アメリカン コンクエスト

Text by TAITAI
18th Aug. 2003

発展し続けるコサックスシリーズの外伝的作品
最大1万6000ユニットで演出される圧倒的な迫力

 海外だけではなく,国内でも大きな人気を獲得した「コサックス」は,従来のRTSの常識……つまり,数十からせいぜい数百程度だった戦いの規模を,一気に数千にまで高めた"ラージスケールRTS"の先駆け的作品。ストラテジー(ボードゲーム含む)のメッカであるドイツなどヨーロッパを中心に,全世界でシリーズ累計100万本以上を売り上げたという,輝かしい実績を持つシリーズである。

 今回紹介するのは,そんなコサックスシリーズの後継作となる「アメリカン コンクエスト」(以下,AC)という作品。タイトル名からも想像が付くだろうが,本作では南北のアメリカ大陸における戦いの歴史が描かれており,コロンブスがアメリカ大陸を発見した1492年から,ジョージ・ワシントンが総司令官を務めたアメリカ独立戦争辺りまでの,約300年間における争乱がテーマだ
 資源を集めてユニットを生産し戦う,というオーソドックスな従来のスタイルはそのままに,内政面の簡略化や「士気の概念」など多くのユニークな要素を導入。より"集団戦"を意識した,洗練されたゲームシステムが本作の最大の売りである
 アメリカ,イギリス,フランス,スペインなどのヨーロッパ勢を始め,アステカ,マヤ,インカなど南米系先住民族,イロコイやヒューロンなどのインディアン部族もゲーム中に登場してくるなど,日本では聞き慣れない一風変わった勢力名が立ち並ぶのも,ACの大きな特徴の一つ。弓と斧で戦う先住民族たちや,銃や大砲など圧倒的な火力を背景にした西洋列強など,登場するユニットもそれぞれ文化や風習になぞらえた特徴的なモノが用意されており,どの国家を使っても代わり映えしなかったコサックスに比べると,ある種の雑多感というか,賑やかさが味わえるようになっている。

 定番のシングルプレイモードも充実しており,コロンブスの探検やフランスとイギリスの間で起こった7年戦争,アメリカ独立戦争など,アメリカ大陸で起こった戦いを題材にした数々のキャンペーンを楽しめるほか,気軽に単発で楽しめるシングルミッションも多数用意されている。またマルチプレイモードでは,充実した機能を持つロビーシステムが提供されるなど,機能面での充実ぶりは水準以上のレベルを見せ,作品としてのクオリティの高さを感じさせてくれる。

士気の概念の導入:集団戦にフィーチャーしたルール作りが秀逸

 ともあれ,歴史ゲームファンを唸らせたコサックスシリーズの流れを組む本作だけに,その内容に興味を持っているプレイヤーは少なくないハズ。だが同時に,「どうせシステムは使い回しなんでしょ?」と感じてしまっているプレイヤーもまた多いのではないだろうか? 実際,本編/拡張版とシリーズを通して遊んできた筆者も,そういった偏見(?)の目でACを見ていた一人であった。
 しかし実際遊んでみると,これが意外にもまったく"違う"ことを思い知らされる。もちろん,基本的な操作感や雰囲気は従来の作品に近い感触だし,また数千にも及ぶ歩兵隊や騎馬隊が立ち並ぶ"壮大な戦闘"も,従来通り作品の魅力の第一だといえる。

  骨格部分は前シリーズと同じなのに,どこが違うのか?

