[E3 2004#021]Black & White 2が,ここ数週間で急激な進歩を見せた - 2004/05/13 20:53


 開発に6年もかかった「Black & White」の教訓を生かしている……かと思いきや,すでに発表されてから1年半となる「Black & White 2」。Xbox専用のアクションRPG「Fable」の宣伝に忙しいピーター・モリニュー(Peter Molyneux)氏に代わって,Lionhead Studios社の秘蔵っ子ジョンティ・バーンズ(Jonty Barnes)氏にデモを見せてもらった。
 まず特筆すべきはランドスケープのレンダリング技術の開発が終了したこと。DirectX 9.0のプログラマブルシェーダ技術を使い,大海原の波や草原などはもちろん,砂浜の砂丘や夜になると怪しい青みさえ漂わせる氷河まで,非常にリアルに表現されるようになった。舞台となる島をズームアップして見ると,まるでCGアートかと思うほどゲームらしくない美しい風景が広がり,ボリューム感のある雲が漂い,時折雨を降らせている。しかし,ズームインするに従って森の木々や壁に覆われた町が見え始め,とにかくその細かさに驚かされることになる。

 気象効果もゲームに取り入れられ,サルや犬など体毛の多いクリーチャーが雨に濡れると,本作で改良されたモーフィング効果によって,フワフワだった毛がべっとりと濡れたような状態になる。これは,初めてBlack & White 2が公開された2003年のGDCで行われた技術デモと同じだが,ついにゲームの中で確認できた。まだ制作中ではあるものの,風もBlack & White 2では重要となり,嵐の中では弓が使いにくくなったりするらしい。

 今回初めて公表されたのが,具体的な住人達の暮らしぶりだ。Black & White 2に登場する文明は,エジプト,日本,ノース,ギリシャ,アステカの五つに絞られているが,それぞれ行動パターンに特性を持っていることが判明した。例えば日本文明であれば非常に勤労であるものの,夜になると酒場に集まって酒盛りするのが好きなのだそうだ。何よりも,帯を後ろで締めていたり,ちょんまげを結っていたりするのが面白い。卑弥呼の時代のような装束もあれば,どこか中国風の建物もあったりするが,そこはイギリス産ゲームソフトのご愛嬌だ。
 また,戦闘でも文明による違いは明確になっており,ギリシャは非常に統率が取れているのに比べ,ノースは個々の能力が高い戦士だがバラバラな動きをする。ノースは狂戦士(バーサーカー)だけしか兵舎で生産できないが,日本なら弓術に重点が置かれており,街が発展するに従って侍が生産できるようになるなど,兵士ユニットにも相当なバリエーションが出ていた
 兵士ユニットを生産するために必要な兵舎は,設置するときに「Heavy Archer」などの生み出すユニットだけを一つだけ指示できる。つまり複合型の軍隊を作るには,複数の兵舎が必要になるのである。この兵舎を建てると,街で仕事のない若者達が志願してきて,それぞれに訓練されて一人前の兵士になる。こうやって,100人単位で一つの軍団が形成されて,文明を守る盾となるのである。

 戦闘システムは現在のところ鋭意作成中であるというものの,無理にお願いして実際に人間同士で戦っているところを見せてもらった。これまでは軍隊を引き連れて軍隊のない城塞都市を攻撃するという,物理効果の紹介に特化したような戦闘風景しか見られていなかったからだ。
 そこでバーンズ氏が見せてくれたのが,一つの歩兵軍団しかないギリシャ対ノースの戦闘だ。まだまだ迫力があるとはいいがたいものの,恐怖心に駆られて逃げ出したりする兵士がいるなど,個々のユニットがユニークな動きをしているのが面白い。これが,最終的には弓兵や騎馬兵も交えた数百人規模の大部隊となって戦い合うのだから,通常のRTSのような緊迫感のある戦闘も期待できるのだ。
 またこれらの軍隊は,"リーシュ"と呼ばれる空想の糸で結びつけることで,移動も簡単にできるようになる。先頭の歩兵隊の後ろに二つの弓隊を結び,さらに背後に騎馬隊をつなげるという要領で,プレイヤーは先頭の軍隊を動かすだけで大群を率いることができる。先頭のユニットにはクリーチャーを使用することもでき,功城戦ではクリーチャーに壁を破壊させて中に侵入するという芸当も可能だ。今回のデモでは,勝利したノース軍に対してライオンのクリーチャーを召喚してみると,足にまとわりつく人間達を蹴り散らす動作をして見せたのも,本作のAI技術の高さを物語るには十分だった。

 今後の開発課題は,戦闘でのバランス調整や,プレイヤーの行動によって世界の風景が変化する悪性(Black)と善性(White)のアライメント。そしてグラフィックス部分では影をインプリメントする必要もあるという。グラフィックスエンジンは前作のものをコアにしているため,スペックは以前と同じ800MHz以上のCPUと16MB以上のメモリを搭載したビデオカードと,かなり低めに設定されている。もっとも,DirectX 9.0に対応したビデオカードでなければ,毛皮の様子や波の反射,ミラクルの壮大な効果などは見られない。
 気になる発売日は,バーンズ氏の口からは漏れることはなかったが,2004年末か2005年あたりではないかと推測される。大きなセールスには結び付かなかったものの,本シリーズはモリニュー氏もじっくりと制作していくことを決心しているようで,Black & White Studios社という子会社に分離してバーンズ氏に指揮を取らせている。この作品には,「納得できるまで開発を続ける」という開発魂が込められているのだ。(奥谷海人)

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