[TGS2003 #15]プロデューサーが語る「リネージュII」の魅力 - 2003/09/27 23:46

 現在,最も正式サービスの開始が待ち望まれているMMORPG,エヌ・シー・ジャパンの「リネージュII」。TGS2003でも周囲の反応の高さが十分に見られたが,その会期中に,本作の開発陣に話を聞くことができた。当サイトでは以前にも,本国発表会のときに「こちら」でプロデューサーKim Hyung Jin(キム・ヒョンジン)氏にインタビューを行ったが,それは発表当時の今から1年半ほど前のことだ。それから大きく変更や改善が施されたと思われるが,10月1日からの韓国での正式サービス開始,日本でのクローズドβテストの開始を受けて,リネージュIIについて改めて聞いて見ることにした。
 インタビューの席では,Leadプロデューサーのベ・ジェヒョン氏(画面上段左の左側)とシニアプロデューサーのキム・ヒョンジン氏(画面上段左の右側)が同席し,30分という時間制限の中,当サイトの"きつい"質問にも笑顔で答えてくれた。なおキム氏は日本語ペラペラで(というより日本人としか思えないトークだ。E3のときに英語で話しかけたら日本語で帰ってきてかなり面食らった記憶がある),基本的にはこちらの質問に対してキム氏が答えられる部分は氏が,重要な話題になるとキム氏がベ氏に通訳をして回答を,という形でインタビューは進行した。

スピーディな展開と戦略性を持たせた戦闘シーン

 まずは,MMORPGをプレイする上で欠かすことの出来ない戦闘の部分に関して聞いてみた。
 キム氏によると,リネージュIIで目標としたのは,まず第一に"スピード"とのこと。これは,パーティメンバーの連携を重要視するEverQuestや,コマンドで行動の入力を行うFinal Fantasy XIには存在しない部分だ。リネージュIIでは,1戦闘あたりの時間を短縮することを目指し,それを実現するためのシステムを積極的に導入しているとのこと。
 また,あくまでも"リネージュ"という名前を冠することから,操作体系の"簡素化"も開発段階から考慮されており,1戦闘あたりの時間短縮と併せることによって,戦略性を持たせることが出来るのではないかという考えの元で現在のようなシステムとなったというのだ。戦闘時にはサーバー側とクライアント側の同期を(ほぼPerfectに)取ることで,クライアント側(プレイヤー)の入力が即座に戦闘に反映され,そのリアルタイム性からくるスピードの重視は戦闘時の自由度にも繋がり,つまりはプレイヤーがいろいろなことを試していけることに繋がるということである。
 しかし完全な同期というのは不可能に近いことだし,ソフト以外の面,つまり回線(ハード面)の品質も重要となってくる。「ここ」での発表会でも語られたように,リネージュIIの展開目標とする市場は,韓国,日本,台湾,中国のブロードバンド回線が普及しているアジア圏だ。これらの地域での現状の回線品質ならば,求めるサーバーとクライアント間の同期がある程度取れているとのことだ。
 なおベ氏から「個人的には,ダイアログボックスというのが大嫌いなんですよね。あれは絶対プレイテンポを損ねる要因だと思います。なので,普通のMMORPGではダイアログでいちいち[OK][Cancel]とか聞かれるようなことも,リネージュIIでは大半のことにダイアログボックスが出てこないでしょう?(笑)」と,本気とも冗談ともとれない発言が飛び出したことも記しておこう。

文化の違いをマージした独特のアイテム

 この話の中で,キャラクターのデザインについても少し聞くことができた。
 スタイリッシュなエルフ,肉感的なダークエルフ,可愛らしいドワーフ娘,力強いオークは,それぞれ韓国,日本,アメリカのプレイヤーの好みを意識してデザインされているとのこと。"この種族はこの国で人気になるかなぁ"と考えながら楽しくデザインしたとのこと。「アメリカではオークの人気が上がり,日本での人気キャラクターになりそうなのは……うーん,やはりドワーフ娘ではないでしょうか」とキム氏は語った。
 キャラクターだけではなく,アイテム面でも世界市場を狙ったものにしてあるという。文化的な違いは当然あるので,それらから少しずつを取り入れた"ごちゃまぜ"のものにすることで,親近感を覚えるファンタジーを目指している。実際,リネージュIIでは"野太刀"というアイテムが登場するので,侍系の鎧なども存在/追加されるかもしれない。

プレイヤーを引き付けるための四大要素

 プレイヤーがあるMMORPGをプレイする場合,時間の経過と共にレベル上げもアイテム集めもだんだんだんツラくなり,次いで最終目標というものが希薄となり,プレイを続けるモチベーションが大幅に落ちてしまう。課金してなんぼという利益構造をとるMMORPGにおいては,この問題はかなり切実。事実リネージュIでも,レベル上げにも飽きて攻城戦などにも参加しないとなると,とたんにやることがなくなってしまう。この部分に関しての質問も投げてみた。

 リネージュII開発チームでは,いままでの同社の作品や既存のMMORPGを研究し,まずプレイヤーの目標を四つに分類,それぞれに対して魅力的な機能を導入している。その四つとは下記のとおり。
・君主(リーダー的な存在)
・ドラゴンスレイヤー
・PvPヒーロー
・お金持ち

