[GDC2004#13]S3 Graphics社が「DeltaChrome」を展示 - 2004/03/29 18:25

〜ブースレポート5:S3 Graphics社が「DeltaChrome」を展示

 '90年代前半の,3dfx社が登場する以前のビデオカード業界を制覇していたS3 Graphics社が,「Savage」シリーズ以来となるグラフィックスチップ「DeltaChrome」で復活。その第1弾「S8 Nitro」は,シェーダ2.0世代のDirectX 9.0に完全対応しており,廉価カードの市場参入を狙っている。第2のチャンスを与えられたS3が,激しくぶつかり合うATI社とNVIDIA社の攻防戦に参加することになりそうだ。

 なかなかリリースにまで漕ぎ着けないDeltaChromeだが,プロトタイプはすでに完成しており,本誌でも「話題の新GPU,DeltaChromeベンチマークテスト」でお伝えしている通り。性能的にはRadeon 9600やGeForce 5700に相当するビデオカードだ。
 8本のピクセルパイプラインは2.4ギガピクセル/秒を出力し,DirectX 9でサポートされていない24bitの完全精度と,通常形態としての16bitの部分精度の浮動点演算を行う。最大で八つのZ高速化技法(Z Occlusion Culling)が行え,2倍アンチエイリアシングに対応。ただしDeltaChromeのアンチエイリアシングは平行線と垂直線を2回ずつサンプルするアルゴリズムのため,実質的にはATI社とNVIDIA社が4倍回転式グリッドアンチエイリアシング(4x rotated grid antialiasing)と呼ぶものに相当する。

 DeltaChromeの実力については,先に挙げたベンチマークテストの記事で分かるように,現在市販されている中堅ビデオカードに劣らないといえる。しかし「なぜDeltaChromeにする必要があるか」を納得させるだけの理由が見えてこないのも確かだ。
 省電力設計によってノートPCやタブレットPCでの普及を狙っているのは確かで,デスクトップで本格的にゲームを楽しむためのビデオカードとしては,ボチボチの魅力というところだろうか。
 S3 Graphicsのブースでは,DeltaChromeのユニークな機能の一つであるハードウェア・ディスプレイ回転機能を大々的に展示していた。これは,HDTVやLCDなどを90度,180度,さらには270度に設置することができるというもので,要はタブレットPC仕様をハードウェアで対応したものだ。会場では,「XIII」や「Unreal Tournament 2003」が,縦型に置かれたモニターでプレイできるようになっており,画面の歪みやインタフェースへの影響もなく,普通にプレイすることができた。
 このディスプレイ機能をうまく利用できていたとは言い難いが,縦に置かれた大型モニターが,会場でもひときわ目立っていたのは間違いない。(奥谷海人)


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