ストラテジー 4Gamer.net Review
 
伝統と格式を誇る現代戦ストラテジーに最新作登場
大戦略パーフェクト2.0
Text by 松本隆一
14th Jul. 2004


国産PCゲーム(たぶん)最長の歴史と最大のバリエーションを誇る現代戦ストラテジー"大戦略シリーズ"

1985年の発売以来,もうじき20年めを迎える国産ストラテジーの最高峰「大戦略」。その最新作が「大戦略パーフェクト2.0」だ。過去の遺産を継承しつつ,初めての人でもオッケーな懐の広さが魅力だ

 ふと考えてみると,純国産のPCゲームをプレイするのは本当に久しぶりだ。最近遊んだのは,ほとんどが海外製ソフト。「いつの間にこうなっちゃったのだろう」と思いつつ,「ところで最後にやった国産ソフトは何だったっけ」と頭をひねると,これがなんと「現代大戦略2001」。そういえばPC-9801の頃から,なんとなく"大戦略シリーズ"だけは欠かさず遊んでいたような記憶がある。
 つまり私は,大戦略に関してはかなりのヘビーマニアということになるな。それにしては,CPUに負けてメーカーの人から「まさか!」と驚かれた経験も持っているのだが。まあ,そのような人物が,これからシリーズ最新作「大戦略パーフェクト2.0」のレビューを書くのである。心してほしい。しなくてもいいが。
 なにしろ,初代「現代大戦略」から数えて約20年の歴史を持つシリーズだけに,把握しきれないほど多くのバリエーションがある。全部言える人は相当すごいが,たぶん金にはならない。このシリーズは,初代から連綿と続くターン制のシステムと,1989年の「大戦略III」から採用されたリアルタイム制の二つのゲームシステムに大きく分けられるだろう。いうまでもなく,ターン制とは将棋や碁のように敵と味方が順番に交互に攻め合うもので,リアルタイム制とは敵味方が同時に戦うものだ。ちなみに後者は現在,同社から発売されている「リアルタイム版大戦略パーフェクト1.0」に進化している。

ルール設定画面。項目は非常に多岐に渡っており,組み合わせはほぼ無限に近いと思う。お好みでどうぞ シナリオによっては,実際に存在する地形によく似ていたり,写真のような戦争の設定があったりする 画面表示は,大,中,小の三段階に切り替えられる。大画面だと戦略が立てやすいが,ユニットが小さすぎるか

ルールのほかにゲーム環境も細かく設定できる。意味が分からないときは,ぶ厚いマニュアルを参考にしよう さっそく戦闘開始。占領都市数が少ないと軍資金もなく,高価な武器を購入できない。とくに船舶類は高値だ 世界の現代兵器のほとんどが,このゲームの中に収録されていると思っていい。ハッキリいって大変勉強になる


今回の最新作はどこらへんがパーフェクトなのか

空母対攻撃機の戦闘。画面が薄暗いが,これは夜の戦闘だから。ゲームには昼夜の概念も導入されている

 大戦略パーフェクト2.0は,シリーズの主流であるターン制システムを採用している。どこらへんが"パーフェクト"なのかというと,理由は主にルール設定機能にある。この編集機能を使うことにより,生産フェイズの有無,あるとして何ヘックス以内か,索敵があるかないかなど,実に細かく状況を設定することが可能だ。これを駆使すればターン制を採用した過去すべての大戦略のルールを再現できるのである。これぞ,まさにパーフェクトたる所以だ。ちなみに私自身はビックリするのが苦手なので,索敵モードを外し,ヘックスもよく見えるようにしたうえ,中級ルールにほぼ準じたルールで遊んでいる。これならあまり負けることもなくて嬉しいが,ヘビーマニアのやることじゃないな。
 ちなみに2.0では,1.0と比べて多くの新ルールが追加された。大きなところでは昼夜の概念の採用,補給線の導入などがあり,細かい新ルールや変更点はそれこそ大量にある。だいたいどれもゲーム内容をより複雑かつ高度にするので,中〜上級者なら望むところといった要素だろう。もちろん,これらはすべて設定可能なので,新たな変更点をオフのまま楽しんでもいいのだ。
 大戦略パーフェクト2.0には「マップエディタ」と「兵器エディタ」も別プログラムとして付属しており(大戦略パーフェクト1.0はマップエディタのみ。パワーアップキットで1.0から2.0にバージョンアップ可能),自分で好きなマップを作ったり,独自の武器を作り出してゲームに参加させられる。戦車にプロペラとヘリの移動特性を付けて「ヘリ戦車〜」などという,軍事評論家が見たら本気でいやな顔をするであろうユニットを生み出していもいいのだ。
 とはいえ,デフォルトでマップ134枚,登場兵器に至ってはなんと1100種類以上(1.0では700種類以上)が用意されているというのに,いまさら私が何を付け足せばいいのだ。いずれにしろ,兵器,マップなどなどに関する量的拡大に関しては,もうまったく文句がない。一生遊んでいられそうなボリュームだ。チョールヌイ・オリョール主力戦車,ピサロ歩兵戦闘車,九龍(クーリョン)自走ロケット砲など,兵器マニアを自認する筆者でさえ「なんだこりゃ?」と思ってしまうような兵器が,あれこれ揃っており,しかもそれぞれの兵器が多彩な種類のミサイル,砲弾などを搭載できるのだ。

