松本隆一




今回のテーマとなるのが,この「愛のバスタブ」である。ま,テーマってほどのものではないのだが,話によると,このバスタブに一緒に浸かれば,彼女はもうあなたにメロメロだとか。買わない手はないというものである
 幸せ探して45年。違いの分かるナイスミドル,松本のおじ様がお届けする「ザ・シムズ2」のプレイレポートである。人生を四季に例えれば,もはや秋たけなわの私ではあるが,秋は黄昏の季節であると同時に,それはまた収穫の季節でもあるのだ。ロマンス,知識,そして社会的地位などなど,今こそ刈り入れの時なのだ! と私が言ったら「松本さんの場合,今年はかなりの凶作だったみたいですねえ」と答えた友達がいて,思わず「うまい!」と膝を打っちゃったのだが,うるさいなあ,もう。

 ともかく,高級住宅地ベロナービルに越してきたマイキャラ「マツモト」は,ベロナービルマーケットのレジ係,バーカーバージニアと意気投合,結婚は秒読み段階,と思われたのである。なにしろ"毎日バー" "生涯バー"ともほぼ満タン。家に呼べば,「嬉しい。着替えてすぐ行きます」と言うし(その割には普段着なのだが),一緒にダンスも踊るし,現実の大学構内でしょっちゅう見かけるイチャイチャカップルのように,小突き合ってスキンシップしたりと,やってる私が「いいかげんにしろ」とマウスをぶつけたくなるようなアツアツぶりなのだ。
 ところが,である。生涯バーが一杯になれば,たちどころに天使が舞い降りて教会のチャイムを鳴らしまくるものと早合点していた私にとって意外なことに,ちっともコマンドが増えない。「口説く」とか「キスする」とか,マニュアルに載っているようなゾクゾクするようなのが一つも出てこないのだ。あれー,おっかしいなあ?

 おそらくマツモトのスキルが足りないせいではないかと思った私は,仕事に追われる少ない時間をやりくりし,鏡に向かい「むーん,チュッチュッ」と「魅力」のスキルを上げ,本棚を購入して「技術」のスキルを上げ,運動器具を使って体力も上げたのであるが,依然として事態に進展なし。かえって,望んでもいなかった仕事関係がスキルのおかげで順調にいき,マツモトは夜勤の新兵から下級将校に昇進,野暮ったい野戦服も小粋なグリーンサービスユニフォームに着替えることが出来たのだ。前回書き忘れたかもしれないが,運動員に就職したマツモトは,何かの運動をするのだと思いめったやたらに体を鍛えたが,「選挙の運動員」と知って興味を失い,陸軍に再就職したのである。
 とはいえ,こんなやつ,将校にしちゃっていいのかアメリカ軍?

新婚生活に備え,ベッドもダブルを新調し,キッチンにもそれなりのものを買った。前回引っぱった「金のなる木」は,水をやり忘れていたら枯れてしまった。庭一杯の「金のなる木」に夫婦で水をやるのが夢だったのに

りりしい将校服で日常の雑事をこなすマツモト。昇進で経済的にもややゆとりができた。というわけで,バージニアとデートに出かけたり,ゲームをしたり,ダンスを 踊ったりするが,どうしても結婚に結びつかないのら

ゲーセンに連れて行ったり,魅力のスキルを上げるための努力をしたりと,あれやこれやがんばってみたが,出てくるコマンドに変化が見られない。付き合ってる私もかなり大変だが,本人はもう泣かずにはいられない


そんなわけで「愛のバスタブ」の出番である。ありったけのシムオリオンを使って購入したアイテムだけに期待は大きい。一緒に入ろうと声をかければ,なんのためらいもなく水着に。ああ,こ,これが現実だったら

 何をどうやってもダメな私はハタと気づいた。もしかしてバージニアには彼氏がいるのではないだろか?
 思い起こせば約半年前,私は「また大学生になったのだから今度こそ彼女を作ろう」とばかりに,クラスのよさげな女の子に声をかけた。で,結構仲良くなり,じゃあ,来週末にお食事でも,ってところまで進展したのだが,折悪しく,その日は悪魔の2月14日。前日「私,つい忘れてたんですけど,毎年バレンタインデーは彼氏と会うことになってたんです」と電話でドタキャン。出た! 彼氏! いつでも,どこからともなく現われて女の子をさらっていく謎の人物「彼氏」。ちくしょう。「そりゃしょうがないなあ」なんて返事しながら,唇を噛んでいた苦い思い出が頭をよぎるのであるが,なんでゲームなのにそんな思い出が頭をよぎるのでしょうか?
 というわけで,早速私はベロナービルの各家庭でプレイしてみることにした。サマービル家のバカ息子に電話をかけさせると,ちゃんとバージニアにつながる。お前か! バージニアちゃんの彼氏は? とはいえ,私「マツモト」の家にもつながるんだから,これは会った人全員につながると考えたほうがよさそうだ。それに,親密度もさほど高くない。そんな風に,実時間でほぼ半日彼氏探しをしたあと,私は諦めて再ロードした。だいたいバーの数字が高いんだから,彼氏がいるわけないよなあ。

