RPG 4Gamer.net Review
 
三国志と武侠の魅力を詰め込んだ台湾産RPG
幻想三国誌
Text by 星原昭典
29th Sep. 2004


■ストレスなく進むシングルプレイRPG

仲間に加わるキャラクターには女性が多く,会話の場面では恋愛ゲームのように,バストアップ画像が表示される。ちなみのこの貂芝は貂蝉の子供。つまり呂布の娘という設定。気性が荒いのもうなずける……

 「幻想三国誌」は,台湾のメーカーUserJoy Technology(宇峻科技)のシングルプレイRPGを日本語ローカライズしたものだ。タイトルからも分かるように,ゲームの舞台はいわゆる"三国志"の世界がベースになっており,劉備,曹操,諸葛亮といった有名人がNPCとして登場する。それに加えて,本作には"武侠モノ"のエッセンスも盛り込まれている。武侠モノとは超人的な技や精神力を持った人物達が登場する活劇のことで,中国ではとても人気のある物語ジャンルだ。映画では2000年制作の「グリーン・デスティニー」や2002年の「HERO」などが該当する。
 PCゲームにおいても,MMORPG「新・天上碑」やシングルRPG「神G侠侶」など,日本語でプレイできる武侠テーマの作品は増えてきているが,本作の舞台はまさに三国が鼎立するタイミングに設定されており,主人公達はその動乱の中に身を投じていくことになる。

 本作の基本的なゲームシステムは,コンシューマタイトルでよく使われているエンカウントタイプのもので,クオータービューで表示されたマップの中を移動し,敵と出会ったら戦闘画面に切り替わる。戦いに勝利すれは経験値や「精元」値が入手でき,経験値が一定以上たまるとキャラクターレベルはアップする。そして,ストーリーを追いかけながら町やダンジョンを次々と巡っていくことで,ゲームは進行していく。

 ときどき,脇道的なクリア必須ではないクエストがあることを除けば,物語はほぼ真っ直ぐに進む。素直に物語をなぞっていくだけで,自然とレベルアップできるようなバランスになっているので,"レベル上げ"や"お金稼ぎ"といった単純作業に煩わされることは少ない。このタイプのRPGの場合,途中でどこに向かえばいいのかが分からなくなるタイトルもあるが,本作には「記録」というジャーナル機能がついており,これを使えば次にすべきことがひと目で分かるようになっている。数日空けてゲームを再開したときなどには,非常に便利な機能だ。

招式(必殺技)に陣形,アイテム強化に召喚獣と,戦闘まわりにはたくさんのアイデアが盛り込まれている 2Dグラフィックの背景の上をかわいらしいキャラクターが動き回るゲーム画面。マップは広すぎず,移動にストレスはない イベントシーンには,ときおりCGが挿入される。とくに女性達の気持ちが高まったり,動いたりするときに多いようだ
こちらもイベントシーンの演出。中には,カメラワークと大きな動きを組み合わせた迫力あるシーンも存在する 会話中に選択肢が示されることがある。選択によって女性達のパラメータが変化し,後半で物語が分岐するようだ プレイ中に突然挿入されるミニゲーム。結構難しい。だがクリアできなくてもストーリーが止まってしまうことはない


■色々な要素を詰め込んだ,にぎやかでスピーディな戦闘

必殺技や魔法のような"招式"は,派手なエフェクトとともに繰り出される。技の応酬は見ていて爽快だ

 戦闘に参加する各キャラクターにはタイマーが設定されており,戦闘開始および自分の攻撃終了と同時に,このゲージが埋まり始める。砂時計に砂が満ちるのと同じく,ゲージが満タンになったものから行動できるという仕組みだ。これ自体は別段目新しいものではないが,「幻想三国誌」では,この基本部分にさまざまな要素を付加することで,戦闘をより刺激あるものとしている。