 それは,ACの持つ独特のゲームシステムに原因がある。つまりACでは,ゲームの持つ魅力を引き立たせるスパイス(細かいルールの数々)が,非常に効果的に働き,その結果として,ゲームの味そのものが"一癖ある"味へと変貌しているわけだ。
 具体的な例を挙げると,とくに大きいのはユニットの「士気」の概念の導入であろう。これは,ユニットにそれぞれ"士気の値"が設定されており,それが低いユニットは,敵の攻撃を受けるパニックになって"自動的に"退却してしまうというルールである。
 訓練度(アップグレードの度合い)が低いユニットが,戦闘が始まるや否やいきなりワラワラと逃げだし,一気に操作不能になってしまう様子は,ユニットが単なる駒でしかなった従来のRTSに比べるとなにやら新鮮な感覚。「ああ,当時の潰走状態ってこんな感じなんだろうな」と思いをはせると同時に,「ちょっと待て……」と憤りたくなる当時の指揮官の立場を,擬似的にではあるが体験することができる。
 またユニットの前後左右に"パニック判定"のような値が設定されているなど,この士気システムはなかなか芸が細かく作られている。例えば正面からの攻撃は耐えられるが,横から攻撃されると一気に瓦解してしまうなど,当時の戦闘模様を事細かに演出しているの点は,まったく素晴らしいの一言。また逃げ出す隣の兵士を見て自分もパニックを引き起こすなど,いわゆる"恐怖の伝播"をも表現しているところには,かなり感心させられた。
 これは余談なのだが,銃器の発達していない時代における"集団戦闘"では,混乱による圧死が大きな割合を占めていたという。つまり"隊列の外側"を攻撃されると,恐怖した兵士は,その反対方向(要するに内側)に逃げようとする。その結果,隊列を組む兵士達が内へ内へと圧迫されていき,中の兵士達が押しつぶされて死に至るというのだ。包囲攻撃などがなぜ(あるいは,どう)有効なのか? というと,外側からの攻撃による混乱(と,結果的に生じる圧死)に大きな理由があったわけだ(槍兵などは,縦隊やボックス隊形を取っているが多かったため,圧死率は高かったようだ)。

 ……と細かい話はさておき,そもそも以前のコサックスシリーズで筆者が感じていた"物足りなさ"は,まさにこういう"戦術的要素"であった。「沢山ユニットが出るのは凄いけど,ユニットを戦わせるにせよ,なんか大味すぎるんだよなぁ……」と,これが前作の正直な感想。「大軍で戦う演出は素晴らしい,だけどそれがルール部分まで昇華しきれてない」と,そう感じていたわけだ。ACでは,この部分の改善を試みており,そして筆者が遊んだ限りでは,それは見事なまでに成功していると感じるのである

シリーズ最高の出来映えか。「Cossacks II」までの繋ぎとはいわせない!

 まとめに入るが,ACの良さ/素晴らしさは,一にも二にも士気の要素と,それを生かした集団戦の表現に尽きるということだ。士気ルールの影響により,隊形の重要度が一層増しているのも,個人的にはかなり好印象。筆者としては,コサックスシリーズの中でも最も完成度の高い作品なのではないかとさえ感じている。本作の持ち味であるヒストリカルな渋い雰囲気はもちろんのこと,それを壊さない丁寧な日本語訳も秀逸で,歴史ゲームファンならば絶対に押さえておきたい作品だと,声を大にして訴えたいところだ。
 テーマがコサックス(ヨーロッパが舞台)よりもさらにマイナーな気がしてしまう本作ではあるが,ストラテジーならびに歴史ゲームファンは,ぜひとも一度は遊んでみてほしいと思う。

 ちなみにACを始めコサックスシリーズの開発を手がけるGSC Game World社は,次世代コサックスエンジンを搭載した「Cossacks II」を,2004年春を目処に開発中である。最大6万4000ユニットまで表示可能だいう驚異的なゲームエンジンを背景に,ゲームシステムも疲労,天候,隊列,訓練度などといった新要素が盛り込まれていくという。
 もちろんそのような要素は,ただ現実に沿ったリアルな形で導入すれば良いわけではない。事実,ACにおける士気ルールもデフォルメ化が施されている。しかしこれは,ゲームとしての簡便さやまとまりを考慮した"適度なデフォルメ化"であり,GSC Game World社は,ゲーム性と再現性のバランス感覚の良さを,今回のACで証明して見せたように思える。 そしてだからこそ,Cossacks IIには,大いなる期待(より多くの人が楽しめるモノになる)を寄せずにいられないのだ。

 今回紹介したACは,現時点では間違いなく最高峰の歴史RTSであり,Cossacks IIへの期待感をいやがうえにも高めてくれるものであった。いささか気の早い話ではあるが,本作(AC)を遊んだ時点で,筆者の中でのCossacks II購入が確定してしまったほど。大げさなと思われるかもしれないが,そう思わせるだけの何かが,アメリカン コンクエストには存在するのである。

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■発売元:ズー
■価格:8800円
■動作環境:Windows 95/98/Me/2000/XP,PentiumII/450MHz以上(PentiumIII/1GHz以上推奨),メモリ 64MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量 1.5GB以上,CD-ROM 12倍速 以上
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