マニア御用達のサッカーシミュレーション，最新版が登場 チャンピオンシップ マネージャー03/04 日本語版 Text by K.サワノフ 30th Apr. 2004

圧倒的なデータでワールドサッカー界が再現される

地味な画面に，膨大なデータ量。重度のマニアをも唸らせる"チャンピオンシップ マネージャーシリーズ"の最新作が，今年も登場だ。ワールドサッカーファンにとっては見逃せないタイトルである

　各国の03-04シーズンがいよいよ大詰めだったり，欧州チャンピオンズリーグが大荒れだったりと，ファンにとっては一瞬たりと目を離せない昨今のワールドサッカー状況。そんなさ中に発売された「チャンピオンシップ マネージャー03/04」（以下CM03/04）は，ご存知サッカーマニア御用達，クラブ運営シミュレーションゲームの最新作だ。

　「データをいっぱい詰め込んで，よりリアルなクラブ運営を」という"チャンピオンシップ マネージャーシリーズ"の理念は，今作でもしっかり継承されている。CM03/04には，実に42の国，121のディビジョンとそれに所属するチーム，20万人超の選手データを収録しており，しかもそのほとんどすべてが実名という凝りっぷりだ。他チームの監督やチームオーナー，コーチやフィジカルスタッフにまで，実在の人物の名前が出てくるから恐れ入る。
　ちなみに各クラブや選手のデータは，2003年夏時点のものが反映されている。ベッカムはレアルマドリードにすでに移籍しており，中田はボローニャにまだレンタルされていない状況だ。

　プレイヤーは，星の数ほどあるクラブの一つに監督として就任し，リーグで好成績をあげるために奮闘していくことになる。と，こう書く分には簡単だが，そのためにプレイヤーがするべき作業がとにかく多い。
　所属選手の能力を見てポジションやチーム戦術を決定する，適切なトレーニングメニューを設定する，試合では臨機応変に指示を出していく，などというあたりを基本として，選手の移籍問題，起用法や年俸についての選手の不満への対応，有能なコーチングスタッフを招集，理事会との交渉，マスコミへの対処……と，挙げていっても正直キリがない。さらには選手には30以上の能力パラメータがあり，トレーニングメニューは25種類にのぼり……という具合に，作業にまつわるデータ量も半端じゃない。
　要するに，実際の監督業に絡むさまざまな要素が，ゲーム中にことごとく反映されているわけだ。その徹底っぷりは執念すら感じさせるほどである。

　実際のプレイ時には，とくにこだわる部分以外はアシスタントマネージャーに任せることができるので，それほど怖気づく必要はない。とはいえ，このゲームが重度のサッカーマニア向けであるのは疑いようのない事実。微細な事柄にまで気を配り，それを積み重ねて強いチームを作っていくことに喜びを見出せる人でないと，ちょっとこのゲームはおススメできない。逆にそういう人にとってみれば，これ以上の作品はちょっと見つからないだろう。人は選ぶが，プレイヤーによっては珠玉の一本となるほどのポテンシャルを秘めている作品だ。

自分の分身を作り，クラブを選ぶところからゲームは始まる。最初はどんなクラブも選び放題だ	選手のパラメータは実に30種類以上。好きな選手の能力を眺めているだけでも楽しくなってくる	選手たちのトレーニングも自由に設定できるが，なかなか手間だ。最初のうちはアシスタントに任せよう

チーム戦術も監督の思いのまま。もちろん，選手や対戦チームとの相性を考えなくてはならないが……	支配下選手の契約更改や他クラブの選手へのオファーも，細かく設定することができる	随時届くサッカー界のニュース。監督たるもの，これらにもしっかり目を通しておかなくてはならない

