RPG 4Gamer.net Review
 
魅力的な世界で新たな"伝説"がスタートする
英雄伝説VI 空の軌跡
Text by K.サワノフ
22nd Jun. 2004


ますます磨かれた完成度の高さ

老舗日本ファルコムの看板タイトルの一つ,「英雄伝説」シリーズ。高いストーリー性を持ち,ファンから高い支持を受けるこのシリーズが,またもや大きく進化して帰ってきた

 「イース」シリーズと並ぶ,日本ファルコムの代表的なタイトル「英雄伝説」シリーズ。「英雄伝説VI 空の軌跡」は,シリーズ6作めにあたる最新作だ。
 英雄伝説VIは,2003年に発売された「イースVI」と同様,ゲーム世界は基本的に3Dで描かれている。しかもイースVIはプリレンダだが,英雄伝説VIはリアルタイム生成。これにより,前作に比べ格段にグラフィックスが美麗になり,とくに演出面での表現力のアップには目を見張るものがある。どちらかというと,ダイナミズムよりも緻密さに主眼を置いた画面作りがされており,世界全体のリアリティ向上や,町や建築物に強い存在感を持たせることに成功しているのだ。このあたり,洋ゲーの3Dグラフィックスの使い方とは微妙にベクトルの違う演出コンセプトをうかがうことができ,なかなか面白い。

 操作性も非常に快適。画面中央に表示されるキャラクターからカーソルをどちらにどれだけ離すかで,移動方向とスピードが変化する基本操作部分を始め,ほぼすべてのインタフェースが直感的で小気味良い。ある程度ゲームに慣れたプレイヤーなら,操作系だけでも相当練り込まれていることを感じ取れるだろう。
 例外的に,マウスホイールで視点の方向を変えるというシステムは,中盤くらいまでなかなか慣れなかった。まあ,これは筆者が重度の方向音痴であるせいかもしれない。もっとも,一度このシステムに慣れてしまえば,その分マップの移動が楽しくなるのは確かではある。
 ファンから高い評価を受け続けるシリーズが持っている,確かな手応えと磨き込まれた完成度の高さ。英雄伝説VIをプレイしていると,まさにそれを感じさせられる。作品を重ねるたびに着実に進歩していくシリーズを楽しむのは,プレイヤーにとってはまさに無上の喜びだ。

3Dグラフィックスで描かれた作品世界,とくに立体構造になっている町や建物は,存在感を強く感じさせる マウスホイールを回転させることによって,カメラ視点を変更できる。最初は戸惑うがなかなか楽しい 3Dグラフィックスが採用されたことで,戦闘時のエフェクトなどの迫力も大きく増している

インタフェースは直感的で快適。プレイしていて自然にリズムができてくるので,非常に遊びやすい 世界とストーリーの広がりを感じさせてくれるオープニングムービー。物語の登場人物達や,王国各地の風景が次々と現れ,壮大な冒険に臨もうとするプレイヤーのテンションをいい感じに高めてくれる


プレイヤーを引きずり込む重厚で緻密なストーリー

 英雄伝説VIの世界に存在する,遊撃士(ブレイサー)と呼ばれる職業。民間人の安全と地域の平和を守ることを第一の目的とし,モンスターの退治や,犯罪防止に従事する者達だ。遊撃士は特定の国家に属せず,その協会は大陸全土に支部を持っている。高い理想を掲げて活動する遊撃士達は,人々から尊敬を受けていた。
 主人公は,有名な遊撃士カシウス・ブライトを父に持つ活発な少女,エステル。家族同然に暮らしてきた少年ヨシュアと一緒に,見習い遊撃士になったばかりだ。二人は,とある事件に巻き込まれて行方不明になった父を探しながら,物語の舞台となるリベール王国を旅して回ることになる。

 メインストーリーは,カシウスの残した黒い古代遺物(アーティファクト)や,王国の覇権を狙う影,各地で巻き起こる不可解な事件など,いくつもの糸が複雑に絡まりながら,淀むことなく進展していく。またエステルとヨシュアを始めとする魅力的な登場人物達は,それぞれの背景や思惑を持って行動しており,これもプレイを進めるにつれ,どんどん物語の本筋に関連してくる。ストーリーに対する興味と,キャラクターに対する感情移入で,プレイヤーは否応なしにゲームに引きずり込まれていくのだ。
 とにかく,息もつかせぬ展開の妙,要所要所の盛り上がりは,さすがはファルコムというべきだろう。物語は全部で五つの章に分かれているが,およそ中だるみというものがなく,プレイヤーは常に「もう少し先を見たい」という気持ちにさせられる。

 そして,ストーリーを効果的に見せるためのバランスの取り具合は,まさに職人芸と呼んでいいシロモノ。ゲーム全般を通じて,作業的なレベル上げをする必要がまったくなかったほどだ。あるいはこのあたりは,プレイヤーによって好き嫌いが分かれるところかもしれない。しかし"ストーリー性"と"システム性"を高次元で融合している点は,高く評価されてしかるべきだろう

