2002 Game Developers Conference
= 講義1日目 =

23rd Mar. 2002
Text/Photo by 奥谷 海人

 

1日めの講義内容について
ここでは,forGamer.net特派員が,個人的な興味から参加した講義の内容をまとめる。

 

1・なぜ,我々がゲームを作るべきでないのか?
 (Why We Shouldn't Make Games? )

スピーカー:アーネスト・アダムス(Ernest Adams)

 アダムス氏は,映画産業よりも規模の大きくなったゲーム産業が,相変わらず重要視されていないことについて言及。"ゲーム"そのものの存在について考えるべきではないか,と提議した。例えば,「映画を宣伝するときには,最新の技術に対応して秒間ポリゴン数を向上,などという言葉は使わない。もっとプロットやキャラクターの行動や感情などのコンテンツについて述べるのが普通だ。技術についてわざわざ触れた映画って,『ジュラシックパーク』とか,内容について語るべきところがなかったヤツばかり」(アダムス)といった感じだ。
 さらに,「ゲームデザイナーは,ゲームの魅力について考えなければならないし,何も敵を殺したり占領することだけがゲームを成功させるために必要なことではないのだ,ということに気付かなければいけないだろう」とアダムスは語る。確かに,こういった考えはゲームがより大きな市場に受け入れられていくために重要だろう。子供のおもちゃとしてしか捕らえられない"ゲーム"という言葉のイメージを払拭するには,ゲーム開発者が行動を起こさなければならない。そのことが,この講義の主題となって現れていた。

アーネスト・アダムス
エレクトロニック・アーツのエンジニアとして,「Madden NFL Football」シリーズを開発。以後,イギリスに居を構えてコンサルタント業を生業とし,ゲーム関連の講義も頻繁に行っている哲学者だ

 

2・「Alice」製作検討
 (American McGee's Alice Postmortem)

スピーカー:アメリカン・マギー(American McGee)

 id Software社出身のマギー氏は,開発期間18か月,予算が約3億円という限られた状況の中で,いかに人気作品を送り出したのかを成功や失敗の裏話を交えて発表した
 ゲーム世界のデザイン過程は,現在開発している『オズの魔法使い』を題材にしたゲームのアート画や粘土細工を交えて説明。Aliceは,当初マリリン・マンソンの作曲になる予定だったのだという。
 とくに,企業独特のプレッシャーの中で足掻いていた苦労話は面白かった。エレクトロニック・アーツのプロデューサーとして,旧知のRogue Entertainment社の面々と接しなければならず,開発中には板ばさみになって苦しんだらしい。"アメリカン・マギーの〜"という冠を付けるなど,彼だけがスポットライトに当てられ,まるで彼だけで作ったかのように扱われることには,開発チームの面々は納得がいかなかったらしい。業界でも経験の長い歴戦練磨のデザイナーであればともかく,Quake以前は電話係だったマギー氏が,どうして自分の名前を作品につけることができたのか。それは,ほかにもAliceという一般的な名詞を差別化することや,EA側がブランドとして成立させようとしたというマーケティング的な事情でしかなかったという裏話なのだが,彼自身は最後まで名前を取るように訴えていたのだという。

アメリカン・マギー
 "ジョン・カーマックと同じアパートに住んでいた"という偶然からゲーム業界に。「QuakeII」でレベルデザイナーを経験した後,エレクトロニック・アーツに移籍した。現在は,Carbon 6 Entertainment社の代表

 

3・オンラインコミュニティーの管理方法
 (How to Manage a Large-Scale Online Gaming Community)

スピーカー:ラフ・コスター(Raph Coster)/リック・ヴォーゲル(Rich Vogel)

  「Ultima Online」のライブチームの責任者だったコスター/ボーゲル両氏は,オンラインゲームに関しては,様々なカンファレンスで講義している。ライブチームとは,MMORPGの運営が軌道に乗った後に,プレイヤーとのコミュニケーションを円滑に行いながらサービスを持続させていくチーム内チームの総称になっている
 彼らが重要視するのは,ウェブやチャットを基盤にしたファンとの対話の重要性だ。「実際に開発者に言葉をかけてくるのは,相当なコアファンであるに違いなく,真剣に話を進めていかなければならない」という基本的なサービスを中心に,ハッカー対策などへと話題が移った。ハッカーされれば,「凄いよね。そんなやり方があったなんて誰も気付かなかったよ。やり方教えて」(コスター)と,相手を調子付かしておき,理由がわかったらアカウントを剥奪するという行為も実際にしていたらしく,ライブチームの実情を生々しく語っていた。

ラフ・コスター&リック・ヴォーゲル
 「Ultima Online」のライブチームを2年間勤めた後,ギャリオット氏の解任に前後してVerant Interactive社に移籍した。現在は,それぞれリードデザイナーとプロデューサーとして,「Star Wars Galaxies」の開発を担当している

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