[GDC2004#03]基調公演1:EAニール・ヤング氏の重大発表 - 2004/03/26 16:49


〜Entertainment First, Videogame Second:The Making of The Return of the King

 エレクトロニック・アーツ社ニール・ヤング(Neil Young)氏といえば,「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」(Lord of the Rings: The Two Tower)と「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」(Lord of the Rings:The Return of the King)のプロデューサーとして腕を奮い,映画のライセンスという危険をはらみながらも,両タイトルで1000万本というセールスを達成させている。当サイトでも,すでに何度か登場してお馴染みの顔になっているので,記憶にある読者もいることだろう。
 まず最初にぶち明けられた大ニュースは,今後ヤング氏がMaxis社のプロデューサーとしての役割を担っていくということ。もともと「Majestic」など,PC系ゲームを手掛けていたヤング氏だが,エレクトロニック・アーツ社への統合も囁かれていたMaxis社を率いるというニュースは,今後Maxis社がエレクトロニック・アーツ本社へと吸収されていく過程にあることを物語っている。Origin社,Westwood社などの名門を取り込んできたエレクトロニック・アーツ社にとっては,Maxis社が最後の独立系開発チームだったのである。今後ヤング氏は「ザ・シムズ2」(The Sims 2)に関わっていくと思われるが,その水平線上にはウィル・ライト(Will Wright)氏の新プロジェクトも見えている。

 さて,彼の基調公演の内容も中々ショッキング。まず,「スーパーマリオ」の残したインパクトやゲームの面白さは評価しながらも,GDCの講義では珍しくマリオを「古い質のゲームである」と否定。「ゲームプレイとはインタラクションによってもたらされる衝撃のメカニズムであるが,本来のエンターテイメントとは受けてにとって"楽しい経験"であることにほかならない」とした。ヤング氏は,その補足として普通にプレイしているスーパーマリオと,そのアートを利用して作った「クッパ大王のプリンセス略奪戦争」の映画を比較。ルイージの死によって消息を絶ったマリオに代わり,プリンセスを守るマッシュルームたちが制圧されていく様子を描いた独立系の実験映像だが,クッパがプリンセスに近づいた瞬間でエンディングになっており,確かにヤング氏の言う通りの「続きが見たい」という同時経験を生み出していた。

 ヤング氏は,MIT(マサチューセッツ工科大学)の教授の映画理論を利用しながら,「ゲーム体験には"形"がある」とし,「心理的なレンダラーは,ポリゴン以上のものを生み出す」と力説する。この形は,ユーザーのファンタジーを具現化するものであり,これを開発者全員が理解して初めてプロジェクトが成功に導かれるというのである。
 続けて,ヤング氏は自分が関わった「王の帰還」(The Return of the King)を例に出しながら,このゲームは,1)第一印象と期待,2)文字やセリフの短さ,3)瞬間の動作から大きなミッションの流れまでの連続性,4)環境の統一性,5)音楽,そして6)ユーザーの興味との一致,を挙げた。このようなユーザーのニーズである"X"部分を理解する作業は,エレクトロニック・アーツ社内では,"エクシング・プロセス"と呼ばれており,ゲームの成功や失敗を探るうえでの欠かせない作業の一つであると説明した。
 最後には,「メインストリームにアピールできるゲームの本質は,メインストリームにアピールする"経験"なのだ」と締めくくった。(奥谷海人)

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