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[VGA]GeForce 6800 GT搭載の質実剛健なビデオカード
ELSA GLADIAC 940GT/256MB
Text by aueki
24th Aug. 2004


ハイエンド3Dの流れを汲むELSAブランド

ELSA GLADIAC 940GT/256MB。見た目はリファレンスカードとほとんど変わらない。GPUとメモリを広い銅のヒートシンクで覆い,アルミ製のカバーで通風効率を確保したクーリングシステムだ

 GLADIAC 940GTは,エルザジャパン(以下,エルザ)製のGeForce 6800GT搭載グラフィックカードだ。
 GeForce 6800GTは一般向けハイエンドカードとしてはお勧めの一品。性能ならGeForce 6800 Ultraだが,消費電力や価格面で一般向きとは言い難い。当初はピクセルパイプライン12本仕様になるといわれていた製品だが,ライバルのATIが予想以上の性能を出してきたためか,本来普及版となるはずだった6800GTもピクセルパイプライン16本というお買い得な仕様で落ち着いた。6800 Ultraとの違いは実質動作クロックだけだ。
 さて,ビデオカードベンダーの多くはPCパーツ系の出身だが,エルザの場合はちょっと違う。もともとはワークステーション用OpenGLアクセラレータを主に扱っていた会社だ。
 ちょっと昔話になってしまうが,PC本体よりも高価なビデオカードを使用してCADなどでヘビーなデータを高精度で表示するOpenGLアクセラレータと軽いデータを高速に出力することが求められるゲーム用のビデオカードでは少し違いがあった。高級OpenGLアクセラレータにはレンダリングエンジンとジオメトリエンジンが載っているのが普通で,レンダリングエンジン自体は単純な三角形を塗りつぶすだけことだけで,機能的にはゲーム系カードのほうが派手な機能を満載して高性能になっていった。ジオメトリエンジンによる高速処理がOpenGLの信条だったのだ。
 しかし,CPUの高速化でジオメトリ処理も大きな負荷ではなくなってきたことなどから,エルザがPCマーケットに参入してきたのは当時としては一大ニュースであった。NVIDIAのブランドの一つであるワークステーション用OpenGLアクセラレータQuadroはハードウェア的にはGeForceと変わるところがないが,OpenGLに最適化されたドライバを搭載している。こういったドライバの開発ではNVIDIAと深いパートナーシップを結んでいたエルザの影響が大きかった。しかし,OpenGL製品の低価格化でエルザ自体の首が絞まってしまったのか,本社ドイツ法人は倒産してしまうのだが,堅調な経営であった日本法人は変わらずエルザジャパンとして現在も営業を続けている。元がドイツのハイエンドグラフィックメーカーであったこともあり,安定性・信頼性でビデオカード界のベンツといった印象のあるブランドだ。



