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ブラック&ホワイト     全3ページ 1/3

※ストラテジック コマンダーでプレイしてみる

Text by トライゼット 西川善司
27th Apr.2001

ついに出たブラック&ホワイト,日本語版も近い!
 奇才かつ鬼才,さらに"機才"のピーター・モリニューの新作「ブラック&ホワイト」(以下B&W)の英語版がついに4月に発売された。一体何年待たせたんだという気もするが,出てきたことは素直に嬉しい。日本語版は,エレクトロニック・アーツ・スクウェア5月24日に,テキスト&音声全てを日本語化した「完全日本語版」として発売予定。
 今回筆者は,英語製品版と日本語β版の両方をプレイしてみたが,日本語版の出来はかなりいいので,5月まで待っても損はないと思う。最初に言ってしまうのもなんだが,ピーターの製作してきた「神の視点ゲーム(いわゆるゴッドシム)」ものとしては最もルールが複雑な(というか自由度が高い)ゲームなので,プレイ中に挿入されるガイダンスメッセージや音声が完全な日本語だとプレイしやすいのは事実。
 ちょっと台詞回しに直訳の雰囲気ムンムンだが,そこはそれ,洋ゲーならではの演出だと思って,にやりと笑って許してあげよう。

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まじめなんだかふざけてるんだかよくわかんないTIPS集も完全日本語化 挿入歌(?)までも日本語化!

B&Wって一体どんなゲーム?
クリックすると拡大します  1997年にピーター・モリニュー自らが創設した古巣Bullfrogを退社し,新たにLionhead Studiosを創設して3年以上もの開発期間をかけて製作されたのがこのB&Wだ。
 毎年毎年,E3などで公開されてきた開発途中版を見る限りでは"巨大な動物が動き回る奇妙奇天烈なゲーム"ということしか分からず,「どんなゲームか正体不明」というのが通説だったが,今回,シングルプレイをエンディング直前までプレイしてみた私個人としての手応えは, 彼の代表作である「ポピュラス」「パワーモンガー」の流れを汲む,ゴッドシムの発展系であった。
 プレイヤーは,コンピュータ内に再現された仮想的な世界に住む人々の神となり,彼らの信仰心をパワー源として奇跡を起こしたりして,自分を信仰する民の発展を助け,敵の神(≒敵プレイヤー)を信仰する人々を滅ぼす/改心させる……というのか基本コンセプトだ。
 これを読んで「ポピュラス ザ ビギニングにそっくりじゃん」とひらめいてしまった貴方は「ショカッ」のかけ声と共に頭上から雷が落ちること必至(マニアックな冗談だ)。ちなみに,ポピュラス ザ ビギニング(以下PTB)はピーター退社後のBullfrogで開発されたもので,オフィシャルな情報によればピーターは開発に携わっていないことになっている。が,プロジェクト自体は彼の在社時代に進行していたようなので,彼がB&W用に暖めていたアイデアのいくつかをこちらにも適用した可能性は否定できない。
 エレクトロニック・アーツ・スクウェアや,ピーターの作品を愛して止まないここの管理人など,各方面からの反論覚悟で言い切ってしまうと,B&WはPTBの豪華な発展系だといってもいい。ただし,発展系だからPTBよりも完全に優れているかというと,そうでもなかったりする(詳しくは後述)。まぁ,いずれにせよ,PTBにハマったプレイヤーならば,文句なしにお勧めのタイトルであることは保証できる。

B&Wはアドベンチャー/RPG?
クリックすると拡大します  PTBは完全なRTS(リアルタイムストラテジー)として製作され,絶妙なゲームバランスと完璧に近いゲーム性が実現されていたが,B&Wのプレイ感覚はPTBのソレとは異なっている。シングルプレイに限っていうとストラテジー性(戦略性)の要素はいくぶん薄らいでおり,アドベンチャーやRPGのフィーチャーが盛り込まれているのだ。(*1)
 用意されているステージ数はわずか五つ。「5面しかないの?」と驚く人が大半だろうが,この五つの世界には数々のイベントや小クエストが山ほど散りばめられており,すぐ終わっちゃうようなことはない。
 そして,そのイベントや小クエストの解法は必ずしも一つではなく(もちろん一つの場合もある),おまけに必ずしもクリアする必要もない。ただ,(これがB&Wの最大の特徴なのだが)プレイヤーの行いに従ってその仮想世界に住む人々のプレイヤー(神)に対する態度が変化していくのだ。
 「敵を打ち倒す」という方向への徹底したゲームデザインが施されていたPTBと比べると,ストーリー性やイベント性にずいぶんと重きが置かれている。これにより,ずいぶん似た感じのコンセプトにもかかわらず,それをあまり感じさせないことに繋がっているようだ。
(*1) 資料を掘り起こしてみたら,なんと2000年のE3で配布された資料ではB&Wのゲームジャンルは「ロールプレイング/アドベンチャー」になっていた

悪になるか,善になるか
 プレイヤーは新米の「神」で,強大な力をもつ絶対神ネメシスをうち倒して全世界を自分の信者にするのがゲームの最終目的だ。ストーリーは,このネメシスとの対決を軸に進行していく。適当そうなゲームに見えるが,キチンとストーリーはあるのだ。
 ところで,B&Wのタイトルを直訳すると「黒と白」となるが,これには「善と悪の象徴的な色」という意味が込められている。小クエストやイベントの対処の仕方はもちろん,普段のプレイスタイルによっても,プレイヤーの"善,悪どちらの神なのか"という指標が変化していくのだ(ゲーム中ではこれを「アライメント」と呼んでいる)。

 例えば,奇跡(ミラクル)を起こすための魔力(マナ)を溜める場合も,人々の祈りによって増加させれば善だが,生け贄で増加させる場合は悪となる。ゲームの基本コンセプトの説明のところで「敵の神を信仰する民を改心させる/滅ぼす」という表記をしたが,全滅させると「悪」,犠牲者を少なく抑えて信仰を乗り換えさせれば「善」となるのだ。
 このアライメントの善悪の移り変わりにより,ゲームオーバーになってしまうことはないが,善悪の移り変わりでそのゲーム世界が新たな局面を迎える。必ずしも「善がよい結果を生む」というわけでもなく,善行ばかりではとてもクリアできない局面もときにはある。ちなみに善か悪かによって,ゲーム中でのカーソルグラフィックス,クリーチャーの顔つき/体つき,建物の雰囲気なども変化するので,両方見たくなってくること請け合い。
 ゲームシナリオはステージ5で最終局面を迎え,ここで実質的にプレイヤーの善悪の位置づけが明確になる。面白いことにプレイヤーのアライメントが悪でステージ5に進むと敵ネメシスが善の神として「この世を暗黒で埋め尽くすわけには行かない」とかなんとかカッコいいことを言ってプレイヤーに立ちふさがることになる。

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善だと手肌も美しいが…… 悪になると血管浮き出して爪もトンガリ。見るからに,悪

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