 じゃあ,家の環境が悪いのかしらと,今度は庭師を呼んで雑草むしりをさせることに。本人にむしらせると,なんでだかストレスが溜まって泣き出したりするのである。アメリカ軍将校がそれでいいのか,とは思うが,除草剤とか芝刈り機とか売ってないんですよね。何かアイテムがあるんだろうか?
 それはともかく,やってきたのは「ソーシャルワーカー」という変な名前の女性庭師。試しに声をかけてみると,初対面なのに「口説く」コマンドが出てくる。マツモト本人も彼女と仲良くなりたいという願望を持ったため,高い魅力値を武器に口説いてみたら,たちまち友達になってしまった。これって,どういうこと? ともかく,さらに「建築モード」を使い,ただの板だった床をおしゃれなフローリングにし,寝室にはカーペットを貼りまくる。ダブルベッドも買う。冷蔵庫だって最新型。シャワーと便器も新調。さらにさらに,貯まったシムオリオンを使って,必殺アイテム「愛のバスタブ」を購入。これは,お湯を張ると,周囲にキャンドルが灯り,ハートだのバラだのが次々に湧き出してくるという,見てるだけでこっぱずかしくなるような代物である。これでどうだ姉ちゃん!
 が,果たして結果はダメ。バージニアを招待し,やってきた彼女に「一緒に入ろう」と勧めると,あっさりオッケー。くるっと回って下着みたいな水着姿になり,お湯に浸かって仲良く会話したり,お湯を掛け合ってじゃれあったりするものの,コマンドに変化はないのだ。
 しかも,バージニアの奴め,「愛のバスタブ」を出たあとも水着のままで家の中を歩き回ってくれやがる。うわ,嬉しい。最高。しかし,ここまでしておいて何もないってのはないんじゃないの,と私は声を大にして言いたい。「押し倒す」とか「クロロホルムをかがせる」とか「2万円渡す」とか,そんなコマンドが出てきたっていいじゃないか,と机をバンバン叩いちゃうのである。なんでだよー。

というわけで,浮気に走るマツモト。もう一人のレジ係は,なんにもしなくても生涯メーターが上がったので,家に誘ってみる。また,街角で声をかけたギャルは,トイレまで付いてくる変な女。やっぱバージニアだよなあ

しかも,バスタブを出たあとも水着のままのバージニア。そんな格好でフラフラされたらオジサンもうダメ。彼の仕事の都合で暗めの写真が多くて申し訳ないが,個人的には,夜の方がムードが出ていいと思う。だが口説けん!



 けっ。いつまでも「いいお友達」のままかい? おじさんだと思ってなめちゃダメだぞ。なんてね。そんなある日,ちょっと不安になる出来事が発生した。いつものように仕事に出かけて帰ると,マツモトが友達を連れてきたのだ。
 普通なら男のシムは問答無用で追い返すのだが,見ると将校仲間である。名前はサミュエル。将来の出世のために,友達は多いほうがいいらしいから,このさい,ちょっと話してみるかな。……と思っていると,二人はたちまち意気投合。バーの数値がみるみる上がっていくではないか。しかも,あろうことか,マツモトは「サミュエルとダンスを踊りたい」だの「サミュエルとキスしたい」だの,とんでもない"願望"を抱く始末。サミュエルも悪い気はしていないらしく,率先してせっかく買った「愛のバスタブ」に入ってしまう。続いて入るマツモト。「口説く」コマンドも普通に出て来る。
 せ,青年将校の禁じられた愛? うっそー! いくらEA本社がサンフランシスコ近郊にあるからって,それはないよ。だが,そういえばマニュアルにも「恋愛関係は,異性の間だけに成り立つ関係ではありません」と,むちゃくちゃ不安になるようなことが書いてあったような。その証拠に,マツモトの願望メーター,気分メーターとも最高潮のプラチナ状態。こんなの初めてだ。どうしよう?

 なんとかサミュエルに帰ってもらって,その日は事なきを得たが,それもこれも,そもそもバージニアと結婚できないのが諸悪の根元なのである。万策尽きた私はモニターの前で腕を組んで唸ったが,そのとき,ふと公式サイトの一節が頭に浮かんだ。もしかして,バージニアちゃんて……。次号へ続く。

将校仲間のサミュエルといい感じになってしまったマツモト。ダンスを踊りたいだのキスしたいだの,まさか,そんな! の展開である。左にいるのはサミュエルの友達。この後,全員で「愛のバスタブ」へ。大活躍だなあ


■■松本隆一(ライター/学生)■■
熱心な4Gamer読者ならお分かりのように,どちらかというとミリタリー系ゲームを愛するライター。最近は「Call of Duty:United Offensive」にドップリとはまり,「ムズいよ〜」と(喜色満面で)悲鳴をあげている毎日だ。しかしミリタリーものとは180度違うザ・シムズ2の連載で,「結婚できないよ〜」と叫んでいるのがこれほど似合うのだから,不思議である。


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