「Pangya」

■Seo, Kwan Hee氏プロフィール■
31歳。1992年,今や伝説的な存在である"Sonnori Team"の創立メンバーとしてゲーム業界に足を踏み入れる。1994年には氏がプログラムを担当したRPG「Astonishia Story」が約10万本のヒットとなり,第1回韓国ゲーム大賞を受賞。1998年,株式会社Sonnori設立。氏は開発室長に就任する。その後も「鋼鉄帝国」のプログラマー,Gravity社との共同作「Arcturus」(邦題「アークトゥルス」)のプログラマー兼コーディネータ,ホラーアドベンチャーゲーム「White Day」のプロデューサーを経て,2003年にNtreev Soft社を設立。取締役に就任し,現在に至る。

韓国でオンラインゴルフゲームが大ヒット!
その仕掛け人に直撃インタビュー

【前編】

 以前[韓国ゲーム事情#214]で,韓国で最近オンラインゴルフゲームが流行しているという情報をお伝えした。実は韓国ではゴルフは日本ほど普及しておらず,最初にゴルフのゲームが発表されたときは,業界関係者達は誰もヒットするとは思っていなかった。
 しかし,例えば「Pangya」(邦題「スカッとゴルフ パンヤ」)は,会員数100万を数え,同時接続者数で平日で1万5000人前後,土日だと2万人を超えるという人気ぶりだ。しかもいまだ右肩上がりの状況だとか。
 どうしてゴルフが普及していない韓国で,こんなにヒットしたのか? どうやってヒットさせたのか? 韓国ではちょっとした有名人でもあるPangyaの統括プロデューサー,Seo, Kwan Hee氏にお話を伺った。

 

ゴルフの普及していない韓国で,
なぜオンラインゴルフゲーム?
〜ゴルフはあまり普及していないからこそ,ゲームの題材として面白いんです〜

Kim, Dong Wook(以下,4G):
 日本では,8月13日にようやくオープンβテストが開始される段階で,まだ本作をプレイできていない人が多いんですね。なので,まずは簡単に本作の紹介をお願いします。

Seo, Kwan Hee氏(以下,Seo):
 Pangyaは,オンライン専用のゴルフゲームです。一つのサーバーで同時に2500人プレイでき,今韓国では九つ(一つは生番組の対戦用)のサーバーがいつもほぼ満員になるほどの人気になってます。実はWorld Cyber Gamesの特別種目にも選ばれたんですよ(関連記事は「こちら」)。

4G:
 ゲーム大会の種目になるって,凄いことですよね。ところで,ずっと気になっていたのですが,Pangyaってタイトルにはどういう意味があるんですか?

Seo:
 これはもう,そのままの意味ですよ。子供達がおもちゃの拳銃で「パンヤ! パンヤ!」(編注:日本なら「パンッ! パンッ!」)って言うでしょう。あれから取りました。ゴルフでも,パンッとボールを打つでしょう。
 あと実は,「Pangya」というブランド名で,もっといろいろなスポーツをゲーム化しようと思っているんですよ。それに,ちょっとこれは書かないでほしいのですが,実は開発が決まったときはゴルフだけでなくて×××(編注:伏せ字にしました)も遊べるようにするつもりだったんです。リソースや開発期間の問題で現在はゴルフだけですが,今後Pangyaをアバターポータル化して,同じキャラクターを使っていろいろなゲームを遊べるようにしたいですね(※)。

※Pangyaは,デフォルトで用意されている二人のキャラクターと基本的なアイテムを使うだけなら無料で楽しめる。逆にいえば,料金を支払うことで,ほかのキャラクターや特殊なアイテムが使用可能だ(日本での課金体系は未定)。またこれらのキャラクターにはパラメータがあり,経験を積むことで成長していく。これらのことから,キャラクターに愛着が湧きやすいシステムだといえるだろう。"アバターポータル"とは,そういう愛着の湧いたキャラクターで,ゴルフだけでなくさまざまなゲームが遊べる場を指している

4G:
 なるほど,それはいいですね。しかしその最初のゲームがゴルフということが,同じ韓国人としては不思議です。どこからこの企画を思いついたんでしょう?

Seo:
 私は,元々ずっとPCのパッケージゲームを作ってきたんですよ。でも,2001年にSONNORIがLocus Holdings社と合併したときに,オンラインゲーム系の部署に移った。当然オンラインゲームを開発しなければならなくなったのですが,私としては,MMORPGを作るのはイヤだったんですよ。当時の韓国は似たようなMMORPGばかりで,もう作り手もプレイヤーも飽き飽きしていましたからね。
 私としては,カジュアルなゲームを持ってきてゲーム性で勝負したいと思った。で,いろいろ考えた結果,ゴルフを思いついたんです。確かに韓国ではゴルフは大衆的なゲームではありません。むしろ一部のお金持ちのスポーツですよね。普通の韓国人にとって,ゴルフには"接待"や"賄賂(を渡す場)"といった,マイナスのイメージがあるくらいです。
 ところがここ数年状況が変わってきていて,パク・セリさんなど,世界で活躍する女性プロゴルファーが凄く人気者になったりしていますよね。彼女やほかの女子プロゴルファーの活躍を見て,今後ゴルフが人気のスポーツになるかもしれないと思ったんです。

4G:
 なるほど。ちなみに,Seoさん自身は本物のゴルフはプレイしますか?

