Action 4Gamer.net Review
 
大人気FPSに待望の拡張パック登場
コール オブ デューティー:
ユナイテッドオフェンシブ
Text by 松本隆一
8th Oct. 2004

※このレビューは英語版をもとに執筆しています


霧を突いてドイツ軍が! プレイヤーはいきなり戦場へ

英米ソ連の3人の兵士となって第二次世界大戦の有名戦場を戦う「CoD:ユナイテッドオフェンシブ」は,今や,大戦ものFPSの事実上の定番となった「コール オブ デューティー」の拡張パック。誰もが,息を飲む戦場の迫力に圧倒されるはずだ

 1944年12月。ベルギー領内に進出した連合軍内には戦勝ムードが漂っていた。しかし「クリスマスまでには帰国できるに違いない」と思っていた兵士達に,東部戦線から密かに集められたドイツ三個軍が青天の霹靂のごとく襲いかかった。不意を突かれた連合軍の戦線は,いたるところで崩壊し,ドイツ軍は破竹の勢いで進撃を開始した。ヒトラーの最後の賭け,「アルデンヌ大攻勢」(通称「バルジの戦い」)が始まったのだ……。今回紹介する「コール オブ デューティー:ユナイテッドオフェンシブ 日本語版」(以下,CoD:UO)は,そんな切迫した状況から始まる。

 前作にあたる「CALL OF DUTY」(以下,CoD)が登場したのは,2003年10月(「コール オブ デューティー 日本語版」は2003年12月にメディアクエストから発売)。リリースと同時に,各メディアやユーザーから高い評価を得,"第二次大戦FPSのスタンダード"の地位をあっさり獲得したのは記憶に新しいところ。圧倒的な迫力の戦闘シーンとツボを押さえた演出が,人気の理由だと思う。
 CoD:UOは,そんなCoDの待望の拡張パックで,起動にはCoD本体が必要となる。前作のファンである私は,2004年の5月のE3や,あちこちのWebサイトで公開されたムービーなどを見て辛抱たまらなくなり,発売と同時にショップに走ったが,住んでいるのが田舎なので「まだ入荷してません」と店員に言われた悲しい思い出を持っている。ともかく,個人的に期待のタイトルだったのだ。言わずもがなであるが,CoD:UOは,第二次世界大戦下のヨーロッパを舞台にしたFPS。プレイヤーはアメリカ,イギリス,ソ連それぞれの軍の兵士となり,ドイツ軍を相手に激戦を繰り広げることになる。このへん,CoDと同じだ。

 各キャンペーンをざっと紹介していこう。アメリカ陸軍第101空挺師団第506連隊所属のスコット・ライリー伍長は,バルジの戦いでドイツ軍に包囲されたバストーニュの町において,圧倒的な数で攻めてくる敵を食い止め,さらに反撃を試みていく。イギリス軍のジェームス・ドイルはちょっと謎めいた人物で,最初は爆撃機に乗っているのだが,搭乗していた機が撃墜されると,地上でレジスタンスと合流し破壊工作に協力。次のシーンでは連合軍のシチリア島上陸「ハスキー作戦」を支援するためSAS部隊と共にドイツ軍沿岸砲台に侵入。とはいえ,どうも本人はSASではなくSOEの工作員らしい。名前のみ知られているものの,その実体は未だに謎が多いイギリス戦時情報局SOEを持ち出してきたところに,マニアックなこだわりが感じられ,「やるなドイル」という感じだ。私に誉められても別段嬉しくはないだろうが。
 そして何よりのお楽しみは,ソ連軍新兵ユーリー・ペトレンコ二等兵だ。所属部隊は不明ながらも「ソ連軍の新兵」という言葉の響きだけで,彼がいかにツイていない人物か分かろうというもの。しかも,彼の戦場は"史上最大の戦車戦"で知られる,あのクルスクである! 知っている限りでは「バトルフィールド1942」以来,FPSでは2度目のお目見えだが,あちらが「クルスクの隅っこの一部」だったのに対し,こちらはクルスクからハリコフまでを戦い抜くことになる。
 もちろん,戦車vs.戦車の戦いも出てくるが,これに関しては期待していた「母なるロシアの大地を埋め尽くす大戦車軍団」という状況には,残念ながらならなかった。まあFPSですからね。それでも,フェルディナント駆逐戦車やJSU-152自走砲など珍しい車輌が登場するし,それらが走り回って撃ち合う様子はやはり壮観である。広い戦場での戦車戦は,前作CoDのオーデル渡河シーンを凌ぐといっていい。しかも,やっぱり味方がやられるやられる。敵の戦車まで走ってって爆弾仕掛けて来いなんて,あんたそりゃ殺生な!

