forGamer.netイギリス紀行:独占インタビューシリーズ<3> 1/4

Republic:The Revolution with Demis Hassabis

Text&Photo by 奥谷海人 

 イギリスで開発中のPCゲームで今一番気になるソフトといえば,アイドス・インタラクティブから発売される予定の「Republic:The Revolution」という,政治をテーマにした異色のリアルタイム戦略ゲームだ。制作を手掛けているのは,Bullfrog Production社時代に16歳にして"テーマパーク"の副クリエイターに抜擢されたデミス・ハサビス(Demis Hassabis)氏が率いるElixir Studios社。ハサビス氏は,テーマパークのリリース直後には,飛び級で名門のケンブリッジ大学に入ったという天才児としても,業界ではお馴染みの人物である。
 Elixir Studiosが社を構えるのは,ロンドン市の北側に位置するカムデンという地区で,ここはテムズ川から続く運河を中心に1800年頃から人々が住みつき始めた場所だという。当時からアイルランドやギリシアを始めとした移民たちが入植してきた地区らしく,現在でもどこかアジア的な雰囲気がするスラムチックで雑多な感じの場所で,小さなマーケットがひしめき合うバザールが続く。ほとんどの観光ガイドブックには載っていないが,一味違ったロンドンを体験できる街なのだ。

 地下鉄のカムデンタウン駅から少し歩いたレンガ調の近代ビルに,Elixir Studios社はある。舞台裏の話で恐縮だが,実は今回この会社を訪問するにあたっては,アポを取るのにかなり苦戦した。理由はE3以来ゲームエンジンに変更を重ねており,その時点で最新バージョンのデモを見られるような段階には達していないというのである。しかし,せっかくイギリスに来たのにRepublicの最新情報が掴めないとあっては,取材旅行の価値そのものが下がってしまう。そこは何とかと取り計らってもらい,ハサビス氏とのインタビューのみなら,という条件で訪問することが可能になった。
 ところが取材日当日には,その前の取材が長引いてしまい,Elixir Studiosに到着したときには街角に夕暮れが押し迫っていた。それでもハサビス氏は機嫌を損ねる様子もなく,むしろ饒舌にRepublicについて語ってくれた。なおいままでforGamer.netに載った「Republic」の情報に関しては,
・E3時点でのScreenshots集 「こちら」
・E3時点での詳細記事 「こちら」
をご覧いただきたい。

12歳にして英国チェス界の最高位にあたる"チェスマスター"の称号を得たこともある,正真正銘の天才ゲーマーである。もはや天才"児"とは呼べない26歳ではあるが,この若さにしてイギリスのゲーム業界の明日を背負っている Republicが1999年11月に初公開されたときにリリースされた画面写真。ゲームエンジンを使ったイメージ画と思われ,これとは少し違った雰囲気になっているようだが,東欧っぽい街並みの様子がうまく再現されている

Republic:The Revolutionというゲームについて

こちらが,2001年5月のE3で発表されたときのゲーム画面。まだ照明効果のないα版で,街や人物のテクスチャも数種だけしか使用されていない。なお今回紹介する画面写真も,すべて古い段階のものなので注意していただきたい。見るべき部分は,地形やオブジェクトの細かさなのである

 実際のインタビューの内容を掲載する前に,Republic:The Revolutionについての説明をしておこう。
 タイトルが示すように,このゲームのテーマは,旧ソビエト連邦の崩壊によって東欧に小国が次々と誕生していた'90年代が舞台。経済や政治体制の急速な変化によって混乱が生じ,その瓦礫の中から新しい息吹を上げたノヴィストラーナ(Novistrana)共和国という仮想国家の未来を担うべく,指導者として成り上がっていくのがプレイヤーの目的となる。プレイヤーは,小さな町の秘密結社のリーダーとしてゲームを始め,民衆の関心を自分に集めながら政治結社を拡大していき,無能な現首相をその地位から引きずり下ろし,自分自身が国家元首になってしまおうというのが最終的な目標なのだ。
 このゲームの魅力は,シミュレーションゲームとしてはかつてないほどの性能を誇る"Totalityエンジン"と名付けられたゲームエンジンそのものにある。完全3Dのグラフィックス表示で,遠くにあるオブジェクトはポリゴン数を自動的に削減しつつも,決して形状が崩れることはないという独自のLODシステムを考案し,無限のポリゴンを表示している。タバコの吸殻でも数百ポリゴン,大きなビルになれば50万ポリゴンともいわれる3Dモデルをふんだんに使い,美しく精巧な町並みを表現しているのだ。
 しかも2000平方kmにおよぶ国土を持つノヴィストラーナには,それぞれにユニークな町が50程度存在し,国家全体では100万人に及ぶ民衆が闊歩する。そのひとり一人が独自の生活をしており,さらには宗教や政治的関心などのステータスをも持っているというから驚きである。もちろん,これらキャラクターたちの顔グラフィックや服装などもすべて異なっているし,町を行く車やバスも,交通ルールや運行スケジュールに合わせて走っている。以前のデモでは,プレイヤーキャラクターが町の広場で演説を始めた途端にポツリポツリと人の輪が形成されはじめ,ある者は喚起しながら拍手したり,別の者は怒って立ち去ったり無関心そうに素通りしたりと,各キャラクターに個性が表現されていたのが印象的だった。

 プレイヤーは政治家として真っ向から進んでいくだけではなく,ほかにビジネスマン,軍事司令官,教祖,そして犯罪集団のリーダーという5タイプの中から,自分に合った属性を選択してプレイすることになる。敵対するのは最大で15派閥(対戦もしくはCOM)の対抗組織で,それぞれが政治的覇権を巡って熾烈な戦いを行う。現実世界をモチーフにしているものの内容は非常にゲーム的になっており,政治集会やチャリティへの参加,メディアを使ったプロパガンダはもちろんのこと,さらに暗殺,脅迫,暴動の先導,重要人物への賄賂など,手段を選ばない活動ができるのだ。
 これらの活動は,細かく分けると1000種にもなるといわれているが,実務は組織に加わった部下の手によって行なわれる。ゲーム開始直後こそ数名程度で事足りる幹部も,政治結社が大きくなるためにはさらに多くの人材を集める必要があり,金や信仰,暴力などの方法で有能なキャラクターをハントしていく。そうやって作り出されるネットワークには,最大で1000人程度の幹部キャラクターを雇用できるのである。これらのキャラクターは,テレビ女優であったり,すでに多くのサポーターを持っているギャング団や宣教師などとなっており,各人物のスキルに合わせた政治活動を任せていくことになる。

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