 一つは「招式」と呼ばれる各キャラクター固有の特殊攻撃だ。これはほかのRPGで見かける魔法や特殊技能にあたるもので,MPやマナのような「真気」を消費して使用する。招式には回復・支援・攻撃などさまざまなタイプがあり,それぞれ独自の画面エフェクトも用意されている。アクションRPGなどでよく使われる"コンボ"の仕組みもあって,味方と攻撃のタイミングがうまく合うとコンボ完成となり,敵に通常以上のダメージが与えられる。
 さらに戦闘中には「召喚獣」を呼び出すことも可能となっており,呼び出された召喚獣は自動的に,さまざまな術を繰り出してくれる。戦闘時にはこれら多くの行動が重なって展開するので,各種エフェクトやダメージ表示,コンボ表示などが入り乱れ,画面は非常に派手でにぎやかなものとなる。

 これらに加えて,キャラクターの能力にボーナス(場合によってはペナルティ)を与える「陣形」の要素や,「晶塊」と呼ばれるクリスタルをスロットにはめ込むことで行う,武器強化の要素も用意されているなど,色々なRPGから持ってきた要素がてんこ盛りだ。どの陣形を使うのか,どの武器をどう強化するのか,どの招式を鍛えるのか,召喚獣はどう育てるのかなど,プレイヤーの選択肢は極めて広い。
 この先どんな招式を覚えられるのかなど,先が見えないところがあるため,何から鍛えようか少し迷ったが,プレイしてみた感じでは,どの能力を優先して育てても,後になって"手詰まりになることはない"ようだ。

戦闘のテンポは非常によい。コマンドをホットキーに登録すれば,指示の入力が軽快に小気味よく行える メンバーにさまざまな効果を付加する陣形は,プリセットのほか,戦闘中に真気を消費して変更することも可能だ スロットに晶塊をセットすることで,武具を強化できる。変わった形の晶塊を使うには,それに合った空きスロットが必要だ
召喚獣は,戦闘中に使役することで経験値を得ていく。育てていくと姿が変わり,最後には成獣へと成長する。どの能力を伸ばすかによって,最終的な姿は変化するようだ。成長後も,スキルツリーに余剰ポイントを好きなように割り振ることによって,個性を持たせることが可能だ。パーティに必要な能力を見極めて,それを取得させよう



■文化背景を知れば,海外ゲームはより楽しめる

三国志に登場する英雄・豪傑達と,肩を並べて戦えるのも本作の魅力。趙雲はやっぱり美男子でした

 "誰にでも簡単に楽しめる"ということは,まぎれもなく本作の長所である。だが,少し厳しい言い方をするならば,本作のシステムやグラフィックスが,目の肥えたコンシューマ作品のプレイヤーや,刺激的なPCゲームと取っ組み合うのに慣れたプレイヤーを,十全に満足させるものかといえば,そうではないだろう。しかし,ここでちょっと見方を変えて,本作が"三国志"と"武侠"のエッセンスを取り入れたRPGであることに注目してプレイすると,新たな発見があると思うのだ。

 まず"武侠"だが,前述のように小説をはじめとする武侠作品の人気は,中国においてかなり高く,その勢いは台湾,韓国などにも及んでいる。そのストーリーは荒唐無稽と思えるほど劇的な展開に富み,登場する武侠達はそれにふさわしくエネルギッシュな人物ばかり。常人ばなれした能力を持つうえに義侠心にあふれており,弱きを助け,権力に媚びず,誓いや約束をなによりも重んじる,この上なくアツい男(ときに女)達なのだ。

 そんな武侠の遺伝子を持つ本作の登場人物達は,基本的に情が深く義に厚い。現代日本人の感覚からすれば「それちょっと極端すぎ!」という展開がいろいろなところで見られるのだ。例えば主人公の義兄弟である大金持ちの息子は,信義のためといって一家の財産である土地や家屋をばんばん売り払うし,五年十年というスパンで鎖につながれて幽閉されている人物もいるなど,"色々なところでスケールが大きい"。女達の愛情も激しく,その心根は一途そのもの,好きな人に振り向いてもらえなければ涙を流して悲しむのだ。実際,キャラクターのバストアップ画像には,滔々と涙を流している表情が標準で用意されているようで,実際にゲーム中でも多用されている。男達も同様で,悲しいことがあれば隠すことなく涙を見せる。

