カルチャーズ2 アスガルドの門

Text by 星原昭典
12nd Sep. 2003

RTSの枠組みを利用した都市建設シミュレーション

 「カルチャーズ2 アスガルドの門」は,町の建設と発展を楽しむことに主眼が置かれた,箱庭型都市建設シミュレーションだ。プレイヤーは人々を操作してリソースを集め,建物を作り,人口を増やし,交易をし,生産品を流通させることで都市の拡張を図っていくことになる。

 さて,人々に資源を集めさせて建築物を造るという仕様や,Screenshotsにある建物やユニットの様子などからは,本作がRTSであるかのような印象を受けるだろう。確かに,建物ではなくユニットを中心としたゲームの展開や,その一人一人が画面上で実際に各作業を行うところなどはとてもRTS的だが,この作品はあくまでも都市建設シミュレーション。この"RTSのように見えて実は都市建設シムである"という部分は,本作の重要な特徴の一つである
 一般的なRTSにおいては,兵力を増強し,それを支えるためのものとして内政が存在する。つまり人々の生活は,完全に富国強兵に奉仕するものと位置付けられている。また,戦いに勝つことが目的のRTSでは,それと平行しても苦にならないように,内政要素はある程度簡素にデザインされていることが多い。石と材木さえ集めれば,それを建材として加工しなくても建物が建てられる,といったようなことである。
 RTSをプレイしながら,このような部分に味気なさを感じたことはないだろうか。また,「もう戦争はいいからこのままどんどん町を発展させてみたい」と思ったことはないだろうか。カルチャーズ2は,そのような不満や要求に応えてくれるゲームである。本作は"RTSの枠組みを利用しつつ,戦争ではなく都市開発にフォーカスした作品"なのだ


建築ではなくそこに暮らす人々にフォーカスしたデザイン

 一般的な都市建設シムは,プレイヤーが建設や流通経路の整備,蓄財に集中できるようにデザインされている。その場合,町で働く人々は建物の付随物のように扱われることが多い。それに対してカルチャーズ2は,都市と同じくらいの比重で,そこに住む人々の管理に力を注がなければならないようにデザインされている。このあたりがとてもユニークなので紹介していこう。

 まず本作に登場するユニットは,基本的には2種類に限定される。"男性"と"女性"である。
 男性は,生産や戦闘に関するどんな職業にも就くことができる。職を変える回数に制限はないので,そのときに必要な職種に転職させつつ運用することも可能だ。
 男性は一つの仕事を長く続けると,その分野の仕事に熟達していき,経験が一定量に達すると上位の職業に就けるようになる。例えば"農夫"としてしばらく働いた男性は,"粉屋"になれる。さらに粉屋をしばらく続けると"パン屋"になれる。ほかの分野でも同様で,"石屋"になるには石の"エクストラクター"(採集人)としての経験が必要となるし,"鍛冶屋"になるには石のエクストラクターをしばらく続けると転職可能になる"鉄のエクストラクター"としての経験が必要となっている。手順を踏まないと,目的の職人を得ることができないのだ
 ここに建物と建材加工の要素が加わることで,ゲームはさらに複雑になっている。粉屋が働く"粉挽き場"は割と簡単に作れるが,パン屋が働く"パン屋"を建てるには"レンガ" "大理石"といった加工済みの建材が必要になる。大理石を作るには"石屋の作業場2"が必要で,それを作るにはもちろん"石屋の作業場1"を作る条件を満たしていなければならず,そのためには石屋が……といったような具合だ。
 しかもカルチャーズ2では,建物は作っただけでは機能しない。そこにしかるべき職業の労働者を割り当てることで,初めて生産活動が開始される。
 農夫を粉屋にしたら,作業場所を農場から粉挽き場に割り当て直してあげないといけない。空いてしまった農場では新たな農夫を作って働かせないと,"小麦"の供給が止まってしまうことになる。加えて,一度集めた資源も作業場まで運ばないと利用できないため,それぞれの専門職の作業場には"運搬人"を割り当ててあげないと効率が落ちる。運搬人は"手押し車"を使ったほうが荷物を多く運べるが,それを作るにに"大工"と"大工の作業場"が必要で……といったように,操作はプレイを進めれば進めるほど忙しくなってくる。

 このように都市建築の要素を充実させた結果,カルチャーズ2はファンシーな外見とは裏腹に,複雑なゲームに仕上がっている。この複雑さを解説するのはさすがに難しかったのか,チュートリアルでは仕組みを完全には説明していない。生産物の効果や相互関係,テクノロジツリーの概要をある程度覚えるまでは,ゲーム内のヘルプやマニュアルを何度も参照することになるだろう。
 ただし,戦闘メインのRTSではあり得ないほど各要素が有機的に絡まった都市発展の仕組みは,理解できてしまえば非常に遊び応えのあるものだと分かる。


