HalenのRTS講座 入門編

最終回 「戦闘・戦略編」(後編)

主導権を握れ! 速攻とは

セトは聖職者で,自然の動物をユニットに転向できる。研究を行うことで動物がより強化される。画像は,その動物を率いて先制攻撃中の様子(AoM)

 「攻める」ことの意味とは,敵国にダメージ(内政へのダメージや軍事ユニットへのダメージ)を与えること以外に,敵軍事ユニットの活動を停滞させることにもある。つまり,敵の軍事ユニット群を縛り付けるということだ。

 お手軽な戦術として,まず"速攻"が挙げられる。その名の通り,早期に攻撃を仕掛けるというこの戦術には,どのような利点があるのだろうか。
 そもそも速攻とは,あくまでも"先手を仕掛ける"ということ。自国の内政拡大をストップさせてまで攻撃に専念する必要はなく,相手の初期内政の組み立てを妨害できればよい。作成するユニットは,敵国労働者への攻撃力さえあるなら正直どんなユニットでも構わない。前回紹介した「内政荒らし」を早い段階で仕掛けることで,相手の出鼻をくじくことを目的とした戦術である。
 攻撃を仕掛けるタイミングとしては,やはり敵国が軍事ユニットの準備に取り掛かる前が好ましい。早期に軍事ユニットを作成するため,こちらの内政発展にも多少の遅れが生じてしまうが,敵が被る内政の遅れを考えると,決して悪い取り引きではない。

 さらに速攻は,敵国の内政への妨害と同時に,ゲーム全体の"主導権を握りやすい"というところが魅力的。こちらが先に攻めるということは,敵国としては自然に後手(守り側)に回ってしまう。さらに敵にしてみれば,陣地付近に相手の軍事ユニットがうろついている(可能性が高い)ので,いったいどこから攻めてくるのか……といったことまで考慮に入れなければならない。こちらは援軍を送り続けることで軍隊としての力も強力になり,敵国を圧倒できるチャンスが生まれてくる。
 ただ,速攻時に注意しておきたいのが"カウンター"だ。熟練者になればなるほど,いくら圧力を掛けようが捜索などで冷静に相手の意図や呼吸を見抜けるため,突然の反撃で不意に大ダメージを受けかねない。攻めているときに自陣が不安というそこのアナタは,圧力をかけつつもタワーなどによる自陣の防御を同時に行うべし。


大規模な攻撃とは

ヒーローのレベル,ユニットの数で勝利を確信したのちの侵略場面。対建築物用のユニットも含まれているため,全壊させるのも比較的楽に(WC3)

 攻撃には大きく分けて,"ジャブ"的な攻撃と"ストレート"的な攻撃の2種類が存在すると筆者は考える。ジャブはちょっかいを出すような軽い攻撃で,ストレートは国家の根本建物などの破壊も見据えた攻撃だ。勝ち負けの判断が下される状況というのは,多くはこのストレートが繰り出されたときだが,ジャブの積み重ねも因果関係にあるのはいうまでもない。
 まずはジャブで敵の軍事ユニットを消費させ,内政を混乱させ,軍事ユニット同士の戦いの勝利を見込めたときにストレートを繰り出す――といった具合だ。
 しかし,このストレートにも2種類あるので覚えておいてもらいたい。簡単にいうと,堂々と行うか裏をかくかということで,もっと噛み砕いていうならば,敵の軍事ユニットと正面からぶつかり合うか,敵の軍事ユニットがいない場所を攻めるか,である。どちらにしても欠かせないのは対建物用の攻城兵器で,これなくしてストレートの成功はありえない。
 攻め込むときは,軍隊の並列を保つようフォーメーションコマンドを設定しておこう。とくに最後の総力戦では,軍事ユニットが多すぎてどれがどれだか分からないといった事態になることも,しばしばあるからだ。そのとき,必ず先頭には壁役として,頑丈な対建物用の攻城兵器を位置づけさせよう。

戦闘時のワンポイントアドバイス

防御スタイルに徹し,究極ユニット"ティタン"を作成したところ。どんな状況だろうが,それを引っくり返すほどの能力を持っている(AoM)