生産すべき兵器の性能が分からないときは,兵器詳細画面を使って確認。敵部隊に対して相性のいい物を選ぼう 攻撃対象を決めると,あらかじめ戦果予想が分かる。100パーセント正確な結果ではないが,今回は攻撃見送り 状況によって武装を変え,同じ兵器を多目的に使うことが出来る。ただし,武装交換には1ターンを消費する

敵首都に肉薄する我が攻撃部隊。ここまでくれば勝利は目前。始めるとなかなか止められない面白さは昔のまま さまざまなウィンドウを開いて戦況を確認。いかに勝つかもマニアのこだわり。ただ,これじゃマップが分からん 勝利! とはいえ結果は連隊長。上から二番目だけど,まだまだだ。師団長を目指して戦いを重ねていきたい


軍事関係や国際問題に疎くてもぜんぜん平気

本作の目玉のひとつである兵器エディタを開く。兵器作成ウィザードを使えば,一から制作する必要がなく楽だ

 兵器を生産し,進攻し,敵を撃退し,歩兵が都市や工場を占領し,占領することでさらなる軍資金を得て,最終的に敵の首都を支配して勝利を収める。この「大戦略」に共通する一連の流れは,ちょっと遊ぶだけで簡単に理解できる。
 本作のゲーム性は,軍事シミュレータ的なリアルさより,むしろ駒(ユニット)を盤上で動かすボードゲーム的な面白さがメインになってくる。ターン制だから,重要な局面では一晩かけてじっくり考えられる。可能な戦術があまりにも幅広いため,人によってクセが出やすいのも特徴。個人的には,どうも筆者は敵の進出に対して過剰な手当てをしがちで,そのためターンを無駄にしてしまい進撃が遅く,「石橋を叩くだけで渡らない」という私の性格が如実に現われていて照れくさいものがある。
 とはいえ,こんな人間が言うのもなんだが,AIにはやはり不満が残る。相変わらずAIの戦略眼は乏しく,局地戦においてはそれなりに強いものの,先を見据えた戦いをしているようには感じられないところもある。戦争が進むに連れて単純な移動の繰り返しになりがちで,AIにはさらなるチューンアップが欲しいところ。もっとも,主要なユニットだけを移動させ,残りのあまり重要ではない部隊をCPU操作に任せる機能など,単純作業を回避するような仕掛けもいくつかある。
 また,この大戦略パーフェクトは,1台のPCで最大8人対戦が楽しめるほか,メール対戦やネット対戦の機能もあるので,慣れてきたら人間相手に戦ってみるのも愉快だろう。
 グラフィックスに関してはとくに劇的な変化はなく,戦闘シーンのアニメーションも真横から見たオーソドックスなもの。最初は,この時代にこの戦闘シーンはちょっとあれかな,とは思うものの,とくに味方が攻撃を受けているときなど「がんばれ,生き残れ!」とだんだん力が入ってくるから,人間とは単純なものである。後方司令部のムードを強く味わいたいときには,戦闘シーンのアニメーションをオフにするのもありだ。マップも含め,基本的にすべて2D描画だから,PCパワーはそれほど必要とされず,ノートPCでも十分に遊べるだろう。

 基本ルールは実にシンプル,各ユニットの特性はすぐ納得できるし,複雑なキー操作もなく基本的にマウスだけですべての操作が可能。実はストラテジー初心者の入門用としても問題ない作品である。結論として,この大戦略パーフェクト2.0は大戦略ビギナーからコアの大戦リャカーまで満足できるように作られているので,どちら様も安心して手を出してオッケー。過剰な演出もなく,シンプルかつオーソドックスな作りで,過去のシリーズのいいとこどりの,まさに集大成ともいえる。余った時間にひと勝負,という感じでぜひ楽しんでほしい。


各種のウィンドウを開き,作成する兵器の特性を決めていくのだが,情報が多すぎて,なかなか難しい 作りたいものに近い既存兵器の詳細を調べ,その数字を変化させて新兵器を作ることもできる。これは便利 マップエディタ。地形を作り,兵器を配置するだけでなく,ルールやシナリオも設定できるなど,機能は多彩だ

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スクリーンショット集
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ムービー(1分29秒:80.1MB)
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