 前作同様,基本的にアメリカ軍パートでは小隊単位の中規模戦闘,イギリス軍パートは特殊部隊による潜入破壊工作,ソ連軍パートでは敵も味方もバタバタ倒れる大規模戦闘を堪能できる,一粒で三度おいしい仕掛けとなっている。それ以外にも,ジープの後ろに乗ってM2重機関銃を撃ちまくったり,B-17に乗って敵機を撃墜したり,ドイツ軍のEボートに乗って敵艦を撃沈させたりと,個々の戦闘シーンは「これでもか!」というぐらいバラエティに富んでいる。一つのマップがいくつもの状況に分かれるのでなんともいえないが,遊べる量は体感で前作の三分の二程度という印象で,拡張パックとしてのボリュームは十分。

今回登場する新兵器の一つが,バイポッド付きの重機関銃。威力はあるが,展開に時間がかかるのが難点 AI兵士の動きはかなりリアル。敵の投げた手榴弾を拾って投げ返すなど,小技を利かせることもできる リーン(傾き撃ち)はできるが,ダメージは通常姿勢と同じ。ちゃんと銃を手元に引き寄せたほうが良く当たる
最新最高のグラフィックスというわけではないが,爆煙や光の感じなど非常にいい。テクスチャも十分な細かさ 教会の鐘楼から狙撃。おなじみのシチュエーションだが,CoD:UOでは敵ががんがん当ててくるので,油断禁物だ これだけの戦車をバズーカ1本で撃退,というのはさすがにウソで,味方の戦闘機が爆撃してくれたのです。黒煙が素敵


次から次への目まぐるしい展開。ちょっと休憩させて

歩兵対歩兵の撃ち合いだけでなく,このように爆撃機の銃手となって空中戦をしたり,カーチェイスをしたり,戦車に乗って進軍したりと,ミッションのバラエティは大変豊か。そんなわけで,兵隊さんは死ぬほど忙しい

 というわけで,ゲーム展開はたいそう慌ただしい。冒頭に紹介した,デモ版でもおなじみのバルジの戦いでは最初,斥候に出たかと思うと即座にドイツ軍と不期遭遇。慌てて逃げ出しジープで敵中突破をした挙句,アメリカ軍の塹壕に押し寄せる敵の大攻勢を,機関銃やバズーカ砲で押し返したりと,たったの数分で状況が目まぐるしく変わり,次に何が起きるか分からない緊張感があり,プレイしていてまったく飽きない。平和な行軍が,一瞬にして阿鼻叫喚の地獄になり,助かったと思った瞬間,辺り一面で砲弾が炸裂するのだ。今のところ行ったことはないが,「これが本当の戦場だ」と思わせる説得力がCoDシリーズの身上だ。
 CoD:UOでは前作に比べて,そうした方面の演出がさらにパワーアップしているのだが,しかし自由度がそのぶん犠牲になったという意見もあるかもしれない。上官の命令に従って行動しないと,どこからともなく飛んでくる砲弾で即戦死だし,ちゃんと攻撃しないと,普段は撃たれ強いはずの軍曹が射殺されてミッションが失敗したりする。マップは非常に広くて気持ちがいいが,進行は基本的にリニアな一本道。
 どうも欧米では,自由度よりも「映画や小説の主人公になり切ってプレイできる」というスタイルのほうが好まれるようだが,ここが評価の分かれどころだろう。個人的意見では,私自身「早く早く次の命令次の命令」という自主性の乏しさが自慢であるため,CoDのスタイルはありがたい。むしろ調子に乗って撃ちまくっているうちに命令を聞き漏らすほうが心配だ。その点,日本語版であれば,私のように命令を聞き(読み)違えたりすることも少なくなり,うらやましいかも。
 もともとCoDは難度が結構高いことで知られているが,CoD:UOはさらに難度が上がった印象だ。イージーモードでプレイしていても,なんでもないところであっさり死ぬし,ダメージもかなり食いやすい。敵の機関銃は憎らしいほど危険だ。敵兵はだいたい一発で倒せるが,やつらも良く当ててくる。もっとも,これは慣れの問題だろうし,悔しいけど個人差の大きなところ。難しさを比べようと思ってCoDを再プレイし「パブロフの家」から一歩も進めなくなったのは,ここだけの秘密である。

 こんなとき助けになるのが戦友達だ。今回は,完全に単独で行なうミッションはなくなり,いつでも部隊の仲間と協力して任務を遂行する。AI兵士の出来は前作同様,キビキビして小気味良い。ときどき変なこともあるが,だいたい行動は合理的だ。欠点は,銃を撃っている私の前にしばしば飛び出きやがることだが,同士討ちはないので,ただ邪魔なだけ。とはいえ,「やられる!」と思った瞬間,仲間に助けられ,「あんた,よく見りゃ意外といい男」などと妙な戦友意識を持ってしまったりするのも,そんなにはないがたまにある。もちろん,主人公が路傍の石を眺めているあいだにAIがミッションを達成してしまっては身も蓋もないので,敵の狙撃兵を排除しろとか,沿岸砲に爆薬を仕掛けろとか,教会の鐘楼から対戦車兵を狙撃しろとか,重要な任務はプレイヤーに回ってくる。「そうそうなんでも人頼みにしないで,たまには自分でやれよ」と思うが,それは言わない約束なのである。

