= forGamer.netインタビュー =
「Dungeon Siege」
3/3

2002/1/29
文/Kazuhisa

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■ユーザーフレンドリー過ぎるシステムは諸刃の剣となるか?

Chris Taylor:
 そうだなぁ……Hub Systemかな。

forGamer.net:
 HubってあのHub(編注:LANの周辺機器)ですか?

Chris Taylor:
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「よくぞ聞いてくれた」といったカンジでハリキってHub Systemの説明を始めるTaylor氏。まぁ要はDiabloIIのWaypointだ。この親切設計が,吉と出るかどうかは微妙かもしれない
(再びホワイトボードの前で図説してくれる)うん。さっき,マルチプレイには8個の街があるっていったよね? その8個の街は,アーブ大陸のそこかしこに散らばっているんだけど,Hub Systemは,それら8個の街をつなぐシステムで,まぁ言うならばポータルみたいなもんかな(*6)。すべてが全然違う感じの雰囲気なので,すごく楽しめるんじゃないかな。

(*6)
というわけで,もしかしたら世界初公開?の「Hub System」のムービーを「こちら」にUp(26.01MB)。雰囲気的にはまさにWaypointに近く,シーンの継ぎ目でまったく画面が止まらないのが驚異。

forGamer.net:
 DiabloIIのWaypointみたいなものですね。

Chris Taylor:
 うん。それらの街は,Ehb大陸の中を歩いて移動することもできるし,Hub Systemで一気にジャンプすることもできるというわけさ。でもこれ,ただのワープポイントじゃないよ。それぞれの街でレベル制限があるので,入れないところもあるんだ。入れるようになるためにがんばるという目標もできるしね。

forGamer.net:
 なるほど。でもそのレベル制限ですけど,マルチプレイで高レベルキャラクターと低レベルキャラクターが一緒にパーティを組んでいた場合は,どちらに引っ張られるんですか?

Chris Taylor:
 高レベルのほうだよ。つまり低レベルキャラクターは,高レベルキャラクターとパーティを組めば,知らない土地にも行きやすいというわけだ。

forGamer.net:
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マルチプレイはもちろんアクションRPGにはかかせない要素だが…… このような乱戦でもし"ポーズ"されたら……と考えると,夜も眠れない。まぁルールが徹底されることを期待しよう
 ……つまりそれは,高レベルのキャラクターが低レベルのキャラクターを引っ張って経験値稼ぎをさせられるということですよね?

Chris Taylor:
 まったくもってそのとおりだね。まぁあまりにレベルがかけ離れていると戦闘時に10秒ともたないだろうから意味があるとは思えないけど。なにか問題かな?(と,ちょっと微笑んでみせる)

forGamer.net:
 うーん,それでも経験値稼ぎする人は増えるだろうし,それは,RPGに求められがちな微妙なバランスを崩してしまうと思うのですが。

Chris Taylor:
 でもそれは承知のうえで残してある機能だよ。そもそもプレイしやすい(死にづらい)シングルプレイのキャラクターをマルチプレイにインポートできるんだから,そういうアクションを抑制することに意味があるとは思えないし。まぁそういったことを含めてすべて,「プレイヤーにストレスを与えない」ことを目的にしているんだけどね。

forGamer.net:
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これが噂の「Siege Editor」。Taylor氏曰く「アドオン制作会社に使ってもらいたいね」と言っていたぐらいだし,難度はかなり高め
 なるほど。そういう意図的なバランス取りも含めて完全な「Freedom」なんですね。バランスといえば,MOD制作系のプレイヤーにとって待ち遠しいのは「Siege Editor」だと思うのですが,アレはどこまで作れるものなのですか? 製品バランスさえ崩しかねないと思うんですけど。

Chris Taylor:
 Gmaxと二つで使えばなんでも。その気になればDungeon Siege2が作るぐらいのことはできるよ。
 キャラクター,テクスチャ,地形,アイテム,魔法,モンスター,BGM,ムービー……作れないものってあったかな……ないと思う。モンスターのAIなんかも作れるし。

forGamer.net:
 厳密なシステムがまだよく分かってないので僕が勘違いしているかもしれないんですけど,RPGというゲームの特性上,やはり最初にとてつもなく強力なアイテムが作られて配布されると思うんですよ。いうならば,Diabloなどで出回ったチートアイテムが公式に認められている状態になってしまうわけですが,そのあたりの"制限"や"バランス取り"などはどのようにしようとお考えなんでしょうか?

