forGamer.netイギリス紀行:独占インタビューシリーズ<3> 2/4

Demis Hassabisインタビュー

 では,ここからデミス・ハサビス氏とのインタビューに入ろう。これまで,Republic:The Revolutionに関する大まかな内容は分かっていても,実際にどのようなゲームなのかがまったくもって分からない人も多かったのではないだろうか。いろんなところで「技術力の高いゲーム」とは書かれていても,肝心のゲームプレイについては何も触れていないことが多かったようだ。
 もちろんPCゲームの技術がゲーム業界の未来に大きな影響力を持っているのはいうまでもないし,素晴らしいグラフィックスや物理効果もゲームを体験することの要因であるというのは疑いのない事実だ。今回のインタビューは,このソフトで使用されている技術について簡単かつ詳しく説明してもらうところから始め,実際のゲームプレイやハサビス氏自身が考えるゲームの未来像までに話題が及んだ。

高い技術力を誇る最強のリアルタイム戦略ゲーム
 「テクスチャ自動生成機能を組み込んだことで,街の雰囲気が以前よりも生き生きしたものになっています」

forGamer.net(以下,4GN):
 最新のビルトが見られないのは残念ですが,どのような進展がありましたか?

Demis Hassabis(以下,ハサビス):
 E3でお見せしたときのバージョンよりは随分進化しましたよ。無数の光源を表示できるようになったことで表現できるようになったセルフ・シャドウイング(オブジェクトによる影の自己表示),それからオカルジョン・カリング(陰面消去)という技法でストリートレベルでのカメラ表示が速くなったこと。あとは,街のビルや人の服装などのテクスチャ自動生成機能を組み込んだことで,街の雰囲気が以前よりも生き生きしたものになっています。

4GN:
 あぁ,確かに……これまでのビルって,照明もなくてくすんだ感じでしたもんね。

ハサビス:
 古い画面写真なんかを見ると,ビルはグレイや茶色っぽいものとか数種類のテクスチャしか用意していなかったんですけど,この生成機能で無限に表示できるようになったんです。ホント,今日は実物をお見せできないのが残念ですが,ビルも近寄って見たときのレンガの質感とか出てて,非常に満足してます。

4GN:
 オカルジョン・カリングというのは,DirectXなどでバージョン8.0からサポートされるようになった技法ですよね? 分かりやすく説明していただけますか?

ハサビス:
 いいですよ。例えばビルの谷間を歩いているような状況では,これまでの一般的なグラフィックスエンジンでは左右のビルの向こうにあるビルも表示させなければならなかったので,その分だけCPUやビデオカードへの負担になっていました。でもそれって,プレイヤー自身には見えていないんですから,パフォーマンスコストが無駄になっているってことじゃないですか。
 ところがオカルジョン・カリングをサポートすることで,カメラに写っていない部分は,計算されてはいても実際に表示されることがなくなるので,フレームレートに大幅な向上が見込めるのです。ちなみに,RepublicはDirectX 9.0にも完全対応する予定なんです。これに関しては私の担当ではないので,ウチの専門家に聞いてもらったほうが良いんですけど。

4GN:
 リリースでは"映画のようなクオリティ"を謳っていますが,実際これまでのバージョンは地味な印象があったんです。でも,陰影ができたということは……。

ハサビス:
 随分と美しくなってますよ。これまでのビルトでは,ビルがただ地面に置かれていたように見えてましたが,やはり光と影がなかったというのが大きな原因です。影が設定されたことで,Republicの画像のクオリティは格段に上がったんですよ。あ,でもビルが地面に置かれているってのは当たり前のことですね(笑)。

4GN:
 ゲームエンジンは無数のポリゴンを表示できるということですが,実際にはLOD(Level of Detail)システムで,遠方のオブジェクトは単純なポリゴン数を減らすということで処理していますよね。RepublicのLODがユニークなものであるというのは以前から伺ってますが,これは実際どのような仕組みなのか,そろそろ聞かせて下さい。

ハサビス:
 マネされるのがイヤで,ゲームが出るまでは待っていたかったんだけどね(笑)。
 簡単にお話しておくと,現行のLODの問題っていうのは,例えば四角い箱を斜めに見ると角がこうなっているじゃないですか(と両腕で三角形を作る)。モノを斜めから見たときに,見えている二つのポリゴン面を一つに簡略化し,そのテクスチャのどちらかを優先させて表示するというのが原理です。でもこれだったら,オブジェクトの形が崩れてしまう前に,非常に大雑把な外観になってしまいます。我々のLODへのアプローチは,この二つのテクスチャをうまくモーフィングさせて一つになったポリゴン面に貼り,新しいテクスチャのオブジェクトを作り出してしまうというものなのです。

4GN:
 普通のゲームでは考えられないような,怖いくらいの技術力ですね……。でもそれってデータが膨大になりませんか?

