アクション 4Gamer.net Preview
 
あのアメリカン・マギーの最新作はロボットアクション!
Scrapland
Text by 奥谷海人
7th Aug. 2004

 Enlight Software社から2004年冬の発売が予定されている「Scrapland」は,あのアメリカン・マギー(American McGee)氏が手がける最新作。暗さとコミカルさの同居する未来世界で,"Grand Theft Autoシリーズ"よろしく自由にアドベンチャーが楽しめるのである。
 資金稼ぎの手段やミッションも多彩で,メインストーリーから外れてブラブラと金儲けをに興じられるのもScraplandの魅力の一つだ。さらにはオンライン対戦も用意されることになりそうで,多くのプレイヤーに受け入れられるものになるだろう。

ロボットばかりの未来世界を飛び回る,
自由気ままなアドベンチャー

 Electronic Arts社の「American McGee's Alice」(邦題「アリス イン ナイトメア」)で一躍有名になった元id Software社のレベルデザイナー,アメリカン・マギー氏は,ジョン・カーマック(John Carmack)氏と同じアパートに住んでいたというひょんな理由で業界入りしたという奇妙な経緯を持つ。その後はElectronic Artsにプロデューサーとして移籍してAliceを手がけることになるのだが,これまでにはないダークな「不思議の国のアリス」の世界観で独創的なアクションアドベンチャーを作り上げ,アメリカだけでなく日本でも高く評価されていた。
 そのマギー氏も,Aliceのリリース直後にハリウッドへと移動して,映画制作会社のCarbon 6社を旗揚げ,「American McGee's Oz」という映画作品の制作が伝わってきていた。しかしゲーム業界から足を洗ったわけではなく,ゲーム開発のコンサルティング業をメインにするTMIEC社を設立。その経路から,今回Enlight Software社からの発売が決まったばかりの「Scrapland」の総合プロデューサーとして復活し,ゲームのキャラクターや環境デザインなどの制作に携わることが発表されたのだ。

 Scraplandを開発するのは,スペインをベースにする新興のMercurySteam社。Codemasters社からリリースされた「Blade of Darkness」を手がけた同国のゲーム制作経験者達を集めた精鋭のチームらしく,高い技術力とアバンギャルドな作風を売り物にしているようだ。なお本作は,PCだけでなくXboxでもリリースされることが決定している。

 Scraplandは第三人称視点で進行するアクションゲームで,ジャンクヤードにあるスクラップから作られたロボット"D-Tritus"(ディトリタス)が主人公だ
 スクラップランドとは,惑星キメラの軌道にある小さなアステロイドのことで,高等な技術をもった先住民族がロボットだけを残して去ったために,長らく不毛の土地になっていた。ところがある日,残されたロボット達は,いかなる機械の故障やデータのロスをも回復できるデータベースを発見する。不死の力を得たロボット達は,都市を築き,警官や宗教者,銀行家などの労働階級を築き上げることで,自分の意思を持って国家を形成するまでに進化していった。
 プレイヤーは,この星に流れついた新しいロボット"ディトリタス"となり,スクラップランドで初めて起こったという殺人事件(殺ロボット,というべきか)の謎を追うレポーターとして取材に動き回ることとなる。やがては,このロボット王国の暗部に渦巻く陰謀に巻き込まれ,さまざまな試練が振りかかってくるのである。

相手ロボットに乗り移り,
さまざまな手段で金儲けやミッションを楽しもう

 Scraplandは,ロボットばかりが登場するコミカルなSFアクションだが,'40年代からハリウッドで主力を担っていたノワール映画風の探偵モノの要素も加えられている。「ブレードランナー」や「フィフス・エレメント」のような殺伐としながらもネオンサインで溢れた未来型の都市空間を動き回り,ほかのロボット達と会話したり戦闘したりして楽しんでいく。このあたりの作風は,Aliceにもつながるマギー氏らしさといえるだろう。
 ゲームシステムはGrand Theft Autoシリーズを思わせるような自由度の高さで,レポーターとして情報を嗅ぎ回り,新しい情報や捜査の進展を求めて街中を移動する。警官やロボットギャングなど職業によってファクション(いわば派閥)が分かれており,ミッションによっては一方に味方したり,裏切ったりという行動も必要となる。ただし,メインストーリーが進んでいくにつれて,すべてのファクションを敵に回すことになりそうだ。

 プレイヤーに与えられた特殊能力は,ほかのロボットの人工知能に侵入して,リモートコントロールすることだ。これによって,プレイヤーのミッションパターンが増える。自分で事件解明の糸口を探し回らなくても,警官ロボットに乗り移って本部の情報を得られるし,犯罪組織の一員になってメインストーリーにはまったく関係のないミッションで小遣い稼ぎをしてもいい。本当にお金が欲しければ,銀行ファクションの徴収ロボットになって集金し,そのまま自分のものにしてしまうという手段もあり得るのだ。
 Scraplandには15種類のロボットが登場する予定で,プレイヤーはどのロボットの人工知能にも侵入できる。ステルスに向いているものとか,攻撃や相手の懐柔に向いているものなどさまざまなので,その日の気分によって好きなミッションを選択していけば良いのである。
 人工知能プログラムを書き換えは至って簡単で,好みのロボットのそばによってインタフェースのアイコンで指示すればいい。とはいえ,人工知能の書き換えはスクラップランドでは犯罪行為にあたるため,付近に警官ロボットがいないように注意しなければならない。ビホールダ(beholder)と呼ばれる特攻警察のような戦士系もいるが,ディトリタスがレベルを上げれば,リモートコントロール可能だろう。ビホールダで闘技場へ乗り込めば,かなりの賞金を得られるに違いない。

 金銭を貯めることで,ディトリタスは小型のスペースシップを購入できる。このスペースシップはさまざまな種類が用意されており,武器やエンジンなどアップグレード用のスロットも備わっている。
 スペースシップは,巨大な都市空間の移動用として使えるのはもちろんのこと,レースに出場することもできれば,海賊行為を働いて"乗っ取る"ことも可能だ。レーザーガンからレイルガン,ロケットランチャーなどを搭載でき,ドッグファイトができるのは魅力的。とくに,スペースシップによるレースや対戦は,PCやXbox Live!のオンラインモードでいかんなく実力を発揮できるものと予想される。
 グラフィックスはMercury Steam社独自のゲームエンジンで描かれており,現時点の画面写真を見るだけでも,かなりハデめの効果も期待できそう。MODコミュニティへのアプローチも行われる予定で,新しいシナリオやミッションを制作できるエディタも公開されることになりそうだ。

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 Scraplandはすでに2年余りの開発期間を経ており,Enlight Software社は北米で2004年第4四半期にリリースすると発表している。最近はやりのGTA風味のあるアクションアドベンチャーが,ロボットの動き回る未来世界で,どこまで表現されるのか。ダークながらもコミカルな演出も満載で,「American McGee's Alice」がツボにはまったプレイヤーなら,遊んで間違いない一本になるはずだ。

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