明るく元気なエステル,クールなヨシュアという二人の主人公を始め,多彩なキャラクター達が物語を彩ってくれる。それぞれの立場,思惑で物語に絡んでくる登場人物達は,敵も味方もみんな魅力的に描かれる プレイを進めるにつれて,次第に明らかになっていく謎。ぐいぐいとストーリーに引き込まれていく

キャラクターのセリフと,チビキャラの動きで見せるミニイベント。ストーリーの根幹に関わるシリアスなものから,ちょっとコミカルなものまで,物語の随所に多くのミニイベントが挿入される 歴史や地理など,物語のバックグラウンド部分までしっかり設定が作られていて,感情移入しやすい


高いゲーム性と豊富なやり込み要素

 もちろん,ストーリーに押されてゲーム性がおろそかになっていたり,プレイ感があっさりしていたりすることはない。
 移動中,魔獣と呼ばれるモンスターと遭遇すると戦闘シーンになだれ込むのだが,この戦闘内容はかなりタクティカルだ。敵グループと味方パーティの初期陣形,移動と攻撃による位置関係の変化,ユニットごとの行動順など,考慮すべき事柄は数多い。
 一応何も考えずに力押しで戦うこともできるが,「効率の良い戦闘」ということを意識し始めると,実はかなり奥が深い。すべての要素をちゃんと把握し,それをコントロールして,相手を封じ込められるようになれば,ハイレベルな勝利の喜びを感じることができる

 また,いわゆる「やり込み」のための要素も豊富に用意されている。魔獣を倒すと"セピス"という宝石を落とすのだが,これを集めて加工することで"クオーツ"と呼ばれるアイテムを作り出せる。さらにクオーツ同士を組み合わせ,各キャラクターが持つ"オーブメント"にセットすることで,各キャラクターの能力や使える魔法が変化する。クオーツの組み合わせはゲーム中にいつでも変えられるので,ひたすら特定のキャラクターをパワーアップさせたり,パーティの中での役割分担を考えたりと,さまざまなカスタマイズを楽しめるわけだ。
 料理システムも面白い。ゲーム中,主人公達は各地を訪れ,酒場やレストラン,屋台などでさまざまな食べ物を入手できる。これらの食べ物は回復アイテムになっているのだが,一度食べればレシピを覚え,材料さえあれば自分でそれを作れるようになる。材料は各地で購入できるほか,魔獣を倒して手に入れることも可能だ。レシピをコレクションするだけでも「ぶらり食べ歩き」みたいな感じで楽しいうえに,普通に回復アイテムを買うより経済的という実利もある。
 さらにゲーム中,主人公達は遊撃士として数多くの仕事の依頼を受ける。依頼内容は魔獣退治や護衛任務,探し物の捜索に犯罪の捜査などなど,実にバリエーション豊かだ。これらをこなしていくと報酬がもらえ,遊撃士としてのランクも上がっていく。これらはサブイベントということで,メインストーリーの展開とは直接関係はないが,遊撃士という存在が大きな意味を持つ英雄伝説VIの世界観に,深みを加える一因となっている。

 「英雄伝説III」から「V」までで描かれた「ガガーブ・トリロジー」の物語も一段落し,「英雄伝説」シリーズはこの「VI」からまた新たな展開を見せ始める。シリーズファン,ファルコムゲームのファンはもとより,「最近国産ゲームをあまり遊んでない」なんて人にも,ぜひともプレイしてもらいたい作品だ。

魔獣との戦闘は,かなり戦略性が高い。通常の攻撃や移動に加え,必殺技や魔法も使いこなさなくてはならない ユニットの位置関係を把握し,範囲攻撃や貫通攻撃を効果的に使っていこう。行動順も重要だ クオーツを組み合わせることで,キャラの能力は大きく変化する。自分の使いやすい組み合わせを見つけよう

各地で獲得できる料理は回復アイテムとして使える。レシピを覚えると,自分で料理する(作る)ことも可能だ 町の遊撃士支部では,さまざまな依頼を受けられる。報酬やBP(ブレイサーポイント)を得られるチャンスだ 遊撃士の持つブレイサー手帳は,冒険の必需品。何をしたらいいか迷ったときには,まず参照するといい

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■発売元:日本ファルコム
■価格:DVD-ROM版/CD-ROM版 8988円
■問い合わせ先:日本ファルコム TEL 042-527-6501
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/550MHz以上(PentiumIII/800MHz以上推奨),Windows98/Me メモリ192MB以上(256MB以上推奨),Windows2000/XP メモリ256MB以上(384MB以上推奨),空きHDD容量 1.9GB以上
スクリーンショット集
ムービー(6.2MB:43秒)
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