ハサビス:
 顔グラフィックスにしろLODにせよ,予備のテクスチャをあらかじめ用意しているのではなく,すべてエンジン内でリアルタイムに生成するのでそれほどでもないですよ。現在は,CD-ROM2枚に収まる予定になっています。

Republicでは,なんと2000平方kmに渡る広大な世界が描かれている。ちなみにこれは,東京都全域に匹敵する面積。ここに50の大小の都市が置かれ,16の政治組織が覇権を巡って争奪するわけだ UNと書かれた国連軍の輸送トラックのモデル画像。ワイアフレームのものを見ると,驚くほどのポリゴンが使用されているのが分かるだろう

"アクション"の積み重ねでゲームが展開
 「民衆からのサポートが多くなるほど,"政治献金"という名目でプレイヤーにクレジットが与えられ,さらに人材を雇用したり,今後の活動資金に使っていくということになるのです」

4GN:
 これまで,メディアにはTotalityエンジンの性能ばかりがクローズアップされてきたように思います。でも実際のゲームプレイについても知りたいというのが,多くのゲーマーの本音なんだと思いますが。

ハサビス:
 でしょうね。ゲームプレイについて,もっと掘り下げて説明してみましょうか……。
 Republicでのプレイヤーの行動は,自分の組織の中核的なメンバーとなる人物を集めることが重要になります。ある程度の人材が揃ったら,それぞれのキャラクターのスキルに合わせた活動を任せるのですけど,カリスマ性のあるキャラクターには公衆の面前でスピーチをしてもらったり,ギャングには暴動の先導をしてもらったりというコマンドを出していきます。場合によっては重要人物の拉致や暗殺をしたり,反対デモで政敵に賛同するサポーターの数を減らしたりという行動を取るわけです。民衆からのサポートが多くなるほど"政治献金"という名目でプレイヤーにクレジットが与えられ,さらに人材を雇用したり,今後の活動資金に使っていくということになるのです

4GN:
 人のサポートで金を集めては,さらにその資金で多くの人のサポートを勝ち取っていくサイクルになっていると。

ハサビス:
 そういうことです。プレイヤーが取るアクション(活動)には,"ファンデッドアクション""パワーアクション"という二つのタイプがあります。ファンデッドアクションは,集めた資金を使って人材や政敵についての情報収集をしたりするのが典型的なものですね。ゲームの序盤では,とくに頻繁に行うアクションでしょう。リクルーティングもその一つで,キャラクターの情報を得,組織の中核として欲しいと思える人物であれば,その人の性格や事情によって,賄賂を贈ったり説得したり,暴力を使った脅迫などの手段で自分の仲間として取り込んでしまうのです。
 そうやって政治結社の運営に十分な人物が整い,政界を取り巻く状況にも明るくなってきたところで,プレイヤーはパワーアクションを行うようになります。パワーアクションは,大雑把にいうと10分に1度行うようなもので,政治集会とか暗殺などのような大きな活動がこれに当たります。例えば暴動を起こすには,中心的な役割を担う団体が必要になります。この団体を率いる人物とか物資の資源を,政治結社同士が争奪し合うというのも,このゲームの焦点なのです。

4GN:
 常時小さなアクションを行いながら,ときたま大きなアクションを取るということですね。

ハサビス:
 ええ。だからRepublicでは,ある一定の時期に特定のパワーアクションが取れるようになっていて,一つのグループがそのパワーアクションを取るための条件をクリアして活動を始めると,ほかのグループはチャンスを失ってしまうということになります。つまり,あなたが政治集会を開いてしまうと,私は次のチャンスまで待たなければならないのです。だから,そのパワーアクションに合った属性のプレイヤーキャラクターであるとか,それを行うための十分な人材や資金を確保している必要性はあります。

4GN:
 なるほど。それで,抜きん出た政敵を潰そうと,表裏でさまざまな企みが展開していくのですね。

ハサビス:
 そういうことです。プレイヤーが例え頭角を表して先を走っていても,ほかのリーダーの圧力もあるでしょうし,自分から敵を蹴落としていかなければなりません。

4GN:
 まさにパワーゲームですね。パワーアクションのチャンスは,同時に同じものが全リーダーに与えられるのですか?

ハサビス:
 そういうわけでもないです。おそらくほとんどの機会でオプションがありますしね。
 例えば政治集会を開かなくても,新聞社とのコネクションがあるビジネスマン系のプレイヤーキャラクターなら,朝刊のトップで大々的に自分の政見発表をしてもらうというようなアクションを取ることができるようになるでしょう。だから,必ずしも特定のアクションを取る,というのが目的なのではなく,この場合なら「国民に訴えかけるミッション」ということになるのです。そういうミッションを自分に最適の方法でこなしていき,次のレベルに達していくことになります。

殺し屋を雇って,ビルの上から政府要人を銃撃しようとしている 暗殺計画が成功したか失敗に終わったかは分からないが,ここでは要人をガードしていたシークレットサービスが慌てふためいた様子で走り回っている。E3でのデモでは,ガードマンに警護されてリムジンで輸送されていく要人の姿が描かれていた

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