 まず一つ目は,リーダーを目指すプレイヤー。とはいえ,リネージュIIでは君主/プリンセスというクラスはない。どのキャラクターもレベル10を超えると血盟を作ることが出来ることに加えて,血盟にランク(現在は5段階)を儲けることによって,リーダーとしての地位を段階を経て上げていけるようにしている。これは,いままでどおりのリネージュファンにも分かりやすい,一つの大きな目標だといえるだろう。
 続いてドラゴンスレイヤー。これはキャラクターとしての強さを求めるプレイヤーを指し,アイテム収集を目標とするプレイヤーも含まれる。血盟としての強さではなく,己のキャラクターの強さだけに価値を求めるタイプのプレイヤー向きだ。これに属するプレイヤーは効率を重視しがちだが,多くのクエストやボスモンスターなどを用意すれば楽しんで貰えるだろうとのことで,1パーティ単位で攻略できるモンスターやクエストなどを数多く増やしていく予定でいるとのこと。
 3番目にはPvPを目標とするプレイヤー。これは対人戦で勝つことを目標としているグループで,サービス開始からの経過時間に最も左右されないグループだといえるだろう。PvPはバランスをうまく設定しなければ面白くなくなるため,この部分にも注力していくらしい。
 最後に,お金持ちを目指すプレイヤー。これは生産や交易をして大きな財力を付けようとするグループで,リネージュIIではドワーフがこれに当たる。ドワーフはアイテム作成の特殊能力を有するが,リネージュIIでは単に合成するだけには留まらない。城を所有している血盟にドワーフがいた場合,城に特殊な機械を設置することによって,周辺のモンスターが特別なアイテムを落とすようになる。これによって城を所有する血盟メンバーだけでなくほかのプレイヤーに対してもメリットを生み出せ,楽しませるシステムとなるのだ。ある種,城を保持する血盟(一種特殊なプレイヤー達だ)による,一般プレイヤーへのコンテンツ提供という形になるわけだ。また経済システムも考え尽くされたバランスとなっていて,基本的には貨幣の価値が時間経過によって下がりづらくなされている。

 このように,4種類のグループに分けられるすべてのプレイヤーが,楽しくプレイできるようなシステムを提供されれば,コミュニティが発展しやすく,それの持続もしやすいのではないだろうか。PvPのみ,RAIDのみ,攻城戦のみ,生産のみ,という方向付けをなすのではなく,開き直ってすべてを内包しようとするあたり,NC Softのパワーを感じることができる。うまく回ればかなり広がりを持ったシステムになるのではないだろうか。

パーティプレイの重要度とソロプレイとのバランス

 リネージュIIは,上記にも述べたようにパーティプレイにも重きを置いているが,ソロプレイも可能なバランスにしてあるという(まったくもって欲張りだ!)。パーティプレイを重要視しすぎると,プレイ時間によって友人たちと組みにくくなってしまう。かといってソロプレイ重視の設計にすると,パーティプレイのメリットが希薄になりがちだ。
 そこで本作では,パーティプレイを念頭に置きつつソロプレイもある程度できるようにして,パーティが組めないときはソロで経験値を稼ぐといったプレイスタイルも可能となるわけだ。もちろんパーティでのほうが,経験値を稼ぎやすいのはいうまでもない。この辺りは,日本のプレイヤーを意識し,気軽に楽しんでもらうためのものだという。
 レベルの上限は,リネージュと同様に実質的に明確なものは存在させないようにするとのこと。キャラクターは,レベル20,レベル40でクラスチェンジが出来るが,さらに上のレベル60で3段階目が用意されるらしい。レベル60ではキャラクタークラスの分岐は起きなく,名称と修得スキルが追加されるだけのようだ。
 また,現在ラグなどの原因として問題となっている街中での"寝バザー"への対策についてだが,これは開発側でもすでに"考慮事項"として取り上げられていて,いろいろな解決策を模索している途中とのこと。狩場でも気軽にバザーを行える自由度/気楽さを損なわないようにすることを前提に,バザーキャラクターが多い場所では視界を狭めるなどを考えているらしい。しかし,結論がでるのはしばらく後になりそうだ。

 最後に筆者が個人的に気になっていた部分についての質問をしてみた。それはキャラクターが魔法の詠唱をするときの言葉についてだ。韓国語なのか? なにかもっと違う言葉なのか?
 この質問を聞いたキム氏はいきなり笑いだし,こちらも少し面食らってしまったのだが,答えを聞いて納得。「その声は,アメリカの声優さんにお願いして……なんか適当に音を並べてしゃべってもらってるだけなんですよ。それを山ほど集めて我々全員で聞いて,これはエルフっぽいからエルフかなーとか,これはオークっぽいからオークの声でいいかなー,とかして選んでます。気にさせてしまってすいません,割と適当なんですよ(笑)」

 今回のインタビューでは,"今後のリネージュII"ということをメインに,いろいろな情報を聞くことができた。リネージュIIはグラフィックスのキレイさにまず目が行ってしまいがちだが,プレイヤーを楽しくさせる要素がふんだんに詰まったものとなっているようだ。
 日本でのβテスト開始も近い。期待して完成を待っていることにしよう。(Seal)


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