アメリカンコンクエスト 〜自由の女神〜

Text by Sluta
11th Mar. 2004

 2001年9月に発売された「コサックス 〜攻城の世紀〜」を皮切りに,コサックスシリーズは日本のストラテジーゲームの分野で一つのサブジャンルを形成しているといっても過言ではない。
 その方向性は,システム面では「多数のユニット同士による迫力の会戦を再現する」ことであり,グラフィックス面では「2Dの美しさにとことんこだわる」こと。作を重ねるごとに少しずつ進化してきた本シリーズの5作めが,これから紹介する「アメリカンコンクエスト 〜自由の女神〜」(原題「American Conquest:Fight Back」。以下,自由の女神)だ。


アメリカンコンクエストの拡張版が"単体稼動版"で登場

 自由の女神は,2003年7月に発売された「アメリカンコンクエスト」の第2弾とでもいうべき作品だ。アメリカンコンクエストは,1400〜1800年頃の南北アメリカ大陸を舞台にした歴史RTS。千単位のユニット同士の戦闘をリアルに細かく再現した,迫力の大会戦がウリの作品だ。
 自由の女神は位置付け的には"拡張版"ということになっているが,スタンドアローンバージョン(単体稼動版)であり,アメリカンコンクエスト本体は不要。これは,これからアメリカンコンクエストを始めてみようと思っている人には,非常に嬉しい仕様といえる。アメリカンコンクエストを未購入ならば,迷わず自由の女神を買ってプレイしよう。
 前作「アメリカンコンクエスト」のレビュー記事は「こちら」にあるので本レビューと併せてチェックしてほしい。ゲームの骨格部分は変わっていないので,ここでは,主に自由の女神から加わった新機能に焦点を当てて紹介していこう。
 この自由の女神の新機能/変更点は,

  • 新しいゲームモード「バトルフィールド」

  • 五つの新勢力・新しいキャンペーン・シングルミッション等の追加データ

 の二つに集約されるのだが,まずはバトルフィールドモードについて説明しよう。


アメコンの魅力の核心部分を気軽に味わえる"バトルフィールドモード"

 バトルフィールドモードは,あらかじめマップ上に用意された兵士のみを用いて,純粋に戦闘のみを行うゲームモード。資源収集や兵士育成といった内政の要素はいっさいカットされている。シングルプレイ用とマルチプレイ用の両方があるが,やることはほぼ同じ。シングルプレイ用は第1戦から順番にキャンペーン形式で進めていくもので,マルチプレイ用は,好きなマップを選んで1対1で対戦するもの。
 どちらのモードも,戦闘開始前にいくつかのユニットにアップグレードを施せる。しかし,所持している資源には限りがあるので,アップグレードするユニットは慎重に決めなければならない。というのも,本作は"食料"と"金"を維持費として消費するシステムになっていて,食料が尽きるとユニットの士気が低下したりユニットが餓死したりするし,金が尽きると陣形が組めなくなり,中には反乱を起こすユニットもいる。よって,アップグレードをたくさん行った場合には,短期決戦で素早く勝負を決めないとならない。逆にアップグレードにあまり資源を使わなければ,資源が豊富にあるため,長時間じっくりと戦うことができる。
 また,弾薬(鉄と石炭)の残量にも注意が必要だ。マップによっては節約して射撃しなければ弾薬が尽きてしまう場合もあり,そうなると接近戦しかできなくなる。敗走する敵を掃討する場合など,必ずしも射撃しなくてもいい場面では,射撃を控えて接近戦のみで戦っていくといったテクニックが必要となる。

 マップは全部で10種類用意されている。どれも主にヨーロッパの軍隊同士の戦闘を扱っていて,陸戦マップが9種,海戦マップが1種だ
 それぞれのマップは地形こそさまざまだが,結局はどれも2勢力が正面から激突するという形なのは残念。どうせなら包囲戦や,攻防がハッキリ分かれている形の戦いもプレイしてみたかったところ。おそらくマルチプレイを意識して,2勢力に平等な条件を用意しなければならなかったという制作上の意図もあるだろう。
 シングルプレイモードの場合は,1戦ごとにスコアが算出される。難易度によるスコアが250点分,戦闘結果によるスコアが100点分で,合計350点。10戦あるので最終的なスコアは3500点満点だ(ちなみに筆者は2135点だった)。
 バトルフィールドモードの長所は,アメリカンコンクエストの最大の魅力である,"大部隊同士の戦闘"を純粋に味わえる点。アメリカンコンクエストを初めてプレイする人は,ぜひバトルフィールドモードから始めよう