Chris Taylor:
 そうだね,僕もたぶんそうなると思う。興味半分にせよなんらかの悪意があるにせよ,きっとそういうsuperstrongなアイテムができてくるだろうね。でもこれはTotal Annihilationのときに思ったんだけど,結局はそういうものって自然発生的に登場するキチンとしたコミュニティによって淘汰されていくと思うんだ。

forGamer.net:
 ユーザーの良心にまかせておくという感じでしょうか?

Chris Taylor:
 うん,そうだね。もちろんあまりにも目立つ行為が行われないように,ある程度の措置はとると思うけど。とりわけマナーがいい日本のプレイヤーには期待しているよ。

forGamer.net:
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「ホントに一昨日ビジネス目的で日本に着いた人?」というぐらい元気だったTaylor氏。ここには書いていないが,いろんな物マネさえ披露してくれていた(笑)。まずは完成に向けてもうひと頑張りを期待したい
 あぁ,そろそろ時間ですね……。
 では最後に。Expansion Packとか続編とかの話もあるとちらほらと聞いたんですけど,そのあたりはどうでしょう?

Chris Taylor:
 いや,それがさ。Dungeon Siegeって'98年の9月からずっと開発してるんだ。もうかれこれ3年半だね。それがようやっと完成するんだから,そんなに急いだ話はやめようよ(笑)。でもたぶんなんらかの形で"新しいもの"を提供できるとは思うよ。アドオンなのかExpansionPackなのか,それとも"2"になるのかは分からないけど。

forGamer.net:
 期待してます。でもとりあえずこの作品を完成させてください(笑)。今日はいろいろとありがとうございました。



 ●難易度をゲームの途中で変えられる。そのほうがプレイしやすいだろうから。
 ●ムービークオリティとゲームクオリティが同じなのは,そのほうがユーザーが感情移入しやすいから。
 ●最初の読み込み以外に一切読み込みを必要としないのは,ユーザーの気分を削ぎたくないから。
 ●一つのキーを押すだけで地面のアイテムを全部拾えるのは,そのほうがラクに決まってるから。
 ●武器の持ち替えだってワンクリックでOK。そのほうがラクだろうし。
 ●お店で買ったアイテムは,売れば100%の金額が戻ってくる。購入アイテムの選択で悩ませたくないから。
 ●ジャーナルにすべて目的が書き込まれるのも,ユーザーに無駄なストレスを与えたくないから。
 ●ポーズで時間を止めて命令を出せるのも,無駄にプレイヤーが死ななくても済むように。

 とにかく徹底して「ユーザーにストレスをかけない」ことを念頭にデザインされていることを強く強調していたTaylor氏。当サイトの昨年のインタビュー記事を見ながら「うわ,僕去年の夏は痩せてたなぁ……ハンバーガーの食べすぎかなぁ」などとおどけてみせつつ,ゲームのシステムの話になると真剣な表情で質問に応じてくれた。
 目には見えづらい部分ではあるが,本作最大の特徴だといってもいい,その"ストレスフリー"。インタビュー時には,正直言ってやや行き過ぎの感さえ覚えた。そこまでプレイヤーを甘やかさなくてもいいじゃないか,と。一瞬ではあるが「もしかしてキレイなだけで面白くないのかも?」とさえ思ったことを白状しておこう。
 しかし彼の徹底したその思想を聞くにつけ,杞憂であったことも実感した。単に3DでキレイなDiabloライクなゲーム,ではないのだ。まったく別の思想を持ったRPGであるといえるだろう。

 筆者としては,コアなRPGファンよりも,ぜひとも「RPG初心者」とか「PCゲーム初心者」などにプレイしてほしいと感じた一品だ。その容易な操作性,美しい画面と荘厳な音楽(2時間分入っているらしい)による見た目の"面白さ",分かりやすいインタフェース,あれやこれやと世話を焼いてくれるゲームシステムなど,まさに「ビギナー」のためのRPGになっているのかもしれない。
 むろんまだマスターアップしているわけではないので,今後いろいろな部分に変更が加えられるかもしれない。できるだけ情報を入手して掲載する予定なので,ぜひ楽しみに待っていてほしい。

※当サイト内「Dungeon Siege」に関する多数のムービーや記事は「こちら」からどうぞ。

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