 戦闘・戦略編(前編)で触れたように,各軍事ユニットは必ずといっていいほどジャンケンの関係にある。大前提としてこれを理解していなければ戦闘などできないが,理解してもなお戦闘が不安だ……という人のために。
 まず自分の軍事ユニットの数量が目に見えて少ない場合,迷わず退くべし。敵軍事ユニットが追撃してくるだろうが,そうした場合にも対応できるよう,軍事ユニットの"安全ゾーン"という場所を構築しておこう。防御塔が建ち並ぶ場所だったり,軍事用ユニット作成用の建物が建ち並ぶ場所だったり……状況次第で異なるが,必ず敵軍事ユニットがそれ以上は深追いできないゾーンというのを,本陣や前哨基地などに作っておくべきだ。

防御スタイル

プレイゲームのボタンを押すだけで,自動的に対戦相手を探してゲームが開始されるBattle.net。時間の短縮にも繋がるし,便利なものだ(WC3)

 防御スタイルは,内政優先型でゲームを進めていれば,自然とそうなる。防御型,つまり内政重視型とは,「相手よりも性能の高いユニットを作る」ための戦略である。
 例えば「エイジ オブ ミソロジー」を筆頭とする歴史系RTSは,時代やテクノロジーを進化させることで,より強力な軍事ユニットが生産可能になる。敵の攻撃を防ぎながら,資源をたっぷりと貯めて強力なユニットを作成。序盤の劣勢を盛り返し,後半になればなるほど力を発揮するのが,このスタイルの利点だ。
 ただし,どうしても後手に回るパターンが多くなってしまうため,また,ときには速攻による大ダメージを受けることもあるため,(作品にもよるが)防御スタイルは比較的難しい。しかし,そこを防げば一気に盛り返す力を持っているだけに,ディフェンシブが論外というわけではない。
 内政重視型でいくとして,ノーダメージのまま強力なユニットを出すまでたどり着けるというのは,相手も同じ防御型戦術を採らない限り,まずあり得ない。つまりダメージを受けることは前提なわけで,重要なのはプレイヤーの目的(作る予定のユニット)に必要な資源にのみ注力するということである。
 例えば目的のユニットが金と食料を要する場合,双方の資源をうまくカバーできる位置に防御塔を建てておけばいいし,万が一防御塔を建設する前に敵に攻められた場合,ほかの資源を採取している労働者で軍事ユニットを一時的に攻撃し,時間を稼ぐ手段などもある。多少の犠牲は仕方ないものなので,そこでたじたじしていても始まらないのである。

RTSにおける防御とは

エジプト圏は,街の中心から"傭騎兵"を作成可能。一定時間経過後に死んでしまうものの,予想外の攻撃にも対応できる防御用ユニットだ(AoM)

 敵軍隊に自陣に入り込まれ,蹂躙されてからどう追い返すか? というのは,基本的に防御とはいわない。RTSにおける防御とは,いかに攻め込まれてないようにするか,である。
 熟練者はわざとに敵を攻め込ませて,それを"利用"する人もいるが,初心者に有効な防御戦術は,やはり防御塔や壁などの防衛用建物を建設して,自陣へ立ち入らせないようにすること。案外この防御塔は重要な役目を担っていて,敵としても防御塔の攻撃範囲内には入りたがらない。というか入れないことが多い。

 ただ,どうやっても侵入される場合もある。自分の軍事ユニットが近辺にいれば迎撃に向かわせられるが,例えば敵陣地を侵略中だった場合は戻しても間に合わないこともある。ここで労働者と資源の採取を断たれれば,敗北は確定的だ。というわけで,敵の軍事ユニットが自陣に長い間居座っているのは,負けに繋がる可能性が大幅に上昇するわけだ。
 このような状況では,敵軍事ユニットを追い返すまたは倒す必要が生まれるわけだが,そこで必要となるのが対敵軍事ユニット用のアンチユニットで,これをいかに素早く作成して現場に向かわせられるかがミソである。ポイントとしては,自陣付近に軍事ユニット作成用の建物を建設しておくことと,アンチユニットの存在を敵にアピールすること。徐々に量産して,敵軍事ユニットを駆逐するのだ。