キャラクター達の生活を眺める楽しさ

 ユニットを生産する方法のユニークさは特筆したいポイントである。カルチャーズ2で人口を増やすには,男性と女性を結婚させて子供を産んでもらわなければならないのだ
 女性は男性の行うような生産活動には従事しない。"住居"の管理と,子供を育てることが彼女達の仕事となる。住居に割り当てられた女性は住み心地の良い状態を保つために,大工の作る"家具",窯元の作る"陶器",ドルイドの作る"油"などを自発的に集め始める。プレイヤーが「子供を作ってくださいな」とお願いすると,食料を家に溜め込んで,夫の帰りを待つ。旦那としばらく家の中でいちゃいちゃしていると,現実世界と同様(?),コウノトリが赤ちゃんを運んできてくれる。
 子供はそのへんに転がったり,お母さんのお話を聞いたり,隣の家のおっちゃんの話を聞いていたと思ったらすぐ飽きてどっか行っちゃったりしながら育つ。しばらくすると成人して,大人としての活動ができるようになるのだ。

 子供や女性に限らず,男性労働者も含めたすべてのユニットの愛らしい仕草は,コロッとした可愛らしい外見と共に,本作を"眺めていて楽しいゲーム"として成立させるための重要な要素となっている
 彼らはお腹が減ったり眠くなったりすると,その欲求を充足させようと勝手な行動を取り始める。欲しいものが見つからないときにはプレイヤーに向かって手を振って主張する。ストレスが溜まってくると「シムピープル」のキャラクター達が話す"シム語"のような言葉を使って,ぺちゃくちゃとおしゃべりを始める。そういった姿をいつくしみながら,また彼らを手助けすることに喜びを感じながら,のんびりとプレイするのが本作のスタンダードな楽しみ方だといえる。


シングルプレイキャンペーンと勇者の存在

 上述のように,本作は手順の多さやキャラクター達の動きを楽しみつつ,ゆっくり町を大きくすることに主眼を置いて作られている。そのため,シングルプレイのキャンペーンでも,敵が攻めてきてこちらの発展がせかされるようなことはほとんどない。くどいようだが,戦争がメインのRTSではなく,都市建築シミュレーションなのだ。

 キャンペーンは,白昼夢による神託を受けた一人の勇者がバイキング達を引き連れ,ほかの勇者を探しつつ,世界を救うための旅をするというストーリーに沿って進んでいく。行く先々で運命によって結ばれた勇者達と出会い,仲間にしていくという展開はオーソドックスではあるが,やはりそこには心ときめくものがあり,これはプレイを先に進めようとするモチベーションを担う要素の一つとなっている。
 勇者達は,ほかとは違う特徴を持った"勇者"ユニットとして実際に画面上に登場する。しかし,勇者ユニットは基本的なゲームバランスを変えてしまうような強力な力を持っているわけではない。"食事などをとる必要がない戦闘に向いたユニット"という位置付けで,その代わりに生産活動には参加できない。ほとんどのステージでは,勇者が死なない限りミッション失敗にはならないので,プレイヤーはじっくりと町の建設に時間をかけられるようになっている。
 しかし,ときには勇者を含めた戦闘ユニットのみを操って,敵を蹴散らしながら先を目指すという展開も用意されている。生産手段のない環境で兵力を発見しつつ,それを失わないようにプレイを進める感覚は,「ウォークラフトIII」などRTSのシングルプレイキャンペーンに似ている。一般的な箱庭系ゲーム/都市建設シムではこのようなことはおそらくあり得ない。RTSの仕組みを使った都市建設シムである本作ならではの特徴だといえるだろう。

 キャンペーンにおいて気になったのは,ミッション遂行中にいきなり目標が変わって,都市計画を見直さなければならなくなったり,これまでの下準備が無駄になったりといった展開が少なくなかったことだ。敗北条件が緩やかなので,カリカリせずにゆっくり改善していけばいいということなのかもしれない。プレイヤーにゲームをゆったり楽しませるための演出だと好意的に理解することもできるが,結構ショックだったので,このあたりにもう一歩の練り込みがあったらと感じた。


RTSの忙しさは忘れ,ゆったりと楽しみたい作品

 カルチャーズ2は,RTS風の操作とユニットの成長要素を取り入れつつ,主眼は都市建設の面白さに置いているという,とてもユニークな作品だ。
 非常に個性的なゲームであるため,筆者はこの作品がいったいどういうゲームなのかをつかむまでに,少し時間がかかってしまった。どうやらRTSをやり慣れたプレイヤーとしては,どうしても"こういったゲームでは一刻も早く兵力を揃え,敵地に攻め入らなければいけないのだ"と考えてしまうらしい。そのようなプレイの仕方が,本作が提案するゆったりとした楽しみ方とはうまく合わないために,初めのうちとまどってしまったようだ。何しろ武装した兵士を10人揃えるまでにすごく時間がかかるのである。
 "大急ぎで戦うゲームではないのだ"ということが理解できてからは,町の発展を観察する楽しみ方が分かってきた。ペースが理解できると,キャラクターの仕草などを楽しむ余裕も生まれる
 このゆったりとしたプレイ感覚が分かれば,本作のプレイは楽しいものとなるはずだ。キャラクター達の生活を観察する楽しさもさることながら,カルチャーズ2はほかの都市建設シムと同様に,よりスマートな発展や勝ち方を目指して,何度もプレイを繰り返してしまう面白さも秘めている。

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■発売元:サンソフト
■価格:7800円
■問い合わせ先:サンソフト TEL 0587-55-0288
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/450MHz以上(PentiumIII/750MHz以上推奨),メモリ128MB(256MB以上推奨),空きHDD容量 600MB以上(800MB以上推奨),CD-ROM速度 16倍速以上
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