ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 ニール・ヤング インタビュー

Text by Iwahama

 映画「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」のDVD「スペシャル・エクステンデッド・エディション」の発売日でもある12月3日,来日中の,ゲーム「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」のプロデューサーであるニール・ヤング(Neil Young)氏に,インタビューを行った。
プロデューサー ニール・ヤング氏 場所は,東京目黒区にあるエレクトロニック・アーツ社内の会議室。ちなみに筆者はここに向かう直前までβ版をプレイしていて,また向かう途中には前述のDVDの宣伝カー(大型トラックの側面に,デカデカと映画の登場人物達の絵が描かれている)に遭遇するなど,すっかり頭の中が"指輪物語"になった状態でインタビューを行うことができた。

 ニール・ヤング氏は,知る人ぞ知る名クリエイターで,コアなPCゲーマーの中には,「Majestic」という彼の作品を知っている人もいるだろう。これはPCゲームでありながら,現実とも連動する(プレイヤーの自宅に,ゲーム中人物から電話がかかってきたりするのだ!)という,かなりの意欲作。残念ながら日本ではサービスされなかったが,ともあれこの作品で彼の名は世界中にとどろくことになったわけだ。

 ヤング氏がゲーム版ロード・オブ・ザ・リングのプロデューサーを務めるのは,前作「二つの塔」(コンシューマのみ)に続いて2回め。そんな彼に,さらにゲーム性を増した本作について,お話を伺ってきた。
 とはいえ,ヤング氏には以前にも本作についてインタビューを行っている(「こちら」)。またすでに本作は欧米では発売済みだ。筆者の手元にもβ版があるくらいなので,ゲームの細かいシステムについては,時間の限られた今回(なんと二日で11社が取材するとか!)はあえて質問していない。それらは,後日掲載するレビュー記事で確認して頂くとして,今回は本作に関するもっと全体的な話や,ヤング氏自身について話してもらった。


映画とゲームのコラボレーションに成功!

forGamer編集部(以下,4G):
 ここに来る前にも本作を遊んでいたんですが,かなりふんだんに実写(つまり映画)のムービーシーンが使われていますね。

 実は劇場公開版では使用されていない映像もたくさん使っているんだ。前作同様にイライジャ・ウッドを始めとする映画出演者へのインタビューなどの特典映像もあって,合計で約45分収録してあるよ

4G:
 短いムービーがたくさん挿入されるためか,体感ではもっとあるように感じますね。ところ欧米では,12月17日の映画公開に先駆けて,すでに本作が発売されていますよね。そして日本でも,2月の映画公開に先駆けて,1月8日に本作が発売されます。
 こんなにムービーが挿入されている本作を,映画を観る前に遊び込んじゃっても問題ないですかね?(笑)

 いい質問だね。もちろん,まったく問題ないよ。むしろ,映画より数週間先に発売できるように努力したくらいだからね
 というのも,映画を観る前に本作を遊ぶことで,より映画のストーリーが理解できるように作ってあるんだ。例えば,本作の序盤にガンダルフによる独白のムービーが流れるんだけど,プレイヤーはこれによって,彼がすべてを画策していたことを知るんだ。しかしこういったシーンは劇場公開版にはなく,この事実はハッキリとは描写されていないわけ。
 映画は,むしろフロドとサムのホビット達に焦点を当てている。つまり一つのストーリーを,それぞれ別の側面から描いているんだ。だから両方を観ることで,相乗効果があるというか,理解が深まるわけ
 それに,我々は本作を開発するにあたって,映画のプロダクションと緊密に連絡を取り合って,いわゆるネタバレにならないように細心の注意を払ったしね

4G:
 じゃあ,例えば本作の発売日にお金がなかったとして(笑),お金ができたときにはすでに映画が公開されていたとしますよね。それでも,先にゲームを遊ぶべきですか?

 もちろんそうさ。とはいえ,当然映画が先でも問題ないようになっている。映画を観た人は,気に入ったシーンをDVDが出る前に家庭で楽しめるわけだ。それに本作はあくまでゲームだから,映画とは関係なく,単純にゲームとして楽しんでもらっても構わないしね。
 ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)のストーリーは非常に壮大なものなので,本作や映画,そして原作など,いろんな角度から楽しむことで,よりいっそう理解が深まるはずだ。

4G:
 なるほど。じゃあ私は,映画より先に本作を楽しませてもらいますね。ところで先ほども話に出ましたが,本作はすでに欧米で発売されていますよね。評判はどうですか?