勢力は五つ加わって総勢17勢力に

 次に,もろもろの追加データについて紹介しよう。
 新勢力は,オランダ,ドイツ,ポルトガル,ロシア,ハイダの五つ。ヨーロッパのプレイヤーの声に応えて,四つのヨーロッパ系勢力が追加された。ハイダは,士気を上げる効果を持つ「トーテムポール」という建築物を中心に戦う,個性的な民族だ。
 キャンペーンとシングルミッションは,チュートリアル以外はすべて新しくなっており,合計25ミッション。全体的にアメリカンコンクエストより難度が増し,一つずつが長くなった印象。キャンペーンは,すべて史実をもとにしており,以下の八つがプレイできる。

  • エルドラド(ドイツ)

  • コルテスの遠征(スペイン)

  • ユカタンの征服(マヤ)

  • アステカ族の反乱(アステカ)

  • ポンティアックの反乱(北米原住民)

  • イギリスの苦闘(イギリス)

  • ロシア遠征隊(ロシア)

  • 凍土(アラスカ原住民)

 史実上のメジャーなテーマは前作で扱ってしまったので,よりマイナーなテーマがラインナップされているのが分かると思う。

 ほかに無視できない変更点としては,広範囲に渡るユニットデータのバランス調整が挙げられる。例えば,前作で強すぎたスペイン・デラウェア族を弱体化し,使いづらかったスーやアステカに改良が施されている。


「Cossacks II」が出るまでにぜひプレイしておくべき

 先述したように,自由の女神は前作アメリカンコンクエストがなくてもプレイできる「単体稼動版」なのだが,この仕様について,前作を持っている既存プレイヤーからは不満も聞かれる。自由の女神は拡張版にあたる内容なのに,価格は本体と同程度になってしまっているからだ(本体は8800円,自由の女神は7980円)。
 とくにマルチプレイ中心のプレイヤーにとっては,自由の女神は新勢力が五つ加わったのみで,とくにゲームシステム部分に変更点はないため,納得のいかない内容だといえる。結果的に自由の女神は,「新規プレイヤー重視」「シングル重視」「初中級者重視」という印象だ。

 裏を返せば,これまでアメリカンコンクエストの世界を体験したことのない人にこそ本作を手に取ってもらいたい。
 おそらく2004年中に発売されるであろう歴史ストラテジーゲームの大作「Cossacks II Napoleonic Wars」(forGamer内記事一覧は「こちら」)は,コサックスの正統な後継作でありながら,戦闘の基本部分はアメリカンコンクエストのものを改良/発展させた形になると予想される。今からなじんでおくのも悪くないだろう。
 ただし,Cossacks IIにはなく,アメリカンコンクエストでしか味わえない要素もある。それは,近代化したヨーロッパ軍 vs. 原始的なネイティブアメリカンという,個性のまったく違う勢力同士の戦いの妙味だ。この点は,すでにリリースされている2種類の体験版でも十分に味わえるとはいえないので,ぜひとも製品版をプレイしてみてほしい。

このページを印刷する

■発売元:ズー
■問い合わせ先:TEL 0268-38-1561
■価格:7980円[税別] (3月12日発売予定)
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumII/450MHz以上(PentiumIII/1GHz以上推奨),メモリ 64MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量 1.5GB以上,メモリ4MB以上搭載したビデオカード(16MB以上推奨),DirectX 8.1以降
Screenshots集
ムービー(4分48秒:46.7MB)
forGamer内記事一覧

(C) 2003 CDV Software Entertainment AG. All rights reserved. CDV, the CDV logo and American Conquest - Fight Back are either regis-tered trademarks or trademarks of CDV Software Entertainment AG or GSC Game World in the US and/or UK and/or other countries.

tr>