述の「追加パックでモンゴル登場論」は空しく崩壊。その空しさに任せて書いておくと,日本のリーダーなら"トージョー"に続いて"ヒロヒト"が出現するにいたっては,日本人の捉え方を少し間違ってないか? という気さえしてくる(気のせいでもないと思うが)。アメリカ人の東洋史に対する理解などこの程度なのだろうが,開発チームの中に4人ものライターを擁しているのなら,東洋史に詳しいメンバーがいてもよかったはず。かなり初期の都市名に"Tokyo"と"Edo","Kagoshima"と"Satsuma"が連続して出てくることなども,余りにも違和感がある。東洋の文明に限らなくとも,ギリシャのデフォルトリーダーがアレクサンダーなのも気にかかる。これら都市名やリーダー名は,前作のものをほぼそのまま継承しただけなのだ。
 文句のつけようのないゲームにも欠点はある。でも,このゲームを愛してやまないCivファンであればこそ,開発チームに日本の人名や都市名に対する改善を呼びかけるべきではなかろうか。とくに,ゲームバランスに関してはほとんど気にかかる部分などないだけに,こういう些細なことにも気を配ってもらいたいものだと願う。CivilizationIIIをプレイしながら気長に待ち,5年後(?)には発売されるであろうCivilization IVで大いに期待するところだ。

ゲームが終了すると,愛嬌のあるリーダーたちの顔が,さらにボコボコになっていたりする ゲーム終了時は,やはりリプレイで自国の快進撃を見るのが楽しい

 「Sid Meier's CivilizationIII」は,すでにアメリカではアンフォグラムが2001年11月に発売しており,各メディアから高い評価を受けているのはもちろんのこと,セールスのトップランクの座に輝き続けている。筆者も3か月近くに渡ってプレイしており,心身共に疲労気味。ゲームに勝利し,グラフやリプレイで文明発展の様子を追って見ることができるのも,アメリカ産のゲームには珍しく感慨深いエンディングとなっている。良くも悪くも"シドのCivゲーム"だが,リプレイバリューの高さは折り紙付きで,多くの人がハマれるゲームであるのは間違いない。
 シングルプレイ専用ゲームではあるものの,このシリーズの誇る質の高い中毒性が,所構わずにじみ出してきているようだ。ゲームエンターテイメントの真の意義を理解し,昔ながらの理想的なゲームデザインを表現できる,Firaxisの面々だからこその神業だろいえるだろう。そんな名作を日本語化してくれるサイバーフロントには,良質な訳を期待したい。

※本レビューは,英語版:Version1.17fでのレビュー記事です。

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■発売元:サイバーフロント (初回限定攻略小冊子付き)
■価格:オープンプライス[実勢予想価格1万円前後](2002年4月5日発売予定)
■動作環境:Windows 9x/Me/2000/XP,PentiumII/300MHz(PentiumII/500MHz以上推奨),メモリ32MB(64MB以上推奨),空きHDD容量550MB以上,DirectX 8.0a対応のサウンドカード/ビデオカード(ビデオメモリは16MB以上で,1024×768ドット以上の解像度が必須)
■Screenshots集:http://www.4gamer.net/shots/shots_civ3_1.html

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