ストラテジー 4Gamer.net Review
 
RPG風味を生かした秀作ターン制ストラテジー
ウォーロードIV 日本語版
Text by 虎武須(Kobs)
14th Jul. 2004


ターン制を再評価したくなるファンタジーストラテジー

相手と自分が交互に移動,攻撃するターン制を採用する。時間に追われずじっくりプレイできるのが大きな利点である

  7月22日に発売予定の「ウォーロードIV 日本語版」(以下WL4)は,剣と魔法が支配するファンタジー世界を舞台にしたターン制ストラテジーゲームだ。"IV"と付いているだけにシリーズ4作めなのだが,恥ずかしながら筆者は今回初めてこのシリーズをプレイした。そして,どうレビューしたものかと考え込んでしまった。というのもこの作品,確かに万人受けするとは思えないが,筆者の感覚では面白すぎるのだ。実際,仕事であることも忘れて大ハマリしたわけだが,地味で時間のかかる作品なだけに,果たして若い世代のプレイヤーにもウケるのか,判断に窮した次第である。

 このゲームは,平たくいうとターン制の国取り合戦だ。筆者のような30代半ばのプレイヤーにとって,このようなスタイルはおなじみのもので,まったく違和感はない。またRPG的な要素を大盛りで加味することによって,さらに「燃える」仕組みとなっている。  だが,現在のストラテジーの主流はリアルタイム制であり,短時間で決着のつく作品がウケているのはご存じのとおり。RTSでは,それこそラッシュ一発でその後の展開が見えてしまうことも少なくない。つまり短時間で遊べ,爽快感があって,見た目が派手なものがウケているわけだ。  そうしたストラテジーゲームの趨勢に真っ向から立ち向かうWL4が,どこまで食い込めるか個人的にも非常に興味深い。

イシーリアには32の国と地域があり,キャンペーンではこれらを順番に制圧していく。10か国を取ればシナリオクリア キャンペーンは10本のシナリオからなるストーリーに沿って展開され,シナリオ冒頭では,プレイの目標が示される キャンペーンではマップごとにショートムービーが用意され,それぞれのマップの攻略にかかるときに再生される


ストラテジーのシステムでRPGの雰囲気を

すべてのユニットがレベルアップの対象となる。ユニットの性格や戦術に合わせて伸ばす技能を選択したい
 WL4では,まずプレイヤーの分身となる「英雄」を,数十人の候補の中から一人選択する。英雄は将棋の王将のような存在で,首都の城から出ることはできず,特殊技能や強力な魔法を使って自陣営をサポートするのが仕事だ。もちろん,首都に攻め込まれたら直接戦うこともできるが,英雄の死は敗北を意味するので,あくまでサポートが主体と考えていい。  そして,さまざまな種族の中から一つの陣営を選んでプレイするわけだが,敵の城や中立の城を陥落させることで,ほかの種族のユニットも生産できるようになる。それぞれのユニットには技能があり,何かしら他ユニットに対する優位点を持っているので,異なる種族のユニットを生産できれば,それだけプレイを有利に進められる。

 ユニットには「勇者」と「通常ユニット」の2種類がある。勇者はグループのリーダーとなるべき存在で,通常ユニットよりも高めの技能やステータスを持ち,クエストなどで得たアイテムを装備させることで強化できる。
 基本的にユニットは最大8ユニットで一つのグループを組んで行動するのだが,これはRPGのパーティだと思えば分かりやすい。前衛ユニットをメインにしつつ,遠隔攻撃のできる弓兵を付け,回復役や特殊技能によるサポートユニットを入れて……と,構成をあれこれ考えるのが楽しい。いくつものパーティを操ってRPGをやっている感じだ。ほかにも,廃墟に巣くうモンスターを排除することで,財宝(お金,アイテムなど)や経験値,さらには同盟を結んでくれるユニットが得られ,さらに,ターンが進むにつれて発生するクエストを遂行すれば,有益な報酬が得られるなど,RPG的要素がかなり濃い。