 うん,おかげさまで好評だよ。いろいろな掲示板などでの意見を読んでも,みんな前作より面白いとコメントしてくれている
 また僕個人的にも,本作のクオリティには満足している。僕は,ゲームは,エンターテイメントじゃないといけないと思っている。僕はゲーム性よりもエンターテイメント性を優先するんだ。眉間に皺寄せてプレイして「うーん,面白い」ってゲームよりも,遊んでいて単純に「楽しい!」と思えるゲームのほうが好きというか。
 そういう視点で見ても,本作はエンターテイメント性満点で,良いゲームに仕上がっていると思うよ。

4G:
 今前作の話が出ましたが,なぜ前作はPCでは発売されなかったのですか? また,今作ではPC版も作られた理由を教えてください。

 実はPC版「二つの塔」も,コンシューマ版と同時に開発していたんだ。ただ,これだけの題材(ロード・オブ・ザ・リング)を扱っているゲームは,最高の出来じゃないといけないと思うんだよね。しかし正直,僕達が開発していたPC版は,そこまでのクオリティには届かなかった。だから,お蔵入りとなったわけ。
 しかし今作では,満足行く出来映えとなった。PCゲーム業界では,映画のゲーム化作品はどれもつまらないなんていわれているけど,本作は成功したといっていいだろう。

4G:
 本作で映画のゲーム化に成功したのは,なぜでしょう?

 これまで,ゲーム業界の誰もが,"映画のゲーム化"という行為自体について,すごく後ろめたい気持ちでいたと思うんだ。物語やキャラクターを一から作るわけじゃないし,あと映画の版権グッズ……例えばフィギュアみたいに,映画の付随物として認識されていたってのも理由だろう。
 でも僕は,まったく後ろめたく思っていない。だって,フランシス・F・コッポラだって,スティーブン・スピルバーグだって,映画を作るときにほかのところから題材を持ってきたりするじゃないか。原作のある映画は一流でも,原作のあるゲームが二流って変だよね。
 映画には,音とビジュアルを楽しむもの。でもゲームには,この二つに加えてインタラクティブ性もある。まったく別のメディアとして,映画とは別の角度から物語を扱えるんだ。
 本作が成功したのは,映画の付随物だと卑下することなく,むしろ映画とは別のもう一つのエンターテイメントとして作ったからだろうね。

4G:
 じゃあ,映画で描かれている物語を,プレイヤーに"体験させる"部分に注力した,と。

 そうだね。映画とゲームのコラボレーションには,二つの利点があると思うんだ。一つは,プレイヤーを映画の世界に引き込めるということ。本作は,映画が先にあって,それをそのままゲームにしたのではなく,映画用の設定や素材を基に作っている。ステージの地形もロケ地のデータを利用しているしね。
 こういった作業が,リアリティをずいぶん高めていると思う。本当に映画の中にいるのと同じ状態ってわけだ。
 もう一つの利点は,映画のシーンを挿入することで,プレイヤーをゲームにも引き込めるということ。ゲーム中にゲーム画面と映画のシーンがシームレスに切り替わることで,映画やゲーム単体では味わえない楽しさがあるだろう。
 たぶん,開発段階から協力したという意味で,映画とゲームのコラボレーションを行っているのは,本作と最近話題の某SF映画くらいなものだろうね。じゃあ,この二つのコラボレーションはどこが違うのか?
 僕は当然本作のことしか知らないんだけど,ピーター・ジャクソン(映画版の監督)が,かなり自由に作らせてくれた。彼は映画のプロフェッショナルだけど,ゲームに関しては詳しくないからね。だから,非常に作りやすかった。
 でも,某SF映画の場合は,映画のプロデューサーがかなりゲームにも口出ししたんじゃないかな。それが悪いとは思わないけど,コラボレーションとして,また違った形になっていると思う。

4G:
 あっちのゲーム版は,主人公が登場しないのが寂しかったですね。

 本作では,主要なキャラクター6人を操作できるので,その点はご安心を(笑)

次のページへ


→「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」の情報一覧は「こちら」

(C) MMIII New Line Productions, Inc. All Rights Reserved. "The Lord of the Rings" and the names of the characters, items, events and places therein are trademarks of The Saul Zaentz Company d/b/a/ Tolkien Enterprises under license to New Line Productions, Inc.Game Code and certain audio visual elements c 2003 Electronic Arts Inc. All rights reserved. Electronic Arts, EA GAMES and the EA GAMES logo are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries. All other trademarks are the property of their respective owners. EA GAMES? is an Electronic Arts? brand.