Seo:
 いや,やっぱり本物のゴルフはまだまだお金がかかりすぎますね(笑)。さっきも言ったように女子プロの選手達によって状況は変わってきましたが,まぁこれからでしょう。
 実はPangyaの広報活動をするときは,オンラインゴルフゲームとしてではなく,カジュアル対戦ゲームとして売り込みました。そのほうがウケがいいですからね。

4G:
 まぁ,確かにオンラインゴルフゲームといわれても,ピンと来なかったですからね。

Seo:
 ほかにもゴルフを選んだ理由はいくつもあります。例えばゴルフって,ターンベースですよね。対戦型のオンラインゲームって,リアルタイムで速い操作が求められるものが多いけど,ゴルフなら比較的落ちついてプレイできる。僕は激しく操作して戦う格闘系よりも,こういったゆっくり楽しめるゲームのほうが好みなんですよ。
 また韓国ではサッカーやバスケットボールが人気がありますが,裏を返せば,これらのスポーツは,みんな現実で遊んでいるわけですよ。どうせ家で遊ぶのなら,普段遊べないスポーツのほうがいいと思いません? ゴルフはあまり普及していないからこそ,ゲームの題材として面白いんです。

4G:
 それはありますね。ゴルフって,ほとんどの人が実際にプレイしたことはないけど,テレビなどではよく見ているわけですから。ゲームで試してみたいという人は多いでしょうし,実際に多かったから,ここまでヒットしているんですね。

Seo:
 あともう一つ付け加えるなら,ユーモアの要素を入れられることですね。例えば本作の場合,普通のゴルフクラブ以外にも,野球のバットやフライパン,スリッパなどでボールを打つことができます。
 またゴルフボールにもいろいろと種類があって,打つと爆発しながら飛んでいく爆弾ボールや,ハートマークが出るラブラブボールなんてものがあるんですね。こういうことを真剣なファンが多いサッカーでやったら,あちらこちらからたっぷりと苦情が来ることでしょうね(笑)。

4G:
 本作には,本物のゴルフにはない,いろいろなユニークな要素が盛り込まれていますものね。

Seo:
 ただ,最低限の基本的なゴルフのルールだけは守っています。これは守らないとダメですから。

 

ほかのオンラインゴルフゲームとの違い
〜本作のコンセプトは,「EASY to LEARN, HARD to MASTER」〜

4G:
 さてSeoさんのもくろみどおりPangyaはヒットし,オンラインゴルフゲームというジャンルが定着した感がありますね。ほかにも「Shot Online」(邦題「ショトオンライン」)や「あなたはゴルフ王」(編注:直訳タイトル)といった,競合が出てきました。これら競合と比べての,Pangyaのウリを教えてください。

Seo:
 Pangyaは元々ゴルフゲームを知らない人のために作ったゲームだから,ほかのゲームと比べて,ルールなどを学びやすいことがウリに挙げられます。また先ほど話したように,本作にはゴルフの枠を超えてかなりユニークなアイデアを詰め込んでいます。魔法などのファンタジー色がありますからね。Pangyaでは,現実のゴルフではできないことを見せたいと思っています。
 あと,グラフィックスだけでなく,音楽,エフェクトにも気を遣っていますよ。
 本作についてよく知らない人が偶然に見たとき,「これはいったいなんのゲームだろう?」と思うくらいがいいんじゃないでしょうか。キャラクターにはパラメータやレベルアップの概念がある。また収益モデルとも関係するのですが,有料のアイテムを購入することで,パラメータをUpすることも可能。このあたりが,ほかのゴルフゲームと違うところでしょうか。

4G:
 本作はずいぶんカジュアルですよね。その分,低年齢層のファンも多いでしょうし,ルールを学びやすいことは重要でしょう。

Seo:
 本作の開発時のコンセプトは,「EASY to LEARN, HARD to MASTER」(学びやすく,極めがたい)です。誰でもプレイできるハードルの低さと,ハードゲーマーも納得できる奥の深さを両立させたいと思っています。

4G:
 本作にはチュートリアルがありますが,その評価はどうですか?

Seo:
 初めてチュートリアルを入れたとき,実は評価が分かれたんですね。これまで一度でもオンラインゲームを遊んだことがある人は,このチュートリアルで十分理解できたようですが,PCに慣れていない人には,チュートリアルさえ難しかったようです。
 そこで今,ちょうどチュートリvアルを作り直しているんですよ。もっと分かりやすくなるはずです。PCに初めて触れる人にもお勧めできるゲームになりますよ。

4G:
 なるほど,それはいいですね。でも,今のままでも結構面白いチュートリアルですよね。あと,チュートリアルを全部プレイしなくても本ゲームに入れるのが嬉しかったです(笑)。

Seo:
 Pangyaのチュートリアルは7段階に分かれていますから,それを全部プレイしないと本ゲームに進めないというのでは,ゲーム慣れした人には面倒でしょう。
 ただ,実は全部のチュートリアルをクリアすると,特別なキャディが無料でもらえるんですよ。対戦時に珍しいキャディで自慢したい人は,ぜひ全部のチュートリアルを試してみてください。

「Pangya」の情報一覧は,「こちら」でどうぞ。

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