 さらに特徴的なのが戦闘システムで,画面が戦闘シーンに切り替わったら,まずグループ内のどのユニットを戦闘に出すかを決める。この時点では,相手が何を出してくるか分からない。いったん戦場に出したら,どちらかが死ぬまで出られないので,ユニットは慎重に選ぶ必要がある。後衛によるサポートも可能だが,基本的には一対一のガチンコバトル。勝てば経験値が入るが,ある程度レベルの上がったユニットを失うと,何ともいえない喪失感に襲われる。とくに勇者を失うのはかなり痛い。

 こうして相手の国を滅ぼし,英雄を倒せばゲーム終了となる。ゲームが終了すると,そのゲームで得た経験値によって英雄自身がレベルアップし,陣営を強化したり技能を身につけたりできる。また,そのゲームで活躍したユニットを3組まで配下に置き,次のゲームで使用できることになっている。  英雄はWL4内におけるプレイヤーの分身であり,シングルゲームでもマルチプレイでも,すべてのゲームモードで使用でき,かつ成長していく。つまりひとりの英雄を育て上げるRPGに近い感覚で,システムが作られているのだ。

ほかのユニットと異なり,英雄は一つのゲームが終了したところで最終的な経験値を獲得し,レベルアップする ストラテジーでありながら,RPGのように「クエスト」が用意され,ゴールドやアイテムが手に入るのも面白い クエストなどで得たアイテムは勇者のみ装備できる。配下に置く勇者に与えて,各種技能を向上させるのに使おう

戦場に出られるのはグループから1ユニットだけ。死んだら次のユニットを出し,グループが全滅するまで戦う 敵の都市を陥とすと画面ような選択肢が。支配下に収めれば作れるユニットの種類が増えるが,掠奪,破壊も可能 英雄の呪文は,習得に数ターンを要する。どの呪文から習得していくかは,自分の戦術を組み立てる重要な要素だ


ビジュアルは地味だがじっくり遊べる

今回育てた英雄と国の情報を表示したところ。右上は国のイメージで,建造物が多くなるにつれて強化される

 WL4のグラフィックスは実にシンプルで,まるでひと昔前の作品のように見える。演出に凝った最近のRTSと比べると,かなり地味な印象を受けるのではないだろうか。このゲームはあまりにもビジュアル面で損をしていると感じた。もっとも,ターン制のため,アニメーションなどに凝ると個々の戦闘が長引き,プレイ時間が延びるという問題もある。そこは差し引いて考えるべきだが,もう少しプレイヤーにアピールする演出が欲しいところだ。この点さえクリアすれば,ゲーム性が素晴らしいだけに大化けする可能性があると感じた。
 基本的な操作はマウスだけででき,操作性に問題はない。ただ,ユニットやグループの管理がしづらく,目的地の指定が面倒なのがやや残念な点である。
 今回プレイした評価版ではネットワークプレイを体験できなかったが,WL4では最大8人による対戦ができる。興味深いのは,「ホットシート・プレイ」という,1台のPCを代わるがわる使う対戦や,「Eメール・プレイ」という,メールを交わしての対戦が用意されている点だ。Eメール・プレイの詳細は不明だが,長時間に渡る対戦が予想されるだけに,昔ながらのシステムとはいえ工夫を凝らしているのが分かる。

 ターン制というスタイルに抵抗を感じるプレイヤーもいるかと思うが,リアルタイム一辺倒の現在のストラテジージャンルにあって,筆者としては逆に新鮮味すら覚えてしまった。一般的なRTSでは,アクションゲーム並み,場合によってはそれ以上に素早い操作が要求される。「ついていけないよ」と投げ出すプレイヤーもいることだろう。その点,ターン制ならば操作に煩わされることなく,じっくり戦略を練って行動できる。

 シンプルでありながら奥が深く,英雄やユニットを育てるというRPG的要素も相まって,ハマリ度は非常に高い。1ゲームは優に4〜5時間かかるので,夏休みにじっくり遊べるゲームとして強くお勧めしたい。非常に個性的な作品であり,ビジュアル面だけでは想像のつかない「掘り出しモノ」的な価値を見出せることだろう。


英雄がレベルアップするごとに,収入源やユニットに対する支援になる建物を建てたり,技能を強化したりできる ターンが進むと同盟や加勢を申し出てくるユニットが現れる。そうしたユニットが「廃墟」に潜んでいることも ゲーム終了時には英雄の配下に残すユニットを選択できる。ここで選ばれた配下は,次のゲームに持ち越せる

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