マルチプレイを遊ぶべし

空からの攻撃は実に気分がいい。さらに時代を進化させることで,禁断の核兵器も使用できる(RoN)
 本連載記事の第1回でも触れているが,何度でも言わせていただこう。RTSの面白さはマルチプレイにある。小耳に挟んだ情報によると,何でも多くのRTSプレイヤーはシングルプレイ(キャンペーンやコンピュータとの対戦)を遊び倒すと満足してしまうとか。シングルプレイに注力されたタイトルもあることはあるが,RTSは決してシングルプレイだけではないということを覚えておいていただきたい。

 またマルチプレイは,シングルプレイとは異なって,より戦いらしい戦い(?)が繰り広げられる。"人間"が相手だからだろうか,緊張感も相当なものだし,もっといえば精神的な面も勝負の行方を左右する。例えば対戦前に「俺は速攻を仕掛けるから」なんてブラフを張るのも,心理戦の一つだ。もちろん行動に移すかどうかは別として,相手は少なからず余計な思考をしてしまうだろう。とにかく,ゲームのみならず,勝負事が好きな人にもうってつけのジャンルといえるのが,RTSなのだ。

 確かにオンラインゲーム初心者にとって,インターネットを介して人と対戦するのは多少ハードルが高いというのも事実。だが,最近は昔に比べて対戦方法も随分と簡略化されており,専用のサーバーが用意されているタイトルがもはや一般的といっても過言ではない。アカウントの登録だけすれば,あとは対戦開始のボタンさえ押せばいつでも始められる。

 マルチプレイを遊ぶうえで忘れてはならないのが,"コミュニティ"の存在だ。もちろん一匹狼として対戦に明け暮れるのが楽しいという人もいるだろうが,やはり仲間とわいわい盛り上がったり,戦略について語ってみたり,情報のやり取りをするのもマルチプレイの醍醐味の一つである。
 主なコミュニティの場としては,まず専用サーバーに備え付けられている日本人用ロビー,そしてIRC(Internet Relay Chat)が挙げられる。どちらを利用するにも一般的なマナー,程良い積極性は当然必要なので,その点はお忘れなく。

 

あとがき

 全4回に渡ってRTS入門用連載を続けてきたが,早いもので今回が最終回である。戦闘だったり,戦略を練ることだったり,国を構築していくことだったりと,RTSには面白い要素がふんだんに取り込まれていているのに,それが裏目に出て初心者にはとっつき難い。そんなイメージを少しでも払拭できたらな,と思いながら細々と書いていた本連載だが,少しは参考になっただろうか。
 基本的に昨今有名なタイトルをモチーフとして書き上げたために,ありとあらゆるRTSに適応できる記事とはなっていないのが大変恐縮ではあるが,一番重要な点は紹介できたように思う。詰まるところ,軍事ユニットを作るまでの過程(この記事では内政と仮定した)と,軍事ユニットの目的を明確化するということだ。勝敗を決定付けるポイントは,土台を安定化させるという地味な作業だということを,忘れずに覚えておいてほしい。派手なパフォーマンスは,土台がきっちりしてきたら自然とお目にかかれるものなのだ。
 最近はFPSやMMORPGブームの波におされ気味のRTSだが,オンライン対戦プレイヤー層が増えて対戦が活発になればなぁ……と,心底思う今日この頃である。これを読んだ,掛けだしのアナタ。ぜひとも近い将来オンライン対戦にデビューしてみてほしい。

 

■■Halen(4Gamer編集部)■■
なんと本連載第3回掲載のあと,ウイルスで喉をパンパンに腫らして「筆者急病のため休載」までやらかす始末。すっかり週刊連載持ちの大先生の仲間入りを果たした。とはいえ今回で最終回。本連載の感想,Halenへのファンレターはメールで「こちら」まで。

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