凱歌の号砲 エアランドフォース

Text by Iwahama
6th Feb.2002

現代兵器を操り日本国を統一せよ

山越えの攻撃。敵軍の対空砲が痛い。なんとか向こうに回り込まないと……

 筆者が中学生の頃……だったと思う。それも確か,ゴールデンウィークのことだ。当時からPCゲーム三昧の毎日を送っていた筆者は,この連休も悪友数人と三日三晩一睡もせずにゲームで遊んでいた。当時のPCは,NECのPC-8801SR。そして遊んだゲームは,システムソフト(現システムソフト・アルファー)の「スーパー大戦略」だった。睡眠不足(ていうか睡眠皆無)でフラフラになりながらも,非常に楽しかったのを覚えている。いい想い出だ。……そういえば,洗濯機の音が人の声に聞こえたっけ。
「凱歌の号砲 エアランドフォース」(以下,凱歌)を初めて触ったとき,筆者はこの記憶を鮮烈に思い出した。あのときのワクワク,ドキドキがここにある。いきなり結論をいっちゃうと,凱歌はなんとも胸がワクワクする,心地よいシミュレーションゲームである。

 凱歌を一言で説明すると,現代戦を扱ったターン制シミュレーションゲームである。つまりPCゲームの黎明期からある,なじみ深いタイプのゲームだ。ただ,ちょっとその設定が面白い……と書くと不謹慎な気がしなくもないので,"興味深い"と書こう。どう興味深いかというと,なんと,この現代日本が戦場となっているのである
 もちろん,みんなご存じの通り現代日本はいたって平和である。実は凱歌は,「もし国内が複数の軍事勢力によって分裂していたら?」という設定のパラレルワールドの日本が舞台となっているのだ。ストーリーの詳細は先日のNews「こちら」を見ていただくとして,ともかく,よく知った場所……たとえば横浜のランドマークタワーや千葉の幕張メッセなんかの上で,戦車や戦闘機がドンパチやってしまうゲームなのである。ある意味親近感が沸く……いや,感情移入しやすい……いやいや,どう表現しても不謹慎になりかねないが,まぁ,非常に興味深い設定なのは間違いないだろう。
 そして,この設定のおかげで,ゲームの面白さは倍増している。

システムの話の前に……

 ここで一つ,多くの読者の誤解を解いておこう。
 凱歌の最終目的は,「日本統一」である。これは間違いない。そういう意味で,同じコーエーの「信長の野望」シリーズと似ているといえるだろう。しかしこの二作のゲームシステムは,全然違う。
 二作の違いは,内政がどうとか人物がどうとか,そういうレベルの話ではない。はっきりいってしまえば,凱歌は「国盗りゲーム」ではない。むしろキャンペーン制のウォーシミュレーションといったほうが近いだろう。順にキャンペーン(都道府県,地域の解放)をこなしていって,結果的に日本を統一することになるわけだ。実際,地域モードでこそ次に攻める都道府県を選べるが,全国モードでは自動的に攻める地域が決まる。もちろん,すでに解放した都道府県や地域が奪い返されるということもない。
 現代版の国盗りゲームを求めている人は,凱歌に失望を感じてしまうかもしれないが,ちょっと待ってほしい。国盗りゲームでは戦闘の回数が多くなるため,1回1回の戦闘は比較的短時間で終わる,簡素なものになってしまいがちだ。凱歌は,この1回1回の戦闘に焦点を絞ったゲームなのである。結果,戦略をじっくりと楽しめる奥深いゲームとなっている。

 凱歌は,最初に書いたように,あくまで現代戦を扱ったターン制シミュレーションゲームなのである。そしてその手のゲームとして凱歌を見ると,非常に洗練された,完成度の高いシステムであることが分かる。

戦闘シーンは,時間/場所によって背景が違う。日本の名所の上で戦うこともあるぞ

石川淳一氏プロデュースによる洗練されたシステム

もしアメリカ軍からユニットを購入できるのなら,AH-64は必ず軍団に編成しておこう。損はしないはずだ

 プロデューサーの石川淳一氏は,それこそPCゲームの黎明期から現代戦シミュレーションゲームを作り続けてきた,この道の大ベテランだ。当然凱歌のシステムは,練りに練られた,ムダのないシンプルなものになっている。

 凱歌のシステムの最大の特徴は,"軍団編成"だ。
 凱歌では,武器供与国(詳細は先日のNews「こちら」参照)から購入したユニットを組み合わせて,最大で40ユニットの軍団を編成することができる。逆にいえば,「いかに40のユニットの組み合わせで強い軍団を編成できるか」というのも腕の見せどころなのである。
 ユニットさえ十分にあれば,複数の軍団を作ることも可能だ。次の戦場/敵軍に合わせて,出撃させる軍団を選ぼう。ちなみに軍団は,複数の国籍のユニットを混ぜて編成してもいい。ただし,ある国籍のユニットが占領した都市/空港などのポイントでは,それ以外の国籍のユニットは回復することができない(補給は可能)ため,あまり多くの国籍のユニットを混ぜるのは得策ではないだろう。

