2002 Game Developers Conference
= 講義2日目 =

26th Mar. 2002
Text/Photo by 奥谷 海人

 

2日めの講義内容について
ここでは,forGamer.net特派員が,個人的な興味から参加した講義の内容をまとめる。

 

1・5年後の新技術
(Another 5 years from Now: Future Technology)

スピーカー: デイビッド・ブレイベン

 今後の5年間で技術はどのように変わっていくのか,どこに目を向けてゲーム開発を行っていくべきか,という大胆な予想をプログラマの立場から予想するのは,1980年代初期から活躍するブレイベン氏。映画産業の生い立ちと比較して,少なくても今後10年は技術的な進化が猛スピードで行われていくはずだと予測した。これは,ムーアの法則に基づくIntel社の予測や,ソニーがプレイステーション3はPS2の1000倍の能力となると豪語していることから察する"技術革新の余地の大きさ"から推測された期間である。
 3Dグラフィックスのゲームが登場して以来,レンダリングやアニメーション,ユーザーインターフェイスのような,技術部分に進化があったのもそのためで,今後は感情表現などのコンテンツ部分に主軸が移るとブレイベン氏は言う。会場で公開されたデモでは,イヌがすれ違うたびにお互いを認識するというものだが,目と目を合わせるだけでも感情が生まれることを実験している。これは,ブレイベン氏の会社の公式サイトでダウンロードすることが可能。

デイビット・ブレイベン
イギリス在住。ケンブリッジ大学在籍中の1982年からBell社の研究生となり,1984年に製作した「E.L.I.T.E.」(またの名はFirebird)は,初の3Dゲームとして認知されている。現在は,ゲーム制作ツールなどを開発者向けに製作,販売するFrontier Development社を設立している

 

2・マップがぶつかり合うとき:ライトとマクラウドの座談会
(When Maps Collide:A Conversation with Will Wright and Scott McCloud)

スピーカー:ウィル・ライト&スコット・マクラウド

 ゲーム界とコミック界の大御所二人が顔を合わせ,それぞれの立場からエンターテイメントを図式化してしまおうという対談。スコット・マクラウド氏は,図形的な構造を持つ作品を得意とするコミック作家で,「Reinventing Comics」という著作もあるアメリカンコミック界のオピニオンリーダーだ。マクラウド氏の作品も閲覧できるホームページは,「ここ」で見ることができる。
 対談は,"2Dのグラフィックス"そのものが静的な世界の中でのみ存在するためか,最初からライト氏は反発し,時間や空間の使い方を巡って意見を戦わせた。もっとも,その後はお互いの立場を尊重し合う形の雑談となり,ライト氏がマクラウド風のタッチで似顔絵を描いてみせるなど,和やかな雰囲気に。結局,ゲームデザインに関しては当然のごとくライト氏の理解の深さが表に出た格好となり,将来的には「プレイヤーが与えられたスペースの中で動くだけでなく,そのスペースがプレイヤーの行動に従って調節されていくべきだ」と述べて,彼が手掛けている「Spore」プロジェクトのコンセプト(?)も示唆した

ウィル・ライト(左)&スコット・マクラウド(右)
ウィル・ライト氏の手掛けた「シムピープル」は,発売3年めに入った現在でもセールストップ10の上位に居座り続けている。最近ではIGDAだけでなく,AIAS(全米インタラクティブ芸術科学学会)からも"ゲーム業界の殿堂"と評されている。またマクラウド氏は,コミック作家だけでなく,11歳で世界チェスチャンピオンになるなど,多才な人である

 

3・現実的なセリフとシーンを作るための22の秘密
(22 Secrets of Creating Realistic Dialogue and Scene Now)

スピーカー:デイビッド・フリーマン

 テレビや映画などの脚本家として知られるフリーマン氏は,セリフを巧みに使ってストーリーやキャラクターの価値を高める"ディープニング・テクニック"という,自身で編み出した執筆技法を紹介した。アメリカの脚本家などの間では,ストーリーを構造的に区分していく手法が多く見られるが,フリーマン氏の手法はそれをさらにミクロ化して,会話の一文一文,一語一語にまで構造や存在意義を持たせるというものだ。脚本家にとっては,それをどこまで編み込みつつも,説明のし過ぎにならないかをコントロールする手腕が問われることになる。
 フリーマン氏の講義を数行で訳すことはできないので,ここでは割愛させていただく。彼は,ホームページにもある程度の情報を掲載しているようだ。

デイビッド・フリーマン
フリーマン氏は長年ハリウッドで活躍する脚本家で,手掛けた作品群の中には「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」や「トータル・リコール」などの名作が並ぶ。彼がハリウッドやニューヨークで開く講座は,いつも満席状態という人気を誇る。現在は,Shiny Entertainment社が開発しているXbox用のアクションゲーム「マトリックス」の製作に参加している

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