 敵に対すれば気力を振り絞って招式をぶっ放し,動乱の中でおおらかに笑い,そして泣く。大陸的なエモーションといっていいのだろうか,島国で育った私達には紡げないようなダイナミックな物語が,この「幻想三国誌」では体験できるのだ。

 次に,"三国志のRPG"としての面白さだ。プレイしていて気がついたのだが,登場人物達は互いを実にさまざまな言い方で呼び合う。同じ曹操でも場面によって「曹丞相」「孟徳」などとも呼ばれ,英雄が自ら名乗りを上げるときには「張翼徳」「趙子龍」などとなる。
 曹操の場合は,姓が「曹」で名が「操」,字(あざな)が「孟徳」であるが,この頃の中国では名を直接呼ぶのはおそれ多いことで,姓+官職・役職名で呼ぶことが多かったらしい。結果として「曹丞相」「関将軍」といった具合になるのだ。
 ちなみに名を使って呼びかけてもよいのは,よほど高位の人物か名付け親くらいのもので,これを逆手にとって相手を侮蔑するときにも使われるそうだ。そうした文脈で「曹操のやつめ!」「おのれ劉備!」という言い方をするのはアリだし,文章に記す場合や,赤の他人同士のときも姓+名が使われる。
 では,親しい人物同士の場合はどう呼び合うのかというと,ここで字が使われるのである。字は本来,名を直接呼ばないために存在するので,先ほど例に挙げた自ら名乗る場合も,同様に「関雲長」などとなる。つまり,国内でよく見る姓+名+字という書き方,「曹操孟徳」「劉備玄徳」には,ちょっと矛盾があるそうだ。

 本作は"中国語圏で作られた"だけのことはあり,セリフの中でこういったルールがきちんと守られていて,誰が誰をどのように呼んでいるかによって,親しさや場のニュアンスが分かる。仲間達が互いを字で呼び合っていることの意味が見えてくると,彼らに対して一層の親近感が持てるようになった。
 筆者自身,三国志関連のゲームをたくさんプレイしているのだが,今までこの点を気にしたことはなかった。その理由はおそらく,世にある三国志関連タイトルのほとんどがストラテジーゲームであり,セリフが多用されるRPG作品が,意外にも少ないからだろう。「幻想三国誌」は,三国志世界をある程度分かっているつもりだった筆者に,新たな側面を見せてくれた。

 こういった文化の違いを意識してプレイすると,本作の味わいはさらに深いものになる。表現の仕方や思考の流れの中には,大陸にしっかりと根を張った儒教や道教の考え方が,息づいているのだろう。西洋風ファンタジーに慣れた日本人プレイヤーにとって,ここで描かれる東洋ファンタジーは正直"より遠い世界"だと思うが,まだ見たことのないものに触れる喜びは,PCゲーマーであれば先刻承知のはず。西洋人の作った"ジャパニーズ時代劇"がどう違うか感じとれる人であれば,"中国語圏の人間が作った三国志劇"に触れる意義は,十分に理解できるはずだ。

ストーリーはオリジナルだが,三国志からの引用部分も多い。時代は,三顧の礼から赤壁の戦いあたりの設定だ 武勇で知られた張飛や関羽などの武将は,ストーリーに応じてプレイヤーのパーティに参加してくれる 劉備,曹操といった主役クラスの人物だけでなく,それ以外の有名武将も登場する。三国志ファンにはうれしいところ
相手を字で呼ぶのは親しさの表れ。文化的背景が分かれば,このセリフに込められた感謝の意もよく理解できる 悲しいときにはためらわず涙を流すキャラクター達。喜びも怒りもストレートに表現される。彼らの激しい心の動きが,乾いた戦場の顛末に潤いを与え,ストーリーはより立体的なものとしてプレイヤーの前に立ち上がってくる

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■メーカー名:日本ファルコム
■価格:8358円(税込,通販価格)
■動作環境:Windows 98SE/Me/2000/XP,PentiumII/400MHz以上(PentiumIII/550MHz以上推奨),メモリ 64MB以上(128MB以上推奨),空きHDD容量 2GB以上,ビデオメモリ32MB以上のビデオカード(AGP接続またはIntel 845G以降の統合グラフィックスコアを推奨),DirectX 8.1以降
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