 さて,いざ戦場モードが始まると,支配している都市/拠点からターンごとに得られる補給物資を消費して,ユニットを配置していくことになる。これは一見,多くのストラテジーにおいてのユニット開発と似ているが,一つだけ違いがある。それは,たとえ補給物資が腐るほどあっても,軍団に編成されていないユニットは配置できない,ということ。だから例えば"アメリカ兵"といった基本的なユニットでさえ,軍団に組み込んだ数しか配置できないのだ。
 また,破壊された(機数が0になること)ユニットは,その戦闘中は復活できない。つまり,敵軍にユニットを破壊されまくっているうちに,「気づいたら占領能力を持つユニットがいなくなってしまった!」なーんてこともあり得るわけだ。
 当然,条件は敵軍も同じ。だからたとえどんなにきびしい戦いでも,根気よく敵軍のユニットを破壊していけば,いつか猛攻はやみ,攻撃に転じることができる。結果,同種のゲームでよくある冗長な展開にならないのだ。実際,筆者がプレイした感じでは,1回の戦場モードにかかる時間は地域シナリオで約1時間。全国シナリオでも,長くても3時間程度で終わるようだ。
 人間の集中力の持続時間を考えると,このくらいの時間で終わるシステムは理想的といえるだろう。

カードゲームのごとく……

輸送機は地味なユニットながら,全国シナリオでは必須! 山の向こうへ戦車を運ぼう

 システムの話を続けよう。
 凱歌のシステムで特に筆者が気に入ったのが,兵器ごとに設定されている特殊能力だ。特殊能力とは,例えば「占領速度が速い」とか「夜でも攻撃力が低下しない」といったものである。しかし,そういった基本的な能力に紛れて,"AH-64"の「敵を全滅させた場合,再行動可能。(ただし,移動力は回復しない)」みたいな,凶悪な特殊能力も存在するのだ。
 これによって,戦略の幅がグッと広くなっている。このAH-64の例だと,先に戦車などで近くの複数の敵ユニットに損害を与えておき,空港から飛ばしたAH-64で片っ端から全滅。そしてAH-64はまた空港に戻る……みたいな,一種"コンボ技"ができるのだ。
 強力な特殊能力を持つ兵器を入手して軍団に編成し,いろいろなコンボを編み出す……そう,まるでカードゲームのような遊び方ができるのである。ちなみに,武器供与国との外交の問題(これまた先日のNews「こちら」参照)もあるから,すべての兵器を手に入れるのは不可能
 いろいろ試して,最強のコンボを見つけてみよう。


「懐かしい」という,褒め言葉

 RTS全盛の世の中で,凱歌が多少地味に見えてしまうのは仕方がないことだろう。ターン制,10機で構成されたユニット,(マップに表示こそされていないが)ヘックス単位の移動と,口の悪い人なら「前世紀の遺物」と呼びかねない要素が盛りだくさんである。
 しかし,中途半端に古い要素があるのではない。徹底的に,そして確信犯的に古い要素を使って,それを極限まで洗練することで新しい優れたゲームにしていると思う。いい意味で心を込めて,「このゲーム,なんか懐かしい雰囲気なんだよね〜」といえるゲームなのだ。
 このゲームの結論は,冒頭に述べた通り。一つ付け加えるのなら,この手のゲームで遊んだことのない人にも,ぜひ遊んでほしいゲームだということ。将棋を思わせるほどシンプルなシステムは,誰でもすぐに理解することができるだろう。

 ここまで褒めてきたわけだが,最後に敢えて要望も二つほど書いておこう。一つは,個人的には現代版の国盗りゲームも見てみたい,ということだ。それが凱歌の続編でムリならば,また別のシリーズでもいい。きっと,需要はあるだろう。そしてもしそういったゲームが出るとするならば,この凱歌のようなシンプルなシステムがベストだと思う。
 もう一つの要望は……やはりマルチプレイ機能がほしい! そう思うのは,筆者だけじゃないでしょ? しかしまぁ,凱歌はコーエーブランドの製品なので,もしかしたらパワーアップキットで対応してくるんじゃないかな〜,と期待しているのだが……。

全国シナリオのマップは,地域シナリオに比べ縦横共に1.5倍の長さになっている。つまり,2.25倍の面積……広い! その地域(関東/関西など)の都道府県をすべて制圧すると,次に全国シナリオへ移る ユニットは,機数が0にならない限り補充できる。また,見てのとおり夜は(当然)暗い
配置できるユニットの数に限りがあるから,無駄死にさせないように注意。得意,不得意を常に考えて動かすべし 軍団表で,現在出陣させているユニットの一覧が見られる。燃料が切れかけのユニットはいないかな? いくらマップが広い全国シナリオとはいえ,四つもの勢力がひしめいていると,こんな近くにも敵軍の拠点が

画面写真はすべて開発中のものです。

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■発売日:2002年3月予定
■価格:9800円
■発売元:コーエー
■企画/開発:サイク/ビーアイコミュニケーションズ
■問い合わせ先:コーエー TEL 045-531-4666
■動作環境:Windows 9x/Me/2000/XP,PentiumII/233MHz以上(PentiumIII/500MHz以上推奨),メモリ128MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量1GB以上
■Screenshots集:http://www.4gamer.net/shots/shots_gaika.html

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