シンプルだが熱くなる2Dピッチモード

22人の選手の動きを確認できる2Dピッチモード。見た目はシンプルだが，実際の試合の再現度はかなり高い

　世にサッカーゲームは数あれど，CM03/04ほど見た目が地味なゲームはないだろう。なにしろ，ゲーム時間の大部分が文字だけで進行していくのだ。ほぼ唯一といっていいグラフィカルな部分が，前作「チャンピオンシップ マネージャー4」から搭載された「2Dピッチ」モードである。
　グラフィカルといっても，選手がポリゴンで描かれたり派手な効果があったりするわけではない。フィールドが真上から見下ろした状態で表示され，その上を●で描かれた22人の選手（と3人の審判）がチョコマカと動き回る，というだけのものでしかない。

　ところが実際に遊んでいると，この2Dピッチモードがやたらと熱いのだ。一つのプレイに対してすべての選手がどう動いているかを一望するのは，テレビでの観戦はもちろん，直接の観戦でも難しい。しかし2Dピッチモードでは，それが容易にできてしまう。これがなかなか，サッカー好きにはたまらない。
　真上から見ていると，フォーメーションの変化もパスのつながりも一目瞭然で，シンプルな画面に思いっきり見入ってしまう。自軍の選手が見事にスルーパスを通したり，逆にまんまとディフェンスラインの裏を取られたりするのを見ていると，思わず手に汗握り，つい大きな声が出てしまうことも（体験談）。選手の個人技を楽しむというのは難しいが，近代サッカーの基本であるチーム戦術，ポジショニングの妙を堪能するには，3DCGよりこの形式のほうがよっぽど適している。
　前作では，試合のキーポイントとなる場面でしか見られなかったこの2Dピッチモードが，CM03/04ではいつでも切り替えられるようになった。これはかなり嬉しい変更点だ。その気になれば，一試合まるまる2Dピッチモードで観戦することもできる。実際にやるととんでもない時間がかかってしまうので，あまりおすすめはしないけれども。

フリーキック，コーナーキック，PK，さらにはゴールを決めた後の喜びのシーンまでもが，この画面で描かれる	試合中には，状況をよく見て随時指示を出していかなくてはならない。選手の評価，コンディションにも注意	シミュレートする国，ディビジョンの数が多いと，極端に処理に時間がかかってしまうので注意

プレイによって，監督自身の能力も変化していく。監督として実績を積めば，代表監督のオファーがくることも

サッカーにどっぷりと浸りたい人のために

　一つだけ，大きな不満点をどうしても挙げておきたい。冒頭に「ほとんどすべてが実名」と書いたが，その例外がほかでもない日本だということだ。日本にはJ1とJ2の2ディビジョンがあるが，そこに所属するチームも選手も全部架空の名称となっている。そのため，Jリーグでプレイしていても，他国のチームでプレイするより感情移入しにくい。
　しかも，実は海外版では，日本チーム，選手ともにちゃんと実名で表示されているらしいのだ。裏にどういう事情があるのか知らないが，一人のサッカー好きの日本人として，非常に残念に思う。ぜひとも改善を望みたい点だ。

　まあその点も，日本以外に好きなリーグ，好きなクラブがある人にとっては，たいして問題にはならないだろう。やはりこのゲームは，とくに欧州各国のリーグが好きな人に強くおすすめしたい。
　一応のゲームの目標は「世界一のクラブを作る」だが，それにこだわる必要はまったくない。贔屓のクラブの監督になり，好きな選手を集め，好みの戦術で戦っていく。ディープなサッカー好きにとって，その楽しさは説明するまでもないだろう。そりゃあ勝てば嬉しいし，負ければ悔しいのは事実だが，どっぷりとサッカーに浸れるその時間こそが何物にも代えがたい価値がある。CM03/04は，そんな時間をプレイヤーに提供してくれる作品なのだ。

クラブの理事会を満足させ続けることが監督続投の条件。理事会の要求に応えられないと，解雇されてしまう	有力クラブのほうが資金力があるが，そんなクラブは理事会の要求も大きい。どちらがいいかはプレイヤー次第	クラブ名は分かりやすいKashima FCも，選手名となると「くわわ」レベルどころではない変更が加えられている

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