■リファレンスカードとの比較

 編集部にあるNVIDIAのGeForce 6800 GTリファレンスカードとの比較で見てみよう。
 まず,基板の見た目はほとんど変わらない。リファレンスカードには2個あった外部電源コネクタが1個になっているので周りのコンデンサ数が違うものの,基板レイアウトはほぼ同じもの。しかし,940GTは手に持つとずっしりと重い。リファレンスカードのクーラーがアルミ製ヒートシンクであるのに対し,940GTは銅+アルミ製のヒートシンクが使われている。ファン自体も大口径だ。安定性と信頼性にこだわるメーカー姿勢の表れだろう。
 ファンの音はリファレンスカードより若干低めだが,このクラスのビデオカードだとどうやっても,お世辞にも静かとはいえない。エルザ公称30dbの低騒音ファンとはいえ,一般家庭で使うには静かであれば静かすぎるということはない。もっとも,クーリングシステムは同社の6800 Ultra製品と同一のものが使われているので,冷却性能に余力があるという見方もできる。
 一応ベンチマークテストで比較してみた。コア速度350MHz,メモリクロック1GHzというのは両者ともに変わらない。同じチップを使っていてコアクロックとメモリクロックが同じなら,理論上ほとんど差は出てこない。ドライバチューンによって微妙な差は出ることはあるだろうが,とりあえず同じドライバ(WHQL 61.76)を使用して比較してみた。
 テスト環境としてはちょっと貧弱なので申し訳ないのだが,編集部にあるAthlonXP 2000+のマシンを使用した。とりあえずCPUの影響を少なくするために画像描画の負荷を増やして違いを分かりやすくしておこう。テストは定番の3DMark03で,設定は1600×1200ドット,アニソトロピックフィルタ×16,アンチエイリアシング×4という描画負荷のもっとも高い設定でのテストを行った。GameTest1では若干のGPUアイドルが発生しているようだが,GameTest2以降ではかなりCPU空き時間が出ているようなので,より純粋なビデオカード性能の差が出てくるはずだ。
 結果はなぜか微妙に940GTが速い感じ。おそらくはBIOSバージョンの違いによるものと思われる。参考までに,前世代製品のGeForce FX 5900XT搭載のGladiac 935XT/128MBで同じテストを行ってみたのが次の図(コア300MHz,メモリ700MHz)。アニソトロピックフィルタは残念ながら8倍までだが,後半のテストはコマ送り状態になってしまっていた。数字でいえば4倍程度だだが,高負荷の部分では10倍以上の差がある感じだ。
 手元の製品では,添付のドライバは60.85をベースとしたもののようで,実際に使うときにはエルザのサイトから最新版をダウンロードして使うことになるだろう。ドライバはForceWareをベースとした自社ドライバという形になっている。原稿執筆時点(8月下旬)で見ると,7月27日に出たForceWare61.77への対応が8月16日に公開されている。同業他社のサイトでサポート状況を見ると,ドライバの対応はかなり速いことがわかる。

Innovision 61.76
Leadtek 61.36
MSI 61.77
アスステック 61.21
ギガバイト 60.85

 もっとも,WHQL認定ドライバである71.76をベースにしたものをダウンロードできないのはちょっと微妙。61.77はDirectX 9.0cに対応した以外ほとんど差はないのだが,そのあたりの微妙な変更で動かなくなるプログラムもないではない(61.77だとATIのCrowdデモはShaderModelバージョンが不正だとエラーを出す)。普通のゲームではまず問題にはならないと思われるのだが,安定版という意味ではWHQLベースのドライバもほしいところだ(ForceWareを使えといわれればそれまでだが)。

Gladiac 940GT GeForce 6800 GTリファレンス GeForce 5900XT


派手な特徴はないが信頼性とサポートが身上か

 結局のところ,ビデオカードの性能は大半がビデオチップの種類に依存し,次いでコアクロックやメモリクロックのメーカーチューン次第という感じだが,サポートや信頼性などが身上の堅実なメーカーだけあって,940GTにはとくに派手な機能はない。まあ画面周りのユーティリティや,果てはクロックアップなどもNVIDIAの標準ツールが結構よくできていて,いろいろ取り揃えられているので外部ツールが必要とも思えない。ゲームの添付などはあるとうれしいのだが,まだGeForce 6800の性能を見せつけるようなゲームは,残念ながら1本も存在しない。そういう意味ではカードと最低限のドライバ,マニュアルで必要十分だ。もちろん,それに加えてDV-IからアナログRGBへの変換コネクタとか,電源の分岐ケーブルなどといったものはきちんと同梱されている。ビデオチップ自体は当分ハイエンドゲームにも耐えられるハイエンド仕様で性能はまったく申し分ない。ハイエンドはほしいが,電源容量などで6800 Ultra搭載をためらっている人に最適の質実剛健な1枚といえるだろう。


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■メーカー エルザ ジャパン
■ビデオチップNVIDIA GeForce 6800 GT
■メモリ256MB GDDR3 SDRAM
■接続AGP 4x/8x
■コアクロック350MHz
■メモリクロック  1GHz
■大きさ215×95mm(基板部エッジ除く)
■高さ17mm
■コネクタVGA Out,DV-I Out,TV Out,外部電源In
■付属品DV-I→VGA変換コネクタ,S端子→RCAビデオ変換ケーブル,電源分岐ケーブル
■価格オープン(5万8000円前後)

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