本格的フライトシミュレータからのスクリーンショット,といっても良いくらいの迫力。嬉しくて泣けてくる 対独レジスタンスを指揮するのは,CoDにも出てきたイングラム少佐。ほかにもおなじみの人が数人登場する SAS隊員と共に潜入工作するドイル軍曹。特殊部隊員の動きは通常兵士よりも良く,兵士の質の違いも再現されている
シチリア島に駐屯する敵は降下猟兵。敵のユニフォームがちゃんと空軍のものになっているのが,また泣かせる BMWの側車に乗っかって敵中突破。敵はもう次から次へと出てくるし,状況は激しく変わるしでかなり大変 イギリス編の最後は高速艇同士の撃ち合いになる。彼らの働きにより連合軍のシチリア島上陸作戦は成功したのだ



迫力を増したグラフィックス マルチプレイも見逃せない

滅多になれないソ連兵になれるのがマニアにはたまらない。PPSh短機関銃やデグチャレフ重機関銃,モシン・ナガント小銃など,なかなかほかのゲームには登場しない兵器を使える。火炎放射器もソ連戦の目玉

 戦場の迫力を増すもう一つの要素が,改善されたグラフィックスだ。とくに爆発シーンがすごい。パーティクルとかいうらしいが,爆煙が非常にリアル。スモークを投げると本当に煙で何も見えなくなり,それが徐々に薄れていく様子なんか,本物の煙そっくり(さすがの私も煙ぐらいは本物を見たことがある)。また,広大なクルスク平原地帯の清々しい緑や,廃墟の連なる地獄のようなハリコフの町など,前作もかなり良かったが,CoD:UOではさらに気合が入っている。私がとくに好きなのが意外にも空中戦で,夕日を受けて赤く照り返す機体や,流れる雲,航空機関銃の曳光弾のブレ方,吹き飛ぶメッサーシュミットなど,効果音を含め迫力満点。このシーンやりたさに,わざと何度も撃墜されていたのは私だけではあるまい。
 しかも,私が試したわけじゃないけど,これほどのグラフィックスでも「低スペックのPCでちゃんと動く」とのことなので,自信のないキミも消極的になることないぞ。

 ゲームに慣れてくればドイツ兵もバンバン倒せるので,「オレって強いかも」と誤解してしまうプレイヤーも出てくるだろう。そういう人にはマルチプレイを遊んでもらいたい。ゲームタイプとしては,従来のCoDにあったものに加え,"キャプチャー・ザ・フラッグ"と,そのバリエーションという感じの"ドミネーション",そして基地を攻め合う"ベース・アサルト"の3種類が増えている。例によって,発売直後だというのにすでに神業を見せるプレイヤーがネット上にはひしめきあっており,ぜひ「やられ係」の悲哀を堪能してもらいたいものだ。私はもう十分堪能した。
 ただ,ゲームバランスのちょっと悪いマップもたまにあるような気がするし,戦車の操縦が難しくなっているのは辛い。まあ,ここら辺は今後のやり込み次第だ。待ってろよ,戦友諸君!

 というわけで,待望の拡張パックCoD:UO。押さえるべきところはキチンと押さえ,ところによっては期待以上の出来映え,という感じで,大戦マニア,FPSゲーマーにはお勧めの一本だ。CoDをお持ちなら必携である。

ドカン! 手榴弾で吹き飛ぶドイツ兵。あんまり近くへ投げたので,こちらもダメージを受けている。みんなも要注意だ CoD:UOの個人的な白眉,クルスク戦車戦。広いマップを舞台に,敵味方の戦車が入り乱れて撃ち合うのは圧巻 敵の駆逐戦車に肉薄して爆薬を仕掛けなければならない。本当に行われた戦術だが,まさか自分がやるとは……
爆発だけでなく,銃弾の弾着,発射炎,悲鳴,効果音など,戦場のリアルさを増す演出が随所に施されている 取ったり取られたりを繰り返したハリコフ市。広場の周囲に廃墟が連なり,あちこちで炎が上がる。ムード最高 何かと突撃命令の多いソ連パートでは,このように味方も絶叫と共にバタバタ倒れる。機関銃座を沈黙させろ!

シングルを終わらせたら次はマルチだ。ゲームモードは多数あるが,個人的に一番しっくり来るのはチームデスマッチ シングルに出てきたアルデンヌ戦では,史実同様,戦車対戦車の戦いがメイン。クルスクに負けず劣らずこっちもいい Altキー(デフォルトの場合)の押下で短時間全力疾走できるようになったので,その機能をうまく使いたい
へっぴり腰で遠くの敵をパラパラ撃つ。たいてい当たらないし,居場所がばれてやられる。皆さん,強すぎです リスポーンまで自分のやられ様を堪能できる,おなじみのキルカム機能。ああ,こりゃやられるわ,って感じ これはデスマッチの結果。私は一人倒して4回やられている。隅っこでビクビクオドオドしていた結果である

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■メーカー名:メディアクエスト
■問い合せ先:ユーザーサポート TEL 0570-040-401(祝祭日を除く月〜金 10時〜17時30分)
■発売日:2004年10月9日
■価格:3980円(税込)
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/800MHz以上,メモリ 128MB以上,HDD空き容量 1.15GB以上,VRAM32MB以上のハードウェアT&Lに対応したビデオカード,DirectX 9.0c以降
スクリーンショット集
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